岸信介の発言 (本会議)
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○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
去る五月の総選挙においてわれわれが国民に公約したことは、この国会に提案いたしております三十四年度の総予算におきまして、最も忠実にこれを実現いたしております。(拍手)
去る臨時国会の運営について、特に警職法の審議をめぐって国会の運営が変則になりましたことについては、私が施政方針を申し述べる前に遺憾の意を表してあります。しこうして、かくのごとき運営につきまして、多数党であるわが党としても反省すると同時に、私は、少数党である社会党におきましても、当時のあの実情から、大いに反省をしていただきたいと思うのであります。(拍手)この問題に関しましては、臨時国会の最後において、鈴木委員長と私とは、国会を正常化し将来の国会の信用を高めるために率直に申し合せまして、すでにそのことは世の中に発表されております。私は、この法則に従って、忠実に今後の運営に当りたいと思います。(拍手)
次に、三権分立に関する立法権と行政権の問題についての御質問でありましたが、私は決して憲法にいっておる三権分立の主義を混淆するようなことはいたしておらないつもりであります。例におあげになりました、憲法調査会を内閣のもとに置いたことが憲法違反であるがごときお話でありますが、それは当時国会におきましても十分論議を尽されたところであって、決してこれが立法と行政とを混淆するものでないことは、きわめて明瞭であります。(拍手)
また、安保条約の交渉の問題については、何かこれは誤解であろうと思いますが、条約が調印された後において批准を国会に求むべきことは当然であります。しかしながら、その交渉の過程において一々国会にこれを諮るべきものでないことも、きわめて明瞭であると思います。(拍手)
司法権や警察権の問題についてお話がありました。いわゆる司法権が行政から独立しておる三権分立は当然でありますが、しかしながら、検察の問題や警察の問題は、これは言うまでもなく行政の部門に属しておるものでありますし、決してこれがいわゆる行政権から完全に独立した形をとっておるものでないことは、きわめて明瞭であります。(拍手)
次に、民主政治というものは、国民が安心しておのおのの生活を楽しむことのできるような、平穏な生活のできるような政治を行なって、そして国民に対して愛情を持った政治をしなければならぬというお話でありましたが、これはその通りであります。私どもは、最近の社会事情から言うと、集団的暴力によってそういう平穏な多数の生活が脅かされているような事態を、はなはだ遺憾とするものであります。(拍手)
労働政策について、われわれが権力主義であり、労働者を弾圧しておるというお話でありますが、私どもは、われわれがすべてこの民主政治を完成していく上においては、おのおのが民主的に成立した法律秩序を守っていくということが前提でなければならぬと思います。私は、この問題については、あらゆる国民がそれを守らなければならないのであって、たとい労働運動という名においても、それは例外となすべきものではないと思います。(拍手)しかしながら、おあげになりましたような正常なる労働運動を、私どもは法や権力でもって弾圧するようなことは決していたしておりません。(拍手)
公労法等の規定が憲法に違反するというお話でありますが、私どもは、そうは考えておりません。ただ、ILOの八十七号の批准の問題につきましては、これまた長い間の議論のある問題でありまして、国内の法制等の建前もございますので、労働問題懇談会に付議して慎重審議しておることも御承知の通りであります。私どもは、その結論を得て政府の態度をきめたいと考えております。
核兵器による全面戦争ということがだんだんなくなっていき、局地における紛争も平和的に解決せられる傾向にあるというお話につきましては、すでに外務大臣の外交演説におきましても明らかにいたしておる通り、全くそういう傾向にあり、また、そうすることが望ましいと私は思います。しかしながら、現在の国際情勢は、なお東西両陣営の間の不信と対立は解消されておらないということも事実であります。われわれが今後いろいろな意味において努力しなければならぬことは言うを待ちません。私どもは、なるべく平和的手段によって、話し合いによって解決されるような方向にあらゆる努力を続けていかなければならぬと思っております。しかし、今日われわれがとっておる、自由主義の国々と提携をし、また、アジアの一国としての立場を堅持し、国際連合に協力するという外交の根本方針を今日再検討して、これを変えなければならないというような事態とは、私どもは考えておりません。
中立政策についてのお話は、先ほど私がすでに施政方針の上におきましても明らかにいたした通りでございます。オーストリアの例をおあげになりましたが、この問題は、その国の置かれておる地理的の状況や、政治的の状況や、社会的な状況、軍事的の状況、いろいろの状況からきまるのでありまして、オーストリアがこうであるから日本が当然そうでなければならぬなんて考えることは、私は、外交上はきわめて危険であると思います。
安保条約の問題につきましては、社会党は、以前から安保条約の廃棄を主張されております。私どもは、この安保条約ができてから今日までの状況を考えまして、日本の安全保障の上にこの安保条約が相当な貢献をしたことを、われわれは認めざるを得ないのであります。しかしながら、その規定の内容を見まするというと、この安保条約が成立した当時とは、今日の日本の状態は変っております。また、日米の関係も違っております。われわれは、できるだけ合理的な範囲においてこれを改定するということが望ましいと思います。しかしながら、今おあげになりましたような、この改定が日本を戦争に引き込むところの、巻き込むところの危険を増加するような御議論は、私どもは絶対にさように考えておりません。
沖縄、小笠原を条約地域に入れるかいなかの問題につきまして、私が沖縄、小笠原を入れるということをこの国会で申したようなお話でありましたが、私は、そういうことを申したつもりはございません。よく、この問題は重大な問題であり、国民の間にも議論のある問題であるから、十分国民世論の動向を見きわめて交渉していきたいということを申しております。(拍手)従いまして、われわれは、これを廃棄する意思もありませんし、また、御説のように改定交渉を打ち切るという考えは持っておりません。あくまでも合理的な立場においてこれが検討されることを望んでおります。
集団的安全保障をもってこれにかえたらいいじゃないか、中ソ、日米というようなものを入れて、その集団的な安全保障条約といいますか、不可侵条約を作って、これで安全を保障したらいいじゃないかというお話でありますが、そういうものは、現在の国際情勢からいって、実際、奇襲防止の問題や、あるいは核兵器の製造禁止の問題や、核実験禁止の問題等に関する国際会議がなお円満に進行しておらないという現状では、私は、そういうことは現実から離れておると思います。また、さらに一歩譲って、そういうことが可能であるといたしましても、これを誠実に裏づけるような具体的な保障がない限りは、かつて日本とソ連との中立条約についてわれわれが経験したようなことを国民は忘れ得ないのであります。
日中関係についてのお話がございました。私どもも、日中関係が昨年の五月に中絶をいたしましてから今日に至っていることは、非常に遺憾に考えております。ただ、日中関係がかくのごとくなったことが何か岸内閣もしくは日本側のやった態度によるというふうなお話でありますが、これは、私は事実に反しておると思います。決して私どもの方からこれを断絶したような態度に出たことはございません。また、われわれ自身が中国に対して敵意を持っておるようなことを宣伝されておりますが、決してそういうつもりは毛頭ないのみならず、そういう態度をとってはおりません。また、私がアメリカに参って日米新時代というようなことを申しておりますが、それを、今鈴木委員長の言われたように、何か軍事的の関係における新時代というふうにおとりでありますが、それは、あのアイゼンハワーと私との共同コミュニケをごらん下されば、そういう意味じゃない、いわゆる占領時代におけるところのいろいろな関係や、あるいはその後に引き続いての問題を一切清算して、日米が真に対等な立場において両国の理解と信頼の上に提携を考えようというのが、日米新時代の真精神であります。従って、そういうことが中共側を刺激するということは、私は、これは誤解といわざるを得ないと思います。
鳩山、石橋内閣時代のように中国との友好関係を考えろ、バンドン会議の原則にものっとれというお話であります。私は、すでにしばしば述べております通り、今日、中共とわれわれの方とは、政治的の考え方やあるいは政治形態を異にしておるけれども、お互いがそれを尊重し合って、それに対しては干渉しない、おのおの理解し尊重し合って、そして経済やあるいは文化の交流を重ねていこうじゃないかということを申しておるのであります。しこうして、このことは、バンドン会議の原則の、内政不干渉の原則と全くぴったりくるのでありまして、決してこれに反するものではないのであります。
さらに、最後に一言いたします。この二十四日の自民党の総裁選挙のことにつきましてのお話がございました。これはわが党の内部の関係でありますが、すでに御承知の通り、私は党員の圧倒的多数の支持を得て総裁に再任をいたされておりますから——いろいろ党員の間には御議論もあります。われわれの党におきましては非常に党員が多数であります。われわれの方ほど党員のない社会党におきましても、いろいろな御議論があるように承わっております。われわれの方におきましても議論はあります。私は、党の総裁として、党員の意見に対しては謙虚に反省するつもりであります。(拍手)
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