栗山良夫の発言 (予算委員会)

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○栗山良夫君 私はただいま議題となりました昭和三十二年度補正予算三件に対しまして、日本社会党を代表いたしまして反対の態度を明らかにいたすものであります。
 まず、私は本臨時国会が開かれるに至りました重大意義並びにこれに対する国民の大きな期待というものに対して、政府がきわめて冷淡かつお座なり的な態度に終始していることに強い憤りを感ずるものであります。本臨時国会の開催につきましては、この夏以来、わが党がしばしばその必要性を要望いたしまして、八月に一切の召集手続を終えて、政府に要求してきたものであります。わが党が臨時国会の召集を強く要求したゆえんのものは、言うまでもなく、先の通常国会の閉会から約半歳を経た間に、岸総理の東南アジア及びアメリカ訪問、国連総会における原水爆禁止決議案の上程、ネール・岸会談など、重要なる外交問題が次々に起ったこともさることながら、同時にまた、国内政治経済につきましても、いわゆる緊急経済政策に伴う金融事情の逼迫と、国際収支の空前の悪化の影響が、すべて中小企業者にしわ寄せされている事実、さらには、景気変動による失業者の増大並びに明年三月末までに最低四万五千人の解雇を予想せられる駐留軍労務者の対策、また、六月以来北九州地区及び長野、岐阜地方を襲いました風水害、冷害並びに地すべり等の災害復旧措置等につきまして、政府の真意をただしまするとともに、これが緊急かつ積極的な対策樹立の必要を痛感したからであります。
 しかるに、この臨時国会に臨みましたるところの政府の態度には、何らこの間の重要課題に応ずる対策もなければ、誠意もないことを暴露したのであります。外交上の施策の問題につきましては申し上げませんが、ここに提案されておりまする昭和三十二年度予算補正三案におきましても同様なことであります。
 これを見ますると、政府は今回の一般会計予算の補正については、予算総則において、国際復興開発銀行等よりの借款のために債務保証の限度をきめたこと以外には、何ら他の内政費用を予算補正していないのであります。一体、政府は失業者の増加や、先般の北九州及び長野、岐阜地方の受けたはなはだしい災害等に対しまして、全然予算の手直しをする必要なしと考えておるのでありましょうか。
 北九州地区の豪雨による災害に際しては、岸総理自身わざわざ飛行機でもって現地に飛び、地すべり等による惨状を視察して罹災者を慰問激励するとともに、鋭意復旧に努めて参ったと、先般もこの国会堅頭の施政演説の中で誇らしげに述べられたのを聞いておるのであります。なるほど災害に対する一応の措置はなされたようでございます。しかしそれはあくまで応急的、臨時的措置でありまして、私は災害復旧の本格化をはかる意味におきましても、この際、何をおいてもこの災害の復旧費を今回の補正予算に組み入れてこそ、初めて岸総理大臣の誠意が認められるというものだろうと思うのであります。ただ飛行機で現地に行き、機上から二十万枚だかのビラをまいたりいたしまして、慰問激励したというのでは単なる人気取りの宣伝と見られましてもいたし方ないことと思うのであります。
 失業者の増大という問題につきましても、政府は重大なる責任を感じなければならぬはずであります。政府のデフレ政策の被害として、八月以来常用雇用が減少をし、完全失業者が増加している事実はまさに御存じないとはおっしゃりますまい。本年度の当初予算の際に押えた失業者数に比べ、現在はさらに十二万からの失業者が増加しておるのであります。従ってこれら失業者の増大に伴う失業対策事業費の増額はもちろんのこと、さらにこの十月から実施せられました消費者米価の値上りに伴う生活保護費の増額とか、日雇い労務者の年末手当増額等はすみやかに財政措置をなすべきが当然と思うのであります。その他、先ほども申し述べました駐留軍労務者の大量解雇問題等につきましては、これは予算編成後に生じたことでございまするから、政府はこの際、財政法第二十九条の規定によりまして所要の予算措置をこの予算補正に当って講ずべきであるのに、何らその措置をとっていないのであります。政府の無計画な経済政策が、無責任な利潤追求と無制限な設備投資をあおった結果、外貨事情の空前の悪化をもたらし、百八十度の政策転換を余儀なくせられまして、国民は窮乏にあえいでおるというのが今日の実情でございまするが、しかも政府はみずからが招いたこの失政に対し、あえて責任をとるような財政的裏づけ措置が何らとられていないような今度の予算補正には国民の名において反対をするものであります。
 次に、政府関係機関の予算補正におきまして、中小企業金融公庫について百億円、国民金融公庫について七十億円、合計百七十億円の追加融資を行なっております。政府はこの提案に当りまして、年末金融対策に万全を期するためと説明をいたしておりまするが、私はこの程度の財政融資によって中小企業者がこの歳末を越せるとはとうてい思えないのであります。しかも、この追加融資の百七十億円のうちから、百二億円は繰り上げ融資の補てんでございまするから、実質増額はわずかに六十八億円に過ぎません。国民金融公庫の場合に至っては繰り上げ融資を除いてわずかに二十五億円しか増額していないのであります。
 元来、中小企業の問題は、そのほとんどが金融問題にしぼられておると言われておるのであります。しかも、その中小企業は、わが国の産業構造の中においてきわめて重要な地位を占め、その生産額と輸出額はともに全体の半ば以上に達しておることは、先般の総理の施政演説にも述べられた通りであります。しかも、これを金融面から見ますると、中小企業に対する全体の金融量は、一般の金融に比べ実に一%にも足りない実情であります。中小企業の専門の金融機関としましては、中小企業金融公庫及び国民金融公庫のほかに、商工組合中央金庫があるわけでございまするが、その中でも、市中銀行の貸し出しのワクにも入らないような零細企業者の頼る窓口といたしましては、たった一つ国民金融公庫があるだけでございます。その国民金融公庫にわずか七十億円程度の資金しか考慮されないということでは、それで中小企業の年末対策に万全を期しておるということにはならないのであります。
 現在、政府の金融引き締め政策によって、最も大きな痛手を受けているのは実に中小企業者でありまして、中でも零細商工業者でございます。彼らは歳末どころか、毎日毎日の生活をどうやって過そうかということについて全く血の出るような窮迫の思いで暮しておるのであります。しかも、物価は、米価に限らず現に上昇を続けておるのであります。市中銀行に行くのには、すでに担保力は失い、そこでせめてもの生きる道といたしまして、国民金融公庫なり中小企業金融公庫に行くわけでありまするが、その両公庫に対する財政資金の供給がこの状態にとどまるということでは、政府の中小企業者に対する態度たるや、まさに冷酷と言わなければならないと思うのであります。
 以上、私は政府の冷淡かつ無責任とも言える財政措置を非難いたしまして、本補正予算案三案に反対の態度を明らかにいたすものであります。(拍手)

発言情報

speech_id: 102715261X00519571112_002

発言者: 栗山良夫

speaker_id: 24197

日付: 1957-11-12

院: 参議院

会議名: 予算委員会