鈴木茂三郎の発言 (本会議)
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○鈴木茂三郎君 私は、日本社会党を代表して、岸総理の施政方針に対して、第一には国際外交上、第二には財政経済上、第三には国会解散の問題について質疑を行わんとするものであります。(拍手)
第一の国際外交上の問題についてお尋ねいたします。
アメリカのアイゼンハワー大統領は、その年頭教書で示しているように、ソ連に対する軍事上の優位性を取り戻そうとして、大陸間弾道弾、中距離弾道弾等のミサイルの生産に乗り出し、また、北大西洋同盟加盟の諸国、江東アジア方面またはアジアの極東に対しても中距離弾道弾を配置しようとしているのであります。こうして起った米ソのミサイル軍備競争から生じた国際緊張は、今や、世界の平和を愛するあらゆる国々、あらゆる民族を言い知れない不安に陥れておるのであります。北大西洋同盟の加盟国においてさえ、デンマークやノルウエーのごときは、アメリカのミサイル基地となることを拒否し、イギリス、ドイツその他ヨーロッパの多くの国は、何らかの形で東西両国の首脳会談を開いて国際間の緊張の緩和を行うべきだと主張し、イギリスは、東西の不可侵条約締結や、核兵器をもって武装しない核非武装地帯についても考慮を払うべきだとの態度を明らかにしておる。ポーランドによって提案された欧州の核兵器非武装地帯設定の問題は欧州諸国に大きな反響を呼んでおるのであります。中立諸国も、かかる事態に無関心たり得ないことは当然でありましてインドのネール首相や、ユーゴのチトー大統領なども、それぞれ東西首脳会談を促進することに努力しているのであります。しかるに、岸総理は、世界のかかる重大なる情勢に対して、本日施政方針を伺いましたが、果してこの情勢を正しく認識しているのかどうか。(拍手)また、これに対して、日本は、いかなる具体的な方針を持って世界の平和に貢献せんとするのであるか。総理はこれを明らかにされておりません。(拍手)核兵器、ミサイルの時代に、相対立する一方の陣営に所属し、ただ軍備を強化して日本の安全をはかろうとする政府のこれまでの方針の誤まりは、今日明々白々たるものがあるのであります。(拍手)
私は、ここで、岸総理の注意を呼び起したいことがあります。それは、国民が心配しておりますことは、サイドワインダーのごときミサイル兵器が、国民の知らない間に、日米安保委員会によって、こっそりと日本に持ち込まれようとしておる事態、あるいは、岸総理の言う新しい日米協力関係を強化するために、世界情勢に反して、むだな自衛軍の拡張が行われつつあるように、核兵器の基地としてアメリカにねらわれている日本とその周辺に、核兵器がいつの間にか持ち込まれ、または核兵器の基地が設定されて核兵器による武装が行われるのではないか、国民は大きな不安をここに持っておるのであります。(拍手)
私がまずこれらの点についてお尋ねをしたい。第一点は、岸総理は、現在のかかる世界情勢をいかに認識されておるか、もっと詳細に国民の前に明らかにしてもらいたいのであります。(拍手)総理は今日の世界情勢を正しく把握していないのではないか。第二点は、米ソのミサイル軍備拡張競争の時代に、その相対立する一方の国、すなわちアメリカと新しい日米協力関係を強めて、日本の従属関係をさらに強化しようという方針は、私の聞くところによれば、保守派の中においても強い批判がすでに起っているということであります。(拍手)これは当然でありまして、政府の外交方針は今や転換期にあると思うが、総理の所信はどうか。(拍手)第三点は、日本はこうした世界情勢に対応する国際間の緊張の緩和と日本の安全保障体制のために積極的な意思表示を行い、かつ、志を同じくする諸国とともに真剣に努力すべきであると思うが、岸総理の所信はどうか。(拍手)
私は、今日、かような世界情勢に対して、日本の安全保障並びに国際緊張緩和のための具体的な方策として日本は次のごとき措置をとるべきであると信ずるものであります。総理のこれに対する所信を承りたい。
まず、国際緊張の緩和について、米ソ両国は、今日の世界の不安が米ソの二大国の対立から起っておる責任をみずからの努力で解決するために、東西首脳会談を要望する世界の世論を私は率直に聞き入るべきであると思う。その準備手続として外相会議を開くことがあっても、首脳会談の道をこれがために閉ざすようなことがあってはならないのであります。総理も、首脳会談の開催に関しまして本日施政方針において述べられたのでありますが、問題は、どういう方法で総理は努力されるのか、それに対する熱意があるのかないのか、この点であります。(拍手)私は、この首脳会談の議題としては、核兵器実験の禁止——条件をつけて、核兵器の実験の禁止のできないような条件付でなくて、無条件の核兵器実験の禁止であります。(拍手)武器供給停止、非武装地帯の設定、不侵略条約の締結、軍縮問題の打開、これらの問題が首脳会談において取り上げられることが望ましいのであります。
次には、日本の安全保障について核兵器実験の無条件の禁止であるとか、米ソを含めた、ひものつかない、後進国援助のためのアジア経済会議であるとか、こういった問題のほか、私は、この際、特に核兵器をもって武装しない核非武装地帯の設定並びに不侵略条約の平和体制に関して、一、日本は核兵器をもって武装せず、また、核兵器の製造と貯蔵を行わないことを自主的に宣言する。二、米軍の核兵器、誘導弾の持ち込み、ミサイル基地の設定を阻止する。三、北西太平洋地域をもって核兵器によって武装しないことを関係諸国と交渉、協定する。四、アジア各国がアジアの核兵器非武装地帯の設定のために積極的に努力することを要望する。五、中ソ米等関係諸国と個別的、集団的に不侵略条約を締結することに努め、終局的にはアジア平和保障体制の確立を期する。
私は、以上の二つの問題、日本の安全保障と国際緊張の緩和に関する私の具体的な見解に対して、総理の明快な所信をただしたいのであります。(拍手)私は、ここで総理に申し上げておきます。必要なことは、自主的に具体的の方針を決定し、かつ、これを行動に移すことが必要でございます。(拍手)
国際外交上なお緊急な問題の一、二について、この際お尋ねいたします。
その第一点は、沖縄の問題についてであります。沖縄の日本への復帰は、沖縄の同胞の熱烈な要望のみならず、本土のわれわれ同胞もまたひとしく熱望してやまないところであります。総理がアメリカをたずねられた際、総理とアイゼンハワー大統領との共同声明によりますと、大統領は、住民の福祉を増進し、かつ、その経済的及び文化的向上を促進する政策を継続する、こういう趣旨が共同声明において大統領によって述べられておるのであります。しかるに、事実は、アメリカ大統領の言う住民の福祉とは全く相反する軍政による植民地的支配が行われておるのであります。(拍手)那覇市長問題について、沖縄の同胞が強くアメリカの軍政に反撃の意思表示を投票によって示したことは、私は、沖縄の同胞のアメリカの軍政による植民地的支配に対する抵抗の強い表現であり、同時に、日本復帰への要望をさらに強く表明したことにほかならないと、かたく信ずるのでございます。(拍手)アメリカにおきましても、沖縄の事態に対しましては、ニューヨーク・タイムスその他多くの新聞、雑誌及び有識者は、この際アメリカの沖縄に対する政策を転換すべきであるとの見解を表明いたしておるのでございます。岸総理は、昨年六月訪米した際、沖縄問題について、沖縄の同胞並びに日本側の要求を強く主張することをあえてされなかったのみならず、瀬長市長の追放問題そり他についてきわめて冷やかな態度をとったことは、沖縄同胞をして失望落胆せしめておるのでありまして、総理は、私はとくと同胞のためにお考え直しをいただかなければならないと思います。(拍手)われわれは、沖縄同胞が高く掲げておる四原則の貫徹と、核兵器基地化の反対、日本復帰と、まず施政権の返還等を主張して沖縄の同胞に協力して参ったのでありますが、私は、今日こそ政府はこれらの問題の解決のためにアメリカ政府と強力に交渉すべき時期であると思うが、総理の所信をただします。(拍手)
第二点は、中国問題であります。総理の本日の施政方針の中に、隣の大きな国の中国について何らの発言のなかったことは、はなはだ不可解でございます。(拍手)われわれは、日本が、アジア諸国の一員として、特にアジアの諸国と友好親善関係を打ち立てていくことが、日本の平和に貢献するゆえんであることを確信するものであります。インドネシアとの間に平和条約の調印を見たことは、その意味において喜びにたえないところであります。しかし、アジアにはなお幾多の大きな問題が残されておるのでありまして、中国を実際に支配しておる中華人民共和国政府との国交の正常化が今日なお未解決のままに放置されておることは、私は大きな問題の一つであると思います。(拍手)隣の国との間に友好親善の関係を持つことは、ひとり日本のためばかりではありません、アジアのためでもあるわけでありまして、このことは日本国民のひとしく要望しておるとろであるのであります。歴代の保守党内閣、とりわけ岸内閣は、総理の訪米後はアメリカの制約がさらに強まったからでございましょう、日中両国の実情に目をおおい、中国との国交正常化を回避する態度をとっておられるのであります。こうした態度は、とりわけ、最近のミサイル軍拡時代の国際情勢や、日本の経済事情の不況などと考え合せてみましても、私はすみやかに是正されなければならない問題であると思います。(拍手)どうして中国問題について、そうアメリカにばかり遠慮されるのか。政府は第四次貿易協定の締結を促進し、次いで、通商代表部を相互に設置することに一段の熱意を示し、すでに民間の折衝は限界点にあります。政府は、日中間の諸般の懸案を解決するために、政府の機関または政府代表者による接触をはかって、お互いの話し合いを開始すべき段階にあると思うが、総理はどう考えておるか。(拍手)
なお、中国の国連への参加の問題についても、いずれ国連の安全保障理事会あるいは総会において取り上げられる問題でありましょう。私は、中国を国連に参加せしめることは、アメリカ側に一方的に片寄ったと非難されている国連を、一方的に片寄ったものでない、公正な国連として権威づけるためにも、中国の国連加盟は当然であると信ずるのであります。(拍手)岸総理の所信をただしたい。
第二の質問は、財政経済上の問題であります。
第一次岸内閣から第二次岸内閣に至る昭和三十二年度の財政経済政策を見ますと、当初は、いわゆる神武景気というようなばかばかしい幻想のもとに、政府は自由放任主義を基調とする手放しの財政経済政策をとられた。ところが、その結果、外貨の危機を引き起し、神武景気の頂点から急激に景気後退の経済情勢に直面するや、政府は、あわてて正常な産業と国民生活ののど笛を締め上げるような不景気政策一本の対策をとり、しかも、本年度の予算案の編成の跡を顧みますと、財政方針が一体あるのかないのか、それさえわからないのであります。(拍手)まことに驚くべき無方針、驚くべき無計画であって、私は政府の財政経済政策に対する正常な能力を疑わざるを得ないのであります。(拍手)総理にお尋ねいたしたいのは、かような事態は、岸内閣の財政経済に対する見通しの誤謬、誤まった見通しの上に立てられた自由放任主義による手放しの政策の失敗と断ずるほかはないと思うが、どうか。(拍手)
次は、こうして、しゃにむに不景気政策がとられた結果、そのしわ寄せは中小企業に対する強度の圧迫となって現われております。それと同時に、生産者たる労働階級や、働く農民、消費着たる国民大衆の生活に対しても、同じようにしわ寄せされてきておるのであります。(拍手)政府の財政経済に対する見通しの誤まりと対策の誤謬の責任を政府が負わないで、中小企業や国民の生活の上に責任が転嫁されておる。(拍手)この事態に対して、総理はこれをいかに認識されるか。
次に、来年度予算案について、政府は、ここに、戦後最悪の予算案を作って国会に提出されております。この予算案と関連いたしまして、ここに一点総理の所信を確めておきたい問題がございます。それは、厚生省の白書によりますれば、国民の貧困は増加しつつあるということであります。警視庁の白書によりますれば、暴力による犯罪は増加しつつあるということであります。政界、官界、財界等における汚職は次から次へと相次いで起っておる。予算案について見ましても、この予算案に対する世評は、いまだかつて類例を見ない酷評を受けております。(拍手)貧乏追放はから念仏ではないか、予算案はそれ自体がこれは汚職予算ではないか、こういう酷評さえあるのであります。総理は、しばしば、国民に、三悪追放、貧乏と暴力と汚職の三悪の追放を公約されております。申すまでもなく、三悪の追放は、宣伝や、かけ声や、または法律や権力によって無慈悲に取り締ることだけで追放できるものではありません。(拍手)国民の生活を保障する物質的な基礎を与えることが何よりも肝要であるのであります。(拍手)政府がなすところは、三悪の追放ではなくて三悪の助長、三悪奨励になるのではないか。総理の所信をただしたいのであります。(拍手)
第三は、国会解散の問題であります。私は、国会解散の問題を、民主主義の原則から見て、これを大きく分けて、民主政治の根本原則からと、当面の政局の現実からと、二つの点から考えてみたいのであります。言うまでもなく、現行憲法は主権在民の原則の上に立つものでありまして、内閣は常に国民の代表たる国会に対して責任を負うものであり、国会はまた常に選挙を通じて国民に対して責任を負うものであります。かつ、わが憲法は随時解散を予定しているのでありまして、このことは、すなわち、政局担当者の更迭または重大なる情勢の変化と、それに対応する新しい政策の提起または変更に際しては、常に主権者たる国民の意思を問うべきことを命じておる証左であります。これを怠ることは民主主義を蔑視するものといわなければならないのであります。(拍手)
現在の衆議院は、第一次鳩山内閣の鳩山一郎君が政局を担当するに際して、信を国民に問うて成立したものでありますから、それよりここに満三年、第二次、第三次鳩山内閣から石橋内閣、第一次、第二次の岸内閣、これらは、いずれも、第一次鳩山内閣の鳩山一郎君が選挙によって国民から与えられた信任を、これをあえて盗用して成立した内閣だと断ぜざるを得ないのであります。衆議院の総選挙は、一面、政党に対する支持を明らかにするものでありますと同時に、他面、だれが首班として政局を担当するかということも、不可分の関係を持って行われるものであります。選挙を行わないで、国民の信任もなく、勝手に政党が離合集散して、その選ぶところの首領が政権を担当することが許されるならば、それは、明治、大正の閥族政治、官僚政治と何の選ぶところもないのであります。(拍手)
さらに、民主主義の原則から当面の政局の現実について見ますと、政党の離合集散と首班の更迭とだけが国会解散と総選挙の理由となるのではありません。重要な情勢の変化、それによる新しい政策の提起または変更等は、これを主権者たる国民の意思に問うべきであるのでありまして、鳩山内閣以来、自民党の重要政策が幾変転したことは周知の事実であって、ここに一々申し上げるまでもないところであります。ただ一つここで申し上げたいことは、世界情勢について、ミサイル軍拡競争のために重大な世界情勢の変化が起って参りましたため、米ソの谷間にあって、一方のアメリカの陣営に従属せしめられておる日本国民の不安は、今日の情勢の中でアメリカの言うがままになっておって、一体日本はどうなるかという不安であるのであります。(拍手)国民の多くが国会の即時解散を望んでいるのは、こうした内外の情勢に対して、それぞれの意思を投票によって政治に表明したいと強く望んでいるからであると思うのであります。(拍手)従って、大資本家や財界の一部だけが望んでいる予算通過を理由として国会の解散を回避することは断じて許されないのであります。(拍手)党内派閥の解散回避要求による党利党略のために、民主主義の原則と国民の自由な意思を表明する機会がじゅうりんされることは、断じて許されないのであります。
総理は、本日の施政方針において、民主主義と国会についてお述べになりましたが、民主主義に対しまして、議会政治に対しまして、私は、まず岸総理、与党みずから範を国民にたれることを要求して、私の質問を終了いたします。(拍手)