千葉信の発言 (本会議)
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○千葉信君 私は日本社会党を代表して、ただいま提案されました憲法調査会法案に対し、首相並びに提案者にその疑義をたださんとするものであります。
鳩山首相は、口に友愛の精神を説かれる。しかし、鳩山内閣の施策に果して友愛の精神を見出すことができるか。政府はその防衛力の増強に当っても、国力の許す限度にこれを行う、果してそうであるか。今日経済の正常化が叫ばれ、企業の好転、貿易の黒字が謳歌されている一方において、国民生活はいかなる現状にあるでありましようか。国警本部の調査するところによりましても、二十九年度における国内の自殺者総数は二万九千七百九十四人、しかもその六割は、生活苦と病苦によるものであります。換言すれば、われわれの同胞が、日本の国のどこかで毎日八十二人ずつみずからの手で、貧困のために病苦のために、次々と自分で自分の命を縮めていっているのであります。同じように、貧困によるゆえに、家庭不和、病弱等のために六万七千六百十人が家出人として街頭にさまよい出ているのであります。一日百八十五人もの人々が、毎日毎日、次から次と不仕合せな人生の第一歩に踏み迷い、悪と犯罪の温床となっているのであります。一日平均十五件に上る強盗事件、一日八人ずつが殺されている殺人事件、窃盗やあき巣ねらいや身売り等々、悲しむべき今日の日本の状態というものは、これこそまさに日本の象徴であります。今日の国民生活の象徴であります。(拍手)国力に相当する増強と言いながら、自分の意のままにならない、アメリカの強要する軍備の増強が行われ、そのために一切の民生に対する施策が犠牲になっているところにその原因があるのであります。生活困窮者千二百万人と言われ、完全失業七十万以上、半失業三百四万と政府みずから発表し、その生活困窮者に対する救済いかん。その失業対策いかん。老人、児童の保護、疾病、結核対策の貧困、焼け石に水の住宅対策、政府は、社会保障費をちょっぴり増額したと言うけれども、実態は対象人員の増加分さえまかない切れないのが真相であります。一体音羽の御殿からは、このみじめな暗たんとした国民の生活が見えないのか。しかもこの国民生活の現状には目もくれずに、さらにその増強と合法化と戦争の危険を冒して、憲法の改正が企てられているとしたら、これこそまさに日本の悲劇であります。(拍手)首相は国民生活の現状をどう見ているかお伺いしたい。
今回の提案はその理由として、現憲法は占領中に制定されたものであり、立案過程にも問題があるとしているのであります。占領下の憲法だからという言い方は、再軍備論争における戸締り論と同工異曲、きわめて低い常識をねらった性悪なものと言わなければなりません。(拍手)かりに占領下その制圧のもとにあったとしても、国会における賛否の自由まで拘束されていた事実はないのであります。しかるに今日なお衆議院議員として現存する自由民主党代行委員大野伴睦氏を初め、八十二名の現議員を含む保守党が、当時一人の反対もなく、進んで賛成した事実は何とこれを釈明するか。(拍手)かかる態度が、国民の代表として許されるものかどうか。問題は占領中であったなどということではなく、憲法そのものの持つ原理が正しいかどうか、社会の進化に適するかどうか、国民の幸福と安寧を守り得るものかどうかということでなくてはなりません。(拍手)なるほど現憲法は、アメリカの草案によったものであることは、私も否定はしない。しかしながら同時にその憲法は、日本の侵略を事とした軍隊と帝国主義、日本の根強い封建性を打破して、あくまでも平和と自由と民主主義に徹する高邁なるものであったことも、また否定すべくもないことであります。(拍手)それだからして保守党の諸君は賛成したのではないか。もしそうでないというならば、今回の改正に当っても、また再び不平等条約のもとで押しつけられて制定したという釈明が用意されておるのではないか。節度のない保守党の人々が相手では、そこまで確かめておく必要がある。首相並びに山崎君の御答弁を承わりたい。
また首相は、自主憲法の制定を主張されておられますが、今日の日本の状態において、果してそれが可能であるかどうかという点であります。今回の改正の企図は、ニクソン副大統領の来日によって明らかにされたように、アメリカの意思、アメリカの要望であることは、もはやおおうべくもないところであります。すなわち朝鮮戦争を契機として、警察予備隊、保安隊、自衛隊と経過した歴史的事実、封じ込め作戦から、アメリカは今日いわゆるニュールック戦略体制と呼ばれる大量報復爆撃戦術に切りかえられました。その実施に当ってのアイゼンハワー大統領の教書や、ダレスの談話によってもすでに明らかなごとく、その新しい戦略体制のもとに、アメリカの陸軍の大幅削減が行われ、日本の命ぜられた役割は、アメリカの陸軍にかわることであり、すなわち日本地上軍の増強であった。ニクソンの言うアメリカの誤まりは、実は誤まりではなくて、アメリカの世界政策、戦略体制の変化そのものである。この背景が、政府の意図する憲法改正の背景であることは、今日多くを語る必要もないのであります。(拍手)ことにこの四つの島に点在する六百五十三カ所の軍事基地、ことに立川、横田、ジョンソンを初め、原爆、ジェット機、飛行場の拡張による原爆戦略基地化、原爆搭載機の持ち込み、オネスト・ジョンの持ち込み、しかも日本の防衛庁の長官が、日本の防衛について全くつんぼさじきにいるという事実、防衛分担金の折衝、防衛力の増強に歪曲される日本の予算編成へのアメリカの容喙、ドルに羽がい締めされた日本の経済、これらは基本的には安保条約、行政協定によって完全に従属せしめられた日本が、なお独立国であり、独立国としての自主的憲法改正が行えるなどという、あられもない幻想を国民に与えることは、国民を欺くもはなはだしいと言わなければならない。首相の御答弁を承わりたい。
また一月十六日ライフ誌に報道されましたいわゆるせとぎわ政策、翌十七日、ダレス長官自身があらためて記者会見で語ったところによりますと、せとぎわ政策なるものは、今までアメリカがやってきたやり方を単に言葉をかえて言ったに過ぎないのだというのであります。力の政策と呼ばれる戦争に券き込まれないで、戦争のせとぎわまでいくことの必要な政策なるものは、きわめて危険なものであり、一たん、もし事志と違っても、そこにはもはや何ら戦争を回避できるという保証もないものである。すなわちプラウダによれば、休戦中の朝鮮でも、またはインドシナでも、近くは台湾水域等においても、しかけられたその戦争が回避されたのは、原爆の脅威のためではなくして、国際緊張緩和を望むがためであったのだと言われているのであります。私の言いたいのは、かねてわれわれの指摘したように、日本の持つ軍備が、かかる危険な力の政策の支柱として利用されるためのものであり、従ってこのことは、再びわれわれをわれわれの意に反して戦争に引きずり込まれるおそれのあることであります。伝えられるところによりますと、アメリカにおいては、東北アジア防衛機構の構想があるといわれております。すなわち日本、朝鮮、台湾を含むこの構想は、日本の憲法改正をしない限り、あくまでも構想にとどまらざるを得ないというのであります。吉田前首相がある席上で、憲法を改正しなかったために日本は朝鮮出兵を押しつけられずに済んだじゃないかといって手柄話をされたという。吉田前首相の功罪は別として、これはまさに傾聴に値する話である。すなわち現憲法下でも軍隊を持てると主張する政府が、さらに進んで改正を強行した結果出てくるものは、海外派兵、防衛機構への参加である。首相がもし真にその言う通り、独立国にふさわしい自主憲法を念とされるならば、日本の今日置かれている立場を直視し、まずその隷属せる状態を断ち切ることに全努力を傾注すべきである。(拍手)これなくして行われる憲法改正への第一歩は、国民が断じて侵すまいと決意している戦争に再びかり立てられる道を開くものである。自主憲法は、まず日本の完全独立から、日本の独立は、まず不平等な講和条約の改訂、安保、行政協定の廃棄である。あえて首相の所信をお尋ねします。(拍手)
さらに私は、提案者並びに総理にお尋ねをいたします。元来憲法は、国民が政府を制約する目的をもって制定するものであり、そのことは憲法の前文におきまして、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」とあることを見ても明らかであります。しかるに今回提案せられた法案によれば、「調査会はこれを内閣に設置する」とあり、しかもその委員は内閣が任命するとなっているのであります。その任命に当ってみずからの恣意によってその結論をみずからの志向するところに拉致する任命が行えるのであります。立案そのものが国会の結論に影響を与えることについては、経験上何人もこれを否定し得ない事実からすれば、この内閣に設けられるということ自体に重大な誤まりを持つものであり、本調査会は諮問を待たず審議を進めるものであるなどという政府の説明を、単なる見せかけだけであると言わなければなりません。この点について、提案者並びに首相の御答弁を承わりたい。
私は想起する。かつて日本が太平洋戦争遂行中、鳩山首相は、時の権力に抗し、翼賛政治に屈せず、最後の一人となるとも、きぜんとして節操を守り抜いた態度、心ある国民の讃仰の的であった。しかるに今日の鳩山首相は、在野時代は、自衛隊は憲法違反であると言い、憲法改正を要すると言いながら、首相の地位につくや、軍隊を持つことは憲法違反にあらずと変節をあえてした。鳩山首相はこの変節にについて、現在の憲法下で、自衛隊の法律が国会を通過したのだから、憲法違反にはならないと解釈するに至ったと言われるのである。これほど国民を愚弄し、これほどみずからを卑下した言葉はないのであります。もっとも、日ソ国交回復についての談話、憲法に反対だと言い切ったあとで、問責決議案を突きつけられるや、こともなげに取り消したりする、一体一国の総理ともあるものが、あぜんとするほどあっさりと取り消しをやり、豹変をやり、陳謝して省みない姿は、何のことはない、初代総裁になりたいためばかりと国民は見ているのである。(拍手)一体この態度は、眼中国家国民ある態度だといえるでありましょうか。お家芸が、立身出世を事とすることは自由である。しかしそのために起る国家国民の不幸は看過できないのであります。首相今日までの失言と取り消しは、まさしく首相の座に居すわる資格なしと申し上げても、あえて過言ではあるまい。首相の釈明をお伺いしたい。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕