鈴木茂三郎の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○鈴木茂三郎君 鳩山総理の所信に対しまして、日本社会党を代表して若干の質疑を行います。(拍手)
この臨時国会は、革新と保守の二大政党の形態、形だけではありますが、形ができて、国民の民主政治に対する期待が大きくなっております今日、私どもの責任はきわめて重いと考えまして、私は、第二次から第三次への鳩山内閣の政権の授受と関連して、鳩山総理の議会政治と民主政治に対する信念をただし、次に、日本の自主独立を達成するための立場から、日ソ、日中の国交回復に関する総理の外交方針をたださんとするものであります。(拍手)
第一の、議会政治と民主政治に関する総理の信念について、私は五つの問題をお尋ねしたい。
第一点は、第二次鳩山内閣の総辞職の理由であります。わが党は、去る八月二十三日に、憲法第五十三条に基き、成規の手続によって、第二次鳩山内閣に臨時国会の早期開会を要求し、その後九月と十月に再び三たび政府に開会を督促しております。わが党の臨時国会開会の目的とするところは、国民の切実に要望しておる地方財政の窮乏とか、災害の復旧とか、当面の緊急な事態に対処するに必要な財政措置を織り込んだ補正予算や、行き詰まった日ソ交渉、中共関係や、日比賠償等の外交問題を妥結して推進するために、国会の審議を緊要と考えたからであります。しかるに、鳩山総理は、ここにようやく臨時国会を召集したにかかわらず、卒然として総辞職と首班の指名を行い、臨時国会の目的たる当面の緊急措置に関する方針、政策は何も示さないで、所信とはいえ、憲法改正とか、行政整理とか、税制の問題とか、国民がパンを求めておるときに、政府は砂をかませるようなお題目を与えておるのであります。(拍手)申すまでもなく、第二次鳩山内閣は、鳩山氏の私的な内閣ではないはずであります。二月の総選挙による国民の総意に基き、比較多数の少数党ながら、政権授受の民主的ルールに従って堂々と成立した第二次鳩山内閣でありますのに、どういう理由で総辞職したのか、国民にも国会にも何ら理由を示しておらない。つまり、第二次鳩山内閣は暗やみの中で消え去ったわけであります。責任内閣の民主政治の今日、内閣がやみからやみへ国民の前から消えてなくなったというようなことは、私は民主政治においてあるまじき奇怪なできごとであると思う。(拍手)鳩山総理の所見をただしたい。
第二点は、総辞職の理由を鳩山総理がいかように理由づけられようとも、前回の第二十二回の特別国会において、第二次鳩山内閣は少数党内閣として国会を乗り切る能力がなかった。しかも、進んで国会を解散する気力もかかった。言いかえると、第二次鳩山内閣は、総選挙に当って国民に公約した政策の実行はできなかったのであります。総理は、本日、憲法の改正その他の、できそうにない三つの政策を御提案になっておる。これも例によって政策の空手形となることは明らかでございましょう。平和憲法を改正して軍国主義を復活せんとするような憲法改悪は、社会党が二大政党の対立物としてここに厳存する今日、断じてできないはずであります。(拍手)国民が期待しているのは、そういう雲かかすみか呉か越かといった、ぼうばくとした遠い将来の政策でなく、第二次鳩山内閣の古い公約を実行し、歳末を控えたきょうあすの緊急な措置に対する具体的な対策を国民は政府に要求しておるのであります。(拍手)従って、第二次鳩山内閣が総辞職した理由は、かように国会の運営と政策の実行の行き詰まりにあったことが、現実に照らして明々白々であるのであります。かかる場合、鳩山総理のとるべき当然の道は、総辞職をして野に下り、新たな総選挙を通じて、国民の審判を待って次の首班をきめるという政権授受の民主的ルールの道を選び、国民にその政治的責任を明らかにすべきであった。総理はこの点に関してどう考えられるか。
第三点は、鳩山総理は、自由民主党ができて与党の基盤の変ったことを総辞職の理由としているようにも推測できる。確かに、総選挙によらないで、国会内における人為的な議員の集合によって与党の基盤に変更があったことは、その通りであります。しかしながら、自由党と民主党は、前回の選挙で、その方針も政策も全く対立した二つの政党として国民の審判を受けてきておる。(拍手)選挙後は引き続き与党と野党という対立の関係にありました。従って、よしんば合同したとしても、私は国会を解散して国民の審判を受けるのが当然であると思う。総理の所信をただしたい。(拍手)
第四点のお尋ねは、政権授受の民主的ルールに関する問題でございます。ききに、第一次鳩山内閣の成立の当時、日本社会党から鳩山民主党総裁に、政権授受の民主的ルールは、国会を解散し、選挙による国民の審判の結果に基いて行うべきであると、かように提案したのに対して、鳩山総裁は、自分もその通りであると思う、社会党の提案はまさしく天の声として実行すると確約されておる。(拍手)こうして、初めて政権授受の民主的ルールができて成立したのが第二次鳩山内閣であったはずであります。鳩山総理は、さきには、こうした政権授受の民主的ルールを天の声として聞き、今回は、こうした天の声を聞こうともしないで、さきに作った民主的ルールを踏みにじったのはどういうわけであるか、承わりたいのであります。(拍手)
第五点は、革新と保守の二大政党の形態の民主政治のあり方に関してであります。総理は、今回の形式的な二大政党の形を見て、あたかも英国型の民主政治ができたかのような印象をしいて国民に与えようとしているようである。しかし、私の信ずるところによれば、革新と保守の二大政党の対立を通じて民主主義の確立と建設的政策の行われる二大政党の本質的な意義は、政権が、保守から革新へ、あるいは革新から保守へ、与党から野党へ、あるいは野党から与党へと、人為的な作為なしに、政権がなめらかに受け渡されること、ここに二大政党の本質的な意義があると思うのであります。(拍手)英国において、野党たる反対党を予備的な政府といい、また陰の内閣というのはこれがためであって、かくてこそ二大政党の民主政治と言うことができるのであります。総理は、政権授受の二大政党の民主的なルールをじゅうりんして、そうして、みずから不明朗な政治的かけ引きによる保守合同を行い、保守派の陣営に政権を永久に独占しようとはかって、政権たらい回しを行った。(拍手)
二大政党の本質に関しまして、以上総理の所見をただし、私は次に外交問題についてお尋ねをいたします。
日ソ交渉の開催に先だって、重光外務大臣は、五月二十六日の議場の演説において、今回の交渉の目的は、日ソ両国の国交の正常化、すなわち、戦争状態を終結し、平和条約を締結し、もって国交を回復して外交使節を交換すること、これが目的であるとして、次いで平和条約の骨子となる諸条件を明らかにし、さらに、北海道所属の島々、千島、南樺太の領土問題その他の愚案についても、極力その解決に努力する所存なる趣旨を述べられております。これを要約すれば、政府の日ソ交渉の目的は、まず国交を正常化して外交使節を交換することが先決だということが明らかにされておるのであります。これは外相の演説がさように解釈できるだけではありません。総理が国民に今日まで与えてきた印象もそらくみ取られ、また、私もそう信ずべき根拠を持っている。総理の方針はこれと今日変りないと了解してよろしいか。
次に、かかる方針によってロンドンで進められた日ソ交渉の経過を見ると、新しく取り上げられた南千島の問題が交渉の障害となっているようであります。この南千島の問題に関連して、さきに政府はアメリカ政府に何らかただされた。その回答が到着いたしました際に、鳩山総理は、南千島の返還はむずかしい、保守合同の実現する前に両党で話し合わなければならないとの、いわゆる鳩山発言なるものを、国民はきわめて重要な総理の発言として今日受け取っております。総理は今日なお当時と同一の意見と了解してよろしいか。私がここでかような総理にだめ押しのようなお尋ねをいたしますのは、今日まで鳩山総理と電光外相の間に外交の方針上重大な意見の相違のあるこどを私はよく知っているからであります。私は、日本の国際的地位を高め、外交交渉を有利に、また円満に解決するために、総理と外相の間の意見の相違を遺憾とし、憂慮いたして参ったものでございます。
さらに日ソ交渉について一点お尋ねいたしたいことは、総理は、今日まで、日ソ交渉を保守合同の犠牲としないということ、並びに早期解決をはかるということを、国民に対してもしばしば表明されてきております。総理の言う早期解決とは、領土は一応歯舞、巴丹の線にとめ、本格的な領土問題とは直接に関連のない平和条約をまず早期に締結したいとの趣旨であると私は了解をいたしております。ところが、南千島の問題について、保守合同の実刑する前に話し合いたいと語り、話し回った上で保守合同をやったことは、明らかに日ソ交渉を保守合同の犠牲とし、さらに早期解決をおくらせた結果ともなり、国民を欺瞞したことになるのではないか。(拍手)総理の良識はこれをどう考えておるか。
外交問題について次にお尋ねいたしたいことは、中国との国交を正常な状態に回復して貿易の伸張その他の諸懸案を解決したいとのさきの総選挙における鳩山総理の公約が今日いかようになっておるかという点であります。(拍手)私は、今日、外務大臣の報告を受け取りました。日本の隣の国の巨大な中国の問題に一言も触れておらない外交方針が何の役に立ちますか。日中両国の領事による会談は今日頓挫しておる。日中の関係は今日めんどうになっておる。総理も、また外相も、日中関係がめんどうになり、頓挫しておることは確認されておるところであります。私は、これは政府の重大な日中外交上の明らかな失態であると思う。こうした失態を、米ソの関係が悪化した、国際情勢が変化したという外的な条件だけで弁護しようということは許されない問題であります。しかも、重光外務大臣は、さきに、アメリカに出立されるに際して、アメリカより帰国後は中国に対して何らかの手を打ちたいということを、ある機会に明らかにされております。しかるに、外相は、アメリカから九月八日に帰国して以後、何ら外交の手を打っておらない。ただ手をこまぬいて、日中間の関係が次第にめんどうになることをながめているだけじゃありませんか。(拍手)これは鳩山総理も同じことである。最近日本を訪れたアメリカの国務次官フーヴァー氏に、総理は、日中間は、アメリカと違って、友好関係が日本のために必要であるとの日本の特殊な立場を説明されたやに私は承知いたしております。しかるに、総理もまた、中国に対して適切な措置をとるべく何ら努力されていないではないか。そういうことで、総理は日中の関係を今後どうしようというのか、明確な、しかも具体的な方針を承わりたいのであります。
最後にお尋ねいたしたいことは、こう見てくると、総理も外相も日ソ、日中の外交その他日本のために必要と考えられる外交を何もやっておらないのでありますが、一体これはどうしたことか。何者かが総理や外相の外交の自由を制約しているのではないか。これは国民のだれでもが今日持ち続けてきた深い疑いであります。いや、今日では、もう疑いではない、外国の何者かが日本のための日本の外交を制約していると国民は信じて疑わない状態が現実となっているのであります。(拍手)私は、日本のための外交——中ソとの国交の正常な回復、東南アジア諸国とのアジアのための真の友好関係を樹立するためには、それを妨げるための日本の外交に対する他のあらゆる制約を排除しつつ、日ソ、日中その他日本を有利にする外交を強力に推進して、国際的日本の地位を高め、平和と安全の道を切り開いていくこと、私は、このことは、同時に日本の自主独立を達成し、完成する道と同じ一筋の道であると思うが、総理の所見はいかがでありましょうか。(拍手)
また、これと関連して起っている、まことに慨嘆にたえない問題は、外国のために土地を取り上げられようとして、同じ日本民族が血で血を洗うような軍事基地拡張の問題のあることでございます。(拍手)政府は、防衛費の総額は前年度のワク内にとどめ、駐留軍の撤退を期するという国民への公約に反して、砂川だけではなく、原水爆基地や、オネスト・ジョンの発射のような重大な問題が今や全国的な問題となっております。総理は政府の首班として権力を持っている。警察力を握っている。従って、祖先伝来の土地を外国のために無慈悲に取り上げられようとしている国民に対して、総理の政府は強権をもって弾圧を加えることができましょう。しかし、強権や弾圧は民主政治ではありません。友愛政治ではありません。そういうことをしてだれが喜ぶと思いますか。総理。(拍手、発言する者あり)私は、総理は、外国を喜ばせるかわりに、土地を無慈悲に取り上げられる国民のために、外国に考え直してもらうこと、私は、これが政治である、これが外交であると思いますが、どうでありますか。自主独立の達成や完成は、言葉では言いやすく、行うことはむずかしいことであるに相違ないが、政府が国民のためにそれをやらないで、だれがやりますか。それを国民にやらせるような外国のための強権と弾圧の政治が引き続き行われる結果は、民主主義に反する重大な事態を引き起すことを私は総理が静かにお考えになることをお勧めして、私の質疑を終ります。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕