鈴木茂三郎の発言 (本会議)

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○鈴木茂三郎君 ただいま議長から御報告になりました故衆議院議員正三位勲一等緒方竹虎君に対し院議をもって弔詞を贈呈し、その弔詞はこれを議長に御一任するの動議を提出いたします。(拍手)
 緒方君は、去る二十八日午後十一時四十五分、心臓衰弱のために急逝されたのであります。私はここに、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼の辞を申し述べます。(拍手)
 緒方君は、明治二十一年一月三十日山形市に生まれ、長じて福岡県立中学修猷館を終え、早稲田大学政経学部に学び、明治四十四年六月卒業されました。学業を終るや新聞界に入り、大阪朝日新聞社に入社され、大正九年には欧米各国に留学、三年間政治経済等の研究に専念して、後年における各方面の活躍の素地を作られました。大正十一年帰朝の後には、大阪朝日の通信部長、東京朝日の整理部長、政治部長を経て編集局長となり、次いで、昭和三年には朝日新聞社の取締役、昭和九年には主筆、昭和十八年には副社長に就任され、わが国新聞界に偉大なる業績を残されたことは、諸君のすでに御承知の通りであります。(拍手)
 緒方君が官界に御活躍になるに至ったのは、昭和九年に鉄道運賃審議会委員となられたのが初めてでありまして、昭和十一年内閣情報部参与となり、後、議会制度審議会臨時委員、医薬制度調査会委員、国語審議会委員、中小産業調査会委員などを歴任され、行政各部の諸施策に参画され、議会制度の改善に貢献されたのであります。昭和十九年、小磯内閣の成立に際しては、その人格識見を望まれて入閣し、国務大臣兼情報局総裁に任ぜられ、さらに鈴木内閣の顧問となり、昭和二十年八月に貴族院議員に任ぜられました。戦後、東久邇内閣成るや、国務大臣兼情報局総裁及び内閣書記官長として、当時の政治、経済、社会等、異常な混乱の中から、きわめて困難な戦後処理の重要な任務に当って大きな功績をあげられました。
 昭和二十六年十二月自由党に入党、政界に入られたのであります。翌年五月、吉田首相の特使として東南アジア諸国を訪問し、各国との親善に力をいたされ、昭和二十七年十月の第二十五回総選挙には福岡県第一区より衆議院議員に当選され、第四次吉田内閣の国務大臣兼内閣官房長官に任ぜられ、同十一月に副総理となられました。次いで、第五次吉田内閣においても、国務大臣に任ぜられ、副総理になられたのであります。また、昭和三十九年十二月吉田内閣総辞職の後は、選ばれて自由党の総裁となり、また、昨年十一月自由民主党の結成とともに、総裁代行委員の要職につかれたのであります。
 緒方君は、衆議院議員に当選されたのは前後三回、本院に議席を占められた期間は長いとは申されませんが、四たび国務大臣となり、再度副総理の重責をにない、あるいは政党の総裁として、また、昨秋以来の保守合同に際しては、一身の毀誉褒貶を顧みず事に当り、合同なるや、自由民主党の総裁代行委員の一人として、かねて念願されていた現代的の保守陣営の結束に努められるなど、政党政治のため、憲政の発達のため尽された御功績は、はなはだ大なるものがあるのであります。(拍手)
 緒方君は、まことに重厚な御性格でありまして、事に当っては熟慮遠謀、常に、自己の信念に従って、その正しいと信ずる道を堂々と歩むというお人柄でありました。人としてまことにりっぱであったばかりでなく、識見もはなはだ高く、当然、政権を担当して、日本の運命をになうべき一人として、内外に絶大の信頼を得ておられたのであります。(拍手)今や、国家は二大政党の分野に立ち、民主政治の完成に多大の期待が寄せられているときであり、国事もまた多端の折柄、かくのごとき緒方君を失ったことは、議会のため、国家のため、まことに痛惜の至りにたえません。(拍手)
 私は、ここに緒方君の政治生活を静かに顧みて思いますことは、寒に耐ゆる白い梅の花が、まさに開かんとして、一夜の風雪に地上に散ったという感がいたすのであります。(拍手)季節も春立つ日が旬日に迫り、梅花もまさに枝頭にあって開かんとするときに緒方君が卒然として急逝されたことは、まことに感慨無量なるものがあるのであります。国家の運命は人力をもって切り開くことができますが、人の死生は人力のいかんともいたしがたいところであります。(拍手)緒方君も、おそらくは、民主政治の将来、国家民生の前途に深い憂いを抱き、高い理想を蔵しつつも、しかし、なすべきことをなしたという安らかな心をもって瞑目せられたものと信じます。
 ここに、緒方君の御長逝に対し、その人となりを追慕し、敬弔の誠をささげ、その御冥福を祈つて、追悼の言葉といたします。(拍手)

発言情報

speech_id: 102405254X00519560131_003

発言者: 鈴木茂三郎

speaker_id: 18314

日付: 1956-01-31

院: 衆議院

会議名: 本会議