吉田半右衛門の発言 (商工委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会)

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○吉田参考人 ただいま御指名いただきました吉田であります。この一月末からちょうど三カ月ばかりの予定で中近東の石油事情を視察せよとの政府の御命令で先方に参りまして、石油事情の調査をいたしました。石油事情と申しましても石油のマーケッティングの問題、あるいはトレイディングの問題、あるいは需給の問題、輸送の問題、それから石油資源開発の問題、いろいろの問題があるのでありますが、私が取り扱いました問題は、石油資源の開発に関する問題だけであります。従いましてここでお話し申し上げますのは、石油資源の開発ということを中心にいたしまして中近東の事情を見聞いたしましたことをここで御説明申し上げたいと思います。ことにこの問題につきましては、中近東と申しましても中近東全域にわたる諸国というわけではございませんで、イラン国とサウジアラビヤ、この二国につきまして、かねて日本に対しまして現地の在外公館を通じまして経済提携あるいは技術提携の申し入れがあったのでありますが、それが本年初頭以来現地の公館を通じましてかなり具体的な線を出して参りましたので、この話に対し技術的な検討を遂げるということが私の目的であったのであります。
 順序といたしましてイランの方から御説明申し上げてみたいと思います。イランにおける問題どいうのは、実はイランにおけるところの未開発石油資源の開発について日本側と経済協力をいたしたい、こういう現地からの希望が出ておったのでありますが、これは現地公館の山田大使を通じて日本に伝えられて参ったのであります。従いましてこの問題についてまず検討することが必要であったわけでありますが、ちょうどこの問題が昨年の夏ごろから発生いたしましたところが御承知のように現地の方ではスエズ・キャナルの問題を中心といたしまして戦争状態が発生いたしましたので、私の出発が若干おくれて、この一月まで延期のやむなきに至った、こういうことであります。ちょうど一月ごろでありますとスエズ・キャナルの問題も一応落着いたしましたので、出発いたしましてこの問題と取り組んだのでありますが、向うから提示いたしました石油資源の新しい開発地域としてはどういうところがあるのか、あるいは開発条件はどういう条件で日本側に協力を求めてきておるのか、こういう点についてつぶきに向うと連絡し、特に技術的な検討を遂げるということが私の目的であったのであります。まずこの問題から御説明申し上げます。
 先方の交渉またはいろいろな資料提供の責任を持ったのは、ナショナル・イラニアン・オイル・カンパニー、イラン国立石油株式会社で、この株式会社を当局もいろいろ応援し、これと連絡をとって仕事をして参りました。先方の方から日本側に提示がありました地域としては、抽象的に申しますと、現在イランで残っておるところの石油があり得るであろうところの地域については、日本側の希望があれば一つどこでも考慮するから、私の方から申し出をせよ、こういう意味の意向であったのでありますが、その点では実は私どもも、先方の方が詳しいのであるから、ナショナル・イラニアン・オイル・カソパニーの従来の調査によって、どういうところが最も有望であるかということを提示いただくのが先決問題であるというふうに話を持ちかけて、先方から提示され、あるいはサゼストされた地域といたしましてはこういう地域があるのであります。第一の地域はこのカスピアン・シーの沿岸地帯、第二の地域はここにクムというところがありますが、この中央山脈地帯、第三の地域はこのペルシャ湾海岸の広範な地帯、第四の地域はここにオーマン湾というのがあります。このオーマン湾に接近してい嶋パキスタン国境に接するところのチャバル地帯、この四カ所が先方が日本に提示した地域でありますが、これは地図をごらんになりますとわかりますように、どうも日本側でカスピアン・シーの沿岸まで行って石油資源の開発をやるというわけにいきません。きわめて遠方でありますし、輸送その他の点からいっても、あるいは政治的な考慮からいっても適当でないので、これについては私の方からかぶとを脱いだ。第二の中央山脈地帯でありますが、これは実に広漠たる砂漠地帯の中にありまして、交通その他の点からいっても簡単に手を出せそうなところではありません。これについても一応私の方から希望を申し述べることは遠慮しました。第三のペルシャ湾の沿岸地帯、これは実は現在イランで油を出している地域はこのペルシァ湾に近いところの山脈の南の傾斜地帯でありますが、年間三千五百万トン、埋蔵量約三百億バーレルぐらいの大きなスケールのものであります。これは各国がすでに認めているところであります。これについては海面の開発という点に大きな問題があるのでありますので、この点も遠慮しました。結局残るところは、オーマン湾沿岸のチャバルという町がありまして、その名前をとりましてチャパル地区と申しておりますが、このチャパル地区の五百万ヘクタール、北海道より少し狭い地域でありますが、この地域ならば、交通の便宜からいっても、油が出た場合の輸送という点からいっても割合簡単であります。しかもこの辺は、ほかのところと違って、山脈地帯でも、そう大きな砂漠地帯でもない。何とか日本の技術をもってこれを開発することが可能であるというふうに考えまして、この地域を私の方からは申し出をしたのであります。これについては先方は非常な好意を持って取扱ってくれまして、われわれに対して現地の調査その他についての便宜を供与し、かつまた従来この地域について調査してきたところの地質学的なデータを提供してくれました。そこで、この地域はどのくらい有望であるかということでありますが、簡単に言いますと、石油賦存のポシビリティのある地層は、主として第三紀層またはそれにつながるところの水成岩の地層でありますが、この地帯は全部第三紀層におおわれております。これが石油のあり得るところのポシビリティに対する証左であります。第二は、石油の一つの徴候として考えられますところの泥火山がこの地域に散在しております。かなり大きな泥火山でありまして、かつてわれわれが台湾で見たガスの徴候と比べますと、はるかにスケールの大きい泥火山をここで発見することができるのであります。第三の石油の賦存の一つの代表的な構造として、背斜構造というのをわれわれは考えておりますが、この背斜構造を、現在すでに地表から見ることができる。これは特にこの地帯はほとんど降雨がないために、山がほとんどはげ山であります。従って、飛行機から見ても、地層の状態というのが一応鑑定ができるのでありまして、その鑑定した結果によりますと、若干の背斜構造も飛行機の上からこれを見ることができます。こういうふうに考えますと、地質学的にいって、決して油と関連のないものではない。相当に油のあり得る可能性があるのだという結論が出るわけであります。この地域についてぜひわれわれとしては将来われわれの経済協力の対象として取り上げたい、こういうふうに考えた次第であります。ところが、この地域については、実はわれわれがこれを申し出るだけではなくて、イタリアからも、また米国からも、これに対するところの希望の申し出があったのであります。この地域は約五百万ヘクタールほどあるのでありますが、この五百万ヘクタールのうちのパキスタンの国境に近いところの二百五、六十万ヘクタール、これについては、ハント・インタナショナル・オイル・カンパニーという会社がパキスタン内のこの国境に近いところで仕事をいたしておりますが、その会社が、将来の経済協力対象としてこの地域をもらいたいという申し出をやっております。もう一つは、この西の地域約六十万ヘクタールについてはイタリアの会社から申し出が、私が行った当時すでに出ておったのですが、これは三月十五日にイタリァのイエニ、これは国営石油企業団と訳します。ENIと書いてイエー−でありますが、この会社からも向うのナショナル・イラニアン・オイル・カンパニーに対して申し出があり、私が行っている間にこの話が急速に進展いたしまして、三月十五日にはほとんど調印したということになっております。従って三百五十万ヘクタールの若干はすでに海外の会社にとられてしまって、約二百五十万ヘクタールしか残っていない、こういう格好でありますが、これはナショナル・イラニアン・オイル・カンパニー並びに向うの政府当局の非常な好意によりまして、われわれの希望の中心をなすところのこのチャバル地区一帯約二千五百万ヘクタールはなお留保してあるという格好になっております。ほかの問題と関連がありますが、この問題だけ先に結着点まで申し上げますと、私はちょうど五月一日にテヘランを出発してこちらに帰ったのでありますが、そのとき先方の代表からも、できるだけ早くこの地域について申し入れをしてくれないと・アメリカからも申し入れがあり、あるいはイエニからも、一部はすでに決定しているが、さらにこれを拡張の申し入れがあるというような実情であるので、なるべく早くこの地域について日本側の正式な申し入れとそして正式の交渉開始ということを希望する旨の連絡があったのであります。この旨私は政府に連絡をいたしました。
 このチャバル地区は一応これだけにいたしますが、ちょうどチャバル地区問題を討議しておるのに並行いたしまして、実はイランで石油の最近の歴史に見ない非常に大きな事件が発生をいたしました。これはすでに皆さん新聞その他で御承知のことと思うのでありますが、イランの首都テヘランの南方約八十マイルのところに、クムという小さな町があります。人口約二十万ばかりの宗教都市であります。この近くで、ナショナル・イラニアン・オイル・カンパニー、これは外国の会社でなくて、今のイランの国営石油企業株式会社・この会社が、約十年ばかり前から石油の探鉱、試掘をやっておったのでありますが、これが昨年の八月二十五日に第五号井で大自噴を始めました。
 これは自噴量は一日に多いときで十五万バーレル、大体十二、三万バーレル
 という猛噴をいたしたのであります。最近の石油の歴史の上で見ないような大きな自噴でありまして、世界の石油界が非常に驚いた。こういうことがありますが、ちょうどこの問題が、私が行った当時だんだん国際的に進展いたしておりまして、この油田がどういうスケールのものであるか、あるいはこれが将来どういうようになるものであるかということについていろいろ取りざたをされておったのでありますが、この問題について、実はイラン政府からも、またイランの石油会社当局からも、われわれに対して、将来のこれの開発に対する協力ということについてのいろいろなサゼスチョンがあったのであります。そうしたサゼスチョンを背景といたしましても、なおこの油田がどういうものであるかということをまず調べるのが先決の問題でありますので、すでに私は、私と一緒に参りました地質学者と現地を調査いたしまして、その実情を調べて参りましたから、これも簡単にここで御報告申し上げます。
 イランの油田は大山脈地帯の南西部に発展しておりますが、ただいま申しましたこのクムという町は、テヘランの南方八十マイルの、イランのほとんどまん中でありまして、既成油田から約二百キロばかり北にありまして、油とは従来全く縁のなかったところでありますが、そこで地質構造が油に適するものが発見されたということを一つの根拠として、この開発が十年ばかり前から進められておりました。それが去年の八月二十五日に井戸の深さ二千六百七十七メートルというところで、日産二万五千トン内外の大自噴を始めたということで、石油界を驚かせたわけであります。われわれ実際行って参りまして現地を見ますと、これは確かにまことに大きな構造であります。地質構造から申しますと、長きが約四十マイルばかり、幅が約七、八マイルというような非常に大きな構造を持っております。埋蔵量を簡単に算定いたしますと約二十億トンぐらいと予想されるのであります。これは井戸がまだ五本しかありませんので、正確なデータを出すことはやや困難でありますが、大体二十億トン、二十五億トンというような大きな数量を出し得る油田である、こういうふうに考えられるのであります。これを正常なルートで一応開発の段階に乗せますとどういうことになるかと申しますと、大体において年間四千万トンないし五千万トンの生産に相当するのであります。たとえば二十億トンを約四十年間で採掘するということにしますと、毎年の生産量は約五千万トン、五十年にすると約四千万トン、こういうことであります。ただいま申しました埋蔵量というのは、石炭の場合と違いまして可採埋蔵量でありまして、念のために申し上げます。そういうふうに考えますと、この油田はナショナル・イラニアン・オイル・カンパニーでなくて、現在稼行している油田は国営石油企業団によって経営されておりますが、——これはアングロ・イラニアン・オイル・カンパニーの後身でありまして、約二千八百万トンから三千万トンの油を出しておりますが、この油田よりもさらに大きな油田がイランの中央砂漠地帯に発見されたということを意味するわけであります。ところがイランの石油の需要はわずかに年間三百五十万トンから四百万トンくらいしかありません。従って先刻も説明しました年間の生産量三千万、四千万、あるいは五千万ということになりますと、どうしてもこの油を海外に出さざるを得ないということになるわけであります。しかしながら、この油を海外へ送り出すというところに一つの大きな問題があるわけです。それはこのクムという油田の場所が陸地のまん中にあるわけでありまして、これを海外に出すということになりますと、その輸送という問題が出てくるわけであります。かりにこのクムから油を地中海の方に持っていくということにいたしますと、地中海のイスカンドラムというところがありますが、このイスカンドラムに引っぱりたいということが向うで一応研究されておりました。年間送油量約二千五百万トン、パイプの径が三十四インチ、距離が千九百キロ、これで所要資金が大体三億ドル近くを要するということであります。なおやり方によっては五億ドルもかかるであろうということでまことに大きな事業になるわけであります。それではこれを日本側の方に持ってくるということにいたしますとどうなるかと申しますと、向うの政府側の意向としましては、このクムの油をチャパルという、ちょうど油田の開発のときに説明した町がありますが、ここまで引っぱってくれということであったのでありますが、ここまで引っぱるのは金がかかるので、私の方はあまり距離が遠いからと言ったのであります。しかし先方といたしましては、遠方に引っぱれば引っぱるほど油の値段は高くなるというところから、できるだけチャパルまで引っぱってくれということであった。そうすると、相当利益があるというので、ここまで一応引っぱるということで試算いたしました。簡単に申しますと、距離が千六百五十キロで、年間送油量を千五百万トン、パイプの径を二十四インチということにいたしまして概算をいたしました。ポンピング・ステーション、パイプその他の施設を合せて二億ドルを要するということで、非常な巨額を要するのであります。簡単な試算でありますが、先方からの意向もありましたので、一応試算だけはいたしました。しかしわれわれとしては遠いところまで引っぱって大きな金を投ずるというようなことについては技術的にもあまり賛意を表しかねるのであります。その後検討いたしました結果、ペルシャ湾のずっと奥の方にガナベという町があります。そしてここまで持ってきますと距離が約九百五十キロで、同じ送油能力を備えて、それに対する資金量は四百億ないし四百五十億、こういうことになります。そういうことで、将来もしもこの油田が大きく発展し、かつまた日本への経済協力という問題が具体化する場合には、このパイプ・ラインと相関連して、できるならば、今の後者の短かい方の線をとって、向うとの話を進めたらいいんじゃないかと考えております。ただしこの問題は海外各国に非常なセンセーションを巻き起した関係からも、各国の石油業者、あるいは利権屋その他がテヘランの町に乗り込んで、この問題と取り組んでおるのでありますが、現在では、これはどこの国ともまだ具体的な開発の契約その他は発展しておりませんので、当分の間はこの油田が確実に、先刻申しました埋蔵量二十億トン、あるいは二十五億トンということが立証されるまで、具体的にはなお井戸を三本ないし六本掘ってその結果を確かめるまで、これはナショナル・イラニアン・オイル・カンパニー自体の独力でやる。その結果先刻申しましたような埋蔵量が果して確認されるという場合には、海外各国との国際的な競争という問題が具体的に発展する、こういうふうに先方との大体了解になっております。今のところは、一応この問題はナショナル・イラニアン・オイル・カンパニーの努力によって開発を推進し、そのリザーヴを促進するということに現在なっておりまして、当面の問題ではないのでありますが、先刻のチャバルの問題とあわせまして、イランの石油資源の開発に対する経済協力という問題は、将来非常に大きく発展する可能性を持っておると考えるのであります。なお最近発見されました油田は方々にありますが、その発見せられました油田の中では世界最大であります。イランでは大体そういうことで、当面の問題としては、チャバル地区に対してはなるべく早い機会に日本側からこの石油開発に対して経済協力の意向を表明するという問題が要請されたわけであります。それと、それからクムの問題については、将来国際的な発展を遂げる場合に、日本がこれに対してチャンスを失わないようにすることが必要であろうと思います。それについては現地の在外公館の山田大使とも十分な連絡をとりまして、問題は一応落着したという形で帰って参りました。
 次のアラビアの問題でありますが、実はアラビアではかなり昔——昔といいましてももう四、五年も前でありますが、与謝野大使がカイロの大使をやっていらっしゃる当時からアラビアにおける石油資源の開発について、日本と技術的にあるいは経済的に協力をしたいという申し出が何回もありました。それを背景として二、三の民間人がすでに現地に行って交渉したということもありましたが、いずれも結実するに至りませんで、ようやくことしの正月のただいまの土田大使が向うの政府当局者と会われまして、この問題を具体的に討議した。そうしてまず技術的に日本と協力したいという向うの大蔵大臣からの申し入れを受けられました。政府から人を派遣するからという約束があったのであります。ちょうどその約束の裏づけとして私がアラビアの政府とこの問題で接触をするという格好になって参ったのであります。従って私の使命というのは、とりあえずはアラビアにおけるところの未開発石油資源の開発について、日本が技術的提携をいたしたい、こういうことが一つの主眼であったのであります。私はどうかすると、先方と技術協定を結ぶということになるのではないかということを考えながら現地に臨んだわけであります。現地のジッダという町がありますが、これが現在の外交その他の中心をなしておるところの都市、ほんとうの首府はリヤドという、王様のおる市であります。ここは商業的な首府、外交の首府、そこのジッダに三月二十三日に参りまして、先方と話をする機会を持ったのであります。ところが先方に私が着いたときは、すでに御承知のように先般新聞その他でも報道されましたように、日本輸出石油株式会社の社長の山下太郎さんが岡崎元外務大臣と同時に向うに入っておられまして、そうして向うの政府当局と石油利権の獲得についてすでに一つの話し合いを終えて帰られたあとであったのであります。それで私は先方の政府当局と話し合いをいたしまして、この問題をどういうふうに処理するか、政府当局者の一人として一私の立場は政府の調査員という立場で向うに行ったのでありますので、政府当局者としてどういうふうにしたらいいかということを先方と話し合いしたのですが、先方といたしましては、技術協力の問題をすでに飛躍して、一つの経済協力あるいは日本への利権供与というような問題まで、この石油資源開発の問題が発展しておる現在では、技術協力という問題は、すでにもう問題にならないわけであります。結局われわれ政府といたしましては、山下ミッション一行がおやりになったその問題について、政府側としてこれをどう判断したらいいか、それについて一応技術的な検討を遂げることが妥当であろう、こういう結論に達しまして、現地の土田大使の了解も得まして、山下ミッションが契約をした地域について、、これが将来価値があるものであるかどうかということについて技術的な判断をするのを目的としてアラビア国内における旅行を向うの支援のもとに許可された、こういうことであります。従いまして、山下ミッションによって獲得された地域がどういう地域であり、またこれに対する条件はどうであり、それに対する地質学的あるいは技術的な見解はどうか、こういう問題にできるだけしぼって御説明申し上げたいと思います。
 山下ミッションによって先方との話し合いが進行していますが、まだこれは利権になっているわけではありません。契約の内容は、大体九月の六日までに正式契約をするという内容になっておるのでありまして、現在ではただ話し合いということになっております。その話し合いによりますと、第一の地域といたしましては、向うの首府であるリヤドの周辺地区約八百五十万ヘクタール、北海道と同じくらいでありますが、これが第一、第二の地域といたしましては、イエメン国境に接するところの地帯約千二万ヘクタール、第三の地域といたしましては、紅海沿岸のファーンン・アイランドに若干石油の徴候があるのですが、このファーンン・アイランドを含む紅海沿岸地帯一帯、もう一つはニュートラル沖合の海上地帯約七十万ヘクタール・この四つの地帯を利権の対象として日本側にやるように考慮したいというのが向うの申し出のように解せられるのであります。従ってわれわれはこの地域について、これを全部短期間に回るわけにいきませんので、向うの鉱山局長の援助によって資料を提供してもらいある程度資料の上でこれを研究し、また向うの意見を聞き、できるだけ現地も調べるということで向うの旅行をいたしたわけであります。
 第一のリヤド周辺地帯はどういう地域かと申しますと、これは完全に残っておる地域ではなく、アラビアで独占的に石油資源の開発をやっておるところの米国系の石油会社アラムコの権利留保地域になっております。その権利の状況は確定した権科ではありませんで、アラムコが希望する場合にはアラムコに優先的にやる地域としてリザーヴされている未確定地域であります。ところがこの未確定地域は、それよりよい条件で第三者が申し出た場合には第三者に与えられるということになっておる。従って、アラムコよりもべターな条件で日本側が申し入れるということになると日本側に供与される。この地域は約八百五十万ヘクタールですが、全くのアラビアの広漠たる砂漠のまん中でありますので、これが開発はきわめて困難であると私は考えます。といいますのはこの方面での輸送、それから施設その他を考えますときに、莫大な資金がこの背景になければこれをやっていくことはできないということは、アラムコが現在まで経過して参りました現地の開発事情を見るとはっきりわかるのであります。莫大な資金が準備されるのでなければ、これが開発を本格的に進めることは非常に困難であると思うのであります。それではどのくらいの金があつたら一体開発されるのかという御質問があろうと思いますが、実はどのくらいということを勘定できないほど莫大な金がかかりそうであります。おそらく日本の国力を傾けてようやく開発できるのではないかというくらいの大きなスケールのところであります。アラムコといえどもこれを開発するにはなかなか容易ではなさそうでありまして、アラムコも手をつけていない地域であります。それらをやるということになりますと二大決心が要るのではないかと思います。
 第二の地域のイエーメン国境地帯千二百万ヘクタール、北海道よりももっと大きい、この地帯はリヤドよりももっとひどいところであります。リヤド周辺地帯というのは、そのまん中に首府があるところで、ある程度人間が住んでいるところでありまして、また交通の便もリヤドからペルシヤ湾に通ずるところの鉄道がかかっておりますが、このイエーメン国境地帯千二百万ヘクタールは、全くの未開地域、全くの砂漠でありかつ広原であり、そこへ人が入るとすれば、おそらく南極の探検以上の労苦をなめなければ入っていくことができないほどの地域ではないかと思います。こうした地域を千二百万ヘクタール、これは広大な地域に違いないのでありますが、この地域を日本側にやろうというわけであります。おそらくこれもリヤド以上の資力を背景にするにあらざれば、これが開発を実際具体的に進めることは、きわめて困難であろうと思うのであります。ただしここに油が全くないかとおっしゃると、これはないわけではありませんで、イエーメンの国境地帯は若干油の徴候を見ております。また文献その他でも、探検隊が入って油の徴候のあったことを報告しておりますので、長い将来のことを考えますと、これは油が出る可能性は十分あるだろうと思いますが、開発をやるということになりますと、資金的にもあるいは技術的にも非常に大きな問題点があるということを考えざるを得ないのであります。
 次に、ファーソン・アイランドを含めてのレッド・シー沿岸地帯一帯、残っておるところはやろうということで王様の了解があった、残っておるところで石油資源のありそうなところは全部くれるというような格好になっております。しかしながら、内容といたしましてはそんなに向うさんがおっしゃるようにりっぱな地域ではないのであります。このファーソン・アイランドも若干の石油の徴候があって、海外の石油会社がすでに三百メートルばかり井戸を掘った経験があるのでありますが、不幸にして油が出なかった、塩水が出る。そのほかの残っているところはさてどうだろうかといいますと、どうもこの沿岸地帯一帯は全部砂漠でありますが、この辺は非常に古いところの古生層が出ておる地域でありまして、油とはあまり縁がなさそうであります。
 大体この三つの地域がほんとうは向うが日本にやろうとした地域であります。この地域についてはそういうふうに私は考えるのであります。非常に大きな資力をもってするならば、将来石油開発が不可能ではなかろうけれども、容易にこれが開発はできないだろう、そう考えられる。ただこの地域について向うの政府当局はどういうふうに考えているかというと、非常に有望な地域である、その非常に広大な地域を日本側にやったのだというふうに考えておりますので、その辺に若干の問題のずれがあるわけであります。日本側がこれをそのまま受け取ることは若干危険ではないかと思います。
 次に最後に残っておるところのこの地域であります。これはニュートラル・ゾーン、いわゆる中立地帯でありまして、クエート政府とアラビア政府とが五〇%ずつ不可分の主権を保有しているという地域であります。詳しい御説明は省略いたしますが、そういう地域であります。そこが陸地ならいいのですが、陸地ではなくて、その海岸から六マイル離れた沖合のペルシャ湾の中心地帯に及ぶ一帯、これを計算しますと、約七十万ヘクタールになります。それは面積からいきますと、新潟県よりも若干広い、かなりの面積であります。この地域は今までお話し申し上げましたのと違って、御承知のようにワフラ油田という世界最大の油田がこの南の方に控えております。しかもこのニュートラル・ゾーンのすぐ南の方、約十マイルくらい離れて…おると思いますが、ここにサファニヤという海底油田がアラムコによって開発されており、その生産の規模は海底油田としては世界最大と称せられておるのでありまして、もしも同油田の地下構造が北方に延びるかまたは同油田と一連の地下構造が北方に存在するとすれば、その構造はちょうど中立地帯沖合の利権地域内に入るわけで、きわめて有望視されることになります。この地域はひょっとしたら構造が北の延長に発見されるだろう、発見されるとすれば、大へんおもしろいことだというふうな結論が出るわけであります。
 しからばどのくらい油が出るのかという御質問があるだろうと思いますが、これはサファニヤ油田が非常にその南に接近してあります。一つの例として簡単に御説明申し上げますと、このサファニヤ油田というのは、約五、六年ばかり前から開発にアラムコが着手しまして、現在二十二本の採油場を持っております。平均日産が一井当り五千五百バーレル、簡単に言いますと、約千トンとして、年間三十六万トン・日本の全生産量が一本の井戸から出る勘定で、その井戸が二十二本あります。ことしの四月の半ばから採油を開始し、第一船は日本向けであるということで、向うでは非常に喜んでおります。そういうわけで、もしもこの地区にサファニヤの構造の延長があったり、あるいは一連の構造がその油田内に発見されるといたしますと、これはかなり大きく期待ができる、こういうことであります。ただしこの地域は、御承知のようにいろいろな問題がまだ非常にたくさんあるわけであります。海底を掘るという点について技術上の問題はそう簡単ではありません。日本ではまだ経験がないわけであります。しかしこれは技術的には可能でありまして、諸外国ではすでに相当のことをやっておりまして、日本で決してやれないことはないと思っております。石油資源開発株式会社でもこれは現在十分研究いたしておりまして、近いうちに秋田沖でやるという予定をいたしておりますが、このペルシャ湾の沖の方は割合に浅いのであります。また波は静かであります。そういう点から、ここで仕事をするということについての技術的な裏づけは、必ずしも困難ではありません。その次にもう一つ問題になっておりますのは、先刻申し上げました、この地域に対する権利半分ずつ分れていて、ニュートラル・ゾーンの五〇%がクエート政府にあり、五〇%がアラビア政府にあるという点が問題点なのであります。現在ではアラビア政府の許可が得られそうだというのが現状でございます。クエート政府とは別個に交渉し・クエート政府の許可を得ることが絶対に必要な条件であります。そうでないと実際の開発に着手することは海上といえどもできないのであります。ここにもう一つの問題点があるわけであります。ただしこれについては私が行きました当初は、アラビア政府もできるだけの援助をしてクエート政府の許可が得られるようにするということを言っておりました。並びに海上でありますから陸上の基地が必要であります。この点は私先方の政府当局に陸上の基地はくれるのかということを話しましたら、これは当然あげるから心配するなということでありまして、何でも質問したり何かすると非常に好意を持って百パーセントにわれわれの言ことを聞いてくれますので、間違いはなかろうと思うのですが……。実に日本側に対するところのグッド・ウイリング、それからコンフィデンス、この点においては欠けるところがないのであります。たとえば私のようなものが向うに行きましても非常に厚い待遇を与えてくれまして、旅行その他一切すべて先方の自弁でやってくれまして、まことに感謝にたえなかったわけであります。そういう点からいきまして、今度のこの問題は先方の日本側に対する非常な好意と信頼の現われであることに間違いはないのでありますが、内容はそういうふうに必ずしもすべて楽観して、非常にいいものをもらうというわけにはなかなかいかないのであります。石油資源が現在の状況からいきましてもそんなにいいものが残っているはずがないのでありますから、これもやむを得ないと思いますが、そういう点もあわせて考慮をしなくちゃならぬのだろうと思うのであります。ただアラビアが現在世界の注目をあびているところの世界最大の埋蔵量を持っている地点であろうということには間違いはないのであります。そういう点も将来考える場合には、全国力を傾けてようやくやれるような砂漠地帯といえども、あるいは北極、南極を探検するに比較してなおそれよりも大きな犠牲を払わなければならぬような高原、砂漠地帯といえども、これを取っておくべきかどうかということについては、かなり大きな疑問点があるのではないかと思っております。ただ先刻申し上げました海岸のニュートラル・ゾーンの沖だけは、もしも構造が発見されるとすれば相当の油田になり得るということだけは考えられるわけであります。このくらいで一応私の話は終りたいと思います。(拍手)

発言情報

speech_id: 102604514X00119570610_004

発言者: 吉田半右衛門

speaker_id: 6051

日付: 1957-06-10

院: 衆議院

会議名: 商工委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会