鈴木茂三郎の発言 (本会議)

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○鈴木茂三郎君 私は、日本社会党を代表して、岸首相に対し、最近の政治情勢の不安を引き起した政治的責任を問い、議会政治の危機を導いた権力主義的な政治方針をただし、総理の心からの反省を求めるために、ここに質問を行わんとするものであります。(拍手)
 私は、本日、岸総理の施政方針を拝聴いたしたのであります。率直に言って、空疎な、誠実の認められないものであることは、遺憾にたえません。(拍手)総理にとって、施政方針の前提となる必要なことは言動の一致、言うことと行うことが日ごろから一致するのでないと、施政方針も空疎に聞え、誠実のこもらないものとして国民の心に映るのであります。(拍手)信念を喪失した総理、確信を失った総理としては、本日の施政方針は無理ならぬとは思いますが、私は、ここに施政演説を承わって、ただ失望というよりは、あまりにそのそらぞらしさを感じたものであります。(拍手)
 質問に入る前に、あらかじめ承わっておきたいことは、去る二十四日持たれた自民党大会後の刷新懇話会の名で発表された声明書の中で、「金権政治と権力政治を排し、金のかからぬ政治、国民とともに行く政治のため投ぜられた百六十六票という票数の意義を、岸総理がこの際真剣に翫味されることを要望してやまない」という声明の行われたことに対しまして、これは、私は、きわめて総理にとって含蓄の深い言葉が含まれておると思うのであります。(拍手)このことは、単に岸総理の自民党内部の問題だとして看過できないのであります。なぜならば、これから私が岸総理にお尋ねしようとする総理の政治的責任の問題とこれは直接関連する国民や国会の問題だからであります。(拍手)この声明によれば、岸総理が金権政治、権力政治をおやりになってきたことに対して、党内からかような痛烈な批判が総理にたたきりけられたのであります。(拍手)総理は、これをいかに翫味されたのであるか。ほんとうにこれを翫味されたのであれば、岸総理は、本日こうして国会に来て国民の前に立つことができないはずであると思うのであります。(拍手)反省すべき、国民ではなくて、総理自身である。議会政治を守らなければならないのは、人ではなくて、総理自身であるはずである。(拍手)私は、総理には人を説教する資格はないと思います。まず、これをこの機会にお尋ねいたしまして、私がこれからお尋ねいたしたいことは、国会と国民の立場から、総理の政治的責任、国会と国民に対する責任と、民主主義と議会政治に対する所信をただしたいのであります。
 昨年の総選挙後の第三十臨時国会の開会されるや、岸総理は、その施政方針において、社会保障制度の確立や、減税等の選挙における公約の実施や、風水害、旱害など災害対策の法案の提出を約束され、次いで、議会政治の尊重、民主主義擁護の決意を、この国会において表明されたのであります。ところが、臨時国会の状態はいかがであったでありましょうか。風水害対策や減税や社会保障制度など、国民の生活に直結した公約や政策の実行について、岸総理は少しでも熱意や誠意を示されたでありましょうか。事実は全くそれと逆であって、諸君がよく知っておられるように、国民から総反撃を受けて、総理みずから審議未了にせざるを得なかった警職法改正案のために、国民に公約した政策を犠牲にして顧みず、これがため、臨時国会において、民主主義と議会政治の擁護を呼びかけたその総理の手で民主主義を踏みにじり、議会政治を打ちこわすような、驚くべき暴挙が行われたのであります。それゆえ、国民は、通常国会の再開に先だって、さきに岸総理の行なったこの暴挙に対して、岸総理は国民と国会に対して当然政治的責任を明らかにされるものと信じて、今日の通常国会の休会明けの再開を待ったのであります。しかるに、総理は、その政治的責任を負われないだけでなく、てん然として恥ずることを知らざるもののごとく、休会明けの国会に臨まれたのであります。総理の、こうした態度は、国権の最高機関たる国会を侮辱し、憲法の主権者たる国民を愚弄するものといわなければならないのであります。(拍手)
 申し上げるまでもなく、今日の憲法のもとにおける議会政治は、明治憲法下の政治体制と異なって、議会内閣制、すなわち完全な政党内閣制であって、党の方針、政策は、即政府の方針、政策であるのでありまして、当時自民党の党籍を持って党議に従って不当な国会の運営をはかった議長、副議長の責任は、まさに自民党の責任であるのであります。(拍手)また、総理は同時に自民党の総裁であり、最高幹部と協議の上で、国会の運営または国会への法案の提出等、重要な方針を指示されたのでありますから、政府もまたその責任を免れがたいものがあるのであります。(拍手)憲法第六十六条に照らしてみましても、「内閣は行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と規定しておるのであります。すなわち、内閣は、国会、すなわち国民に対して一体の責任を負うべきことは、憲法上明々白々であるのであります。さらに、岸総理は、警職法の是非は別といたしましても、繰り返し、この法案のためには内閣の運命と総理の政治的生命をかけて通過させると決意を表明されております。(拍手)その法案が国民の総反撃を受けて審議未了となったのでありますから、今日、岸総理のために残された、とるべき道は、即時内閣総辞職を行うことでなければならないのであります。(拍手)
 岸総理は、さきに、かりそめにも、民主主義を擁護し、議会政治を尊重することを国民に呼びかけられたのであります。総辞職して、国民と国会に政治的責任を明らかにし、総理みずから、身をもって、言動の一致、言うことと行うことが別々でないということを、ここで国民に示されることが、私は、議会政治に忠実なゆえんであり、総理のお人柄を最後に飾る道もここにあるのではないかと信ずるのであります。(拍手)
 次に、第二の問題として、この質疑を通じて国民の前に事態を明らかにいたしたいことは、憲法によって明白であるように、民主主義の機構の基本は、立法、司法、行政の三権の分立にあるのであります。言いかえれば、三権分立の基本的な建前は、民主政治の機構の根幹をなすものであるのであります。私のお尋ねしたいことは、岸内閣のもとにおける三権分立の混乱、紛淆に関する問題であります。三権の分立は、対等の分立が原則であるのでありますが、わが憲法は、立法権の機関たる国会を国権の最高の機関として、その優位性を認めておるのであります。しかるに、岸内閣となりましてから、行政権の優越、すなわち、行政のもとに国会と司法があたかも従属しているような政治支配が次第に強まりつつあるように見受けられるのであります。このこと、健全な民主政治、真実の議会政治のために憂慮にたえないところであります。
 私は、まず、立法と行政の関係についてお聞きいたします。
 最近の行政と立法の紛淆は、行政府たる内閣の方針、政策を強行しようとして、議員の多数を頼んで国会を操縦し、運営しているところから起っていると思われるのであります。たとえば、憲法改正の審議調査を内閣の管轄下に設けたごときは、その顕著なものであるのであります。(拍手)また、安保条約改定のような重大な外交上の問題が、事前に国会に諮られることなく、外務官僚をして秘密裏に行わしめているごときも、その一つの例であるのであります。(拍手)また、勤務評定の実施、警職法改正の提案のごときも、国会の意思を無視して強行されてきたのであります。こうした事例は、岸内閣となってから枚挙にいとまないほどたくさんあるのでありまして、政府は、国権の最高の機関たる国会が行政に従属していることが当然であるかのごとくふるまっているように観察されるのであります。(拍手)
 次に、行政と司法権や検察権の関係についてお聞きいたします。
 司法権や検察権は、完全に行政権から分立し、独立して、いやしくも政府の手を一指も触るるあたわざるものでなければならないのであります。ところが、次から次へと起ってきた政界、官界、財界の大きな汚職は、さざなみのごとく波頭を見せただけで、国民の眼界から、あとからあとからとかき消されていっておるのであります。それゆえ、警察権や検察権が果して健全なりやいなやについて、国民をして疑いを抱かしめておるような現状にあるのであります。(拍手)その他、軍事基地の反対闘争や、勤評、警職法改正反対の闘争等、これらに対する警察権や検察権の不当な介入によって、憲法で保障された人権は不法に侵害されておるのであります。こうした一連の事態は、国家公安委員会を行政に従属させ、かつ、行政が警察権の中立性を侵犯するに至ったところから起ってきたようにも観察されるのであります。かような事態は、あたかも、三権の権力分立以前の藩閥や官僚の専制政治、権力政治をほうふつたらしめるものがあるのであります。(拍手)私は、こうした行政と司法権、検察権の紛淆から社会不安を誘発するおそれのあることを憂慮いたしておるものでございます。これらに対する総理の所信をただしたい。
 次に、一般的な通念といたしまして、民主政治の要諦の第一は、政治支配に国民がおびえるようなことなく、安心してだれでも日常生活を楽しむことができるよう、国民の一人々々に対して愛情を込めた、あたたかい、思いやりの深い政治が行われることであります。(拍手)民主政治の第二の要諦は、行政府たる政府は、権力的に人権を侵さないだけでなく、みずから法律の基本たる憲法を尊重し、憲法に基く法律、特に人権を積極的に擁護する政治を行うことでなければならないのであります。(拍手)
 それに関してお尋ねいたしたいことは、岸内閣の権力政治、警察政治を最も露骨に表明したものは、その労働政策によって見ることができると思うのであります。(拍手)政府は、労働者に法律を守らせるという美名に隠れて、その実は反動的な労働政策を強制し、一方においては、警察権と検察権とによって正常な労働運動を弾圧し、他方においては、労働者の生活に対して、愛情のない、無慈悲な政治を行なっておるのであります。(拍手)
 その最も顕著なものは、憲法第二十八条に認められておる労働三権に違反する立法、すなわち、公労法第四条三項、国公法第三十八条等のごとく、今日なお、かかるものを存続しているのみか、これをたてにとって労働運動を弾圧しつつある事実であります。私は、法的秩序を無視し、国会を軽視する政治、この問題を重大な問題として考えてもらいたいのであります。(拍手)
 団結権に関する国際的な条約は、国際労働機関においても、すでに結社の自由と団結権の擁護に関する条約が決定しておるのでありまして、日本政府は、国際的に義務づけられておる条約の批准を今日まで実行しておらない。それがため、政府は理事会から再三再四批准の勧告を受け、内外の情勢はもはや、労働問題懇談会の審議や結論がどうとかいうような逃げ口上をもって、じんぜん時を過ごすことは許されなくなって参っているのであります。(拍手)本国会で条約批准のできるような手続を政府は当然とるべきであると思うが、どうか。この機会に総理にお尋ねをいたしておきたいのであります。(拍手)
 第三にお尋ねをいたしたいことは、国際情勢と外交問題についてであります。
 米ソの対立は、究極兵器と呼ばれるロケット兵器の競争に発展するに至ったのでありますが、その優位性がいかようであろうとも、第三次大戦、すなわち核兵器の戦争は次第に回避されていくように考えられるのであります。かりに局地紛争または局地戦争として起るようなことがあるといたしましても、国連によってスエズの紛争や中近東の問題が解決されたように、米ソの対立が直接持ち込まれない限り、重大な事態に発展することはないであろうと思われるのであります。また、米ソ両国間においても緊張緩和の努力が払われていることも見のがせないことであって、核実験中止に関する協定違反を検討する専門家会議がまとまり、奇襲防止会議が核実験停止の問題の形で再開されたのであります。また、ミコヤン氏の訪米を契機として、ベルリン問題及びドイツ統一問題などを議題とした四カ国外相会議、さらに、対独平和条約の提案を通じて、やがて頂上会談の行われる可能性も考えられて参ったのであります。岸総理は、かかる最近の国際情勢をいかように把握しているか、これを承わる。私は、こうした国際情勢から見て、当然、日本の外交路線は再検討され、転換さるべきものと信ずるのであります。(拍手)これに対する総理の所信をただしたい。
 次に、自主独立、すなわち、中立の問題についてお尋ねをいたします。
 現在の世界情勢から見て、米ソのいずれにせよ、強大国との間に軍事提携を強化するとか、自国の、すなわち、自分の国の武力を強化するという、武力だけではどこの国も安全と平和は保障されるわけには参らない情勢になって参っているのであります。それどころか、対立する米ソのいずれか一方の陣営にくみしてその武力に加担することが、かえって自国の安全と平和を脅かし、また、米ソの対立を深めて、核兵器の世界戦争を誘発することにもなるのであります。いわんや、日本のような米ソの強大な両陣営の深い谷間に置かれているような国は、なおさら、自主独立の立場、すなわち、中立の立場を堅持することが必要であるのであります。それゆえ、日本と同じような、あるいは日本に近似したような立場にあって、米ソの戦争にまき込まれないために、両陣営の紛争、対立の武力問題に関する限り、そのどちらにもくみしないという、いわゆる自主独立の中立政策をとる国が次第にふえてきていることは、当然の世界情勢といわなければならないのであります。(拍手)オーストリアのごときは、米ソ両国から領土の保全を保障され、みずから中立を宣言し、その立場を堅持して、何ら危険な地位に置かれていないのであります。これらの中立を主張し、中立を維持している国々は、それらの国のささやかな武力によって中立が維持されておるのではありません。それらの国は、小軍隊を所有していることによって中立が維持されておるのではありません。政府と国民と一体となった強固な意思の統一によってこそ、自主独立の中立政策が堅持されておるのであります。(拍手)そうであればこそ、両陣営からその安全と平和が保障されておるのであります。
 私は、本日、岸総理の施政方針において、中立の問題に触れられて、「現在のアメリカから離れれば、結局ソビエトの方へ日本は加担することになるではないか」、そう言う総理自身、日本の独立に対しまして何らの信念もないと見ておる。(拍手)こっちにくっつくか、そうでなければ、こっちにくっつくか、どこに独立の信念がありますか。どこに日本民族のための気魄がありますか。(拍手)わが日本社会党は、あくまでも日本の自主独立の立場から、アメリカに対しては日米安保条約の解消を要求し、同時に、中ソに対しては中ソ友好同盟条約の軍事条項の解消を求め、あわせて、中、ソ、米に対し、これらの軍事問題にかわる集団安全保障条約の締結を提唱すべきものと確信をいたしておるものであります。幸いにして、最近、ソビエトや中国は、それぞれの立場から行われたことであるにいたしましても、日本の中立を望む外交方針を明らかにして参ったのであります。われわれは、日本の中立の問題がようやく真剣に考慮されなければならない段階に立ち至ったと信ずるのであります。(拍手)あらためて総理の所信をただしたい。
 さらにお尋ねいたしたいことは、日本の安保条約の改定の問題であります。
 岸総理は、さきに、改定について、相互防衛条約的なものにするということと同時に、沖縄、小笠原を共同防衛範囲に含めるという構想を国会において明らかにされております。これは早くも国民の総反撃を受けておるように、日本にとってはとんでもないことでありまして、そういうことになると、アメリカの新しい中距離弾道弾による核兵器の北氷洋戦略に巻き込まれ、また、アメリカのフィリピン、台湾、朝鮮との重事同盟条約との武力紛争に、連鎖反応によって同時的に巻き込まれるおそれがあるのであります。(拍手)同時に、そういうことになりますと、かえって沖縄、小笠原をもこれかために戦争に巻き込むことにもなるのであります。わが党は、アメリカ軍の撤退と、その軍事基地の返還、すなわち安保条約の解消を主張する立場に立って、当面、こうした安保条約改定の即時打ち切りを強く要求してきたのであります。総理は安保条約改定の条約案の通常国会への提案をお取りやめになったということでありますが、総理は、当国会への提案をお取りやめになっただけでなく、アメリカとの交渉をも即時打ち切り、改定を取りやめるべきであると思うが、総理の所信をただしたいのであります。(拍手)
 最後に、国際情勢並びに外交問題に関して、さらにお尋ねをいたしたいことは、日中問題、すなわち、中華人民共和国との国交回復並びに貿易、文化の交流等の、日中友好に関する問題であります。
 日中友好関係は、鳩山、石橋内閣の時代に、貿易や文化の面から、せっかく友好親善関係が次第に確立されてきた折柄、がぜん、岸内閣は、日中の友好関係を土台から掘り返し、これを打ちこわしたまま、いわゆる積極的静観なる外交方針をとられ、そのまま、なすところなく、今日に至っておるのであります。(拍手)もっとも、積極的静観と申しましても、今日までの経過を見ますと、何事もしないということではなかったようであります。岸総理は、この間、中国やソビエトに対する軍事同盟の形態をさらに強化する、岸総理の日米新時代なる外交方針を打ち出され、これは中国側をひどく刺激したことは申すまでもないのであります。しかも、岸総理は、日中友好親善を回復する何らの努力もされておらない。かりに、中国側に、岸総理に対し何らかの誤解があったといたしましても、総理はなぜ誤解を解くことをしなかったのであるか。(拍手)最近の岸総理は、こうした情勢に対しまして、日中友好問題に関して何とか打開したいとあせっておられ、心中の焦燥おおいがたいものが見受けられるのであります。岸総理が、鳩山内閣、石橋内閣時代にならって、ほんとうに日本のために日中の友好親善関係を回復するために、外交方針をここで立て直そうとされるなら、私は、まず総理の中国に対する認識の根本から改めなくてはならないと思うのであります。(拍手)中国の政治理念や社会制度がいかようであろうとも、中国が日本との友好親善を強く望んでおるのでありますから、隣国の、しかも大国に対する敵視観念を抱くがごとく中国側から見られるような中国に対する総理の認識を払拭して、台湾は中国の一部であって、中国は一つであるという真実を正しく認識しなければならないと思うのであります。(拍手)
 次に、かように中国に対する認識の根本を改めると同時に、中国に対する外交の一般方針といたしましては、日本はアジアの一員たることと、日米の新時代を作るということと、この矛盾いたしました、いわゆる両岸外交をここに清算して、バンドン会議の十原則の精神にのっとって日中の友好親善の外交方針を立て直すことを、まず具体的な方針の根幹としなければならないと思うのであります。私は、日中友好のための国民的外交が必要であると思いますが、岸総理の日中友好親善の問題に対する基本的な認識と方針、並びに、具体的にどうしようというのか、その対策を承わりたいのであります。(拍手)
 私は、総理の見解のいかんにかかわらず、今日の日本と中国との国交を回復いたしますために、国民の大きな要望にこたえて、社会党は、日中友好のための国民外交を国民が展開をいたして参りますのに対して、これを支援し、これに協力する信念をここに申し上げて、私の総理に対する質疑を打ち切りたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕

発言情報

speech_id: 103105254X00919590127_019

発言者: 鈴木茂三郎

speaker_id: 18314

日付: 1959-01-27

院: 衆議院

会議名: 本会議