倉石忠雄の発言 (本会議)
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○国務大臣(倉石忠雄君) 雇用の問題につきましては、経済企画庁長官と大蔵大臣から申し上げましたような趣旨でやつて参りたいと思いますが、私どもの見るところによりますれば、われわれの熱心にいたします五ヵ年計画が満足にいくといたしましても、雇用の問題だけはなかなか楽観を許さない状態であると存じます。そこで、政府は五ヵ年計画を作りますについて、この五ヵ年計画を遂行する最終的目的が、経済自立と雇用量の増大というところに重点を置いておるわけでございます。
そこで、ただいま第一にお尋ねになりました賃金政策のことについて、第一次鳩山内閣と第二次鳩山内閣、また引き続いて第三次に至って、各労働大臣が違う考えを持っているのじゃないかというお尋ねでございましたが、賃金の問題については、御承知のように、千葉労働大臣は、いわゆる生産報奨制という表現を用いられました。それから、西田労働大臣は、賃金問題を国民経済的見地に立って取り上げる、たとえば、生産が向上して利潤が上った場合に、これをただ単に労使双方のみで分配すべきものでなく、広く国民全般にも均霑させるべきであるという趣旨のことをお述べになっておられるのは御承知の通りであります。こういう見解の表現においては違っておりますけれども、国民経済との関連において賃金を取り上げるという意味でございまして、根本の精神においては、いずれの閣僚も同じ考えであるのでございます。(拍手)
そこで、私もまた、およそ賃金問題は、ただ単に個々の企業における労使間の力関係の問題としてだけでなく、国民経済全体との関連においてこれを考えなければならないと信ずるものであります。たとえば、利潤が企業に上ったからと申しまして、直ちに賃金の引き上げのみを考うべきではないのでありまして、国民経済の実情に即して資本の蓄積を行うとか、あるいは物価の引き下げをはかるとか、あるいはまた、労働階級に対する福祉施設を強化するとか、国民経済全体が拡大強化する方向において各般の考慮が払われなければならないと存ずるのであります。(拍手)従って、賃金問題は、このような見地から慎重に処理されなければならないと存じますので、世の中に伝えられております、いわゆる一部の労働組合のおやりになろうとしておる春季闘争というようなものについても、労使ともに慎重にやつていただきたいというのが私の考え方であります。(拍手)御承知のように、今回のいわゆる春季闘争にも総評は参加されるようでありますが、全労会議及び中立の一部の組合の方々は当然参加をしないということを表明されておるのでありまして、全労働階級の御意見ではないことは明確であります。(拍手)
そこで、ただいま多賀谷さんのお話にございました、今度の闘争について、日経連が意見を発表いたしました。これについてどう考えるかということでございますが、こういう問題は、でき得べくんば委員会ででも詳しく申し上げたいと思いますが、基本的に申せば、今日の私どもの考え方は先ほど申しましたようでありまして、政府が三十一年度予算を編成するに当りましても、われわれは、消費者米価は上げないように、鉄道運賃も上げないように、しかも、窮屈なる財政の内部においてすら、なおかつ勤労階級の所得税の軽減をやろうという考え方でありまして、そこへ持ってきて、御承知のように、すでに、三十年度は、輸出の増強の他と相まつて、日本の経済がやや安定したと見るのが常識的であります。その結果、物価は横ばいであります。従って、インフレ時代には、物価が上るからして賃金を上げなければならないというイタチごっこで、実際労働階級は苦しまれたことがあるのでありますけれども、幾ら賃金を上げても、物価がいたずらに上ってきたのでは、結局、生活は楽になりません。しかるに、幸いにして、ようやくにして三十年度は物価が横ばいであって、賃金はどうであるかというと、平均四・七%民間産業の賃金が三十年度において上昇しておることは御承知の通りであります。従って、実質賃金は増加されておるのでありますから、ここのところを一つ勤労階級の人も考えていただいて、今、もうかる商売と、もうからないもの——総評のある人は、御承知のように、申しております。つまり、上った利潤のうち、できるだけよけいとるのだと言うのでありますが、それならば、石炭のような赤字を出しておる産業と、合化労連のように非常に利潤率の高いものど、日を同じゅうして賃上げのストライキをやるというのは、私は少しむちやではないかというふうに考えておるのであります。(拍手)
そういう考え方で、公務員の給与べースについてお尋ねがございましたが、公務員の給与ベースについては、私は、給与担当の閣僚として、来年度予算に定期昇給の原資を確保することに努力いたしました。これはそういうふうになっております。しかし、いわゆるベース・アップということは、今申し上げましたような事情と、国の財政事情等にかんがみまして、政府はベース・アップをいたす考えがございません。
そこで、いわゆる春季闘争ということで、いろいろなことを——たとえば、スケジュール闘争というふうな指令をお出しになるというふうなことが伝えられております。これはまだ実行に移しておりませんけれども、あの、いわゆるスケジュール闘争に示されましたものを拝見いたしますと、これは、あれを実行に移されれば、公務員法に定めてある違法な行為ではないだろうかと私は思うので、そういうことをあえて断行されるならば——そういう違法なことをしていただきたくないと思うのでありますが、かりにそういうことをおやりになったとして、これを見のがしておるようなことがありましたならば、政府の八千万国民に対する義務を怠るということになるのでありますが、政府は、正しい法の運用によって、そういうものに警告を発することは、政府として当然なる義務であるというのが私の考え方でございます。(拍手)
それから、大阪における記者会見などのお話もございましたが、十分にああいうところで私の思うことをなかなか申し上げられなかったのでありますが、多賀谷さんもよく御存じのように、労働法というものは人間と人間との関係を律するものでありますから、元来、なるべく法律、規則などで縛らない方がいいというのが私どもの考え方でございますけれども、しかし、今度おやりになろうとする争議行為を静かにわれわれが観察をいたしましてやはり法に欠陥があるのではないかということを考えますならば、当然われわれはその関係法律を改正するのが国民に忠実なるゆえんであると存じます。(拍手)従って、ただいま慎重に検討をいたしておるということであります。
公労法のことについてお話がございました。公共企業体等労働関係法については、多賀谷さんも御存じのように、これは経営者も従業員もみんな困っておる法律でございますから、ただいま、経営者側と従業員側と公益委員との三者にお願いいたしまして、私の手元で三者で検討を続けております。これは、意見がどうしても一致しないというならば、私はあえて改正を断行しようというわけではありませんが、この法律はなるべく改正した方が双方のためによいと思います。そういうことで今やっております。
その次のお尋ねの、いわゆるスト規制法でございますが、これは今年の八月六日に期限が切れるのであります。この、いわゆるスト規制法というものは、主として電気産業及び炭労の労働関係の法律でございますが、元来、こういう法律はない方がよいのであります。なぜならば、こんな法律がなくても、ほかの法律でやってはいけないということがきまっておるのでありますから、それを解明するために作ったような法律で、屋上屋でありますから、ない方がよいと思いますが、こういうものがあることによって、やはりその当時の労働運動が非常に慎重になったことも世の中の常識であります。そこで、ただいま行われております炭労の問題、すでに新聞にも現われておりますが、ああいうようなことについては、多賀谷さんもよく御存じのように、アメリカであるとか、イギリスであるとかいう国の炭鉱の争議を見たときに、日本の炭鉱の争議のような、保安要員が引き揚げてしまうような争議を今までやっておるでありましょうか。そういうことを考えたときに、残念ながら、ストライキ規制法というものの存在価値があった。しかし、これはまだ期日が来ておりませんから、私は静かに情勢を観察いたしておるというのが今日の状態であります。
ピケラインのことのお話がございました。ピケラインにつきましては、先年いわゆる次官通牒が通達されました。この次官通牒は違法であるとかなんとかいうことを、ある一部の学者が申しているだけでありまして、ピケラインの合法性、順当なことだ、当りまえなことだという解釈は、今日労働界の通説になっていることは、多賀谷先生もよく御存じの通りであります。(笑声)
それからILOの問題でございますが、ILOの理事会に、日本は昨年参加いたしました。そこで、ILOの理事会で近く取り上げられることになっております労働時間の短縮問題でございますが、これは、日本の実情に即応いたしまして慎重に検討をいたさなければ、うかつに決断を下せないということでありました。多賀谷先生も御承知のように、(笑声)この労働基準法のことについてしばしば問題になりますが、ジュネーヴのILOの総会においていつも問題になります日本の基準についてでありますけれども、これは英国などは、経営者と労働者が一緒になってILOの総会に来て、商売がたきである日本の労働基準なんかについても攻撃しています。日本だけである。日本は経営者と労働組合とが別になって、労働組合の方々は、御承知のように、常に政府と企業家の基準違反を攻撃しておられる、こういうことでありまして、私どもはこの基準については、国際関係もございますから慎重にやっておりますけれども、労働基準審議会に答申を求めておりますから、この答申が出ましたならば、われわれはそれによって判断をする、こういうことで、基準法を今改正するとかしないとかいうことを明確に申し上げるわけにはいかないのは、答申を待って善処するということであります。
最後に、自由民主党内閣の労働政策について、いろいろ多賀谷さん独特の御意見は、参考に拝聴いたしましたけれども、私どもは、労働政策は、あえて企業家の利益、労働組合だけの利益を考えて判断すべきでなくて、事業の公共性ということが優先でありますから、八千万国民の利害休戚を念頭に置いて労働政策をいたすということを申し上げる次第であります。(拍手)
〔国務大臣小林英三君登壇〕