河野密の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○河野密君 私は、日本社会党を代表して、石橋内閣に対して、内治、外交の重要路線につき二、三の質疑を試みんとするものであります。(拍手)
 昨年十二月、鳩山首相がその宿願の通り政界を引退いたしまするや、総裁の公選によって石橋湛山君が自由民主党の総裁に選ばれ、第二十六回国会の劈頭に当って首班に指名されて、石橋内閣の成立を見たのであります。病鳩山首相の痛々しい姿に二年間焦燥を感じていた国民も、久しぶりに健康首相を見得ることに消極的な喜びを感じたと存ずるのであります。(拍手)しかし、かくして生まれた石橋内閣も、その組閣に当っては、まず派閥抗争につまずき、引き続いて予算編成の不手ぎわによって国民の信頼を失い、今また石橋首相の国会欠席によって前途の多難なることを思わしむるものがあります。(拍手)われわれも、石橋首相なき石橋内閣に対して質疑を試みるのは、いささか的なき的を射るがごとき拍子抜けの感がいたすのでありまするが、私は、石橋首相がすみやかに快癒されて、堂々とわれわれの質疑に答えられんことを希望してやみません。
 私の質問いたしたいと思う第一の点は、現下の国際情勢について政府はいかなる見通しを有しているかの点であります。昨年秋、ポーランド及びハンガリーの内乱があり、引き続いて英仏連合軍のエジプト侵入が起るなど、国際情勢はとみに緊迫の度を加えて参りました。ことに、英仏連合軍のエジプト侵入に対しては、ソ連が警告を発し、英仏両国がエジプト侵略を続けるならばソ連もまた義勇軍を派遣するであろうと声明するに及んで、世界はまさに第三次世界戦争の危機に直面したのであります。幸いにして国連の機宜を得た処置によって一応事なきを得ましたが、本年一月五日、米国のアイク大統領は、中東政策に関する特別教書を発し、中近東がソ連の脅威にさらされる場合は米国もここにおいて戦う決意であることを表明し、またまた国際緊張は蒸し返されて参りました。いわゆるジュネーヴ精神として、平和と共存のそよ風が吹くかに見えたのもつかの間で、世界は再び冷たい戦争の中に閉じ込められ、熱い戦争にまで発展しかねない警戒すべき現状であります。この国際情勢の緊迫に対して、政府はこれをいかに判断し、いかに対処せんとせられるのでありましょうか。
 われわれの見るところによれば、現下国際情勢の緊迫しておる最大の原因は、過去数世紀にわたって植民地もしくは半植民地として迫害され来たったアジア及びアフリカの諸国民が独立と自由を戦いとらんとしておることに対する帝国主義的諸国の無理解に基因するものと存ずるのであります。(拍手)従って、わが国としては、これらの諸国民の独立運動に対して深き理解と同情を表明するとともに、国連を通じて無理解なる反動政策と戦うべきであると信じまするが、政府の見解はいかがでありましょうか。(拍手)少くとも、わが国としては、国際緊張の最大原因である両陣営に対して自主独立の路線を歩むべきであり、その限りにおいて、同じ路線を歩みつつあるアジア・アフリカグループとの関係をより緊密化すべきであると考えまするが、政府の見解を承わりたいのであります。(拍手)
 第二に私の質問せんとするのは、原子力部隊の駐屯についてであります。去る一月十六日、アイゼンハワー米大統領は議会に予算教書を送り、歳出七百十八億ドルという、平時最高の予算を要求いたしました。しかも、その六三%は防衛関係予算でありまするが、これによって原子力部隊の構想が表面化され、対ソ戦略拠点六カ所に原子力部隊を配置することが明らかとなったのであります。これは、かねて米国防当局が計画していたニュー・ルック政策の推進であり、いわゆるヒット・エンド・ラン政策の具体化であるといわれておりまするが、その原子力部隊の基地が日本及び沖繩に設けられんとしておるのであります。一般新聞紙の報ずるところによれば、アメリカ政府は日本及び沖繩に対して原子力部隊の駐屯を要求し、これを条件として駐日米軍の引き揚げを敢行せんとしつつあると伝えられまするが、事の真相はいかがでありまするか。政府はかかる交渉を受けているのであるか、受けているならばいると、はっきりお答えが願いたいと存ずるのであります。(拍手)
 もしアメリカがかかる部隊の駐留を日本に要求したとするならば、その条約上の根拠はどこにあるのでありましょうか。いわゆるMSA協定といわれる相互防衛援助協定の第九条には、日本国憲法を尊重し、その範囲内においてのみ相互援助の義務があることを規定しているのであります。また、安保条約及び行政協定においては、わが国を防衛する限度においてのみ米軍の駐留を認めるものであり、日本国憲法が厳然として存する以上、日本国内に原子兵器を持ち込むことは許されないのであります。(拍手)向米一辺倒といわれた吉田内閣すら原子兵器の持ち込みを認めずと言っていたのに、アメリカ政府は何を根拠として原子力部隊の駐留を要求してきたのでありましょうか。石橋内閣は当然これを拒否すべきものと信じまするが、岸外相はいかなる態度をもってこれに対処されんとするのか、承わりたいのであります。(拍手)
 この原子力部隊については、日本国民がこれを知る前にソ連がこれを知り、一月二十三日のプラウダ紙は、日本に原子力部隊の基地ができ、そこから原子兵器をもって攻撃してくるならば、ソ連もまた同じ武器をもってその基地を攻撃する、と警告を発しました。これは、過去三たびにわたって原爆の洗礼を受けた日本国民としては、ゆゆしき大問題であります。(拍手)日本が原子力部隊の基地を提供することは、みずから来たるべき原爆戦争の渦中に投ずることに相なるのであります。緊迫しつつある国際情勢の中にあって、日本がみずからを守る道は、世界のいずれの陣営に対しても自主独立の立場を守り、ある特定の国に対して経済的にまた軍事的に結合をしないということにあると信じます。(拍手)条約により、軍事協定によって、そういう特定の国と結合することは最も危険な道であり、従って、この際は、安保条約及び行政協定、MSA協定に対して根本的に再検討を加うべき段階にきておると考えまするが、政府はこれに対していかに考えるのであるか、政府の所見を承わりたいのであります。(拍手)
 次に、私が主として質問せんとするのは、石橋内閣の経済財政方針についてであります。
 世間では、石橋内閣が成立するや、石橋首相が財政経済畑の出身であり、岸外相ももともと経済人であり、加えて自信の強い池田蔵相を擁するがゆえに、石橋内閣すなわち財政経済内閣と早合点し、これに多大の期待を寄せているかの観があります。石橋内閣もまた、この世間の期待にこたえるかのごとく、次々に経済施策を発表して参りました。しかし、私は、石橋内閣が打ち出された財政経済政策に対し、決してこれを高く評価することはできません。残念ながら、その施策の多くに対しては反対せざるを得ないのであります。(拍手)
 石橋内閣の打ち出した財政政策を見ると、減税と積極財政と、この矛盾せる二つの政策を同時に行わんとしておるのであります。これは明らかに矛盾であります。最近発表されたアメリカの予算すら、減税を一年見送りにして歳出の拡大をはかっているのであるが、日本ではこれを瞬時にやろうというのであります。しかも、池田蔵相は、さらにこの方針をもっともらしく説明されまして、一千億減税、一千億施策と称し、一千億の減税を行いつつ一千億の積極施策を行うと打ち出したのであります。しかし、諸君、一千億の減税をやって、しかも予算の規模を一千億拡大しようということは、尋常の考え方でできるものではございません。これには二つのからくりがあるのであります。一つは、一千億の減税といって、実は七百二十億円の減税をしかやっていないということ、(拍手)いま一つは、自然増収を大きく見込むということ、特に三十二年度において、自然増収を千九百二十二億、約二千億円と測定しておることが、あらゆる財政政策の手品の種となっておるのであります。(拍手)しからば、昭和三十二年度において何ゆえに二千億円の自然増収を見込むことができるのでありましょうか。ただいま、大蔵大臣は、太田君の質問に答えて、ここでるると述べましたが、それを要約してみまするならば、本年度においても約一千億円の自然増収があった、だから来年度も二千億円自然増収があるはずだ、あるだろうもそういうこと以外に何らの根拠がないのであります。(拍手)あったら示していただきたい。
 およそ、自然増収の生ずる原因は三つあると思うのであります。一つは、税務官吏の徴税のさじかげんによるものであります。いま一つは、予算決定以後における物価の値上り、ベース・アップ等、主としてインフレ高進の影響によるものであります。第三は、経済活動の活発化による収益率の上昇によるものであります。この三つが自然増収の原因であります。自然増収が財政的に歓迎すべき点があるとするならば、この第三の場合に限られるのであります。三十一年度の自然増収の場合は、わが経済活動の活発化に伴うものであり、ある程度われわれもこれを容認するにやぶさかでありません。しかし、三十二年度においても同じ比率をもってこれを期待し得るということは、どうして証明できるでありましょうか。三十二年度において二千億の自然増収があるためには、日本の経済が今年度と同様の上昇率を持たなければなりません。三十年度におけるわが国経済上昇の支柱は貿易の拡大でありました。三十一年度のそれは民間設備投資の活発化でありました。しかるに、三十二年度の支柱は一体何でありましょうか。同じ政府が策定した明年度の経済計画によると、国民総生産において前年度の一一・二%の伸びに対して七・四%の伸びである。国民所得において前年度の一二%の伸びに対して七・五%の伸びである。鉱工業生産において、前年度の二一%の伸びに対して一二・五%の伸び、輸出において、前年度の一八・四%に対して一二・九%の伸びと、いずれも鈍化の傾向にあることを政府みずからが立証しておるのであります。(拍手)同じ政府にあって、経済計画の責任者がかかる内輪の経済計画を立てているのに、ひとり大蔵当局だけが自然増収二千億という過大なる数字を捻出しているのは、果して妥当であるかどうか。(拍手)
 仄聞するところによりますると、石橋首相は積極財政一本やりであり、池田蔵相はまず減税をという減税論者である。この間の調整のために、一千億減税、一千億施策の折衷案がとられたとのことであります。従って、自然増収も最初は一千四百億と見積られ、次いで一千六百億と見積られて、最後に池田君の要求によって一千九百二十二億円に落ちついたのでありまして、(拍手)もともと減税と予算規模につじつまを合わせるために作り上げられたものにすぎないのであります。
 しかも、私が驚かざるを得ないのは、すべてを仮定の自然増収に託して一千億減税、一千億施策と打ち出した池田君が、これを健全なる積極財政と呼んでいる心臓の強さであります。(拍手)私は断言いたしまするが、池田君は、この予算を施行する過程において、必ずや、早晩、減税を貫くか、積極財政を貫くか、二者その一を選ばざるを得ない場面に逢着するに違いないと思うのであります。(拍手)その場合、犠牲となるのはいずれであるか、石橋であるか、池田であるか、減税であるか、積極財政であるか、われわれは刮目をしてこれを見守っているのでありますが、これに対する池田蔵相の率直なる御見解を承わりたいのであります。(拍手)
 次に質問をいたしたいのは、この予算とインフレとの関係であります。政府が提出した三十二年度の予算案は、その総額が一兆一千三百七十四億円でありまして、前年度に比較して実に一千二十五億円の増大であります。池田君は、この予算に対して説明を加え、たとい予算の規模が拡大しても、歳入歳出の均衡が保たれておる限り、断じてインフレの危険性がない、と言われております。それに、また、池田君は、先ほども申されましたように、来年度においては国民所得は八兆一千八百億に達するのであり、これに対する一般会計予算の比率は一三・九%であるがゆえに、予算の規模は心配するに当らない、と申しております。しかし、私はこれに対して疑問を持つのであります。予算の規模の急激なる拡大はインフレの危険性を伴うものと考えます。いわんや、現在のごとく、潜在的にインフレ傾向が経済界の基調として存在するときは、予算規模の拡大がインフレをあおり、刺激的な材料となることは言うまでもないのであります。(拍手)
 さらに、私が政府の今回の予算案をインフレ要因を多分に含む予算案なりと断ずるには、なお多くの理由がございます。
 その第一は、予算の実質的規模が一兆一千三百七十四億よりはるかに大きく、私の見るところによれば、一兆一千四百八十数億とも言えるし、また一兆一千五百八十数億とも言えるということであります。それは、軍人恩給等八十数億円を三十一年度の補正予算に組み入れておる。当然一般予算に計上すべきものを、土地改良、多目的ダム、公営企業公庫などの特別会計に入れておるからであります。また、地方財政への交付金を三十一年度の補正予算に組んでいるのも同じ趣旨と解すべきであり、これまた当然予算規模の拡大を紛飾しておるのでございます。(拍手)
 その第二は、財政投融資資金を、三千二百四十六億円と、前年度に比して六百七十三億円増大しているほか、三十一年度の補正予算において三百億円を産投会計に投入し、その半分を三十二年度において使用するなど、八百二十数億円の財政投融資の増大を予定しているからであります。財政投融資の資金は生産拡充の資金であり、現実に生産拡充を伴うならば一応インフレ要因とならないもののごとくでありまするが、現在わが国の実情は、石炭、電力、鉄鋼、輸送等、多くの隘路を持ち、単に資金を注入したから解決するというがごとき安易なものではございません。(拍手)いたずらに資金を注入すれば、逆に需給の混乱を生ずるおそれすらあるのであります。しかるに、政府は、物資需給の根本に対して何らの施策を講ずることなく、単に財政投融資を拡大することによって積極財政なりと考えているところに大いなる錯覚があると信じます。真の健全なる積極財政たるためには、金を裏づける物、物の計画と資金の計画とを適合せしめなければならないにかかわらず、これを全く無視するか、金だけを出して、あとは民間の自由裁量にまかせるというがごとき、安易な態度をとっているところに、インフレの危険性が多分にあると考えるのであります。(拍手)現に大蔵当局の考え方と通産当局の考え方との間には大いなる開きがあることを諸君は知らなければならないと思うのであります。(拍手)
 その第三は、防衛費及び賠償費千六百二十六億円、恩給関係費九百六十億円、官庁経費千八百六十億円など、直接生産に関係のない経費があまりに多過ぎることであります。しかも、恩給関係費は年々増大の一途をたどり、三十二年度においてはその一部を社会保障費に繰り入れる等の小細工を弄したほどであり、また、防衛費は表面上の増額はわずかに四億円でありまするが、予算外契約の形において二百億円を計上しているなど、この面におけるインフレ的傾向は顕著であると存じます。池田君はこれでもなおインフレの危険性なしと強弁せられるのでありまするか、明確にお答えが願いたい。
 石橋首相のごとく、年来のインフレ論者であるならば別でありまするが、池田君のごとく、健全なる財政を説きながら、以上のごとき予算を編成し、しかもなお健全財政、健全財政と強弁せられるがゆえに、私は断じてこれを承服し得ないのであります。(拍手)池田君もあらゆる機会に、自然増収を財政支出に流用するのはインフレになると言ってきたはずであります。減税もまたインフレだと言ったではありませんか。その池田君の持論と今度の予算とは、あまりにもはなはだしい相違であるがゆえに、私はあえて池田君の真意を問うのであります。これでもなお池田君はインフレ予算にあらずと強弁せられるのでありまするか。強弁せられるならば、その理由をはっきりと承わりたいと思うのであります。(拍手)
 次に問題といたしたいのは、一千億施策というその施策がいかなる方向に現われているかの点であります。すでに述べましたように、三十二年度の予算案は一般会計だけでも一千二十五億円の増加でありまするが、これらのうちで、政府が新しい施策として打ち出したものはきわめて少い。大部分は、制度上当然の義務的増加、たとえば賠償、恩給、地方交付税交付金、公務員の給与等々であり、防衛費、公共事業費等の準義務的の支出増であります。政府の新しい施策を盛ったものといえば、科学技術の振興費とか、社会保障費のある部分、たとえば国民健康保険の拡大とか、結核予防対策とか、精薄児童のためのセンターとか、ろうあセンターとか、母子福祉対策とか、あるいは大部分を財政投融資に仰ぐ住宅政策の拡充等々にすぎないのであります。その金額は、私の計算によれば、一般予算においてはたかだか二百億、あるいは二百四、五十億を出でないのであります。昨日、岸首相代理は、施政演説の中で、堂々と、「国民生活の環境を改善整備し、この面においても、明るい国民生活の実現を期したいと考えている」と述べておりまするが、この国民生活の環境を改善するために一体幾らの金を出しているか、環境改善費とは、蚊やハエを退治するための費用三千六百万円、下水、汚物処理のための補助金六億八千余万円のことであって、これをわざわざ総理大臣が施政演説の中で取り上げるとは、あまりにも芸がこまか過ぎると申さなければなりません。(拍手)これで政府はおこがましくも一千億施策などと言えるでありましょうか。羊頭を掲げて狗肉を売るとは、かくのごとき予算のためにあらかじめ用意された言葉であると思うのでありますが、政府の所見を承わりたいのであります。
 ここで、私は、石橋内閣、特に池田蔵相の責任を追及すべき二つの問題について質問をしたいと存じます。一つは言うまでもなく米価の問題であり、一つは国際収支の問題であります。
 石橋内閣は一月八日の閣議において昭和三十二年度の予算編成方針を決定しましたが、その中には、減税の実施及び社会保障の充実を機として内地米配給価格の引き上げを行うとともに、国内産麦の価格体系を調整し、食糧管理を合理化する、と明記してあります。これによって、政府は、食糧管理特別会計の赤字、三十年度における三十億、三十一年度における百六十五億、三十二年度に予想される百三十三億を補てんするために、消費者米価一升当り八円五十銭を引き上げることを決定して発表したのであります。しかも、池田蔵相は、しばしば、減税をやる以上、米価、運賃の引き上げをやらなければならない、と言ってきたのであります。しかるに、米価問題は、与党内部の意外な伏兵にあって、ついにこれを打ち切らざるを得なくなりました。私は池田君にお尋ねするのでありますが、閣議決定をして堂々と天下に発表した米価の値上げ、しかも、予算編成方針の重要なる一環をなしておる米価問題をむぞうさに打ち切って、池田君は果して政治的の責任を感じないのでありますか。(拍手)私はもとより米価の値上げに反対であり、また、わが党としては値上げ反対を政府に申し入れたのでありますが、かかる重大なる問題を軽々しく決定し、また軽々しく引っ込めるというがごとき軽率なる態度に対して、私は、政府、特に池田君の政治的責任を追及しなければならないと思うのであります。(拍手)しかも、米価の値上げを中止したまま、食管特別会計の赤字には一指も触れておりません。そのままになっております。これを池田君はどう始末されようというのでありましょうか。さしあたりは食糧証券によって糊塗せんとせられる腹のごとくでありまするが、結局は一般会計よりしりぬぐいをするか、いま一度米価の問題を蒸し返すか、いずれかの道を選ぶほかはないでありましょう。よもや、選挙目当ての米価据え置きで、選挙が済んだら米価の値上げをやろうという、欺瞞手段を弄する所存ではないと思いまするが、政府の明確なる方針を承わりたいのであります。(拍手)
 いま一つは、国際収支の均衡についてであります。今わが国の経済にとって最も重大なる問題は、国際収支の均衡が得られるかいなかの問題であります。明年度予算がインフレになるかならぬかも、この点にかかっておると存じます。従って、池田君もこれを重要に考えられ、本年初頭においては、あらゆる機会に、積極財政はインフレ財政ではない、このことは、別の言葉でいえば、常に国際収支の均衡を確保して、国際的に自立のできるような体制で経済を運営していかなければならないということです、国際収支が赤字になるような姿にしたのでは何にもなりませんと、国際収支の均衡を強調してこられました。ところが、いよいよ予算が確定して、予想以上に膨大な数字に上りますると、たとえば日本経済新聞の一月二十九日付において、国際収支はとんとんになるように努力しなければならない、しかし、物価安定のためとか輸出増大のために、ときには赤字が出ても、赤字の原因が消費物資などでなしに、生産財や輸出物資の原材料にあるならば何ら差しつかえないと称して、必ずしも国際収支の均衡にこだわらない言辞を弄しておるのであります。これはきわめて重大なる発言であると考えます。日本の経済の健全なりやいなやは国際収支がバランスを得るかいなかにあるのでありますが、蔵相の国際収支に対する考え方も、予算編成の動きにつれて動揺し、次第々々に変化を来たしておるが、これは全くの御都合主義と言うほかはございません。(拍手)われわれは、この点に関する蔵相の信念のほどを承わりたいのであります。
 現政府部内でも、国際収支の見通しについては、必ずしも意見の一致を見てはおりません。昨日の経済企画庁長官の本壇上における演説と池田君の財政演説とは、この点について必ずしも一致をしておるとは申されないのであります。経企長官は、きわめて自信のない態度で、輸入は三十二億ドル、輸出は二十八億ドル、貿易外収入を考慮して三十六、七億ドルで、バランスがとれるだろう、と言っております。しかし、経済企画庁の出しました経済計画によりますと、受け取りが三十六億八千万ドル、支払いが三十七億三千万ドル、差引五千万ドルの赤字となっておるのであります。これはいかなるわけでございましょうか。経済計画でははっきりと赤字が出ておるものを、経企長官はぬけぬけと、ここでバランスがとれるだろうと強弁するとは、あまりにも無責任なる言辞と言わざるを得ないのであります。(拍手)さらに通産相に伺いましょう。通産省は、明年度の物資需給計画から輸入を四千億ドルと見込み、国際収支は一億ドルないし三億ドルの赤字と見ております。大蔵大臣と通産大臣とは全く意見が違っておるのであります。(拍手)これを池田蔵相はいかに考えられるのでありますか。昭和三十二年度の予算実施上、これに対していかに対処せられんとするのでありますか。国際収支に対するはっきりとした態度を表明せられたいと思うのであります。(拍手)
 以上、私は、政府の提出した三十二年度の一般会計予算案を中心として、これに対する私の率直なる見解を述べ、政府の所信をただしたのでありますが、これを要約いたしますれば、一、石橋内閣の提出した予算案はインフレの要因を含むインフレ予算案と断ぜざるを得ないが、政府の見解はどうか。
 二、インフレになるならぬは、この予算実施に伴う政府の施策にも関連すると思うが、政府には、さしあたってインフレを警戒する施策は一つもない。逆に、鉄道運賃の値上げ、ガソリン税の引き上げ等々、物価騰貴を刺激する政策をとっているので、物価は上昇するの一途をたどると思うが、見解いかん。(拍手)
 三、減税と積極財政との相反する二兎を追うものが政府の予算である。結局これは破綻せざるを得ないと思うが、政府の見解いかん。
 四、政府は一千億減税、一千億施策というスローガンによって国民をつろうとしているが、実質的に減税は七百二十億、しかも、この減税の恩沢は鉄道運賃等々の値上りによって大いに相殺されるものと思うが、政府の見解いかん。
 五、経企庁の経済計画によれば、明年度の国際収支は五千万ドルの赤字であるが、この予算を実施するならば、国際収支はさらに赤字を招き、日本経済を不健全化すると思うが、どうであるか。池田君は、ときに国際収支の赤字は問題でないと言い、ときには国際収支を重大視すると言い、きわめて首尾一貫を欠いているが、真意はいずこにあるのか。
 六、一千億施策の内容が、施策というに全く当らないほどのみじめなる内容であるが、これに対する弁解があるならば、政府の弁解を承わりたい。(拍手)
 最後に私がお尋ねいたしたいのは、政治上の問題についてであります。先般の自民党の総裁公選についてであります。総裁公選という画時代的のことの行われましたのは、私はけっこうだと考え、自民党に対して敬意を表するにやぶさかではございません。しかし、これにまつわる世間の疑惑は、今日に至るもなかなか解けないのであります。と申しますのは、この総裁選挙に当って莫大な資金がばらまかれたということであります。(拍手)さるアメリカの雑誌は、この総裁選挙の報道を載せて、投票のために莫大なわいろが提供されたという報道の中で、鳩山首相が清潔なる投票をしてくれと説き、代表者は次々に壇上に登って投票した云々、と書いてあります。日本の新聞雑誌にかかる記事が出てさえ、われわれは苦々しく思うのでありますが、ましてやアメリカの雑誌にまで公々然と、わいろによって投票が行われたと書かれたことは、決して日本の名誉ではないと存じます。(拍手)石橋首相、岸外相はこれに対していかに考えられるか、承わりたいのであります。(拍手)石橋首相は、先般、年頭の誓いとして、政界、官界の粛正を言われましたが、政界、官界の粛正を説かれる石橋首相は、この事実に対していかなる感想を持たれるのか、承わりたいのであります。(拍手)私は、あえて、特定の政党、特定の政治家を責めるために、また、単なる党派心によって、かかることを申し述べているのではございません。日本の名誉のために、日本の政界の粛正のために、先ほど御質問のあった日本の民主主義の前進のために、あえて石橋首相以下の心境を伺っているのであります。(拍手)自民党がはずかしめられることは、ひとり自民党だけの問題ではありません。石橋君がはずかしめられることはひとり石橋君だけの問題ではありません。日本の政界革新のために、日本の民主主義を前進せしめるために、私はあえてこれを質問するのでありまして、明白にして真剣なる御回答をわずらわし、私の質問を終る次第であります。(拍手)
  〔国務大臣岸信介君登壇〕

発言情報

speech_id: 102605254X00519570205_014

発言者: 河野密

speaker_id: 28496

日付: 1957-02-05

院: 衆議院

会議名: 本会議