稲富稜人の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○稲富稜人君 私は、日本社会党を代表して、鳩山内閣の農業政策を中心に若干の質問を行い、もって国民の疑点を明らかにしたいと存ずる次第であります。何とぞ関係閣僚より明快なる御答弁をお願いする次第であります。
 まず質問に先だちまして申し上げたいことは、農林省は、昨年末、「農業経済の現状に関する基礎的分析」という調査資料を、また、本年に入ってからは、あたかも予算編成のまっさなかに、「過剰農産物裡の日本農業」という調査資料を公刊したのでありますが、これらの資料は、国内的には言うまでもなく、国際的にも、日本の農業の現状に関心を持つ方面に対しては大きなる反響を与えたのであります。
    〔副議長退席、議長着席〕
その資料、冊子の内容は、農産物の世界的過剰傾向、なかんずく、アメリカにおける過剰生産とその対策、共和党政権が、外交問題と相並んで、余剰農産物の処理問題に党の運命を託している事実、アメリカ農民を救済し得る絶好の市場としての日本の地位、従って、アメリカ掌握下の日本における農業政策の実施上、これら海外要因の急激なる増大、このことが食管機能の低下、農産物価体系の変動を誘発し、その結果は食糧増産対策費を中心とする農林関係予算を大幅に退潮させている事情、しこうして、農民困窮化の急速なる進行状態を説明し、現下日本における農政の貧困と混迷を如実に指摘しているのであります。これは実に官庁出版物としてはまれに見る率直な態度で執筆され、今やまさに暗雲に閉ざされんとする日本農業の前途を暗示しているのでありまして、これこそ、まさに自民党政権下の農業政策に対する偽わらざる抗議文であるといっても過言でないと思うのであります。(拍手)
 農業予算は、終戦以来拡大、増大されてきたことは御承知の通りでありますが、その中心は、申すまでもなく、食糧増産対策の経費であります。しこうして、これら並びにその実施形態である補助金を主軸とする農業予算の増加の勢いは、二十七年を頂点といたしまして、自来下向き傾向に転じてきたのであります。特に、二十九年度、国際収支の均衡を目ざして緊縮予算の編成が行われるに及び、予算において占める補助金が財政膨張の主たる原因をなすものとの理由で圧縮され、さらに三十年度予算におきましては、これらの緊縮方針は踏襲され、政府原案においては、農業予算は二割減という大幅の削減となり、国会における増額修正による若干の回復を見たものの、あとにさらに一割の節減が強行され、食糧増産をバック・ボーンとする農政の後退と行き詰まりは、もはやおおうべからざる事実となって表面化しているのであります。これらの事実は、とりもなおさず、戦後から二十七年を頂上として展開されましたところの、経済自立の基本としての食糧自給度の向上、換言すれば食糧増産政策の全面的後退であるといわなければならないのであります。
 しからば、何ゆえに食糧に対する努力をかくのごとく冷却せしめる事態に立ち至らしめたのであるか。その基因するところを検討するならば、一般的には、食糧増産に対する国家投資の増産効果の稀薄さ、非効率性等についての非難があり、さらに、補助金行政の全面的再検討と徹底的圧縮への財政担当者の強い要請があり、最近におきましては、新たに地方行政の赤字増大の有力原因と見られるに至ったというのであります。しかしながら、これらの理由は、いずれも表面的な理由であるにすぎないのであります。その本質は、申すまでもなく、世界的規模における農産物の総体的な過剰生産の激化に伴い、年間平均二割の食糧不足を告げるわが国が、アメリカを初めとする食糧生産過剰国の市場争奪戦の一大目標となり、従って、多額の国費を食糧自給の非効率的な事業に投下することをやめて、割安な外国食糧の輸入に転じ、財政投資を非生産的な再軍備予算に振り向けようとする鳩山内閣の予算編成方針に基因するにほかならないのであります。(拍手)
 河野農林大臣は三たび農相の地位に留任せられたのでありまして、明年度予算こそは、河野農相としての経綸を示すべく本格的に取り組まれた最初の予算案というべきであると思うのであります。しかし、遺憾ながら、三十一年度予算案は、全国農民の期待を裏切り、農業保護政策と食糧自給態勢とを一擲して、借金農政と食糧海外依存政策とを特徴とする再軍備農政の特徴をいよいよ露骨に現わした、実に戦後最悪の予算となったのであります。(拍手)私たちの最も遺憾と存ずるところであります。私は、このような観点に立ち、各関係大臣の所信をただしたいと存ずる次第であります。
 まず、河野農林大臣は、大臣就任以来、しばしば農政に対する構想を発表されたのでありまして、世間はこれを河野農相の思いつき農政と批判し、その思いつきによって上げられるアドバルーンに対して、そのつど不安に襲われているのでありまして、かくのごときは断じて国民に親切なる政治とは言えないのであります。願わくば、この機会に、全国民が安心し得るよう、責任ある御答弁をお願いする次第であります。まず、食糧増産対策に対してお伺いいたします。鳩山内閣は、総合経済六ヵ年計画ないしは五ヵ年計画を樹立せられたが、その計画に基く食糧増産量は、三十五年度までに千三百万石といわれ、その基本目標を達成するため、農地の拡張、改良に課せられる増産量は、三十二年度以降三十五年度までに年平均百五十万石であり、この目標数字は、今後における人口の増加及び農地の壊廃を辛うじて補足し得る最低限度と思われるのであります。しこうして、これがためには、三十一年度において最小限度三百六十億円程度を必要とするのでありますが、予算規模の全体は昨年より膨張しておるにもかかわらず、政府原案は与党の修正をいれて、辛うじて昨年程度計上しているにすぎないのでありまして、これにより食糧輸入がますます増大する方向に向わざるを得ない結果になることは明らかであります。これは、河野農林大臣がしばしば言明されておる、今や日本の農業は転換期にきている、従来の米麦生産の偏重対策を改めて、世界農業の一環にせねばならないとの主張の裏づけであるといわねばならないのであります。しかし、私は、わが国農政の基本方針は食糧増産対策の堅持であり、いかにして食糧の自給自足態勢を確立するかということであらなければならないと思うのであります。これに対する農相の御所見を伺いたいと思うのであります。
 さらに、次には、高碕経済企画庁長官及び大蔵大臣にお伺いいたしますが、政府は何のためにあれだけ大がかりに人員を動員して経済長期計画を策定せられたのでありますか。両大臣は五ヵ年計画を予算化する責任を有せられないのでありますか。その点、特に両大臣の所信を承わつておきたいと存ずる次第であります。
 これに対して、あるいは河野農林大臣は、余剰農産物見返り円資金をもって不足分をカバーすると言われるかもしれません。また、国営土地改良事業に対しては特別会計方式を採用すると言われるかもわかりません。しかしながら、見返り円という、ひもつきの不確定財源を当てにすることには、もちろん不安があるのであります。また、国営土地改良特別会計の資金は、一般公共事業の内ワクであるか、または外ワクであるか、さらに、いかなる方法により資金を確保せられ、また、いかにしてその促進をはかられようとするのであるか、その結果、県営、団体営の灌漑排水事業が事業量の圧縮を受けるようなおそれはないのであるか、これらの諸点について御所見を伺いたいと思うのであります。また、三十一年度において新規地区の着工を認められるのであるか、この点を明確にしていただきたいと存ずる次第であります。
 今日、余剰農産物見返り円という、他人のふところを当てにする他力本願の悪風潮が世間にびまんしておるのでありますが、第二回受け入れ分に伴う農業投資総額は幾ばくであつて、いかなる使途に、また、いつ、幾ばくの配分を行う所存であるのか、これらの不安定な資金を数年ないし十数年の継続事業に対して投下せられることは、国内資金の財政投下をいよいよ縮減する口実を大蔵省に与えるのみならず、食糧増産事業の将来を著しく不安定化するおそれがあると思われるのでありまするが、これに対する農相の御意見を承わりたいと思うのであります。
 さらに、この公共事業費に関連して、私は災害復旧事業に言及したいと存ずるのであります。すなわち、三十年度は、幸いにして災害が比較的少かったのでありますが、しかし、過去数年間の連続災害によりまして疲弊した農村に対して、国庫の負担すべき農林水産関係災害復旧残事業は、今なお実に三百六十億円の巨額に上っているのであります。しかるに、予算案にはその三分の一にも足らぬ額を計上し、三十年度に比較して三十二億円の減少を見ているのであります。かくのごときに、実に被害公共団体及び被害農民のために遺憾にたえざる次第であります。何ゆえに、二十七年災まで残事業の四〇%、二十八年災七五%、二十九年災七〇%、三十年災六五%というがごとき小刻みの負担をせられるのでありますか。しかも、二十八年災のごとき、本国会は特別立法措置を講じ、政府もまた、その臨時措置法に基き、三、五、二の原則により、三ヵ年間の継続事業としてこれを完済すると、しばしば公約しながら、これを履行していないのであります。被害公共団体等はこの政府の公約を信じて、他よりの融資を受けてこれが復旧を完了しておるところもあるにかかわらず、政府がこれを放任しておるがごときは、本国会を軽視するもはなはだしきものであるといわなければなりません。(拍手)政府は、この際、少くとも三十九年災までは全部完了せられるよう考え直すことはできないのであるか。さらに、前に申し述べましたように、公共団体が他よりの融資により復旧を完了しているものに対しては、これが利子の補給をなすべきであると思うが、これに対する大蔵大臣及び農林大臣の御答弁を承わりたいと存ずる次第であります。(拍手)
 次に、私は農林漁業金融政策についてお尋ねいたしたいのであります。経済長期計画に見合う長期貸付資金を確保いたすとすれば、おそらく八百億円に近いものとなると思われますが、しかるに、明年度資金計画による農林漁業金融公庫の融資ワクは二百八十五億円に決定せられているようであります。この額は本年度より二十五億円の増加でありますが、その資金の質ははなはだしく劣悪化しているのであります。すなわち、例年相当額を一般会計より出資しておるにもかかわらず、今年度はわずか十億円、明年度は実にこれをゼロにしており、あげて資金運用部、簡保特別会計ないしは産業投資特別会計に依存せんとするもののようでありますが、この産業投資特別会計のほかは、いずれも利子負担があるのでありますから、公庫資金のコストは当然割高とならざるを得ないのであります。大蔵大臣及び農林大臣は、長期低利融資の目的をいかなる工夫によって達成せんとせられるのであるか、国庫よりの利子補給なくして農林漁業金融は成り立ち得るかどうか、この際御説明をわずらわしたいと存ずる次第であります。
 なお、このことに関連して、私は最近世上に流布されておりまする系統金融の改革案に関してお伺いいたしたいと思うのであります。御承知のごとく、系統農林金融は三段制をとつておりますが、これがため、一般市中金利の低下傾向にもかかわらず、系統資金コストが割高であることは事実であります。ところが、これを口実にして総合単協から信用事業を切り離し、信連をつぶして、農林中金と信用農協との二段階制を採用すべきことを言明されていると承わるのでありますが、一体、農林大臣は、このような荒療治によって健全なる農業協同組合が育成できると本気でお考えになっておられるのか。かくすれば、おそらく、過半数の単協は破産のうき目にあうでありましょうが、これに対する責任はいかにされんとするのでありますか。何ゆえに、経営指導に万全を期し、健全なる農協の育成に精励しようとされないのか、実に私は了解に苦しむものであります。(拍手)全国に約二千三百の不振組合があると聞いております。農林事務当局は、この不振組合の再建整理を行うために、調整勘定の益金五億円を用いて行う計画であったと聞いておりましたが、予算案におきましては、これまた大削減のうき目にあっておるのであります。調整勘定の益金は、元来農協の資金の処分益でありますが、大蔵大臣は、これを農協に還元する御意思はないのであるか、この点、大蔵大臣にお伺いいたしたいと存ずるのであります。
 次に、農業団体再々編成についてお尋ねいたしたいと思うのであります。今や、農協は、非常事態宣言を発するまで農林大臣に追い詰められているのであります。巷間伝えられている農業団体再々編成、農民会法案なるものが、すなわちそれであります。本案は、最初河野農林大臣と安田経済局長の合作にかかり、これを平野三郎代議士の私案として一般に流布されたものと伝えられておるのであります。これは、まさに、農業委員会の機能退化を救済するために、農民に対する経費賦課権を持つ強制加入の官製農業団体をでっち上げ、共済事業、防除事業、指導事業、新農村建設等を集中して、保守党の選挙と官僚の農民支配との共通の基盤を補強せんとする大隠謀にほかならないと存ずるのであります。(拍手)かくして、信用事業をも含む農協の経済事業と指導事業とを寸断して、農業生産に対するその総合的職能並びに農民に対する民主主義的教育の場を剥奪し、かつての地主的農村ボス支配体制の復活を企図しているのでありまして、かくのごとき野望に対して、私たちは断固反対せざるを得ないのであります。(拍手)この際、先日平野私案として発表されました農民会法と政府との関連はいかなるものであるか、もし関連なしとこの際言われるならば、この法案に対する農林大臣としての見解を承わりたい。さらに、今回政府が企図されているといわれている農業団体再々編成に対する農林大臣の基本方針を明快に承わりたいと存ずる次第であります。
 さらに、農林大臣は、このような、一方においては天下り農政を考慮しつつ、他方においては新農村建設運動を提唱せられ、河野農政の一枚看板として、明年度予算に十五億円の経費を計上されておるのであります。昨年末の各新聞は一斉に農相の談話を掲載しておりますが、それによれば、農相は、新農政三十一年度版として新しい村作りを考えている、従来の食糧増産に偏重した農政を改め、適地適産により、個々の農村の農業経営の向上をはかり得るように予算を重点化するが、耕地造成、土地改良のごときものは九牛の一毛としか考えない、と、その言たるや、実に河野農相一流の大胆さであります。しかるに、一歩それを踏み出して、その内容を検討するならば、その前提となるべき諸条件の整備に欠くところ実に多く、また、多くの許しがたい政治的偏向が含まれておるのであります。私は、ここにそのおもなるものを指摘いたしまするがゆえに、農相のこれに対する明快なる御答弁をお願いする次第であります。
 その第一点は、農相談話にも現われておりまするように、国内食糧の不足は、今後、恒久的に、海外、なかんずくアメリカの余剰農産物に依存し、食糧増産への努力を放擲し、農林関係公共事業費の縮減を行い、もって再軍備農業政策実現のための伏線としたことであります。
 その第二点は、農林大臣は、新農村建設機構と農民会構想とは直接の関連なしと言われている由でありますが、農民会設立後においては、新農村建設の指導は農民会の重要なる事業分野となることは疑いないところでありまして、かくては、農村青年の盛り上る意欲を結集した農村建設運動が、上から押しつけられた官製運動に堕落することは、火を見るよりも明らかなことであると思うのであります。(拍手)
 さらに、第三点は、農林大臣は、本計画において、適地適産、ないしは、もうかる農業を唱道し、農業の多角化、さらに、商品作物の導入をうたわれておるのであります。しかして、他方においては、基幹作物の生産者価格を押え、米単作の積寒地帯その他生産条件に恵まれない特殊農業地帯の犠牲において、条件に恵まれた大都市近郊農村の繁栄をはかられているやにうかがわれるのでありますが、農林大臣は、特殊地帯対策がごうも悪影響を受けないのみでなく、さらにこれを強化拡充する用意があるかどうか、この点、疑わしいのであります。
 さらに、第四点は、農林大臣は、最も劣勢産業たる農業に対する今日までの保護農政を廃して、農業改良基金等による借金政策への転換を策しておられるのであります。いずれ遠からず農業改良基金法案が政府より提出されるでありましょうから、その際徹底的に批判を加えることといたしますが、要するに、農業改良基金制度は、補助金政策から金融政策に転移することによって、政府負担金の安上り政策を打ち出したものと思うのであります。もし補助金政策に欠陥があるとするならば、これが監督を強化し、あるいは補助金を資材の補助に切りかえるなどにより、その運営方法を改善すべきであります。しかるに、借金政策は、借金を返済する能力あるもののみその恩恵に浴し得るのでありまして、これは、とりもなおさず、保守党の基盤となり得るような富農層にその恩恵を施すことになると確信するのであります。かくのごとく、政策の立案の対象は貧農であり、恩恵をこうむるものは富農であるというがごとき農業政策は、断じて善政とは言えないのであります。
 次に、第五点は、新農村建設案の内容を吟味いたしまするに、いわゆる適地通産主義により、米麦等から換金作物に作付転換いたす場合に、貿易上または国内的に、価格面に対する安定措置を並行せしめないならば、たちまちに農家の手取価格は暴落して、農民は重大なる損害をこうむることは必至であります。また、農林大臣は、数百町歩ないし数千町歩程度まとまって有利に作付転換を指導し得る特産物が果してあると考えておられるのであるか。あるとすれば、具体的に御教示にあずかりたいと存ずる次第であります。また、個々の農村を対象にして施設の助成を行われるつもりのようでありまするが、市町村相互間あるいは県相互間等、広範囲にわたる基幹的生産施設の整備については、いかなる措置を講じようとせられるのであるか。かくのごとく、河野農林大臣のお考えになる新農村建設運動の具体的内容は、このように総合性、計画性に欠けた、はなはだ失礼な言い分であるかはわかりませんが、全くしろうとだましの、思いつき、はったり行政であると言わざるを得ないのであります。(拍手)
 特に、私は、この新農村建設運動という美名のもとに隠れた最も悪質なる野望のあることを指摘しておきたいと思うのであります。それは、食糧増産という大義名分を撤回した河野農林大臣は、今日及び次代の農村を背負って立つ青年層が、ようやく保守党の本質を認識して、次第に私たちの立場、私たちの考え方に理解を持ち始めているこの現実に焦燥ろうばいせられて、再軍備農政の本質を隠蔽せんがために、青年に向つて国費をもって保守反動教育を実施せられようとしておるのでありまして、わずか十数億円の事業費に対して、数千万円の研修費予算を計上せられている事実が、雄弁にこれを物語つておるのであります。いやしくも国費をもって一党一派の政治教育を施さんとするがごときは、許すべからざる不当支出であり、私の断じて賛成しかねるところであります。(拍手)以上の私のこの所論に対しまして、農林大臣としての抗弁の余地がありますならば、まじめに御答弁をお願いする次第であります。
 以上のごとく、河野農政の三十一年度版は、予算案、法律案の審議を通じて、さらにその全容を明らかにするでありましょうが、吉田政権以来まかれている種子を、いやおうなしに刈り取らざるを得ないとき、しかも、河野農林大臣は、さらにこれに拍車をかけて、わが国農政の一大転換を見つつあるのであります。しこうして、農業政策を商業主義に隷属せしめんとする短兵急な商人的農業政策は、わが国百年の大計を誤らんとする重大なる結果を生み出さんとしておるのであります。今や、わが国の農民は、農民抑圧の農政のため、ますますその生活は窮乏し、一歩々々転落の道をたどりつつあるのであります。
 このとき、政府は、追い打ちするがごとき農業課税をもってこれに報いんとしているとさえ言われておるのでありまして、さらに農民の不安を増大しつつあるのであります。すなわち、水稲の所得に対する石当り標準を反当り標準に変えることは、本年度所得税より実施することになったのでありますが、政府は課税方式の変更による増税はしないと言明しておるものの、確定申告と、それに先だつ標準率の決定において、相当の実質的増税が行われる傾向が強くなってきたことは事実であります。なお、一時問題となった農業事業税の復活は、今のところ、参議院選挙等もありまして、さたやみのようでありますが、将来これをいかにするか、これに対する政府の態度を明確にする必要があると思うのであります。
 なお、最後に明らかにしていただきたいことは、最近、鳩山内閣の反動的風潮に便乗して、かつての旧地主間に、農地改革の犠牲に対する補償要求の運動が起り、これに対し、あたかも農林大臣の補償の言明ありたるがごとく、また、農地法の改正が決定したるかのごとく流布せられ、耕作農民に多大の不安を与えているのであります。まさか農林大臣はかくのごとき言明はなさつてはいないと信じまするが、ここに農相のこれに対する明快なる御意思を表明されることをお願いする次第であります。(拍手)
 この秋、私たちが農村に行って、農村青年より聞く声は、かく農業が引き合わないならば、いっそ思い切って自衛隊へでも行こうという声であります。私たちは、この絶望的な農村青年の声を涙なくして聞くことはできないのであります。かくて、今やまさに、農村の青年は、生活苦の中から再軍備の一線にかり出されんとしているのであります。その証拠は、近時、農村不況とともに、自衛隊応募者に農村青年が増加しつつあるこの事実であります。再軍備予算は、ただ軍事費の膨張ばかりではありません。かく農民生活を窮乏に追い詰めるところにもその伏線があるのであります。実に事は重大であります。この重大なる事実を、総理はいかに考えられるか。一体、日本の政治、しかも、農業対策はこれでいいのであるかどうか、これに対しましては、特に総理大臣よりの御答弁をお願いしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
    〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 102405254X00519560131_015

発言者: 稲富稜人

speaker_id: 6055

日付: 1956-01-31

院: 衆議院

会議名: 本会議