多賀谷真稔の発言 (本会議)

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○多賀谷真稔君 私は、日本社会党を代表し、労働問題並びに社会保障全般につき若干の質問を試みんとするものであります。
 今日、わが国経済の最大な課題は雇用の問題であり、働く意思があり、働く能力がある人を職につけるということが政治の要諦であります。しかるに、一萬田大蔵大臣は、昨日、財政演説において、雇用は好転のきざしがうかがわれると、楽観論を述べられましたが、一体、いかなる根拠に立ってかような発言をされたか、まずお伺いいたしたいのでございます。もし、この根拠を完全失業者の減少と考えられておるのならば、私はとんでもない誤まりであるということを指摘いたしたいのであります。(拍手)
 完全失業者とは、一ヵ月の最後の一週間において一時間も収入のある仕事をしなかった人のことであり、日雇い労働者はもちろんのこと、一時間でも働けば失業者には数えられないのであります。一週間一時間も働かないで暮していけるような、けつこうな身分の人は、特殊な人でありまして、その大部分は失業保険をもらつておる人であり、これをもって政策を論ぜられることは許されないと思うのであります。完全失業者の統計こそは、失業者の数を隠蔽しようとする資本主義国家の欺瞞的統計であるといわざるを得ないのであります。(拍手)完全失業者は全く氷山の一角であり、不完全就業者は、昭和二十九年十月で八百三十万人を数え、わずか一ヵ年において二百七十万人も増加しておるのであります。
 今、かりに、新規投資をし、雇用の増大をはかるといたしまして、常用雇用者は、一億円当り、水力電気で一人から一・八人、火力電気で三・五人から五人、硫安工業で一三・二人から一三・八人、鉄鋼一貫作業で一八・一人、石炭新鉱開発で四三・八人、合成繊維で四六人から八九人という状態であり、直接的雇用効果はきわめて少いのでございます。経済五ヵ年計画は、昭和三十五年完全失業者四十七万人と数えておるが、不完全就業者については一切目をおおうておるのである。経済五ヵ年計画は、雇用の増大を主として中小企業と第三次産業に求めておるのであります。しかるに、昭和三十一年度の中小企業対策の予算は、わずか七億八千万円にすぎないのである。わずか七億八千万円で、数百万の労働者をいかにして吸収するのか、それを期待される中小企業は、企業家もろとも失業者の群れに投ぜざるを得ないでありましょう。(拍手)結局、五ヵ年計画の雇用政策は、家に帰って農家の手伝いをし、商売の手伝いをする家族従業の見えざる失業に追い込もうとしておるのであります。
 雇用の問題は、日本資本主義が解決すべくして解決できない難問題であります。利潤追求と自由投資を本則とする自由経済のワク内においては、雇用を直接増大し、完全雇用を実現する方法は存しないのであります。(拍手)せいぜい、経済規模の拡大によって、間接的に雇用の増大を期待するにすぎないのであります。
 ドイツにおいては、労働者三人に一人の失業者が出たときに、ナチスが政権をとりました。アメリカにおいては、一千三百万人の失業者がおりましたときに、典型的な自由主義者フーヴァーが退き、ルーズヴェルトがかわり、ニュー・ディール政策を断行したのである。ナチスもニュー・ディールも、資本主義経済を救うため非資本主義的措置を行わなければならなかったことを、われわれは銘記しなければならないのである。(拍手)政府のように、出てきた失業者を単にニコヨンで救済する程度でなく、緊急失業対策法というような、お粗末な、やつてもやらなくてもいいような法律でなく、国家の力で雇用を創出するという抜本的法律の制定を行わなければ、雇用の増大は全く夢物語に終るでありましょう。雇用政策に対する総理大臣の基本的考えを承わり、あわせて、雇用は好転の兆があると言われた根拠を大蔵大臣から、経済五ヵ年計画における雇用計画を経済企画庁長官から、具体的雇用創出政策を労働大臣から承わりたい。(拍手)
 第二に、倉石労働大臣の賃金政策についてお尋ねいたしたいと思います。鳩山内閣の賃金政策を見ると、千葉労働大臣は、生産報償による合理的賃金制度を打ち出し、労働強化を伴う生産力賃金を唱え、西田労働大臣は、利益があれば、労働者と企業者とが分け合うだけでなく、消費者にも還元すべきである、と述べられておるのであります。しかるに、今日、日経連は、「当面の賃金問題とその課題」というパンフレットを発行し、これらの主張を一切退けて、企業利潤は社内自己蓄積に回し、この際賃金ベース・アップに使うべきでないと主張し、今やみずから国民経済のにない手と自任した独占資本は、賃金は号令一下自分たちで決定し、労働者に押しつけるものであるといった、彼ら本来の野望である権力賃金の構想を明らかにして参ったのであります。(拍手)しかも、今次の総評、全労会議を初めとする賃金闘争を批判して、賃金より雇用だとして、組合の賃金闘争は失業者を発生せしめるものだと主張しておるのであります。完全雇用を実現するためには、賃金闘争はもってのほかであり、低賃金で全部の労働者に雇用の機会を与えなければならないし、賃金水準の低下のみが労働階級全体に完全雇用を保障する唯一の道であると考えておるのであります。これこそ、まさに資本家のドグマ的賃金理論であるといわざるを得ないのであります。(拍手)
 これは、全労働者に支払われる賃金の総額は常に一定の固定化したワクがあるという前提に立ち、賃上げ闘争は無意殊であると主張した賃金基金説に基いておるのであります。この賃金基金説の創設者はジョン・スチュアート・ミルである。彼自身が、これは誤まつておつたと、後に自説を撤回したという事実から見ても、まさに誤まてる理論であり、その主張は労働階級分断の企図から出ていることを意味するものであります。この日経連の主張こそ、全体の利益の名をかりて現われた権力賃金といわざるを得ないのであります。一体、倉石労働大臣は、いかなる賃金政策をもって臨まんとするか、お伺いいたしたい。
 次に公務員のベース・アップについてであるが、公務員の今日のベースは、昭和二十八年三月の民間給与との比較において定められたものであります。約三ヵ年の久しきにわたって固定された公務員のベースをアップせんとする熾烈なる要求が今や行われ、国鉄を初めとする公企労関係の労働者も一斉に要求し、調停に付しているのであります。一体、政府は、これに対していかなる処置をとられんとするか。日経連は、公務員のベース・アップが民間給与にもたらす影響を非常におそれて、猛烈に政府を牽制しているが、一体どういうお考えであるか、お聞かせ願いたい。
 さらに、日経連は、大企業労働者の闘争は中小企業との賃金格差をますます拡大するものと非難しているのであります。政府は、何ゆえ、賃金格差を縮めるために、中小企業労組の育成、最低賃金を実施されないのか。最低賃金法は、すでに、インド、ビルマ、フィリピンのアジアの後進国も、中南米の諸国までも、ほとんど制定を見ておるのに、アジアの先進国と誇つておる日本が何たる状態でありましょうか。特に低い四業種については、賃金審議会からすでに答申まで出ているのに、政府はいつまでこれを放置するつもりであるか。
 第三に、労働関係諸法規の改廃についてお尋ねいたしたい。最近、労働大臣はヒステリックな談話を発表されておるが、その中で、公務員のすわり込みは世界に類がない、断固取り締ると言っておられるが、公務員及び公企業体の労働者がすわり込みをせざるを得ない原因がどこにあったとお考えであるか。これは、すなわち、公務員の諸君が、公務員法、公労法によって争議権を剥奪され、しかも、その代償として認められた仲裁制度に関し、保守党内閣はみずから蹂躪をしてきたではありませんか。(拍手)一体、仲裁のうちで何回完全実施をされたものがありますか。しかも、予算総則なるものを作り、全く団体交渉の余地なからしめ、当時の大蔵大臣は、仲裁裁定を全く骨抜きにしたとうそぶいたではありま。せんか。ここに官公労の諸君が困難な戦術に出でざるを得ないゆえんがあるわけであります。すわり込みや休暇戦術を断固取り締るというならば、いじけた戦術を解消するため、公務員、公共企業体の労働者に対し、すべからく争議を許し、稀代の悪法、公務員法、公労法を廃止すべきであると考えるが、いかん。(拍手)
 政府は、行政機構の改革に名をかりて、人事院を廃止し人事局にせんと企図しておるようであるが、これまた、人事院は公務員の争議権を奪つたかわりに設けられたものであり、日経連の権力賃金の押しつけと軌を同じゅうするものである。基本的人権を無視した憲法違反の措置であるといわざるを得ない。これに対する所管大臣の答弁を求める。
 歴代の政府は、とかく、みずから原因を作り、それによって誘発する末梢的現象のみをとらえて不当呼ばわりする習性を持っておられるようであるが、これは全く盗人たけだけしいといわざるを得ないのであります。(拍手)たとえば、ピケットについても、断固取り締るということを言っておるが、一体日本のピケットがなぜかように激しいかを研究してみる必要がある。外国においては、争議の際に、一人か二人の労働者が今スト中というプラカードを持って、ぶらぶら歩いている程度であります。何ゆえにピケットが少いか。それは、すなわち、産業別、組織別組合が確立しておるから、ピケ破りがいないから、争議が平穏なのであります。産業別、組織別、職業別組合の組織の確立は世界の大勢であります。しかるに、歴代の内閣は、逆行して、これらの組合組織を分断せんとする政策のみとってきたではありませんか。(拍手)その最も尤なるものは、昭和二十七年の秋に行われた炭労、電産の争議であります。電産の統一交渉を拒否し、企業別交渉を主張したのは日経連であり、経営者は、争議をいたずらに長期化せしめ、停電ストを挑発し、停電スト禁止の立法化を企図したのであります。その背後に政府が暗躍したことは、いまだ吾人の記憶に新たなるところがあるわけであります。(拍手)石炭並びに電気産業などにおけるスト規制法はまさにその争議の所産であったと言い得るのであります。英国においては、ゼネスト禁止法は労働大衆に、法律は労働者に不利益になるように作られるものである、法廷は労働者に対抗しておるという感じを与えただけであり、この法律が失敗であったと、撤回したではありませんか。スト規制法も同様であり、延長しないとこの際言明する意思はないか、お伺いをいたしたい。ピケを取り締まるよりも、その原因の産業別、職業別の組織を強化することこそ真の労働行政であると考えるが、労働大臣の所見を承わりたい。
 次に、二月二十四日よりジュネーヴにおいてILO理事会が開催せられ、労働時間の短縮について論議がなされると聞いておるのであります。前の総会の決議により、ILO総長が各国の実情とその対策について百ページに及ぶ報告書を送付し、理事国である日本にその意見を求めてきておるのであります。今や、労働時間の短縮は、世界の労働界に一大要請となって現われておるのであります。私がその報告書を見てまことに遺憾に考えますことは、日本の労働時間が一番長いということであります。インドやパキスタンよりも長く、六十時間という欄があるのは、ただ日本のみであります。しかも、その報告書には、日本の経営者は労働時間の短縮に反対し、労働時間をさらに延長しようと企図しておると明記されておるのであります。大臣は、この報告書を見て、いかにお感じになったか、理事会にはいかなる態度で臨まれるのであるか、承わりたい。
 さらに、わが国がガット加入に際し、各国よりいかなる処置を受けたか想起してもらいたい。英国を初めといたしまして、相互関税交渉を行わないというガット規定の第三十五条適用の国が十四ヵ国あるではありませんか。アメリカでも、今、一ドル・ブラウスの問題が大きくなり、これらの輸入を禁止せんとする立法が上程されんとしておるではありませんか。かかる原因はどこにあるとお考えになっておるか、外務並びに通産大臣にお尋ねいたしたい。
 さらに、私は、こういう国際情勢の際に、労働基準法を改悪し、労働時間を延長せんとする政府の態度の大胆さに一驚せざるを得ないのでありますが、基準法に対する政府の所信いかん。
 さらに、第三回アジア地域会議において決議されました国際労働条約批准促進の勧告について、いかに準備を進められておるか、お尋ねをいたしたいのであります。
 私は、最初、倉石労働行政の出だしを見まして、保守党内閣に新たなる労働行政を打ち立てるものと期待をしておったのであります。しかるに、先日の大阪の談話のごときは、争議に対する国家権力の介入を示唆し、報復的行政を露骨に現わしてきたのであります。経済闘争を政治闘争のごとく喧伝し、総評の出方いかんでは、労働三法も改悪し、スト規制法も延長するという威嚇的言辞を弄するとは言語道断でございます。(拍手)吉田内閣は、わが国の労働法を治安立法のごとく考え、相次ぐ改悪によって労働法体系を漸次崩壊せしめてきたのでありますが、倉石労働大臣は、当時、その労働委員長として、それに協力した、その反動的本性を現わしたものといわざるを得ないのであります。倉石労働大臣の労働行政に対する基本的態度をお尋ねいたしたい。
 最後に、私は社会保障制度についてお尋ねいたしたい。経済五ヵ年計画は、経済自立と完全雇用を二つの柱として立案されております。しかるに、最も大切なもう一つの大きな柱が全く忘れられておるのであります。これは、すなわち、社会保障政策による福祉国家の形成でなくてはならないのでございます。(拍手)この経済五ヵ年計画は、すでに指摘したるごとく、一千万人以上の潜在失業者に目をおおい、労働者を零細企業、第三次産業への見えざる失業に追いやり、労働力率を抑制しておるのであって、これこそ社会保障政策の推進なくしては達成は困難でございます。経済五ヵ年計画の補完としての政府の社会保障五ヵ年計画はいかになっておるか、まず、その全貌を明らかにされたい。次いで、昭和三十一年度の予算にいかに盛られておるか、お尋ねいたしたい。もし、その社会保障五ヵ年計画が樹立されていないとするならば、明らかに経済五ヵ年計画は絵にかいたもちであり、看板に偽わりがあるということを立証するものであります。
 次いで、医療保障についてお聞きいたしますが、政府はこのたび健保法を改正し、低額所得者の標準報酬日額を引き上げ、患者の一部負担を認めようとしておるのであります。保険料を払った上に、医者にかかるたびごとに三十円ずつ払うとするならば、これこそ、低額所得者を医療保障から遠ざけ、早期診察、早期治療に重大な支障を来たすことになるのであります。(拍手)医療保障の著しい後退といわざるを得ないのであります。厚生大臣には、健保法改正に対する労働者及び医療担当者のあの切なる反対の声が聞えないのでありますか。社会保障審議会の勧告通り、国庫補助二割を負担し、国会に再提出するとともに、結核予防法を改正し、公費の補助率を三分の二に引き上げ、義務制をしく御意思はないかどうか、お尋ねをいたしたい。(拍手)
 三千万人の医療保障の対象の外に置かれた人々をいつまで放置するつもりであるか。五人未満の零細な事業所の労働者の保険はいつになったらできるのか。新マルサス主義の旗を高らかに掲げた家族計画の推進も、わずかな予算では前進せず、寿命は延びても養老ヰ金制度は確立されず、このままでは、社会保障の確立は百年河清を待つにひとしいといわざるを得ないのであります。大砲もバターもといったが、ついに大砲のみ大きくなって、バターの量は一向ふえず、社会保障は軍事予算の陰に隷属への道をたどり、福祉国家への建設は忘れられて、戦争への方向に進まんとしておるのであります。(拍手)
 鳩山内閣に対する国民の怒りを代表し、私は質問を終える次第であります。(拍手)
    〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 102405254X00519560131_021

発言者: 多賀谷真稔

speaker_id: 31158

日付: 1956-01-31

院: 衆議院

会議名: 本会議