堀眞琴の発言 (本会議)

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○堀眞琴君 私は、ただいま上程になっております憲法調査会法案について、次の一、二の点について質問をいたしたいのであります。
 提案者は、現在の憲法は占領下において、しかもマッカーサー草案を基礎にして作られたものである。従ってこれを検討し、改正すべきである。日本の実情に即した憲法を作らなければならぬというのが提案理由の説明であります。私はこれらの問題、この提案者の理由とするところについては、いろいろ質問をいたしたいのでありますが、時間が五分と限られておりまするので、それらの問題は、いずれ委員会に譲ることといたしまして、私はここでは、憲法改正には一定の限界があるのではないかということについて質問をするのであります。青木君、廣瀬君、それぞれ天皇の性格について質問をされました。私は、これを主権在民との関係において述べてみたいと思うのであります。御承知のように、憲法の前文には「ここに主権が国民に存することを宣言し、」云々、また「その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、」云々とあります。主権者が国民であることは提案者も、それからまた自民党の質問者も、緑風会の質問者もこれを認めておるようでありまするが、しかし天皇の地位を元首という名前に変えてしまおうという点には、非常に大きな問題が存するのであります。ただいまも鳩山首相は、この問題は重要であるからして、憲法調査会にいずれ諮って、その上できめたいと思うという返事をしております。現在の憲法は、天皇の性格を国民の象徴として規定しております。青木君は一番先の質問において、シンボル、象徴という言葉は、いまだかつて使われておらないという話でありました。しかしながら、憲法解釈上、国王の地位がシンボルとして認められていることは、これは外国では一般でありまして、たとえばシドニー・ウェッブが書いておりますところの大英国家の構成に関する著書の中で、国王の地位について、大英国を構成する諸民族の象徴が国王である、このように述べております。日本でもシンボルという言葉は、今度の憲法で初めて使われたのではありません。伊藤博文が編さんいたしました憲法資料に載っております甲案試草によりまするというと、国王は国権のシンボルなり、国王は一切の諸般の政権を総撹し云々と書いているのであります。従ってシンボルという言葉は、決して現行憲法において初めて使われたのではなくて、しかもこのシンボルという言葉は二つの意味を持っております。一つは、単に民族結合の象徴としてこれを用いる、もう一つは、政権を総擁する地位において、それが国民のシンボルになる、こういう二つの意味であります。
 明治憲法の草案となった最初の甲案試草は、これはその後廃棄されまして、乙案試草となり、さらに明治憲法の草案が確定して明治憲法が制定されたのでありまして、その確定において、国王は国権のシンボルなりという言葉は削除されております。しかし一切の諸般の政権を総撹する地位というものは、明治憲法の第四条に「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権を総撹シ」云々という文章になっているのであります。その憲法義解における伊藤博文のこれに対する解釈によりましても、この間の事情をわれわれは十分に見ることができると思うのであります。現行憲法の天皇に与えた性格としてのシンボルというのは、シドニー・ウェッブ夫妻が書いているところのイギリス国王の地位を表明した言葉と同じだと申さなければなりません。
 時間がありませんので、その点についての説明をこれ以上申し上げることはできないのでありますが、しからば現行憲法において、天皇が国民のシンボルであるということに関して、どういう国家機能があるかということが問題になるのであります。現在のシンボルの意味が、ウェッブ夫妻の言うような意味であるとするならば、当然国政に関する機能を国王が持たないことは、これはもちろんであります。国事に関する機能をのみ持つものであるということに規定したのはその意味であります。国事に関する機能という意味は、要するに国の機関によって決定されたところのものを表示する地位であるというだけであります。しかもこれには内閣の助言と承認という条件がついているのであります。天皇を元首にするということは、甲案試草に述べられた国王は国権の象徴であるという地位、さらに明治憲法に言うところの「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権」云々という、その地位に戻そうとするものでありまして、主権在民の思想とまっこうから反するものだと申さなければなりません。

発言情報

speech_id: 102415254X01219560220_017

発言者: 堀眞琴

speaker_id: 15985

日付: 1956-02-20

院: 参議院

会議名: 本会議