羽生三七の発言 (予算委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○羽生三七君 私は話し合いをしなければならないという総理の決意を大いに買うのであります。そうしていただきたいのであります。しかし私は、実際には見通しとしては非常な困難なところへ来ている。しかも野党のわれわれがその内容に立ち入ることをあえて避けなければならないようなほどのまた重大な問題でもあるわけであります。しかし私は興味深い問題として、この日ソ交渉以外の各種の今日までの平和条約の交渉開始の町から妥結に至りますまでの時期というものを調べてみたのです。これは興味深い問題だと思うのであります。たとえば日清戦争についてみますと、これは明治二十八年の三月二十日に日本側が伊藤、陸奥全権、相手の清国側が李鴻章全権で、この第一回会見が下関、で行われたのです。三月三十日に休戦条約が締結せられております。続いて四月十七日には日清講和条約及び付属書が調印されておるのであります。わずかに一カ月足らずの期間であります。次に日露戦争の場合を見ますると、これは一九〇五年、つまり明治三十八年でありますが、この八月十日に、御承知のように日本側が小村全権と、ロシア側がウィッチ全権との第一回会議がポーツマスで行われました。九月一日に日露休戦に関する議定書が調印をせられて、続いて九月五日に日露講和条約が成立いたしております。僅々二十五日間であります。
 さらに第一次世男大戦の場合、すなわちヴェルサイユ平和条約ですが、このときはどうかと見まするというと、一九一九年、すなわち大正八年でありますが、その年の一月十八日にパリで講和会議の第一回総会が開かれております。続いて同年の六月二十八日にいわゆる連合国とドイツ国とのヴェルサイユ平和条約が締結されておる。五カ月と少し余であります。
 戦後を見ますと、イタリアの平和条約の場合は一九四六年、昭和二十一年の四月二十五日にパリ四カ国外相会議が開かれて、七月十二日に外相会議を終結し、同年の七月二十九日に二十一カ国参加の講和会議が開始されて、同年十月十五日、講和会議が終結いたしております。この場合は約六カ月であります。
 私は先にも申しましたように、重要な平和条約を拙速でいいとは申しません。そんなことは毛頭考えておらない。しかし、今述べたような過去の類例を見まするというと、現在の日ソ交渉とこれを照合した場合に、ほんとうに政府がやる気があるのかないのかを私が疑うことは、必ずしも当を失したことではないと思うほどに、それほどに遅々としている。世界のあらゆる重要な講和条約が……。最近のアデナウアー首相のソ連訪問に伴うあの疾風迅雷的な条約の締結はこれは別としても、歴史的に講和条約締結というものがかくも長く時間を要するということはほとんど類例がない。それだから、何でもいいから早くまとめろとは私は申しません。しかし、このような事実を見た場合に、私は先にも申しましたが、拙速でいいとは言わないけれども、政府の熱意というものを実際に疑いたくなる。しかし、今ここで私は平和条約の方式がいいとか、あるいは暫定方式がいいとか、あるいは領土問題はどの程度なら話し合いをつけたらいいとか、そんなことは毛頭お開きいたしません。しかし総理が日ソ交渉の成立を希望していることもさっきのお答えでよくわかる。ぜひ成立させたいと言っていらっしゃる。しかし問題は総理のこの問題に関する基本的な態度であります。すなわち鳩山総理は、この国家的重要問題をあまり党内事情と関連させすぎておりはしないか。ここのところは総理一つよくお聞き願いたい。この重要問題を総理はあまりに党内事情と関連させすぎておる。超党派外交どころか、与党内の調整さえ困難ではないですか。もちろん、私は総理が交渉をぜひ達成させたいと念願しておることを信じております。しかし自由民主党内には、まだあなたと方針を異にして、ときには足を引っぱろうという勢力もいるのです。しかも悪いことには、これが総裁問題と関連をしておる。これは事実であります。もし、総理が日ソ交渉について真に熱意を持つならば、もっと努力して党内をまとめなければだめであります。そういう努力がない限り……、ソ連の百パーセントの譲歩があれば格別ですよ。しかしそうでない限り、日ソ交渉は私はデッド・ロックに乗り上げる危険性は十分にあると思う。外交交渉でありますから、相手が百パーセント譲歩するか、こっちが百パーセント譲歩するか、そうでなければ妥協か、これ以外にはない。だからあなたが党内の取りまとめをやらないとするならば、ソ連の百パーセントの譲歩がない限りはこの交渉は非常に困難なところに落ちてくる。だから総理が先ほどお話しになったように、もしほんとうにこの日ソ交渉の成立を念願しておるならば、総理は、党内の少くとも総理と見解を異にしておる人たちの意見を取りまとめて、交渉妥結の方向に進むよう努力をせなければならぬと思いますが、そういう努力をお払いになる考えがありますか、いかがでありますか。

発言情報

speech_id: 102415261X00919560229_013

発言者: 羽生三七

speaker_id: 21186

日付: 1956-02-29

院: 参議院

会議名: 予算委員会