稲葉秀三の発言 (国土総合開発特別委員会)
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○稲葉説明員 私は委員長から経済評論家として召喚をされましたので、経済評論家的な立場に立ちまして、今のお二人の御意見とは多少違った角度から、この問題を申し上げてみたいと思います。私は、この公庫法案には、いろいろ国民経済的な立場から論議しなければならない問題点があるだろうと思います。しかし時間の関係もございますので、簡単に申し上げたいと思います。
第一点は、北海道開発というのは、政府の力、与党の力、野党の力、民間の力、こういった熱意もございまして、相当日本としては、今までも進んできた、それを、より進めるために、民間投資を誘発するための公庫法案がここに出たのだと思います。ところで、私は今までの経過を見ますと、機構の問題についてはいろいろ論議が行われた、また道庁や開発庁ではいろいろ計画も行われた。しかし幾構の問題についても再検討しなければならない問題があり、また現に今まで行われました諸計画も、ほんとうにこれが能率的であったかどうか。また現に達成率三〇%とか四〇%の計画が、計画自体欠陥がなかったかどうか。こういうことも問題だろうと思います。
そこで私は、今後もっとこういうふうなことをてこ入れにして、民間産業をも含めた北海道総合開発を考えまする場合には、具体的にほんとうに国がどういうふうに北海道に重点を指向するか、こういうような基本的な考え方がなければ、結局こういうものができたって、あとはうまくいかぬのじゃないか。ただ便宜的に、あるいは政治的に若干のプラスを与えるということになり、ほんとうに日本の国のために、あるいは北海道のために開発をするということには、どうも結果としてうまくいきにくいのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。私の個人の意見を申しますると、どうもいろいろ問題はもてはやされながら、北海道開発に対する重点について、非常に国民の間には、分裂があると思います。どうも評論家的な立場で申しますと、政治的な要素が非常に強いのと、北海道が非常に面積的に大きいので、どんどん産業も振興するだろう、また人口も吸収できるだろう、こういうような要素が非常に強い。現に私も数回行ったのでありますが、一回や二回北海道に参りますると、なるほどここは宝庫であるといったような感じがいたします。多くの政治家が来られて、そうおっしゃいます。しかし中には、東京に帰ると忘れてしまうという方も多いと思います。その点では、私は廣川さんが昨年来、からだを張ってこういうものをお出しになった少くとも意図そのものにつきましては、尊敬を申し上げたいと思います。しかし意図だけではいけないので、少くとも現われた形から見て、公庫法というものを取り出すということになれば、いろいろここで考慮していただきたい問題点があるということを申し上げておきたい。
次に問題は、この公庫のあり方ということだと思います。私は先ほど申したように、北海道に特殊的な開発の余地があると思います。しかし、どうも一般の人がこの北海道を特に開発しなければならないというようなことと、私が今までずっと日本の長期計画や国土開発の問題を取り上げてきました角度とは、だいぶ違います。私の方が正しいかどうかわかりません。しかし私はこう思うのであります。北海道は未開発の地域だといわれております。また資源が非常に少くないといわれております。しかし、ずっと国土開発的にいろいろな日本の地域を検討して参りますると、何も日本の宝庫は北海道だけではないのであります。また未開発地域は北海道だけではないのであります。従って、たとえば産業構造について申し上げましても、大体北海道の現在の産業構造は、日本の平均産業構造よりもやや高度化されております。そして未開発でどんどん開発しなければならないというが、案外公共事業も組織的に増大しております。民間投資も行われております。しかし最近の状態においては、北海道の経済の形態というものは、平均よりも落ちている。要は、国土の大きいということだけでは解決できない。また工業誘致をここでてこ入れする場合において、北海道の工業立地のマイナス条件ということについても、十分これを考えてもらいたい。そうして、むしろ北海道民の必要とするところの消費産業で、特別に北海道に成り立つというやうやっと、北海道の特産物、こういうものは、内地で加工するよりもより有利になる、こういうことに全体のお金を向けていく。そういうことについて責任のある態勢がとられる。このようなことが、少いお金でやるのかもしれないけれども、生きていく問題である。その点が私は過去において、また今後におきましても、十分解決されないような感じがいたします。私の率直な意見を申しますと、私は日本で一番未開発で、一番経済効果のあるところからいろいろの産業、事業を興すということが必要であると思う。そういうようなことをどんどん進めて参れば、結果において、北海道というところへよりプラスの結果が行くだろうと思います。従いまして、私はこの公庫をマイナスだとは思いません。プラスだと思います。しかし将来国土開発委員会は、単に北海道だけではなくして、全体の国土開発公庫となり、そうして北海道のことも考慮しながら、内地のいろいろ必要な事業に対しても、民間投資と、それから公共事業の対象になるような間を縫っていくんだ、それの第一歩をするんだという、こういう角度でやってもらいたい。来年度の八十億の金はそういうところに使っていただきたい。同時に、現在国では開発銀行のルートを通じてお金も出ております。中小企業金融公庫からお金も出ております。そういうものをだんだん北海道について工夫する。そうして将来進んでは、公共事業の北海道導入も考えて、そうしていろいろ工夫していく。ただそれを北海道のためだけに使わないで、全体のために使っていただく、こういう方式にまで将来発展せしめる、こういうことを考慮して作っていただきたい。
第三に申し上げたい点は、黒沢先生、永田先生からいろいろお話がございましたけれども、私は北海道において産業を興す、特に中小企業や加工産業を興すということにつきましては、ある程度当初の発足期間においてはマイナスの条件があるたろうと思います。その点をやはり十分考慮に入れてお考え願いたいと思います。しかし北海道の場合においては、マイナスだからといって、常に安い金利を与えるとか、あるいは常に税金その他において保護政策をやるということは、結局長い目で見て、私は北海道の産業を育成するということにならないと思う。こういうようなお金は、先に永田さんがおっしやいましたように、民間の広範な産業の資金が北海道に流れるんだ、こういうようなことを誘発する意味の公庫であり、計画でなければならない。そういたしますると、ある一定段階において、金利の安いものを与えるということは必要であるかもしれませんけれども、次の段階においては、日本のどこと競争してもやっていけるんだという産業を北海道に興すんだ。それを、ここで北海道だけは特別扱いにするんだというような気持でやれば、保護がなくなれば、つぶれてしまう。北海道の産業人の努力だってだめになる。人口の吸収だって、自然な形でできないということになると思うのであります。私は北海道の開発を主張します。しかし、あまりに保護的な意味の開発というものは、私は必ずしも主張しない。なるほど十億というお金は少いお金かもしれません。しかし七十億という民間のいろいろないわゆる貯蓄というもの、国民のどこかの貯蓄というものが、北海道にことし四月以降一年間で流れていく。来年はまた流れていく。来年ならば、そういうお金は、内地のどこかよそ百で、やはり設備資金やいろいろな資金として使われていくというお金であります。決してただのお金ではない。そういたしますると、やはりこのお金を、できるだけ将来は、ほかの産業と競争してもおれの方はやっていけるんだ。こういう意味で、私は責任を持ち、自信を持って使っていただきたい。
いろいろはかに申し上げたい点もございますけれども、ただ公庫法案そのものだけが問題じゃなくて、そういう背景においてこの問題が取り上げられることが重要ではないか、こう思います。