池田禎治の発言 (本会議)
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○池田禎治君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本日提案されました昭和三十三年度予算案の国会提出遅延に伴う国会審議権の侵害に対し、岸内閣の政治的責任を追及するとともに、岸総理大臣の所信をたださんとするものでございます。(拍手)
言うまでもなく、明年度の予算案は、わが国今後の政治経済の方向を具体的に示すものでありまして、保守、革新の二大政党下における岸内閣が初めて編成した予算案であるだけに、この意義はきわめて重大であり、国民もまた、この予算案に対して重大なる関心を寄せておるのであります。
われわれは、昨年末以来、政府に対し、予算案の提出時期について、しばしば折衝を重ねて参ったのであります。政府は、与党との打ち合せその他のことを考慮し、できれば一月の二十二、三日ごろにまとめて、一月の二十五日までには必ず国会に提出する旨の確約があったのであります。それが、この正月に参りまして、愛知官房長官より、まことに申しわけないが、一月の二十七日でないとどうしても国会への提出ができません、まげて御了承を願いたい、というところの申し出があったのであります。私どもも、やむなく、これを了承したのであります。ところが、その後、またまた、政府は、与党の予算ぶんどり戦争のために、どうしても二十七日には間に合わない、二十九日でないと一切の手続が終らないというので、三たび遅延されて、本日ここにようやく上程されたのでございます。
こうも念には念を入れた予算でありまするから、いかにりっぱな予算案ができたのであろうかと思って、私どもは慎重にこれをながめたのであります。ところが、私どものところに配付される前に、全国の新聞及び全国の経済評論家が一斉に筆をそろえて、無能にして無定見なる予算編成方針であると、かように批評をしているのであります。(拍手)これは私が申すのでなく、評論家であり、新聞紙でございますが、その新聞紙等が、項目的に見て、要約して、どう言っておるかというと、最初には、これは切られ与三郎予算——ずたずたに切られたという意味でしょう。その次には、これはよろめき予算、さらにひいては、選挙ノイローゼ予算である。(拍手)さらにまた腰抜け予算であり、最後にはどういうかというと、これは両岸予算であると、かように述べられていることは、国民のあまねく知るところであります。
予算案の内容につきましては、後ほどわが党の代表質問によって鋭く批判されると思いますので、私はこれには触れませんが、問題は、政府並びに与党の無統制な予算ぶんどり競争のために多くの日数が費され、予算案の国会提出が遅延され、国会の審議期間を大幅に制限したのみならず、予算に関連する重要法案のごときは、本日ただいま、一件といえども国会に提出せられておらないのであります。(拍手)こういうように、国会が再開され、予算に伴うところの重要法案が一件も提出されておらないということは、かつて鳩山内閣のとき以外、岸内閣と、二つしかその例を見ないのでございます。(拍手)これは、予算案の審議権を不当に侵害するものとして、立法府に席を置く者のひとしく痛憤を感ぜざるを得ないところであります。
政府は、ないし与党の人は、予算のおくれたことは、一月三十日もある、あるいは二月一日、二月二日になったこともある、こういうことを述べる方もありまするが、本来ならば、予算というものは昨年の十二月中に出さなければならぬものでございます。これは、財政法第二十七条に基きまして、予算書というものはその前年の十二月中に提出をしなければならぬということを明記しておるのでございます。それを平気の平左で破っておる。これは明らかに政府の法律違反でありまして、歴代の内閣は、いつも、年末年始の休会を利用いたしまして、一月の二十日ごろに出せばよろしい、こういう悪い習慣を勝手に作っておるのでありまして、これは正しいあり方ではありません。あなた方みずからが法規に違反をしておるのであります。政府は労働者や労働組合が法規に違反すると、立ちどころに、これは法律違反なりといって処断をする。自分たちがみずから財政法違反の行為をしても、平気の平左、ほおかぶりをして、平気でやっている。あなた方は、そういう態度でもって、口を開けば国民に順法精神を説き、法令違反をしてはいけない、こういうことを言うということは、私はまことに不可解千万なものであるといわなければならぬ。あたかも、弱い者が法に違反すると、法は峻厳苛烈にこれを処断する、けれども、強い者が、権力を持った者が法に違反しても、平気の平左で、ほおかぶりをして通しておるということは、これは断じて見のがすわけには参らぬのであります。(拍手)
政府は、昨年の九月十日、予算編成の基本構想を策定し、続いて十二月二十日、ゆるぎなき予算編成方針を閣議決定したと発表し、さらに、自由民主党の党議もこれを承認したというのであります。しかるに、一たび予算編成に取りかかるや、政府与党の予算ぶんどりは全く言語に絶するものであり、けんか口論はもとより、つかみ合い、どうかつ、脅迫のたぐいから、果ては派閥抗争の集団的デモンストレーションが各地において行われたのであります。(拍手)およそ、このぶんどり合戦の醜態というものは、一民主政党のもとにおいては考えられない、醜態限りなきものを露呈したのであります。これは全国の新聞が例外なく述べておりまして、今さら、党のお方も、政府のお方も、そういうことはないなどと言っても、これは国民がすでにあまりにも知り尽しているのであります。今ひな壇に労働大臣としておられます石田博英君は、かつて、自由民主党の党内派閥について、三個師団八個連隊と称しておったのであります。私どもが、新聞記者の諸君が、今度見た党内派閥というものは、まさに七個師団十六個連隊というふうにふくれ上ってしまって、親分子分の派閥関係がいよいよ複雑化し、夜に日を次ぐところのぶんどり競争は、まさに百鬼夜行さながら、政府案の決定したときには、一萬田大蔵大臣はしわくちゃになって、一言もものを言えないほど疲れ果ててしまったというではありませんか。
特に、われわれ日本社会党が、この予算編成の過程を振り返って、国民とともに最も遺憾に思いますることは、内閣の責任において編成さるべき予算案が、難航に難航を重ね、国民に大きな不安と動揺を与えているとき、岸総理大臣のとった政治的態度であります。私は岸首相を知ること二十年に及んでおります。個人としての岸首相に敬愛の念を抱いていることに変りはありませんが、一国の総理という公器の政治的無責任を許すわけには参らぬのであります。岸首相は、予算案がわが国の政治、経済の方向を具体的に示し、国政を実質的に決定する重要案件であると考えるならば、何ゆえに、この予算編成に当って内閣の責任者としての全努力を払わなかったかであります。われわれのうかがい知るところでは、政府与党の予算編成の基本方針は、第一には、歳出の増加は一千億以内にとどめる、第二に、四百三十六億の余剰財政はたな上げをする、第三に、財政投融資の規模は三十二年度の実行額程度に押えるということにあったと思うのであります。それが、党内派閥のぶんどり競争や、右往左往する集団的威力の前に、大蔵大臣が夕べに一城をとられ、あしたに一砦を奪われて、もみくちゃにされても、何ら閣僚間の調整や基本方針の貫徹に努力を見せなかったことは、例によって、あなたのくせらしい、悪役は引き受けない、よいところは出ていくという、ひより見主義の思想が現われているのではないでしょうか。(拍手)これは、内閣統括の責任者としては、まことに無責任きわまる態度といわなければならぬのであります。首相は、あるいは、予算編成については難航はしなかった、最後には自分が裁定をした、こういうふうにお答えになるかもしれませんが、川島幹事長を初め自民党の幹部諸公が、異口同音に、不手ぎわな予算であったということをひとしく申し述べておるのを見ても、これは明瞭でございます。
愛知官房長官が一月の二十七日には間違いなく国会に選出しますと言って、さらに二十九日に至ったことは、一部大蔵官僚間に、こんなずたずたに切られた予算案ではとてもまじめな作業はできないという一種のサボタージュというものが行われたために、さらに二日間も国会提出がおくれた、こういう巷間に伝えられておるうわさは、私はゆえなきではないと思うのであります。
民主主義議会政治は、独裁主義と権力主義を排して行われるものであります。従って、これは、運用のいかんでは、一歩誤まると大へんなことになるのであります。民主主義を守るとりでは国会であります。国会の審議を通じてであります。そうして、正しい民意をくみ取るところにあるのであります。国会の審議権を侵害し、わが国政治経済の方向を決定する三十三年度予算案の国会提出遅延はきわめて重大であります。
この際、内閣総理大臣の責任ある答弁を求めまして、私の質問を終ります。(拍手)
[国務大臣岸信介君登壇]