足立篤郎の発言 (農林水産委員会)

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○衆議院議員(足立篤郎君) ただいま議題と相なりました、有益鳥獣の保護増殖及び狩猟の適正化等に関する特別措置法案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 狩猟に関する基本制度を定めております狩猟法は、大正七年に制定をみました後、今日まで数回にわたって改正せられておりますが。最近では昭和二十五年に大幅な改正が行われ、鳥獣の漸減傾向に対処しまして、狩猟鳥獣の捕獲に関する農林大臣または都道府県知事の一般的な禁止または制限の権能、キジ、ヤマドリ等、本邦独自の鳥類につき、その捕獲数の制限と販売禁止等の法的強制をはかることにより、鳥獣の捕獲を適正なものとするように努めるとともに、他方では、鳥獣保護区の設定と保護区内における営巣、給水、給餌等の保護施設の設置等、鳥獣の保護育成のための施設を講じ得まするように措置いたしましたことは、各位のすでに十分に御承知のところでございます。
 しかるに現状を観察いたしますに、これらの措置にかかわらず鳥獣減少の趨勢は一向に衰えないのみならず、このままに推移いたしますならば、鳥獣資源の枯渇は結局おそるべき事態にまで立ち至るであろうことが憂えられるのでありまして、この際鳥獣保護行政の上におきまして、新生面を開くことが必要であると痛感いたすものでございます。しかして、このように鳥獣が激減しました原因を探究いたしますに、近年の天候異変、農薬による被害または過去における森林の過伐乱伐や、都市の膨脹に基く棲息条件の変化等、人為の及ばない事情、または経済、文化の発達に伴って真にやむを得ない事情によるところもあるのではありますが、一面、中央、地方における総合的かつ計画的な保護増殖計画の樹立とこれに対する予算措置等、積極的な実行面にも欠くる点がありましたことを否定できないと思いますし、他面、鳥獣ないしは狩猟についての教育、普及宣伝、啓蒙等の指導面の努力の不足があり、あるいは法令上の不備または取締りの不徹底に乗じて乱獲が行われておりますこともまた事実であると存ずるのであります。
 よってわれわれといたしましては、自然界における鳥獣の減少が、国民生活の内容を貧しくいたしますと同時に、農林水産資源に与える影響も少くない点に思いをいたし、この悪化した事態をすみやかに改善いたしますために、国、地方公共団体及び鳥獣の関係のある諸団体が、独自にあるいは相互に協力して有益鳥獣の保護増殖と狩猟の適正化、狩猟道義の高揚等を推進すべく、これがために必要な措置及び制度を整備いたさんとして、ここにこの法律案を提出したのであります。以下要約してその内容を御説明申し上げたいと存ずるのであります。
 まず、農林大臣及び都道府県知事は、それぞれ鳥獣保護審議会の意見を聞いて、有益鳥獣の保護増殖、狩猟の適正化、愛鳥思想の普及発達、有害鳥獣の駆除等を内容とする鳥獣保護計画を定め、国及び地方公共団体は、その実現に努めますとともに、これらの計画の実施に必要とする経費について規定いたしております。このこととも関連いたしまして、鳥獣及び狩猟に関する重要事項を調査審議するために、農林省に中央鳥獣保護審議会を、都道府県に都道府県鳥獣保護審議会を設けることにいたしました。
 次に、狩猟の適正化をはかりますために、現行狩猟法に対して.この際若干の特例的な規定を設けることにいたしておりますが、そのおもなるものを申し上げまするならば、次のごとくであります。
 その一つは、初めて狩猟免許及び狩猟登録を受ける者に対しまして、教育的意味をもつ狩猟者試験を課することとした点であります。
 その二は、農林大臣は、都道府県知事に対して、狩猟免許または狩猟登録の数の制限を勧告し、都道府県知事は、勧告の範囲内で免許または登録の制限を行うことができることとした点であります。
 その三は、猟友会をして国または地方公共団体の行う猟政に協力させ、その専門的知識の活用をはかりますために、猟区の管理経営の委任、法令の普及、その違反防止への協力、狩猟免許の下付等の事務の委任等ができる道を開いた点であります。
 最後に、猟友会員の自主的組織によりまして、有益鳥獣の保護増殖と狩猟の適正化に努めさせますとともに、会員の品位の保持、指導連絡をはかり、もって狩猟行政の円滑な実施に資せしめる目的をもって、全国猟友会及び都道府県猟友会の設置、及びその定款、業務等について規定することにいたしたのであります。なお猟友会以外の団体に対しても愛鳥思想の普及等の事業を委嘱し、助成することが出来ることといたしております。
 以上がこの法律案を提出した理由及び内容の概略であります。
 この際、委員長のお許しを得まして、この法案が議員提案としてここに提出されるに至りました経緯の概要を追加説明として申し上げさせていただきたいと存じます。
 実は、昨年春より全国猟友団体より熱心な請願がございまして、狩猟者団体法を制定し、猟友会を法制化するとともに、現在都道府県の収入となっております狩猟税四億円余りがございますが、これを目的税として、有益鳥獣の保護政策を積極的に講ずべきであるとの意見があったのでございます。当時は保守合同以前でございまして、当時与党でございました民主党におきましては、政務調査会において立法の方針を決定いたしたのでありますが、自由党におきまして党議決定をみないまま保守合同になったのであります。かようないきさつにかんがみまして、合同実現後あらためて調査研究をいたしたのでありますが、狩猟者団体の組織法にあわせて有益鳥獣の保護増殖をはかるという原案につきましては、主客転倒のきらいがありますので、衆議院法制局、農林水産専門調査室、林野庁当局等に調査研究を依頼し、三カ月余にわたって検討を重ねました結果、本来の目的であります有益鳥獣の保護増殖を主題といたしまして、その目的を達する手段、方法の一つとしてこの際狩猟者団体を法制化し、これを規制して猟友会の責任と義務をも明らかにし、乱獲、密猟の防止等に徹底を期したいという方針にいたしたのでございます。
 なお、立案当初農薬に関する鳥獣の被害を考慮いたしまして、農薬使用についての若干の規制を考慮いたしたのでありますが、関係者の反対意見もございましたので、農薬に関する条文をすべて削除しまして、森林病害駆除の場合、現在政令で定められている注意事項を順守せしむることによって、害虫の天敵であるところの有益鳥獣の不測の損害を防止したいという方針でございます。
 なおまた、日本鳥類保護連盟等より愛鳥思想の普及事業等につきまして、その委託を受け、必要な助成を受けることができるようにすべきであるとの意見もございましたので、この部分を修正いたしまして、本案にございます通りその「猟友会その他の団体」という字句を追加いたしたような次第でございます。日本鳥類保護連盟等のいわゆる鳥獣愛護団体から、本法案の内容につきまして、猟友会の規定をのみいたしているのは不当であるとの意見もございますが、提案者といたしましては、有益鳥獣激減の理由でありますところの農薬あるいは気象条件等の真にやむを得ざる面は別といたしまして、人為による乱獲または狩猟法の規定を無視する密猟を防止し、あわせて積極的に有益鳥獣の保護増殖をはかるためには、狩猟者団体を規制し、狩猟者をして相互に道義的責任を持たせてその目的を達する以外に実効ある措置はないと信じているのでありますが、従来の実績に徴しますように、単に官憲による取締りのみでは全く実効の上らないことは幾多の事例によって実証されていると存じます。本法案に狩猟者団体の組織法を加えましたことは、主として以上の理由によるものでございまして、猟友会は若干の権限を得る半面、大きな責任と義務を課せられる結果になるのでありまして、将来必要によっては鳥獣保護団体等をも正式に本法案に加えることは決してやぶさかではありません。
 思いまするに、終戦後十年間、いろいろの事情がございますが、ともあれわが国に生息する鳥獣がおよそ三分の一に激減したと言われておりますことは、まことにゆゆしき問題でございまして、人類の歴史とともに共存共栄して参りました有益鳥獣が、異常な減少の趨勢をみますることはさびしき限りでございますが、この際有益鳥獣の保護政策を国家的施策として大きく取り上げ、まずその一歩を進めますように、ぜひとも本法案が成立いたしますように、委員各位の御理解を賜わりまして、慎重御審議の上、すみやかに御可決賜わりますよう、お願いいたす次第でございます。

発言情報

speech_id: 102415007X02319560327_005

発言者: 足立篤郎

speaker_id: 9696

日付: 1956-03-27

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会