奥村伊三郎の発言 (農林水産委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(奥村伊三郎君) 神奈川県漁業協同組合連合会長の奥村でございます。今回横浜市が根岸湾を埋め立てることによりまして、これが漁業者の漁業を奪う、生活権を脅威するということで、重大なる問題が起ったわけでございます。以下私は、この根岸湾で行われますところの漁業の実態、並びにこの漁場を失うことによって何らか他の産業あるいは他の漁業に転換することができるかということにつきまして、私の見解を述べたいと思います。
 この根岸湾で行われますところの漁業は、ノリの養殖業、それから貝類の養殖業が主たる漁業であります。そのほか零細なる沿岸の漁業があります。それでこのノリの養殖業と貝の養殖業、ことにこのノリの養殖業というものは非常に効率性の高い漁業であります。中小業者が大都市におきまして生活を維持しますることは非常に困難であります。これは漁業ばかりでなく、一般の企業についても思われることでありまするが、この横浜市の漁業者が今日この困難な中に生活を維持しておるということは、このノリの養殖業並びに貝の養殖業をやっておるから、これが生活がやっていける、こういうことであるんであります。さように重大なることの養殖業であります。ここに地元の漁業者がこの漁業を行い、また他の組合からも多数これに入り込んでおるわけであります。まことにその点から見ますると、けっこうなる職場であり、農業でいえばこれが農地である。そういたしまして、この漁業者が他にほかの仕事をやっておるかというと、これは何にもやっておらぬ、農業をやるにしましても、農地がない。多少、ノリをほすぐらいのほし場は持っておるんですが、農地はない。ほかの中小企業でもやっておるかというと、やっておらぬ。百パーセントこの漁業に生活を依存しておるわけです。
 そういたしまして、横浜市今回の埋立計画は、漁場、そのノリと貝の養殖場を埋め立て、その前面を掘るわけであります。十メートルぐらいに掘るわけです。そういたしますると、漁場を全部失うわけであります。そういたしまして、漁場を埋め立てた結果、漁民の全員が完全失業するというわけであります。その点は農地とかあるいは中小企業の場合とまるで違います。ここに鉄道を敷くとか、何か学校をやるということでありますれば、その場所だけが失うわけでありますが、漁業の場合はほとんど全部失う。それでそれに従事しておる人間が全員これを失う、失業すると、こういうわけであります。そういたしまして、この漁場は父祖伝来の、継承したところの大切な漁場である。この漁場を自分らの意思でなしに、他から強制されてこれを失うということに追い込まれると、こういうわけでございます。そこに大きな問題があろうと思うわけであります。
 それから、これらの業者が他の漁業に転換できるか、その可能性があるかないか、こういう問題でありますが、このノリだとか貝をやっておる漁業者というものは、水中の農業者、ほとんどこの沿岸のほかの漁業をやるというような技術もない。また今日は沿岸漁業と申しましても相当漁業が専門化しており、だれでもやれるというものではありません。また相当それをやるにつきましても、五十万円なり百万円なり、ちっちゃな漁業でも今日ではやるにつきましても資本が要ると。それを人を雇うてやっとったということじゃあ、これはとうてい間に合わぬ。それでありまするから、他の沿岸漁業に転換ができるか、これはできない。ほかの専門の漁師がやっておるその場所でやるということは、これはできない。そういうわけであります。それで、しからば、まあ他の陸上のほかの産業にこれが転換できるかということも、これはなかなか、この漁師なんというものは海のことばかりやっておる、それでありまするから、ほかの商売にかわるとか、あるいは工場の労働者になるとか、だいぶ自由業をやっておるものでありますし、それからまた老人もおりますから、ほかの仕事にこれが転換するというようなことは、なかなかこれは困難であります。そういうわけでありまして、以上申し上げましたところによりまして、この漁場を失うことがほとんどこの関係漁民のもう致命的の打撃でありまして、またこれがほかに転換する方法がまず困難であるというのが私の見解でございます。
 で、最後に、今回のこの埋め立てに対する横浜市の態度に一言触れておきたいと思います。横浜市がこれをやられるということにつきましては、十分理由のあることだと私は考えますが、最初これをやられますときに、一向その相手方の最も利害の関係の深い漁民側には、あまり交渉はなかった。それで漁民側は、何か埋め立てができるそうだ、鉄道がかかるそうだというようなことが新聞に続々載ると、載りまするから、これは大へんだということでだんだん探りを入れてみると、どうやらそういうことがあるらしい、こういうことで、非常にまあ感情的にもけしからぬというように考えておるわけでありますが、これは決して感情的で終るものではない。横浜市がそうしたところの市民の、善良なる市民の一員であるところの漁民に対して、そういうような不親切な態度をとられることは、将来横浜市がこうもする、ああもするとおっしゃるけれども、果してこういう当局が、こういう良心的でないような——良心的であるかもしれませんけれども、その態度とやり口がです、良心的でないやり口をされるところの当局者が、将来いかなることをされるか、ますますわれわれを不利益な立場に追い込むのじゃないかと、かようなことにつきまして非常なる不安を持っておる。これはまあだんだん本日は助役さんも見えておりまして、さようでないとおっしゃって、そのように私は考えておるわけでありますが、これまでの横浜市の態度はその点にまことに遺憾であったと、かように思うのでありまして、まことにこの問題につきましては困難な問題でありまして、私どもその対策がむずかしいということを考えておるわけでございます。よろしく御判断あらんことをお願い申し上げます。

発言情報

speech_id: 102615007X01019570226_006

発言者: 奥村伊三郎

speaker_id: 1706

日付: 1957-02-26

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会