淡谷悠藏の発言 (本会議)
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○淡谷悠藏君 私は、ただいま提案されました昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び同特別会計予算補正(特第1号)につき、日本社会党を代表して、政府原案に反対し、わが党提案の編成がえを求めるの動議に賛成する討論を行わんとするものであります。(拍手)
反対する第一の理由は、補正予算に対する政府の考え方についてであります。
佐藤大蔵大臣は、この補正予算に関する演説で、先般国際通貨基金及び国際復興開発銀行の総会に出席して、「わが国経済に対する国際的な評価がきわめて高いことを強く感じて参った次第」であるなどと言っておりますが、国際的金融業者の会議で大蔵大臣がどうお感じになろうが、それでわが国経済が信を海外に博し得ましたことを、あなたの言う国民各位は、決してあなたとともに喜んでいるはずはございません。あなたは、一流の国際金融業者にほめられたから、国民の多数が幾ら苦しんでも、景気は立ち直りかけていると言うかもしれませんが、一部の産業において、過去の投資活動の行き過ぎの反動として残っているものは、決して、あなたの言われるように、若干の問題にとどまるものではございません。
あなたは、「昨年来のわが国経済の調整過程は、今日ようやくその仕上げの段階に入りつつある」などとも演説しておられまするけれども、景気の停滞現象などと称して、なべ底が抜けたみたいな不景気のどん底で、仕上げなどかけられては、たまったものではございません。(拍手)東京のまん中に次々と建つビルディングや、夜昼分かたぬ金貸しや死の商人どもの宴会に酔いしたれ感覚では、今日、深刻な経済不況に倒産し、一家離散の涙をかみしめる小中企業者の苦しみはおわかりにはなりますまいが、現実的には、労働条件の悪化、大量首切りが続いております。「秋の風、きょうより職を失わば、この街上もさびしがるべし」という歌がございます。今を時めく大蔵大臣のあなたには、このさびしい気持はわからないでございましょうけれども、首を切られ、街頭にほうり出された労働者の気持は、やがてあなたが大蔵大臣のいすを去るに際して感じるさびしさとは比べものにならないほど悲痛なものがあるのであります。(拍手)きびしい年末を控え、首を切られて街頭に投げ出されたときの多くの労働者の感情は、大蔵大臣、あなたには切実に感じ取られないのは、ごもっともでございまするが、少数のあなたの仲間が、労せずして巨大な富を積みながら、そのために大多数の国民がその日のかてにも困るこの現実が、いかに目をおおっても、刻々と資本主義経済の土台を掘りくずしていっていることは、労働争議の弾圧などによっては決して押しつぶされるものでないことだけは、深く肝に銘じておいてもらいたいのであります。(拍手)
不況は農村をも襲っております。牛を飼えば牛乳の値が下り、蚕を飼えば繭の値下りが底を知らない。政府は、酪農を奨励し、繭の増産計画で農民をおだて上げておきながら、この政策失敗に基因する不況に対しては何ら手を打とうともせず、いたずらに金融資本と軍需産業のから景気に酔い、景気立ち直りのはかない夢で国民をごまかし通そうとするなどは、悪質この上もない欺瞞政策であります。欺瞞ではなく、この厳粛な現実の破局がほんとうに見えないというならば、これこそ、まじめに働く国民のための政治を行う資格のない政府であります。
ことに、春以来打ち続く災害のために、家族を失い、家を流され、田畑をなくした災害地の人たちは、その救済を一刻もおろそかにできぬ悲痛な気持で政府の施策を待ち望み、すみやかに補正予算を組んでこの災害を救済するように、全国からその哀情を訴えてきております。今回の臨時国会もその全国民の待望によって開かれたものにほかならないのであります。日を追うて深刻さを加えていく経済不況の打開策を立て、災害救済の補正予算を組むことのためにこの国会が開かれたのであることを、政府は早くも忘れてしまっていたのであります。少くとも、忘れたふりをしていたのであります。
まず出してきたのは、独占禁止法の改正案であり、ごまかしの最低賃金法である。わが党から再三せき立てているにもかかわらず、肝心の補正予算は一向組もうともせず、暗やみから牛を引っぱり出したように、いきなり突きつけてきたのは警察官職務執行法改正法律案であります。(拍手)国民が本国会に待ち望んでいたものは、不況対策、災害対策の誠意ある補正予算を組むことにあった。真剣にその対策の審議に当り、一日も早くそれを実行に移すことであった。もし、本国会の劈頭において、わが党このたびの提案によるような完全な諸施策を打ち出し、補正予算を提出し、その実行をしていたならば、何も今さら時代逆行の警察国家構想などを打ち出して国民を弾圧しなくても、国民は、自民党政府であれ、その功績を謳歌したはずであります。さすがに、岸総理は、うそを言わずに、半年前の選挙公約も守ったし、戦時内閣の閣僚だったにも似合わず、よくまあ戦犯のあかを落したと感心もしたことでしょう。ところが、何ごとか、災害国会を予期したのに、警職法でなぐりかかってきたのであります。パンを求めているのに、こん棒を突き出してきたのであります。
しかも、わが党に迫り寄られて、ようやく補正予算を組んで出したのは、会期も終りに近づいた十月二十八日であります。おざなりの、穴だらけの予算案を組んでおいて、しかも、審議は一向にはかどらせようといたしません。定刻に社会党の予算委員が顔をそろえて待っているのに、岸総理初め、政府委員は一向出てこようともしない。与党の楢橋委員長でさえ、さすがにたまりかねて、政府委員の出席がおそい、必ず定刻に出席せられたいと警告を発しましたが、それでも、やっぱり出席がおそい。これが、一体、真剣な災害対策、不況打開の予算審議の態度でございましょうか。(拍手)察するところ、岸内閣は、選挙に勝ったおごりから、一挙に一党独裁を夢み、外は安保条約の改正、内は憲法改正をあせり、大資本家の利益を守って労働攻勢を防ぎ、戦争に備えて、平和運動を抑圧せんがための手先に、警察を変貌せしめんとする警職法改正を強行すること急にして、かくも補正予算審議には熱意を示さざるものというほかはございません。
しかも、わが党の警職法改正反対と、世論の激しい反撃にあってこの悪法の通過がむずかしくなると、今国会初頭における公党間の申し合せ、正規の取りきめを無視し、例により卑怯な奥の手を出して会期の延長をはかり、災害に関する補正予算の審議をおくらせてその口実に使おうとしたのであります。国民が、ことに災害に打ち悩まされた人々が、血の出る思いで待ち望んだ補正予算を、かくも提出をおくらせ、かくも審議を怠り、警職法改正の道具に使うなどという態度は、断じて許さるべきではございません。(拍手)
今回の補正予算は、その提出の仕方において、かくもふまじめであり、その審議の態度において、かくも不誠実である。これが、われわれの政府原案に反対する第二の理由であります。
その補正予算の内容においては、さらにあきれ果てたものであります。昭和二十八年度の災害を越すといわれるほどの大災害に対し、政府の組んだ補正はわずかに九十億円余にすぎない。災害地の諸君は、閣僚や与党の幹部が現地におもむいて、鳴りもの入りで対策の公約をし、大がかりの宣伝をした結果が、こんな始末であることに、大きな失望を感ずるに違いございません。これが実際に交付されたら、災害地の人々は、おそらく蚊の涙みたいなものにすぎないことに、さらに大きないきどおりを感ずるに違いございません。(拍手)
しかも、この予算には、二十二号台風及び一連の台風被害だけではなく、春以来の干害、霜雪害対策費まで含まれているのであります。災害の政府の査定総額が、決して現地の報告に基いたものではなく、政府機関において幾度も幾度も圧縮されたものであることはむろんであります。しかも、最後には、被害実態に即しようが即しまいが、財源に苦しむ大蔵省の財布に合せて最後決定を見たものであることは明らかであります。
今回の災害は、天災というよりも、選挙目当ての政政施策の総花主義と、不徹底さと、口先だけの計画に、しかも実行予算はつけてやらない立ちおくれがもたらした人災といわれております。政策の失敗による人災という以上、政府はすみやかに徹底した施策によってその急を救わねばなりません。
すでに東北、北海道では雪の降る季節でございます。岸首相は、ゴルフに熱心だと聞きまするが、ゴルフ場のコンディションを気にする前に、実らぬ稲を泥まみれになって刈り取った農民たちの、食うものもない雪の中のみじめさを考えてほしいのであります。(拍手)住む家もない人々に来たるこの冬のきびしさを思いやってほしい。すでに冬迫る災害地は、救済工事にはすでにおそくなり過ぎております。これはゴルフができないこととは比較にならぬ重大事であります。
財源がないとは言わせません。大資本のためには、異常災害に使う目的の経済基盤強化の資金二百二十一億円をたな上げして動かさず、外債百八億を気前よく打ち出しているではございませんか。施策がおくれ、国土を荒し去ったことは、ボロ靴や、中古エンジンや、自衛艦隊、さては、最近起った戦闘機製造など、防衛予算の重圧のためであります。国民を殺し、国土を荒廃に帰せしめて、どこに国防がありましょうか。国防と称して血税を乱費し、守るべき国土が荒れ果てて、何を一体守ろうとするのですか。(拍手)それで国防などといわれますか。国防の第一義は、まず国土を災害から守ることであります。(拍手)国土の保全と民生の安定を忘れて、国防の本義はございません。(拍手)一昨日、予算委員会において、赤城官房長官は、問題の次期戦闘機の決定は当分見合わせると明言いたしましたが、戦闘機を作ったつもりで、思い切って災害対策、不況対策をやってごらんなさい。飢えたものに食を与え、家を失ったものに家を与え、職を失ったものに職を与えたら、そのためた補正予算をおくらせた警職法の改正強行の必要などは毛頭なくなるでしょう。
すでに根本の考え方において誤まり、次に提案の仕方、審議の仕方に誠意を欠き、第三に内容においてずさん、いいかげんな補正予算案には、一体何がいいところが残っておりましょう。悪いことは申しません。今まで犯した政府数々の誤まりを償う道は、わが党提案の編成がえを求める動議に賛成することよりありません。今回の災害補正予算の乏しさには、災害地出身の与党議員の諸君でも、ひそかに不満を抱いているに違いございません。御遠慮は要りません。為やまちを改むるにはばかることはありません。あげてわが党提案に賛成あらんことを望み、政府の原案には反対をいたしまして、私の討論を終ります。(拍手)