鈴木茂三郎の発言 (本会議)

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○鈴木茂三郎君 私は、日本社会党を代表し、石橋内閣の外交、財政並びに政治に関する基本方針について総理の所信をただし、国民の前にこれを明らかにいたしたいと思うものでございます。(拍手)
 質疑に入るに先だちまして、総理大臣石橋湛山君が御病気のためにここに相まみえることのできないことをはなはだ遺憾と存じます。これは病床にあられる石橋総理も私とその感を同じくされておることと信じます。(拍手)一日も早く御病気が回復されてすみやかに登院されることを心から念願いたしまして、衷心より御見舞の言葉を申し上げるものでございます。(拍手)
 私の質疑は、外交上の問題について日ソ交渉が妥結し、国連の加入が行われ、かくてわが国は外交上画期的な新しい段階に立つに至ったのであります。しかも、新しい国際情勢の展開につれて、真の自主独立の立場から、今後のわが国の新たな外交の路線をいかように切り開いて進むか、外交の基本方針をいかように打ち立てて進むかということをここに明らかにすることが、私は必要であろうと思うのであります。(拍手)鳩山内閣がとってきたアメリカ依存の外交を、今日旧態依然として継続し、これを強化するがごときことがあってはならないのであります。(拍手)鳩山内閣でさえ、新たな世界情勢と強い国民の要望に促進されて、日ソ国交を回復せしめたのでありますから、日ソ国交の回復の次に来たる当然の問題は、中国との国交の回復でなければならないのであります。(拍手)これがため、まず貿易の拡大や、文化の交流や、その他政府みずから積極的に中国に対して外交上の手を打たなければならないはずであります。(拍手)いかようなる外交上の措置を具体的にとるべきであるか。こういう問題と同時に、国連に加盟をいたしました今日、国連を通じて日本のためにいかような世界政策をとるのか。ただアメリカ側の陣営に一カ国、一票の日本の投票がふえたというだけでは、日本の国民の期待に反することになるのであります。(拍手)それだけではなくて、アジア・アフリカ・グループとのお互いの信頼に基くアジアにおける協力関係が、依然としてそういう方針でやってはうまくいかないで、今後も引き続き、日本は、アジアにおける孤児、すなわちアメリカの太平洋における落し子たる立場から脱却することができないのであります。(拍手)外相は、本日の外交方針において、わが国外交の基調を自由民主諸国との緊密な協調関係に置くと述べておられます。私は、現在の国連の状態並びに日米の従属関係から判断をいたしまして、外相の方針をもって進まれることは、国連においても、あるいは日米の関係においても、旧能依然たる向米一辺の外交を基本として、アメリカ従属の関係をさらに緊密にするというように理解するほかはないのであります。(拍手)
 総理はかような外交方針でよろしいのか。石橋総理は、こうした日本の進むべき新たな外交の路線、外交の基本方針の大道をどう切り開いて進むか。ここにこれを明らかにされたいのであります。
 外交問題の質問の第二点は、特に日中国交回復と関連いたしまして、貿易拡大の問題についてであります。政府は、来年度の貿易上、約三億ドルの増加を見込まれておるようでございます。これを裏づけるための海外市場の拡大は、主として中国と東南アジアに求めるほかはありません。とりわけ、今後のわが国の貿易の盛衰消長を支配するその絶対の条件は、ただ一つ、隣の国の広大な市場と見られる中国が日本の貿易の盛衰を私はきめるものであると思います。(拍手)その中国は、今や、わが国に、建設財のほかに消費財をも求めております。しかるに、岸外務大臣は、一月二十九日、「中国の通商代表部は来てもらわなくてもよい。入国の際には指紋をとる。」こういうような外務大臣として不穏当な言辞を弄しておられるのであります。これは、ただ不用意な発言だとして取り消しただけでは済まされない、あと味の悪い多くの問題を残しているように思います。(拍手)今日の岸外務大臣の立場は、日本のために、進んでココムの禁輸基準の緩和について、さらに強硬に折衝しなければならない立場に立たれておるのであります。(拍手)その岸外相のかような発言は、日本政府が日中貿易の発展を望んでおらない、逆に日中貿易の発展を政府は押えようとしているやに受け取れるのでありまして、言語道断といわなければなりません。(拍手)本日の外務大臣の外交方針を承わりましても、日本と中国の友好関係や貿易拡大の緊急な問題に対して何ら外相として熱意を持っていないことを、私ははなはだ遺憾と存じます。(拍手)かような外務大臣に重要ないわゆる経済外交を担当せしめて、総理は日中貿易をどうして発展せしめ促進せしめるつもりであるのか、(拍手、笑声)これを私は第一にお尋ねいたしたいのであります。
 また、伝えられるところによれば、外務大臣は、アジア太平洋地域公館長会議で、日本はアジア・アフリカ・グループではなく、自由陣営の一員であるという立場を堅持することを指示されたと聞いております。そういたしますと、アジア・アフリカ・グループとともに、アジアの一員として国際平和に貢献することを期待し、かつ東南アジア方面に貿易の発展を待望するに日本国民の意思と期待を私は無視する結果になるのではないかと思います。(拍手)
 次に、石橋総理と岸外務大臣との二重外交というような問題がすでに取りざたされております。二重外交は鳩山内閣が石橋内閣に引き継がれたただ一つの遺産であるようにも思われます。鳩山内閣の二重外交が、日本の外交の円滑な伸展をいかに阻害し、日本の国際的信用をいかに傷つけたかということは、はかり知れないものがあるのであります。(拍手)石橋内閣は組閣後まだ幾ばくもないのに、中国貿易その他外交上の問題に関して、総理と外相との間にしばしば意見の相剋するもののあることを国民は知ってまたかと、まゆをひそめて心配をいたしておるのであります。(拍手)本日は石橋総理がおいででございませんから、私は、この問題については、ただ、これからはこういうことのないように御注意を申し上げるにとどめておきます。
 次にお伺いいたしたいのは、一月二十三日、アメリカの国防総省当局が、原子力支援部隊を日本と沖繩に駐留させることを検討中だということを言明いたしましたために、日本国民はさらに深い不安にとらわれておる。このことは、すでに石橋総理の承知されているところと存じます。わが党は、すでに、政府に、日本国民の意思として米国政府に反対の申し入れを行うこと、また、その根拠となる日米安保条約と行政協定の解消について努力されたい旨を申し入れました。日本を一瞬にして破滅のふちに陥れるような原水爆兵器の部隊駐留は、日本のために、日本民族のために、断じて許さるべきことではございません。(拍手)しかるに、本問題に対する政府の態度は、いまだ明確にされておりません。奇怪しごくといわざるを得ない。総理は、この点、いかに考えられるか。わが党の申し入れの通り、米国政府に対し即時交渉を行う用意ありやいなや、総理の明確なお答えを願いたいのであります。(拍手)
 さらに、こうした原水爆兵器の部隊駐留の問題と関連いたしまして、この際特に総理の所信を確かめておきたいことは、日米安保条約、日米行政協定に対する総理の基本的な考え方であります。砂川流血事件のような、同じ血につながる同胞が血を流すといったような不幸な事件や、米国の軍政下における沖繩同胞の血みどろの抵抗を、総理はいかに考えられるか、いかに見られるか。(拍手)これらの問題について、アメリカ政府と交渉し、あるいは国連に提訴し、誠意を持って問題の解決に当ることはもちろん、こうした問題の根本的解決のため、同時に日本民族独立のために不平等条約の改廃を断行するため、総理は、国民とともに、政府をひっさげて、力強く一歩を踏み出す決意を持っていないかどうか。(拍手)
 私は、きょうの施政方針を承わって、この際特に総理に申し上げておきたいことは、総理は、施政方針において、国民にだけ独立自主とか自力更生の思想をふるい起すよう説き教えられております。国民の思想をふるい立たせるには、私は、まず政府みずから外国より日本を独立さして、自主自立の政治、外交を行うことが先決であると確信をいたします。(拍手)
 第二は、財政上の問題についてお尋ねをいたします。
 わが国の現在の経済の状態は、海外の経済の好況と、二年越しの豊作という恵まれた特殊な条件によって作り出されたものであります。従って、これを安定した正常な経済、安定した健全な経済と言うことのできないことは言うまでもありません。しかも、予算編成に当って起った消費者米価問題一つをここにとってみましても、石橋内閣の弱体と、働く国民、すなわち勤労大衆に対する石橋内閣の無理解な状態を、国民はまざまざと米価問題で見せつけられております。(拍手)
 石橋内閣に国民は全く失望いたしておるのであります。これでは、石橋内閣によって経済を立て直し、また、これを正しく発展させることはできないのではなかろうかと、不安を持つに至っておるのであります。
 そこで、お尋ねいたします。第一点は、石橋内閣の積極財政方針によりますと、このあるがままの今日の経済を、そのままさらに積極的に推し進め、拡大せしめようとされております。言葉をかえていえば、風船をさらにただふくらませるだけであり、さらに水を増して太らせるだけである。当然インフレの危険を必至とする財政方針であるのであります。(拍手)
 私が申し上げるまでもなく、来年度の、政府の提案された予算案の示すものが、すなわち明白にそれであります。そういたしますと、卸売物価などの上昇と設備投資の増大と相待ってインフレが当然助長されて価格の騰貴から貿易の不振となり、国際収支が悪化することは自明であります。(拍手)
 石橋総理は、かような政府の誤まれる財政方針によって起る危険から、日本経済の正常な発展と国際収支の均衡を保ち、働く国民、勤労大衆の生活をどうして守ろうとするのか。政府が自画自賛されておる一千億減税、一千億施策にいたしましても、そのこと自体は二千億円をこえる国民の血税たる租税の自然増加があるという国民から租税の過大な収奪が行われてきたことが証明されておるわけであります。(拍手)
 また、政府の一千億円減税について見ましても、これは年収五十万円以上、すなわち、納税者の六%を占めるにすぎない高額所得者のための減税であって、低額所得者は減税の恩恵にほとんど浴しないばかりか、政府の無計画な積極財政、大資本に奉仕する財政金融政策のために当然起ってくる勤労大衆に対する犠牲のしわ寄せがさらに大きくなり、また重くなることは当りまえでありまして、私は、これがためにも、この際最低賃金制を施行することがきわめて必要であると考えるものであります。(拍手)
 最低賃金制の法案、これはその他の諸法案とともに近く本国会にわが党より提案をいたしますから、論議はそのときに譲るといたしましても、政府の誤まれる財政方針からしわ寄せされてくる勤労大衆への犠牲に対し、政府はいかような具体的な措置をとられようとするか、私は総理の所信をただしたいのであります(拍手)
 第三にお尋ねいたしたいことは、国会運営のあり方と、当面の政局についてであります。これまで、国会における混乱の原因の多くは、多数を頼む与党の強引な議事の運営、少数意見を無視した独善的な態度から起ったことは申すまでもありません。(拍手)
 と申しましても、私は多数党にだけ国会の混乱の責めを負わせようとするものではございません。それは国民に対してはお互いが負うべき責任であるわけであります。従って私はさきに石橋総理と国会運営の正常化について隔意のない意見の交換を行なったのであります。総理は、当然のことながら、本日施政方針においても国会運営上の正常化を主張しておられるようであります。まことにわが意を得たりというべきであります。わが党もまた、民主主義政治の確立と、その発展をはかることは、われわれに課せられた重大な使命であると痛感する次第であります。総理が、真に民主主義のルールによる国会の運営を期し、国会の権威を高め、議会政治に対する国民の信頼を得ようとされるならば、総理はいかにして国会運営の正常化をはからんとするか。その所信とともに、進んで具体的な方策を示され、同時に、それはあすからでも実行に移す総理の誠実を、この際国民の前に明示されたいのであります。(拍手)
 最後にお伺いいたしたいことは、政権移動のあり方に対する総理の所信であります。政権の移動は、原則的には、総選挙を通じて国民の総意によって決定することが民主主義の基本であるのであります。このことは民主主義の不動の鉄則であります。しかるに、石橋内閣は、同じ自民党内閣といっても、鳩山内閣とは、党内の支持勢力関係から見て、他の勢力から他の勢力に政権が移ったのであります。また、外交方針も財政政策も相違をしておって、この二つの内閣の性格を同一と見ることができません。(拍手)
 かような政権が、総選挙を通じないで、保守党内部における単なる総裁の変更による党内の一つの勢力から他の勢力へと私的に政権が移動されてできたものであります。世間が政権たらい回しといっているのはこの点であります。(拍手)
 また、かりに石橋内閣は鳩山内閣の継続だといたしましても、石橋内閣が受け継いだとされる第三次鳩山内閣は、保守合同によって内閣の基盤が全く新たなものになったのに、総選挙を行わず、国民の総意を聞かず、政権移動の基本原則を無視して、国民とは無関係に成立した第三次鳩山内閣でありましたから、石橋内閣がここで総選挙を行うことをしないなら、私は、鳩山内閣の犯した民主主義の原則に反する重大なあやまちを石橋内閣が重ねて繰り返すことになるということを指摘いたします。(拍手)
 それゆえにこそ、私は国会を解散することが当然と確信する次第であります。(拍手)
 国会を解散する時期は、私は早期解散を至当と考えるものであります。政府、与党の中には解散反対の御都合主義者の意見のあることを承わっております。しかし、総理は、断固として、かかる民主主義に反する御都合主義を退けて、民主主義の理念に徹して解散を断行されんことを要望いたすものであります。(拍手)
 私は、国会を通じて石橋内閣がその方針その政策を国民の前に明らかにされたこの機会こそ早期解散の絶好の時期であることを確信いたします。(拍手)
 総理の決意を促すため、あえて総理の所信をただすゆえんであります。(拍手)〔国務大臣岸信介君登壇〕

発言情報

speech_id: 102605254X00419570204_015

発言者: 鈴木茂三郎

speaker_id: 18314

日付: 1957-02-04

院: 衆議院

会議名: 本会議