岸信介の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 鈴木君の御質問は、外交問題、経済問題及び解散問題等、広範の問題に触れておりますが、私は、これらのものに対して、なるべく詳細にお答えをしたいと思います。
 まず、国際情勢の把握の問題でありますが、これは、私の施政方針にも明らかにいたしておりますごとく、軍事科学の発達に伴って、東西両陣営がこの軍事力の増強の競争を熾烈にいたしておるということが世界に不安を与えておる。われわれのごとく、恒久の平和、安定した平和を望む上からいって、これはまことに遺憾な状態であるということもはっきり申し上げます。(拍手)ただ、それを打開するために、東西両陣営の首脳部において話し合いをするということの機運を醸成すべきである、これを進めていくべきであるということを申しております。ただ、鈴木君も御承知の通り、かつて、同じような状態において、先年ジュネーヴ会議において巨頭が集まって、いわゆるジュネーヴのいい空気をかもし出したのが、その次に行われた外相会議においてくつがえされた実例から見ましても、私は、この会談を実現するためには、十分の準備をして、これを成功に導かなければならぬと思います。(拍手)また、今日の状態において、大国の間にこの会談をすべきだという議論が一方非常に盛り上ってきておるにかかわらず、それがまだ実現に至らないということは、両国間における不信の念がその根底であります。私は、単にこの両国が宣伝によって相手を押えつけようとする考えではなくして、これを行為でもってその言葉を裏づけるようなことをしない限りは、なかなかこの大国間の不信は取り除かれないのであります。こういう事態を十分に考えて、この間における日本は、国際連合の内外において積極的にその機運を進めることに努めていきたいと思います。(拍手)
 また、日本の安全保障の問題に関連して、いわゆる核兵器でもって武装するという問題、核兵器の問題、また、いわゆるICBMやIRBM等のいわゆるミサイル基地の問題等に関してのお話でありましたが、私は、従来、日本が核兵器をもって武装しない、また、核兵器の国内への持ち込みはこれを認めない、拒否するということは、きわめて明確に申し上げておるところであります。(拍手)
 また、日米の協力関係は、日本の、また、わが党がとっておる外交政策の大きな柱でありまして、この日米の協力を——お互いがお互いの立場を十分に理解し、日本としては自主的な立場からこの日米協力を進めていくということは、われわれの外交政策の基本でありまして、(拍手)それが日本を危険に導くがごとき言動は、私は間違っておると思います。(拍手)
 なお、極東における核兵器の非武装地帯の設置の問題や、あるいは米、ソ、中国、日本等の四カ国の間における不可侵条約等についての御意見がございましたが、私は、これらの問題は、現在のこの国際情勢の現実から見ると、これが実現ということはとうてい考えられない。もしも四カ国の間において不可侵条約ができるような状態であれば、私は今日において軍縮問題等がああいう行き違いをするということは絶対にないと存じます。問題は、もう少し根本的な現実を把握して、これに対処した現実的な政策でもって進んで参りたい、かように考えております。(拍手)
 次に、沖縄問題でありますが、沖縄問題につきましては、鈴木君の御質問にありましたように、われわれもこの沖縄問題というものを非常に重要視するものであり、また、沖縄住民の要望は即日本国民全体の要望であってこれが実現のために今後ともあらゆる努力をしなければならないことは言うを待ちません。(拍手)私が昨年の夏アメリカに参りました際に、アイゼンハワー大統領との話し合いにおいて、私がこれを熱意を持って努力しなかったというお説でありますが、これは全然事実に反しております。私は熱意を持ってこれを実現しようと努力をいたしたのでありますが、この共同宣言に現われているように、不幸にして、まだ日米両国の間においてこの問題についての意見が一致しておらないことを残念と思います。(拍手)
 中国問題については、われわれは、現在の段階においては、これを正式に承認する段階ではないと思います。また、国際連合に加盟を認めるかどうかというお話でありましたが、国連における現在の情勢から見まして、われわれは決してアメリカに追随するがゆえにこれを認めないというのではありません。この問題を解決するためには、前提条件として、国際情勢を、十分にわれわれがその状況を認めて、そうして、これを緩和するところの前提をとらない限りにおいては、これを主張したって実現はできないというのが現在の状況であります。
 経済上の問題に関しましては、すでに大蔵大臣や、あるいは経済企画庁の長官、河野国務大臣からここで申し述べましたように、日本のこの従来の経済の発展があまりにも急激に過ぎたために、昨年の、夏にこれが是正のための緊急対策をとらざるを得なかった。しかも、その結果は、漸次われわれが所期したところの効果を上げつつあるという、こういう状況であります。しかし、経済情勢の変化というものは、ことに、日本のような海外の経済事情に依存することの非常に大きい国、貿易によらなければ立っていけないような国におきましては、国外の経済情勢と同時に、国際的経済情勢の正確なる見通し、把握ということが必要でございます。しかも、この今日の国際情勢が、先ほど来鈴木君も御指摘のあったように、きわめて複雑微妙に動いておる際において、この国際経済事情等を正確に把握するにつきましては、われわれは、さらにその機能を強化するような措置を講ずる必要があり、また、同時に、日本の経済の基盤を固めて、そういう国際情勢の少しの変化によっても、これを鋭敏に感ずることのないううな基盤を作っていく必要がある。(拍手)そういう意味において、われわれは、長期経済計画を立てて、安定した基盤の上に将来そういうことのないようにしていくというのが、われわれの考えであります。(拍手)
 また、この総合緊急対策の結果、中小企業者にしわ寄せがきておるじゃないか、あるいは労働者や農民や一般の国民消費者に非常な迷惑、しわ寄せを来たしておるではないかというお話でありますが、この中小企業者の問題は、これは、私の施政演説において明らかにいたしておりますごとく、きわめて重要な問題でありますので、その組織を強化する、あるいは経営を安定化する、あるいは資金を潤沢にするために信用力を強化するとかいうような恒久策を立てるとともに、昨年の緊急対策におきましては、中小企業金融については特別の措置を講じて、私は、実際は相当にその金融の効果を発揮して、しわ寄せがここにいったというような事態はないと思います。(拍手)また、労働者やあるいは消費者一般に対しましては、物価を値上げしないように政策をとっておるわけでありまして、この初編の引き上げによって生活を脅かすということはない。現に、それは、先ほど河野国務大臣も物価の指数について申し述べておるように、われわれがこの緊急対策をとって、物価は漸次下落をいたしております。
 予算案について、いわゆる、私が従来公約し、私の念願として唱えておる三悪の追放がどうなっておるかという御質問でございます。私は、貧乏追放ということは、これはいわば内政の眼目である。従って、これを実現するためには、根本的にいえば、経済を拡大して経済を繁栄させなければならぬ。しかも、一面においては、社会保障制度を拡充して、生活上困っておる状況にある人々に私は社会保障の手を伸べていく。この二本の柱で進むべきものと思います。一方において経済の長期計画を立て、経済の安定した基礎における拡大を考えると同時に、社会保障に関しましても、本年度の予算において相当の増額をいたしております。(拍手)私はこれをもってもちろん十分とは考えておりません。しかしながら、この方向において今後も力をいたすつもりでおります。また、汚職の追放や暴力の追放につきましては、これは、予算案というよりも、むしろ、いろいろな法規の励行や、あるいは足らないところの法規を整備して、一般の人々がこの点に関して強く反省し、また、そういう事態を生ずる温床となるような事態をなくするように努力しなければならぬと思っております。
 最後に、国会解散の問題でありますが、解散問題につきましては、従来、しばしば、前国会以来論議されたことであります。鈴木君の質問されました、いわゆる民主主義の公式論につきましては、私は従来明確にお答えをしてきております。ただ、政治情勢として、今日するのが適当であるかどうかという問題に関しましては、私は、先ほど来鈴木君も御質問になりましたように、私どもは相当な注意をして、経済的にしわ寄せのこないような措置をとっておりますけれども、一部においてはそれでもなお弱いところへしわ寄せがきやしないかということを御心配になっておる向きもありますので、そういうときには、一日も早く予算を成立せしめてこれを実施することが、これらの国民の要望に応ずるゆえんであると考えておりまして今日解散する意思は持っておりません。(拍手)
     ————◇—————

発言情報

speech_id: 102805254X00419580129_020

発言者: 岸信介

speaker_id: 6788

日付: 1958-01-29

院: 衆議院

会議名: 本会議