1956-12-03
衆議院
樋口重雄
商工委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会
樋口重雄の発言 (商工委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会)
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○樋口参考人 私ただいま御紹介いただきました日本鉱業協会の専務理事をいたしております樋口でございます。
ただいま松本さんからお願い申し上げました通り、中小鉱業対策に関しましては、ただいま金属鉱業界の最も大きな問題の一つとして取り上げておりまして、ぜひこの対策を樹立して参りたい、またそのためには政府予算並びに国会の皆様方の御協力をいただきたいというふうに考えております。現在中小企業全般の問題につきましては、各方面でいろいろ関心を払われておるようでございますが、その中小企業の中の中小鉱業というものに対しましては、従来の保護助成という面が比較的少なかったんじゃないか、中小企業金融公庫等の融資の統計から見ましても、鉱業に対する融資ということは、同じ地下資源の石炭に比較しましてもはるかに少いのでございまして、他の中小企業と比較いたしますとなおさら、この中小鉱業というものは、まことにこういう面では日の目を見ない産業ではないかというふうに考えられます。しかも産業政策上非常にこれは大事なことではないか、鉱業の推進はぜひ一つこの際取り上げていただいて、中小鉱業問題について十分なる施策をお願いいたしたいというふうに考えております。よろしく御高配をお願いいたしたいと存じます。
中小鉱業の問題につきましてはこの程度にいたしまして、現在鉱業界で取り上げております諸問題につきまして、この機会に簡単に皆様方のお耳に入れておきたいと考えますので、しばらくお時間を拝借いたしたいと存じます。
その第一番目は、鉱床補填積立金制度の制定でございます。これは数年前から鉱業界で取り上げておりまして、たびたび皆様にもお話申し上げておることでございますが、この問題は鉱業界全般に非常に影響の大きい問題でございますし、また産業政策上ぜひ取り上げていただきたいというふうに考えておりますので、次の国会あたりでは、ぜひ実現のために御高配をいただきたいというふうに考えております。この趣旨はもうすでに御承知と思いますが、鉱山の生命は結局埋蔵鉱量の確保でございます。この埋蔵鉱量を確保するためには常に探鉱をやらなければいかぬ。しかもこの探鉱をやるためには、相当莫大な費用がかかる。しかもその探鉱が果して成功するか失敗するかということはわかりません。あるいは探してみても全然物が見つからないという場合もございます。多額な費用を鉱業者としてはむだに捨てるという場合もあるわけでございますので、この探鉱をするための積立金をいたしたいということでございます。しかもこの探鉱というものは景気の好不況にかかわらず、会社の利益があるかないかにかかわらず、常に一定の速度、一定の規模においてこれを進めていかなければならぬという宿命的なものでございますので、利益金のうちの一定の割合を課税なしで積み立てていって、常にこういった探鉱を継続して参りたいということがこの根本的なお願いの趣旨でございます。ただいま鉱産物は年々七千万ドルも輸入いたしておりますが、この探鉱を促進することによりまして、この鉱産物の輸入もある程度これをチェックすることができるんじゃないかというふうにも考えられます。また諸外国においては、すでにこの減耗控除制度もしくは鉱床補填積立金制度を実施いたしましてこの鉱業を保護いたしておるわけでございます。この諸外国の例は従来あまりごらんに入れておりませんでしたので、本日参考資料といたしまして皆様のお手元に差し上げてございます。この資料の中の一番最後に「世界鉱産額と本制度実施国の鉱産割合並に国数」という長い表がございますが、その表をごらん下さいましてもわかりますように、左の端に当制度実施国といたしまして国数は六としてあります。鍋墨の数字も載っております。それからその次に国営で鉱業を営んでおるためにこういう制度を必要としない国、その次には未実施国中特例国、とればローデシアとかコンゴというのは非常にコストが安いので、こういう制度を必ずしも実施しなくてもよろしい。こういう国を合せますと、大体最初は銅鉱の表でございますが、銅鉱では国数が九、銅量比では九〇%に上っておるわけであります。未実施国としては、日本、メキシコその他がございます。同じように鉛におきましては七三%が実施いたしておりますし、亜鉛におきましては六七%が実施しておるわけでございます。世界の主たる鉱産国においてはこの制度によって鉱業を特別に保護いたしておるわけでございまして、御承知のように鉱産物は国際商品でございます。しょっちゅう海外の相場その他に日本の産業もさらされておるわけでございますので、こういう国際競争力に打ち勝つためにはこういった諸外国で実施しております保護政策はぜひわが国においても実施をお願いしたいというふうに考えております。
なお最近この鉱床補填積立金に対しまして根本的な反対意見が出ておりますが、その反対意見の主たる観点と申しますか、その要点は、探鉱して成功した場合には鉱区が一定の埋蔵鉱量を取得するわけでございますが、これは一つの資産である。その資産を取得に先だち事前に損金引き当てをするということは税制の根本的建前を著しく変更させるということが一つの非難の論拠でございますが、この点に関しまして、これはただいま差し上げました書類の一番最初の書類に税制上検討すべき問題点というのがございます。これが大体反対意見でございます。その次に添付してございます鉱床補填積立金制度についての問題点に関する意見というのが私どもが考えておりますこの反対意見に対する反駁の要旨になっております。この鉱産資源というものは、建物とか機械とか、そういった一般の資産とは非常に違うのでございまして、海外でもこれは埋蔵鉱量を減耗性資産と称しまして、一般の建物、機械類とは別個の取扱いをしておるわけでございます。従いまして一般的のこういう償却資産と申しますか、建物、機械などの取得のために引き当てる積立金というものとは区別ができるはずだと考えております。なおその他ここに列挙してございますようないろいろな反対意見がございますが、最後に、これはアメリカ、カナダ、フランス等において実施しておりますが、その弊害が指摘されているのはどうかという指摘が第六番目にございますが、この点につきましてアメリカその他で実施しておりますのは私どもがお願いをしております鉱床補填積立金制度とはだいぶ内容が違いまして、いわゆる減耗控除制度でございまして、無税で積み立てました積立金の使途に対しまして何ら制限がないというところにその弊害が起る重大な要素があるのじゃないか。私どもがお願いしておりますのは、その使途については探鉱のみに使うという一つの大きな制限をつけていただいてけっこうであるというふうに考えております。こういった諸外国の本制度に対する非難というものも、必ずしも私どもお願いしておる鉱床補填積立金制度にそのまま当てはまるというふうには考えられないのじゃないかというふうに思っております。
なおその次には通産省の鉱山局の見解として出ましたものを私どもいただきましたので、その写しを作りまして皆様方に御参考にお目にかけるつもりでここに添付しておりますので、後刻ごらんを願いたいと思います。
鉱床補填積立金の問題はその程度にいたしたいと存じますが、もう一つ問題は最近海外から——これは各方面において同じようなことだと思いますが、私ども金属鉱業界に関しましても、いろいろ諸外国からの呼びかけがございます。それはたとえば技術者を派遣してくれぬかとか、あるいは資本を投下してくれぬか、あるいは物を輸出してくれというふうにいろいろ働きかけがございます。御承知のように、南方、南米その他後進国に対しましては、諸外国の大国がみな関心を持って、それぞれ政府がある程度のめんどうを見て、早くいえば国力をそういう方面に進展させるというために技術者もあるいは政府が全部給料を持って、無料で派遣するといったような例もあるやに聞いております。わが国におきましてはそういった施策というものが非常に不十分ではないかというふうに考えられますが、技術者派遣に関しましても、海外の諸外国に対する投資にしましても、みな一企業体が自分の力で自分の危険負担においてやらなければならぬ。一度その政府に政変が起った場合に、果して投資した金がどうなるか。しかもその金額は非常に膨大な場合が多いのでございまして、もしそれが全然無なものになれば、その会社の生死にもかかわるといったような場合もあるわけでございます。こういった日本の海外進出の機運が今非常に起って参りまして、日本としてはこの際海外のそういう要請にこたえて大いに国外に発展する。これはたとえば貿易関係とかあるいは人口問題とか、いろいろな面において日本にプラスになる結果が生まれるのじゃないか。遠い将来において必ずプラスになるということは考えられますが、現在においてそういったことを一企業体の責任においてやるということは、実際上なかなか困難でございます。従いましてこういった問題につきましても、保険制度その他があるやにも伺っておりますが、十分なる施策を考えていただきたいというふうに存じます。
それから最近の輸送力の不足の問題でございますが、鉱産物は年に四百十六万トンばかり輸送しておりまして、なお石炭その他地下資源全般では、現在の国鉄全体の輸送の六割以上、七割近くのものを輸送しておるわけでございます。この輸送力の現在の不足につきましては、地下資源関係全般といたしまして非常に困っておるわけであります。
なおちょっと話はこまかくなりますが、メタル関係の鉱山といたしまして、現在東北線に花輪線というのがございますが、これは好摩から大館を通っております。その間には松尾鉱山とか花輪鉱山、尾去沢、相内、立又、西館、なお大館には小坂、花岡といったような諸鉱山がございまして、非常な輸送をいたしておるのでございますが、この花輪線が非常なネックになっております。これを何とか解決することが、私どもの鉱業関係の輸送力については最も大きな問題でございますので、これについてはなお近く皆様方のところにお願いに上ろうというふうに考えております。
これに関連しまして運賃問題、これは私どもだけの問題ではないのでございますが、国鉄は一割八分程度の値上げだということを言っておりますが、実際問題として各貨物についてこれを見ますと、大体二割から三割程度の値上げになるわけです。間接的に影響してくる影響まで考えますと、三割から四割、あるいは五割というような値上げになりまして、ものによっては製品の価格の五〇%、六〇%が運賃であるといったものも出てくるわけでございます。従いましてこれは、輸送力増強のためには、国鉄運賃はある程度値上げはやむを得ぬと思いますが、一時に二割の値上げということは、その影響するところは三割にも四割にも影響してくるわけでございますので、ものには順がございます、漸進的にやっていただきたい。まずまず現在の私どもの業界といたしまして負担し得る限度は、せいぜい一割程度の値上げじゃないかというふうに考えますので、これは近くまた国鉄の公聴会でお願いするごとにしております。こういった問題も非常に深刻な問題でございます。
もう一つ最後に鉱業資源の保護の問題でございますが、最近電源開発、国立公園その他によりまして、鉱業権が侵害と申しますか、掘れなくなるといったような場合も非常に多いのでございます。ことに電源開発なんかでその用地の候補に上った場合には、試掘権はもう採掘転願を認めない方針だというようなこともいわれております。そのために鉱業権者としては非常な脅威を感じておりまして、この試掘権、採掘権制度を何とかもう少し改正して、鉱業法の改正をお願いしなくてはいかぬじゃないかというふうな議論もあるわけでございます。もちろん国立公園も電源開発も必要な仕事ではございますが、鉱産資源の確保ということもぜひお忘れなく、どちらが国のためになるかということを御考慮いただきまして、慎重に推進していただきたいというふうに考えております。
いろいろ問題もございますが、はなはだ雑駁なことを並べましてお耳をけがしまして大へん恐縮でございますが、私の公述はこれで終ります。