岡田徳輔の発言 (地方行政委員会)
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○岡田参考人 私は全国町村議会議長会を代表いたしまして、まず地方自治を申し述べます。
この法律案は、政府の提案理由でも、条文に現われた表現がどうでありましょうとも、各種の点から判断いたしまして、地方自治制慶の根本に触れるきわめて重大な改正であると思うのであります。地方制度の根本的な問題につきましては、まだ地方制度調査会の結論が完結していないのでございます。実は地方議会の組織、権限等の問題は、根本的な改革の一環として取り上げらるべきものと思うのであります。それにもかかわらず、改正案の内容によりますると、地方自治を弱め中央集権を強化したり議会の組織、権能を弱化させ、執行権を強化しようとしたりしておりまして、その態度は、あたかも地方自治をこの方向に推し進めておるごとくに見えるのであります。私どもといたしましては多大の疑問を持たざるを得ないのでございます。今日町村合併を強力に推進いたしておるのでございますが、これは町村にとっては実に大きな改革というべきでありまして、その完了した後においては、その規模や能力も相当大きな変化が行われるのでありましょうし、また地方団体の組織運営の簡素、合理化も、必然的に自主的に実施されることになると思うのでございます。ゆえにその完成を待って改革を考えても決しておそくはないのではないかと存ずるのでございます。しかるにそれを待たないで、組織や権能に重大な影響を与えるような改革をやるということは、いささか早計に失するものと考えるのでございます。政府ことに自治庁は、地方自治を確立するという深い熱意と、地方自治を育成強化するという寛容と忍耐の態度で臨んでいただきたいと思うのでございます。法案の内郷によりますと、議会関係の改正事項といたしまして、一、定例会を通常会に改めること、二、町村の常任委員会はこれを廃止すること、三、議会事務局の職員を地方公共団体の職員が兼ね得ること、四、長に対する不信任決議は半数で行い得ること等がおもな点でありますが、いずれも議会の力が弱められ、執行権が強化されることになるのでございます。しかもこれらの改正は、行政の簡素化、合理化の立場から行われるものとされております。行政の簡素化については私どもとしても異議のないところでございまして、他の団体もおそらくそうであろうと存じますが、町村といたしましては、簡素化の問題や常任委員会の運営を改善することにつきましては、自主的な努力を続けておるのでございます。たとえば議員の定数を条例によって減らしておるところも相当多数あるのでございます。今後もまたそうしようとする傾向が顕著になって参っておるのでございます。ことに町村合併の機会に減少することにきめたところも多いのでございます。また町村によりまして常任委員会の行き過ぎを防ぐために、全員を一年、ことに入れかえるという方法をとっておるところもございます。各地方団体は、その議会が住民の意思に従って、自主的にその地方々々の特殊の事情に応じて、その組織や運営の方法を簡素化、合理化することが、地方自治法の立法趣旨であり、住民政府の特色であると考えるのでございますが、それが今うまく行われておらないからといって、短兵急に法律によって一方的改正を行うことは、地方自治の趣旨に反することであり、民主政治を否定するものと考えるのであります。およそ地方自治の育成には相当の年限を要するということは、古今東西の歴史から考えましても、今しばらくの時日をかす必要があると思うのでございます。
それから定例会を年一回の通常会に改めることも、地方議会の実情を無視しておるものであります。今日地方団体が相次いで予算の追加更正をやっておるのは、地方財政が国の財政と密接な関係にあります上に、国の予算の成立が常におくれがちであるため、地方団体の予算が不確定な要素によって占められて、そのために予算の追加更正を余儀なくせられておるという事実を、政府自体がまず認識すべきであると考えます。提案理由によりますと、国会と同じように年一回の通常会だけであとは臨時会が何回でも開けるわけではないかということでございますが、国会の通常会が百五十日であるのに、町村の場合は五日ないし十五日くらいとしておりますので、これではどんな町村議会であっても現存では無理と考えるのでございます。それに、臨時会は自由に請求ができると申しますが、地方議会の実情から申しますと、臨時会はよほど重大案件がある場合であるとか、あるいは何か紛争等のある場合等でなければ、淡会側から要求して開くということはないのが通例になっておるのでございます。定例会制度の欠陥として、議題もないのに定例会を開くというようなばかげたことは、実際問題としては考えられないことでございます。
次に私ども全国町村議会として特に由々しい問題としておりますことは、常任委員会を廃止するという点でございますが、常任委員会を人口段階によってその存廃をきめるということには私どもとしましては承服いたしがたいところでございます。地方では国の場合と違って長と議会が別々の選挙で選出せられております以上、議会が常任委員会を持つということは当然と考えるのでございます。どんな町村でも最少限度の標準行政が行われておる現行地方制度のもとでは、絶対に必要であると言い得るのでございます。また現実の問題といたしましても、町村議会の常任委員会が執行機関と互いに協調して町村行政を円滑に運営しておる場合の方が多いので、私どもの調査いたしました範囲内におきましては、いずれの町村長も常任委員会の必要を認めておるのでございます。常任委員会を横割りか縦割りかという問題につきましては、現存の自治行政がますます複雑、専門化して参ります現状から見まして、調査の対象を深く掘り下げる縦割りでなければ、委員会の目的を達することができないと考えるのでございます。常任委員会廃止の理由の一つとして、執行部面に立ち入り過ぎ、ために責任の所在がはっきりしないということがあげられておりますが、きわめてまれにそのような弊害があるといたしましても、何もこれは町村議会だけの問題ではないのでありまして、これをもって町村議会だけに常任委員会を廃止すべき理由とはならないと思うのでございます。その他常任委員会についてはいろいろ問題があるといわれておりますが、いずれも運用上の問題でありまして、これを直ちに制度が悪いと断定して、法律でこれを改廃するということはまことに考えものであると考えるのでございます。
第三点といたしまして、議会事務局の職員を地方公共団体の職員が兼ね得るという点も、議会独自の事務局を持てなといということは、議会が町村長の任命した職員を借用するという形になることでありまして、これは議会内に町村長が介入しやすくなり、反面議会の機能が弱められるという意味で、私どもといたしましては賛成しがたいところでございます。全国町村議会議長会といたしましては、議会機能の充実、強化をするためには、議会に専任書記を置くことを強く推進して参っております。最近ようやくその成績が上りつつあるところでございます。われわれはその促進のために町村にも議会事務局を置くことができるように地方自治法の第百三十八条の改正方をしばしば要請しておるところでありますので、兼職ができるという本改正案には絶対に反対でございます。私どもといたしましては、性急な行政事務の簡素化よりも、機能の強化によって議会の本分を十分に発揮することに重きを置きたいと考うるものでございます。
以上は大体今度の地方自治法の改正が議会の力を弱め、執行権の強化をはかっておる点について概略の意見を申し上げたのでありますが、本法案の他の方面を見ますと、国の監督権をはなはだしく強化するというような事項が含まれております。国の監督権が強化されることは、やがて官僚的中央集権が復活するおそれが多分にあると思うのでございます。かかる意味におきまして、私どもは本法案の成立をぜひ皆様方のお力で阻止していただきたいと考える次第であります。
次に地方財政再建促進特別措置法案につきましては、再建整備のために負担する政府の財政支出が、私どもの期待に反しましてあまりに少過ぎるのでございます。それに引きかえて、たとい整理期間中であるとしても、地方団体に対する国の監督権があまりにも強過ぎるのでございます。特に長の提出する財政再建についての関係議案の審議につきまして、その審議期間を限定し、あるいは長に解散権を与える等議会の審議権を大幅に制限しております。これでは全く再建整備のために議会というものを長の諮問機関化するようなものである。前述の地方自治法改正の内容と軌を一にして議会の力を弱める結果となるものと考えます。地方財政再建整備につきましては、住民の負担に重大な関係がありますので、議会の立場が十分尊重されなければならないので、赤字の原因を議会に転嫁するばかりか、議会をして執行部に従属させ、しからざれば解散するぞというような議会軽視の思想は、民主政治の前途にはなはだしい不安を抱かしめるものでありまして、私どもといたしましては全然承服できないのでございます。以上の理由によりまして法案の第十一条はこれを削除することを要望いたす次第でございます。
次に地方団体の執行機関の職員をして議会職員を兼ねさせることができるという規定も、地方自治法の改正について申し上げた場合と同じ理由でこれを削除することを要望いたします。その他の点につきましては、議長会、議会関係の三団体共同で要望しており、また本日も申し述べられております次第で、私はここには省略して、これをもって私の参考人としての意見を簡単に申し上げた次第であります。