須磨彌吉郎の発言 (本会議)
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○須磨彌吉郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、鳩山総理大臣並びに重光外務大臣の御演説について若干のお尋ねをいたそうとするものであります。(拍手)
まず第一に、二大政党制についてであります。二大政党制が確立され、この二大政党が政策を中心として国民の前に互いに相切瑳し、政権の円満な授受をなし得る道が開かれましたことは、国家のためまことに慶賀にたえないところでございます。(拍手)従いまして、この二大政党制の確立されましたことに対しては、世界各国が一種の尊敬の念を持って注視していることは、外電等の伝えるところでも明らかでございます。この時、この際、多数党の行うところを少数党がすなおに受け入れ、また多数決の決定には快く承服するという政治慣習が打ち立てられることによって初めて民主主義の円滑なる運用が実現されるといわなければなりません。このためには、多数党の政府も少数野党に対しましてでき得る限り寛容の精神をもって臨み、少数党の立場を十二分に尊重するの風を起さなければなりません。ここに、私は、このような寛容と理解の精神と、それぞれ責任を分つという覚悟とが二大政党の双方に盛り上ることこそが、暴力によるとか、集団威力によるような忌まわしき現象を国会から追放するゆえんであると信ずるのであります。(拍手)総理大臣におかれましても、この趣旨実現のためすでに確固たる御信念を有せられるものと信じますが、その所懐を承わりたいのでございます。
第二は、憲法の問題でございます。わが国憲法は、占領初期のこんとんたる間に制定されましたため、憲法本来の目的たる民福と国運に資するためには万全を期しがたい点のありますことはもちろんでありますが、日本国及び国民の本来の要求にもそぐわない点が多々ありますことはまた当然でございます。また、この憲法は、国民の自由意思によったものでないから、わが国民の愛国心を抑圧し、また国権を過度に弱化分裂させる結果となっている点も少くない実情でございます。すなわち、自主的に憲法の改正に当られ、わが国を真の独立国家に立ち返らせる旨の総理大臣の御決意はもとより当然でありまして、これに対しては満腔の賛意と敬意を惜しまないものでありますが、他面、時局は、国際情勢の間断ない変化と相待ちまして、刻々に容易ならぬ様相を呈しているのが実情でありますから、この憲法の改正に当られるためには、綿密周到なる御計画を要することはもとよりでございます。ついては、総理におかれましては、いかなる順序と日程をお持ちになるものでございまするか、いかなる方向に改正を実現せられるおつもりでございますか、大体の御見当を承わりたいのでございます。(拍手)
第三には、国民の思想問題についてでございます。静かに祖国の現状を思いまするのに、特にその民心の帰趨を考えますとき、まことに憂慮にたえぬものがございます。思うに、このことは、敗戦と初期占領政策の誤まりにもよりまして、民生が不安をきわめておりまする間に、国民の信頼と希望をつなぎ得る道義的目標が失われましたために、知らぬ間に、年少有為の国民に至るまで、ねらわれる子供たちという表現がちまたにあふれるほどにまで共産主義的方向に進むようになったことに起因することは、否定ができないのでございます。このことは、顧みれば、新憲法と同時に治安関係の法律などが取り除かれまして、実のところ、共産活動を有効に制止することが困難な実情にあるのでございます。自由民主党は、民主主義、自由、人権並びに国会政治の擁護を根本の理念といたしまして、独裁を企図する共産主義勢力はもちろん、階級的社会主義勢力とは徹底的に対決することを使命として生まれたのでございます。闘争と破壊の政治理念を排撃いたしまして、秩序と伝統の中に常に進歩を求めんとすることをもってわが立党の精神とすることは、今さら申し上げるまでもないことでございまするが、もし、従来のごとく、防共というお念仏のみにたよっておりまして、空手傍観をいたしますならば、ついにわが国民を救うべからざる不安の渕に陥れることも必然でございます。私は、ここにこの問題と真剣に取り組むことが政局安定の第一の題目であることを強調いたしまして、この点に関する政府の御決意のほどを概略なりとも承わりたいのでございます。(拍手)また、重光外務大臣におかれましても、国際関係の処理上、何らかこの点に関連いたしまする御意見もありまするならば、あわせて承わりたいのでございます。
第四は、日本の外交政策についてでございます。そもそも、わが自由民主党は、その立党に当りまして、国際連合憲章の精神にのっとりまして、世界の平和と正義の確保並びに人類の進歩発展に最善の努力をささげることを決意いたしたのでございまするが、元来、わが外交の基調は、これを自由民主主義諸国との協力提携に置かれますことは、すでに総理大臣並びに外務大臣の御演説によっても明らかなところでございます。しかるに、さきに申し述べました共産主義的傾向の著しい伝播と相待ちまして、最近実に思わしからざる風潮がわが国内に蔓延しつつあることは、まことに憂慮にたえないところでございます。たとえば、日米安全保障条約並びに日米行政協定等の存在によって、アメリカ軍がわが国に駐留をいたし、また防衛に当りつつあることは周知のところでございます。しかるに、最近、あるいは基地の問題、あるいは飛行場拡張の問題等に関連して、小児病的な行動がようやく普遍的傾向になりつつあることは、まことに独立国家として憂慮にたえないものがあるのでございます。(拍手)民族感情はわれわれの最も崇高なるとりででありまして、これに立てこもりますことは、われわれといえども人後に落ちるものではございません。けれども、さりとて、理不尽な小児病的行動に付和雷同して、いたずらに不安の空気を醸成するがごときは、もちろん好ましからざるものであると思うのであります。思うに、この形勢を馴致いたしましたゆえんのものは、わが国の真の独立が、遺憾ながらいまだ完成をされておらないからでございます。日本の独立完成には駐留米国軍隊が逐次撤退されることでありまするが、このためには、防衛年次計画を樹立実行することが第一必要でございます。要するに、最近のかくのごとき風潮こそは、自由民主諸国との協力態勢を強化するために、一そう平和外交の積極的展開が必要であることをわれわれに悟らしめるものでございます。この意味におきまして、総理並びに外務大臣に対し、わが国内にいたずらなる不安をかももさせないためにも、この際進んで自由民主諸国との協力態勢を一そう強化するの挙に出られることが必要ではないかとお尋ねをいたしたいのでございまするが、これに対する御覚悟を承わりたいものでございます。(拍手)
第五は、日ソ交渉についてでございます。六月一日以来ロンドンにおいて進展中の交渉は、総理大臣並びに外務大臣の熱心なる御推進によりまして、漸次進展を見つつあることは、御同慶にたえないところでございます。従いまして、自由民主党が新たに決定をいたしました緊急対策などに基いて、国交回復の実を見るまでにはなお幾多の上曲折はあろうけれども、隠忍自重、あくまでその所期の目的を達成せられんことは、われわれの切望してやまないところでございます。(拍手)ただ、ここに、これに関連いたしまして御信念を承わりおきたいことが二つございます。一つは、すでに外務大臣もお述べになっておられるところでございまするが、この交渉にまつわる国民世論の趨勢についてでございます。問題が重大なだけに、国論のおもむくところまた重土役すべきものがありまして、この点については、今後とも政府において特に御留意願いたいことがその一つでございます。いま一つは、日ソ交渉に関連して、ひとりソ連邦のみならず、世界全般に対しましてわが日本が訴えたいことがあるのでございます。それは、日本の平和を提唱いたしまするゆえんというものは、単に未締約国であるソ連邦と国交を結ぶというだけではございません。二十世紀になって二度までも世界大戦を体験した世界人類の真剣な願いにも通ずるものでありまして、また、この平和を提唱しますることが、日本に課せられました崇高なる使命であるという趣旨を、交渉に当って世界に宣明していただきたいのでございます。(拍手)特に、私は、人類の平等、領土の不拡大、民族自決の原則こそは、大西洋憲章、国連憲章等を貫く大精神でありまして、この根本原則が貫かれてこそ初めて世界の恒久平和が保障せらるるものでございますることを徹底せしめまするならば、自然と、ソ連邦に対しましても、領土問題等についてわが方の主張を認めるようにしむけることは決して至難ではないと思うのであります。(拍手)
第六に私の申し上げたいのは、原子力科学のもたらしました産業革命についてでございます。今や、科学技術の発達は、原子力の応用によりまして、いわゆる第二次産業革命という新時代を画しまして、これにのっとらなければ経済自立の達成も万全を期し得ない実情にあることは御承知の通りでございます。この点にかんがみまして、原子力の平和利用を中軸といたしまする産業構造の変革に備え、科学技術の振興に格別の措置を講ずることは、わが自由民主党の政綱の明示するところでございます。政府はすでにアメリカとの間に濃縮ウラン借り入れに関する協定の調印を下せられた趣きでございまするが、さらに一歩を進めて、その批准を急がれるのみならず、これを機会といたしまして、原子力平和利用に基くわが国の外交を強力に推進せられるもくろみはないでございましょうか。ことに、原子力平和利用の責任の地位にありまする重光外務大臣はもとより、高碕経済企画庁長官からも、この点に関する御所見を承わりたいのでございます。
第七には、国連加入の問題についてでございます。先ほど外務大臣の御報告の中にはございませんでしたが、わが国の外交が平和外交を積極的に展開することにあることは、今さら申し上げるまでもないことでございます。その中心的原則は国際連合憲章にのっとらんとするものでございまして、さきにバンドンの会議にわが国が臨むに当りましても、わが政府がすべて国連憲章の精神によることを示されたことは、つとに世界の注目するところであったのでございます。すなわち、このことは、わが国がサンフランシスコ平和条約発効直後、国会全会一致の承認を得まして国際連合に加入の申請をしているのでございます。自来、政府におかれましては、この加入実現のために、あるいはニューヨークにおいて、あるいはジュネーヴにおいて、百方意を用いられましたことは大いに多とするところでございまするが、最近伝うるところによりますると、その実現のまぎわになって何らかの障害に逢会しているやに承知するのでございます。その真相についてお示しを願いたいのでございます。
最後に、極東におきまするわが国の地位についてでございます。七月十九日、世界周遊の旅から帰りましたインドのネール首相が、ニューデリーで記者団に対しまして、極東の情勢は爆発的な危機にあると言ったことは、まことに注目すべきものがございます。というのは、台湾をめぐる情勢におきましても、朝鮮における事態につきましても、またヴェトナムにおける実情によりましても、極東の物情が決して安定をしているものとは言われません。世界は、七月十八日の巨頭会談以来、平和の方向に一歩を踏み出しかけたことは事実でございましょうけれども、ただいま述べました極東における三地点はもとより、中東、近東における最近の形勢、さらにはまた東西両ドイツの実情等に見ましても、いずれも今もなお冷厳なる事実として残っておりまする東西両陣営の相剋点といたしまして、われわれはこれに無関心であることはできないのでございます。(拍手)しかも、これらの相剋点は、いわば氷山の一角とも言うことができましょう。アメリカといたしましても、資本主義の存続と発展を企図して、ゆるぎない歩みを続けるでありましょうし、他方また共産主義国家群は、共産主義世界的伝播の歩みをゆるめようともしないことは事実でございましょう。それどころか、米ソ両国のアジア政策の相剋点が今のままで進みまするならば、われわれは、日本の平和外交政策を、それこそこの際積極的に推進するために、いま一段の確固たる決意を固めなければならぬことに気づくものでございます。ここに、私は、わが日本が東南アジアとの通商、東南アジアとの交通等をさらに一段と進展せしめまするためにも、一日もすみやかに極東における平和的進出について組織的な計画をなすべきだと思うのでございます。このことは、過般のジュネーヴ会議より、一そうあれよりも大規模でございました十億以上の人口を背景とする二十九カ国のアジア、アラブのバンドン会議が、あの御承知のごとき国連の原則にのっとった平和十原則を採用している新事実にも呼応いたしまして、アジアの平和のためにわが国の努力ナベき具体策を決定する時期がまさに今来ておることを思わしめるものでございます。結局、これを換言いたしまするならば、東亜の安定勢力たるの実をあぐるため、日本はこの際いかなる具体的な平和政策の樹立が至当であるかということにつきまして、政府においては意を尽しておられると思いまするから、概略なりともその具体的方策を承わりたいのでございます。
以上の諸点の多くは、敗戦、それに焼いた占領政策、内外にはびこりつつありました共産党の行なっている革命的工作などのかもしている容易ならない事態に関連するものでございまするから、もちろん解決は至難ではあろうけれども、新しい二大政党の体制のもと、人心の機微をつかんで政治の信頼を博するには、このときほどいいときはないと思うのでございます。(拍手)われわれは、二大政党ともに相目ざめ、相携えて、わが国の発展のために尽すべきときが来たと思うのでございまするから、総理大臣並びに諸大臣の隔意なき御答弁を以上の諸点に対して伺いたいことを申し上げまして、私の質問を終らんとするものでございます。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕