河野密の発言 (本会議)
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○河野密君 私は、日本社会党を代表して、内治、外交の重要課題に関し、鳩山首相並びに関係閣僚に対して質問せんとするものであります。
先日、鳩山首相より、第三次鳩山内閣の政治方針の表明があり、また重光外相より外交経過の報告がありました。率直に申しまして、いずれも砂をかむごとく単調なもので、義理にも国民の期待に沿うものとは言われなかったのであります。(拍手)ことに、今臨時国会開催の中心課題である地方財政に関しましては、不思議なことに、一言半句の説明がなかったのであります。これには与党の諸君の間にも相当御不満がおありのようで、ついに一昨日の本会議はお流れになるという不始末でございました。(拍手)かくのごとき情勢では、二大政党の対立も前途多難でありまして、なかなか鳩山首相の楽観論のごとくには参らぬのではないかと憂慮いたされますが、(拍手)その責任はあげて政府の無準備、無計画にあることを十分銘記せられたいと存じます。(拍手)
本論に入るに先だちまして、私はまず、現下の焦眉の日韓問題に関しまして、われわれの不満を申し上げたいと存じます。
重光外相の報告にもあったごとく、最も緊密なるべきはずの日韓両国が、依然として正式の国交をすら樹立し得ない状態にあることは、はなはだ悲しむべきことでありまするが、政府はこれに対してどれだけの努力を払ったのでありましょうか。しかも、最近韓国軍当局の砲撃声明がありましてからも、関係者の切なる要望にもかかわらず、外務当局はいたずらにろうばいするのみで、具体的には何らの的確なる手段もとっていないのであります。
そもそも、李承晩ラインの問題は、今日に始まったことではなく、すでに数年来の懸案であり、漁民の犠牲者だけでも二十五名を出しておるほどであります。しかるに、外務当局は、今日まで袖手傍観して自然の成り行きにまかせ、事態かくのごとく悪化するに至るも、なおなすところを知らざるもののごとくであります。船団は近く大挙出漁すると聞いております。韓国側は、重ねて、拿捕並びに撃沈を声明して参りました。放置すればおそるべき惨劇が起ることは必要であります。全日本海員組合は韓国公使館前にすわり込みを決行すると申しております。事態はいよいよ緊迫の度を加えつつありまするが、政府はこれに対していかなる対策をとらんとしているのでありまするか。われわれといたしましては、あくまで正義を正義として主張する半面、事態を平和裏に解決するため最善の努力を払うべきものと考えます。すなわち、国際的な世論に訴えるとともに、即時外交交渉に移すか、必要なる国際条約上り処置をとるか、あるいは業者の出漁を一時停止せしめて国家補償の道を講ずるか、何らかの緊急措置を講ずべきものと信じまするが、政府の所見はいかがでありますか。(拍手)私は、かくのごとき問題の解決のためにこそ、重光外相みずから韓国に乗り込むくらいの勇気を出すべきものであると存じます。(拍手)外相の行く先がアメリカのみに限定されることはないはずでありまして、私は重光外務大臣の所信を承わりたいのであります。(拍手)
本論に入りまして、第一に私が質問いたしたいことは、外交方針、特に対米方針についてであります。本年二月の総選挙において、いわゆる鳩山ブームを現出いたしました最も大きな理由は、占領政治を改める、対米追従外交を独立外交に切りかえるという声明にありました。その具体的の施策として、政府は、防衛分担金を削減し、これを社会保障費に充当する旨を言明したのであります。しかるに、その後の防衛分担金の折衝はどうなったのでありましょうか。防衛予算全体に何らの削減が加えられないのみか、予算外国庫負担契約によって一そう加重され、あまつさえ、重光外相の渡米みやげたる日米共同声明によって海外派兵の義務まで負わされていることは、周知のごとくであります。(拍手)鳩山首相の公約たる、独立にふさわしい政治の実態とは、かくのごときものでありましょうか。向米一辺倒外交から脱却するという政府の方針は、一体どうなったのでありましょうか。また、政府は、自衛のための軍隊に名をかりて、しきりに自衛隊の増強を実行しつつありますが、政府がアメリカと防衛折衝に当って基礎とした計画は、いわゆる防衛六カ年計画の第十二次案と称せられるものであり、昭和三十五年度を期して、地上軍十八万人、海上軍十二万トン、航空機千二百八十四機に増強し、別に爆撃機を保有するというのであります。これを土台とした日米協定によって、ジェット戦闘機の発着のために飛行場の拡張が義務づけられ、現に各地に基地問題を惹起しておることは御存じの通りであります。
そこで、私は鳩山首相並びに関係閣僚に問わんとするのでありまするが、一つ、政府がアメリカに提示して交渉の基礎とした防衛六カ年計画案なるものを公表するの意思があるかどうか、もし公表できないとすればその理由。二つ、飛行場拡張の義務は鳩山内閣による対米交渉の重大なる失敗と考えないか、その義務のために現在各地に起りつつある基地問題に対していかなる解決案をもって臨まんとするのであるか。三つ、防衛費千三百二十七億円というワクは昭和三十年度限りという厳重なる制約をアメリカからつけられているはずでありますが、その通りであるか、もしそうだとすれば、今後の防衛予算並びに防衛分担金削減の折衝はいかなる方式によって行うのであるか。以上、明確に御答弁を願いたいのであります。(拍手)
思うに、鳩山内閣の防衛問題に関する対米折衝を見ておりますると、吉田内閣と同様、きわめて卑屈であります。ロバートソン国務次官補以下米国首脳は、常に日本の防衛努力の足らないことを非難し、日本の防衛支出は国民所得の二・五%、全国家予算の一三%にすぎないと申しておるとのことでありますが、これはきわめて浅薄なる考えであります。わが陸上自衛隊は近く十五万人になるのでありまするが、この数字は満州事変が勃発する直前の陸軍の兵力と相匹敵するのであります。予算のごときも、当時の陸軍経費は一億八千人百万円、総予算の一三%にすぎませんでした。これを当時の国民所得百六億三千五百万円に比しまするならば一・八%、軍事予算全体を引きくるめても三・七%にすぎなかったのであります。これによって見ますると、現在のわが国は満州事変以前の平和時代の軍事負担とほぼ同程度の防衛負担をいたしておるのであります。国力が低下し、人口のみ過剰なわが国にとって、二・五%の防衛負担は数字以上の過重なる負担であって、断じてアメリカの非難に値するものではないのであります。(拍手)鳩山首相以下、この点について十分なる認識を持ち、アメリカに対して堂々と説明の労をとっているのでありましょうか、総理大臣に伺いたいのであります。
また、一口に軍事基地と申しておりまするが、米軍接収のものは四億一千五十六万坪、十三万六千八百余町歩に及んでおります。これに海面水域の制限を加えますると全土の四・五%に及び、人口過剰、領土狭小のわが国にとっては大いなる痛手と言わなければなりません。しかも、米駐留軍の数は年々減少し、現在は二個師団を余すのみであり、そのうち五千名は年内にも撤退するといわれているにかかわらず、ひとり軍事基地のみ年々拡大し、本年四月一日現在においては、平和条約発効の当時に比して約三割拡大しておるのであります。何ゆえ、米駐留軍の撤退にもかかわらず、ひとり軍事基地のみ拡大されているのでありましょうか。鳩山首相以下、唯々諾々としてアメリカの要請に追従する前に、何ゆえ、日本の実情を訴え、アメリカをして理解せしむるの労をとらないのでありましょうか。(拍手)われわれは、基地問題に対して、単に起り来る事態に対処するばかりでなく、進んで基地白書のごときものを作り、積極的に対米折衝を開始するの必要を痛感いたすものでありまするが、政府は果していかなる施策を有するか、伺いたいのであります。(拍手)
第二に質問いたしたいのは、憲法改正の問題についてであります。第三次鳩山内閣の使命として第一にあげてあるのが悪法改正であります。鳩山内閣のすべての施策は行き詰まりを来たしましたが、ただこれ一つとしてしがみついているのが憲法改正であります。その妄執たるや、まことにおそるべきものがあるのでありまするが、(拍手)私も、鳩山内閣及び鳩山首相に敬意を表して、きわめて簡潔にこの問題に触れておきたいと思います。
一つは、鳩山首相の憲法改正の理由いかんということでありまづ。鳩山首相は、かつて自由党の憲法調査会の発会式に当って、憲法改正の理由として三つのことをあげ、憲法第九条はマッカーサーの命令で挿入されたものであり、アメリカも今は後悔しているとか、アメリカの意図を迎えるためにも憲法改正が必要だとか、相当ひどいことをおっしゃっておられるのであります。首相の改正の趣旨はかくのごときものと考えてよろしいでありましょうか。独立の体制にふさわしい憲法と称しながら、アメリカの意図を迎えるためにも憲法を改正した方がいいのだというのは、あまりにもはなはだしい矛盾であると考えまするが、首相の見解はいかがでありますか。二つは、現在まっこうから憲法改正を主張しておる人々が、かつては吉田内閣の閣僚として現行憲法の公布に副署しておるということであります。おそらく、この憲法に副署した人々は、この憲法に賛成をし、新日本建設のいしずえをなすという詔勅に同意をして、その大典として副署をしたものでありましょう。しかも、その中には現鳩山内閣の閣僚も含まれているのであります。かくのごとき事情を、鳩山首相はいかにお考えになるのでありましょうか。かつてこの憲法の公布に副署した者は、政治的責任としても憲法改正を言うべきではない、憲法改正を政綱とする鳩山内閣の閣僚たることを遠慮すべきものであると思うが、どうでありましょうか。(拍手)政治的責任について、首相り見解を伺いたいのであります。
第三に、財政の根本方針について質問いたしたいと存じます。鳩山内閣の財政政策は、自由党内閣末期の緊縮政策を継承して、きわめて平凡なる均衡予算の編成から出発いたしました。しかるに、前国会の半ばにおいて、いわゆる自由党吉田派の伏兵にあい、昭和三十年度の予算は、いわゆる加えて二で割る式の、緊縮政策ともつかず、さりとて拡大均衡政策でもなく、ずたずたに切り刻まれた予算となったのであります。幸いにして、海外好況による輸出の予想以上の伸張、国内農作物の未曽有の豊作、近年の例を破った過小なる災害等々という事情に助けられて、大きな破綻なしに今日に至ることを得たのであります。まことに天佑と申さなければならないでありましょう。(拍手)従って、今日の財政経済上の小康状態を鳩山内閣の政策に帰するのは失当であり、昭和三十一年度の予算を編成するに当っては、根本的な施策の再検討をしなければならないのであります。
今鳩山内閣の一萬田財政を脅威するものは、第一に、地方財政の破綻を告げる警鐘であります。過去の累積した赤字六百五十億といわれ、本年度の経費不足は二百五十億から三百億といわれまするが、地方財政窮乏の根本的対策は重大なる問題であります。地方制度調査会の中間報告によれば、地方財政の赤字は二百八十三億と推定され、自治庁すら二百三十八億を要求しておるにかかわらず、政府が今回百八十八億と決定したといわれますその根拠は一体どこにあるか、これを明らかにされたいのであります。(拍手)政府は、地方財政救済のために本臨時国会を開きながら、補正予算も組まず、財源も明らかにされず、何をもって地方財政の窮乏を打開しようとせられるのでありますか。与党の諸君すら納得できない施策を、野党たるわれわれにのめるはずはないのでありまして、(拍手)いわんや、地方団体の同調すべき理由はないのであります。
いま一つの脅威は失業問題であります。貿易の伸張にもかかわらず、失業者の数は増大するばかりであり、ことに学校卒業者の就職難は言語に絶するものがあります。今にして雇用量の増大をはかり、失業救済の道を講ずるのでなければ、前途まことに寒心にたえざるものがあるのであります。
第三の脅威は、産業における不均衡の拡大であります。いわゆる日の当る産業と日の当らない産業との懸隔はきわめて顕著であり、しかも、その一線が資本の大小に比例することがようやく明確になってきたのであります。戦前のごとき財閥の復活が目立って現われてきたのが一つの特徴であり、大資本の制覇の陰に下請業者、中小企業者の犠牲が強要されつつある現状であります。
第四の脅威は防衛費の増大であります。日米共同声明にも現われておる通り、防衛力の増強はわが国の義務であり、これが決定を見ざる間は予算の編成をすらなし得ない状況にあるのであります。
かかる事態を眼前にして、鳩山内閣はいかなる方針をもって昭和三十一年度の予算を編成せんとするのでありますか、その方針を承わりたいのであります。(拍手)
一、予算のワクは何を基準として、いかなる限度に定めようとするのであるか。二、地方財政に対して、その資金需要を幾らと算定し、これが財源を何に求めようとするのであるか。公共事業費の削減は本年度限りのごまかしであると先ほど御答弁がございましたが、本年度はいかなる方針をもっていくのであるか。大蔵大臣の言う抜本的なる対策というのはいかなるものであるか。(拍手)三、公債を発行するのかしなのか。四、各企業間の不均衡をいかにして是正せんとするのであるか。五、雇用量の増大を何によって確保せんとするのであるか。
以上、明確に答えられたいのであります。
昭和三十一年度の予算編成の重大な難点は、雇用量の増大をはかりながらインフレを阻止し、予算規模の膨張を抑制しながら財政需要にこたえ、公債発行にたよらずして歳入を確保しようという点にあると存ずるのであります。一萬田蔵相は、いかなる施策をもって、このむずかしい現下の要請にこたえようとされるのでありましょうか。明確に回答せられんことを望むものであります。(拍手)
第四に、しこうして最後に、私は綱紀粛正の問題について鳩山首相の信念をたださんとするものであります。
その第一は、保全経済会の問題についてであります。保全経済会の問題は、すでに一カ年を経過し、世人の耳目より忘れ去られたるかのごとくであるが、決してさようではありません。これが行政監察委員会において問題とされた当時、鳩山首相の名前も決してそのリストからは漏れていなかったのであります。(拍手)当時の行政監察委員会の速記録にも鳩山首相の名前は明らかに載っておるが、最近、保全経済会の中心人物伊藤斗福は声明書を出して、政界知名の士が保全経済会に関係したと暴露し、三木武吉、鳩山一郎両氏に対して三千五百万円の金を手交していると述べておるのであります。これに対して、鳩山首相はいかに考えられるのであるか。もし事実無根なりとせば、その無根なるゆえんを明らかにすべきであり、もし何らかの関係ありとせば、いかなる性質のものであるかを国民の前に明らかにすべきであると思うのであります。(拍手)
第二は、直接内閣の中枢に関する問題についてであります。鳩山首相は、本年八月、第二十二国会の終了を待って杉原防衛庁長官がその職を辞し、斎藤国警長官が相次いでその職を去ったのは何ゆえであるとお考えになりますか。表面の理由は、国会内における法案不通過の責任を負って杉原氏は退陣し、斎藤氏は参議院に立候補するために辞職したといわれておりますが、鳩山首相も真実その通りとお考えになっておられますか。
本年七月、内閣調査官兼通商産業事務官伊藤六豊なる者は、自分の全く関知しない間に依願退職となったが、それは偽造の辞職願によるものであり、この辞表を偽造した者こそが内閣調査室防衛班主任肝付兼一なる者であり、この間には田中官房副長官も介在し、その辞表問題をめぐって告訴と告発の応酬となり、まことに奇怪なる事態を招来せる事実を知っておられるのでありましょうか。
内閣調査室は緒方竹虎氏によって立案されたものであるが、その最初の予算は六百余万円でありました。しかるに、その後いつの間にか拡大され、海外第一班、海外第二班、経済班、治安班、防衛班、文化班、労働班に分れ、膨大なる人員と組織を擁し、予算も九千万円に増大されたのであります。一体、内閣調査室とは何を目的とし何をなす官庁でありましょうか。
私は、この問題の起りました当時、背後に伏在する重大な事情——日ソ交渉が何ゆえ鳩山首相の手によって始められたかなど、日ソ交渉につながる問題、日米関係にもつながる重大な問題を知り、果してこれを国会の問題とすべきや、国会の問題としたる場合に、わが国の政治にとってプラスなりやマイナスなりや、その判定に苦しんだのであります。しかし、私は、鳩山内閣の運命にも関するこの事実を承知しながら、あえて国家のために私一人の胸中に蔵して、その片鱗だも漏らさじと決意したことを、おそらく鳩山首相は了とせられるに違いないと存ずるのであります。しかるに、その後自民両党の合同がなり、政局は一応安定を見るに至りましたので、内閣調査室のごとき不明朗なる存在が政界を毒する禍根を一掃するため、あえてここにこの事態の片鱗を述べて、鳩山首相の信念を聞かんとずるものであります。(拍手)
一つ、鳩山首相は、緒方氏によって企画され、幾多の問題を生むと思われる内閣調査室に対して、いかにこれを処理せられんとするのでありますか。二つ、内閣調査室の活動が政治的色彩を帯び、国際的に、また国内的に秘密警察的の性格を持ったとするならば、これに対していかにお考えになりましょうか。三つ、いやしくも内閣活動の費用は国家予算によって決定され、その予算以外に内閣活動の費用はないはずであります。もし予算以外に何らかの金が使用され、どこかの国と関係を持つということがあった場合に、政府はこれに対していかなる措置をとられんとせられるのでありますか。(拍手)四つ、日本の首相の権限は広大であり、首相を動かすことは日本を動かすことであると考えられるのでありますが、鳩山首相の身辺には常に不明朗なる人物が去来いたしておるのであります。首相はこの点についていかにお考えになるか、伺いたいのであります。
私の申し述べますことは……。