石田退三の発言 (商工委員会)

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○石田参考人 日本紡織機協会の会長をいたしております石田でございます。ただいままで参考人の方々がそれぞれ本法案に賛成の趣旨をだいぶお話をいただきまして、私はそれに反対をするような趣旨でお話申し上げることは恐縮でありますが、一応私どもの業界にとりましては非常に重大な法案でありますだけ、委員の方々にお聞き取りをいただきたいと思うのであります。繊維産業の中でも特に綿紡績に関しましては、いろいろな問題がありますが、綿紡績始まって以来、昔は紡連でそれぞれの相談をなし、また現在では主要原材料の綿花の輸入は政府で完全なる統制をおやりになっておると伺っておるのであります。にもかかわらず、かような制限法案を提出しなければならぬという理由が私どもには何としてものみ込めないのであります。
 またその次に申し上げたいことは、スフにいたしましても、原材料を作る方は野放しにしておきながら、この設備制限の法案をお出しになることが私には納得がいきかねるのであります。しかしながらこの法案を、どうしても業界安定のために、しいて御通過をなさるようなお気持ならば、私どもはもう一つ、私どもの業界に対してはいかなる救済案があるかをお尋ねいたしたいと思うのであります。
 由来、日本の機械産業にどれだけの保護政策がとられておるかを委員の方方に十分頭の中で思い出していただきたいと思うのであります。特に紡織機の事業につきまして今までどれだけの手を打って私どもの事業の促進、と申しますよりも、紡機の研究等についてどれだけの政府の資金を出して私どもに御援助いただいたかを一つ御考慮いただきたいと思うのであります。ようやく二十九条発令の問題がありましてから、昨年初めて千二百五十万円の調査団の費用が、われわれに与えられた補助金の第一歩であります。しかもその研究の過程において、最近においてちらりほらりと補助金の交付がある程度で、私どもが紡機、織機は欧米の品物に追随するべくいかなる涙ぐましい研究をしておるかを御考慮いただきたいと思うのであります。かような状態で、二十九条発令によって私どもが大きな打撃を受けたことは皆さん御存じの通りであります。われわれは国内の産業の行き方については自分の商売であるだけ真剣に考えております。従って二十九条発令以後における織機の生産はぴったり注文がとまったために、われわれは伸ばすためには輸出をやるよりいたし方がないと存じて、輸出に精進をして参ったのであります。しかしこの輸出に精進いたします上において、いかに二十九条で阻害されたかを十分思い出していただきたいと思うのであります。われわれは国内の注文は皆無になったという意味におきまして、あらゆる海外からわれわれの織機に対しまして買いたたきを実行して参ったのであります。ようやく昨今三年目か四年目になって今の設備改善について地方庁並びに政府等が非常にお力こぶを入れていただいて、ようやく軌道に乗ったといい、またそれがためにようやく輸出の受注につきましても適正な値段を取り戻しつつある現状であります。この上紡機も国内の需給が全くとまるという線からいたしまして、ようやく開拓いたしましたわれわれの紡機の輸出仕向け地に対する引き合いの方法といたしましては、いよいよまた織機と同様に買いたたかれのうき目にあるのであります。こうした現状におきまして、私は本法案がなくても、現に実際その繊維産業が萎靡沈滞するならば、どなたが新しく新設をなさるか、もう一ぺん考え直していただきたいと思うのであります。そこには絶対に新規注文はないので、私どもは、長い間この注文がないために、どうして他の産業に変ろうかと考えて、日夜苦心したことも相当の期間にわたっておるのであります。この間にどうやら余喘を保ちながら、今日の状況を輸出によってある程度カバーしつつある現状であります。特に昨年、一昨年は、紡織機の輸出が船舶、車両に次いでようやく第三位の輸出額を占めるようになりましたことは、この間の事情を物語っておると存ずるのであります。こうした意味におきましても、今後国内の需給上、また設備上、過剰であることも私どもは十分納得をいたしておるのであります。従って、これ以上いたずらなる刺激を与えていただいて、私どもの輸出をとめるような法案に対しては、私どもは絶対に反対をいたしたいと思うのであります。
 また、われわれが辛うじて飯を食わしていただくのは、この輸出産業以外にはもう望みがないのであります。特に先ほど来近代化について皆さんからお話がありました。私どもは非常にありがたいと存じて伺っておるのでありますが、この近代化にいたしましても、先ほど来申しておられますように、絹、人絹にいたしましても、何十万台に何千台というような少量なものでは、私ども多数の業者を控えておりますものは、これではとうてい営業はやり通せないのであります。ここで一番心配をいたしますことは、今日まで研究と創造に十分気持を使ってやって参りました仕事をここで一擲しなければならぬということは、私どもはいかにしても残念でたまらないのであります。この法案に近代的なる条文がきわめて薄いということを十分御認識いただきたいと思うのであります。もし法案をたって通すというお気持ならば、でき得るならこの中に、近代化に対する設備資金その他のあっせん等を政府の強力な力をもって御推進していただくということをつけ加えていただかぬ限りは、決してこの法案は満足に運営ができ得ないのであろうと私は存ずるのであります。
 かように、一方的な一つの仕事に通産省では十分なる保護政策をおとりになるが、他の産業は顧みて知らないというような態度をとられますことは、私どもにとりましてはまことに遺憾千万と存ずるのであります。
 またわれわれの輸出にいたしましても、それぞれの担当の方々、お役所に向っていろいろなことをやりまして、今日までは非常に優遇されたる輸出の方式でやらしていただいておることに感謝を申し上げておりますが、この法案が通過いたしますれば、なお一そうこの輸出に対して何らかの手を打っていただくことを御考慮いただかなければ、お前たちはもう日本にはなくていいんだ、消えてなくなれというようなごあいさつのように私どもは受け取れるのであります。
 またわれわれの事業にいたしましても、多数の協力工場を控え、しかもその傘下には相当の労働者も控えておるが、今日まで二度ならず、三度ならず、人員整理とか、あるいはまたおかゆをすするような現状に追い込まれたこともたび重なっておるのであります。こうした問題が、われわれにとっては、自分の会社を維持する上により以上の頭痛の種となっておるのであります。またこの紡織機の事業は戦前——私は昭和十六年から紡績から転職いたしまして、この事業に関係をいたしたのでありますが、この事業になりますと、とたんに戦争に突入して、このときは軍需産業に転向ができる望みがあったのでありますが、今日こうした振って振り回されるような法案になりますと、私どもは今後の転業については思い半ばに過ぎるものがあるのであります。親会社はむろん申すに及ばず、協力工場ともどもに倒れて討ち死にをいたす以外の何ものもないというふうに私どもは考えているのであります。従って今後心配をいたしますことは、年々歳々新鋭な機械が現われている欧米に比べて、私どももそれに追いつくべく研究は先ほど申したように精進をいたして参りましたが、これで打ち切られるというような問題が起るとするならば、今後の繊維産業に対する新鋭な機械は全部海外に依存せざるを得ないような状況が実現するのではないかということを私どもは案じているのであります。
 また、値段の統制、あるいは数量統制による価格の統制等を盛んにいわれておりまするが、八百二十五万錘になったと非常に心配なさっている今日の紡織界のあの価格はどういうことを実現しているか、御一考をわずらわしたいと思うのであります。紡機の設備がふえたからといって、最近では決して価格は下っておらぬ、むしろ優位な位置に立っておると思うのであります。こうした場合に受ける影響は、どちらかと申しますと、一般大衆が一番影響を受けるものであると存ずるのであります。また、設備過剰による生産増大であるならば、もっと商社を強化して、あらゆる地区へ輸出をしていただくことこそ望ましいことであり、またそうすることが昔の繊維王国を再現するものであると期待をいたすものであります。
 特にまたわれわれの悪い癖で、どの商売でもさようでありまするが、いわゆる安売り競争がどこにでも実現されておりまするが、聞くところによれば、綿布にいたしましても、あの輸出が非常に安いものが売れたことにより、日本側の自然規制に待つための問題が特にこの繊維法案を大きく浮び上らせておるといううわさも聞いておるのであります。しかし、どの商売もこの苦労をしているときに、国内の受注が減ったために私どもが輸出に精進したあの苦労を考えていただくならば、なおも苦労の余地が多分にあるのではないかということを考えているものであります。
 また、設備の近代化を目ざしているのだということをしばしば言われておりまするが、設備近代化を言れるならば、その紡機並びに織機の耐用年数をまず第一に訂正していただくことを委員の方々にお願い申し上げたいと思うの、であります。現在の耐用年数をもってしては、いかなるうまい話や字句を使いましても近代化は夢にひとしいと存ずるのであります。また審議会では買い上げの話がきまったように聞いておりまするが、これも並み大ていでこの資金を得ることは困難ではないかとも考えられるのであります。
 こうしたいろいろの意味を考え合せますとき、この繊維法案については十分なる御審議をいただきたいと思うのであります。同時に、われわれ紡機メーカー、織機メーカーがいかなる苦労をし、いかなる経路をたどって参りましたか、この面についても委員の方々の十分なる御配慮を賜わりたいと存ずるのであります。今日までわれわれ紡織機メーカーは、政府にたよって何とか生きようということはあまり考えたこともなかったわけでありまするが、今日以後は、政府におたよりしてわれわれは生きる道を考えざるを得ない断末魔に追い込まれたと私は存ずるのであります。
 なおいろいろ申し上げて泣き言を並べてみたいと存ずるのでありますが、時間の関係で、以上を申し上げまして、この繊維法案については御再考をわずらわしたいと存ずるのであります。

発言情報

speech_id: 102404461X04419560508_016

発言者: 石田退三

speaker_id: 31026

日付: 1956-05-08

院: 衆議院

会議名: 商工委員会