小平忠の発言 (本会議)
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○小平忠君 私は、日本社会党を代表し、政府提出の昭和三十四年度一般会計予算案、同特別会計予算案並びに同政府関係機関予算案に対し、反対の意思を表明せんとするものであります。(拍手)
明年度予算案は、一言にして言うならば、岸内閣が今日まで提出した本予算並びに補正予算を通じて最もその正体を露骨に暴露した予算案と言うことができるのであります。岸内閣は、本予算案をもって、減税や国民年金などの公約実現予算であると大宣伝しているのでありますが、このように大幅に後退し、羊頭狗肉そのものとなった予算案に、何のかんばせあって公約実現という大言壮語ができるでありましょうか。むしろ、逆に、その金権政治の野望を隠蔽した悪質な予算案であって、公約実現はおろか、その誠意すら見受けることができないのであります。
日本社会党は、この政府案を検討した結果、予算総額はあげて大企業サービスのために編成したものであり、民間金融を再び設備投資競争に誘導する方向に持っていき、反面、経済白書がみずから明確にしているごとく、ますます拡大する貧富の差や、雇用伸度の減退に対しては全く無力であり、ただ歴代の保守政権のとってきた伝統を受けて、ひたすら大企業にのみ満腹せしめる、いわば食い逃げ予算であると断定できるのであります。(拍手)すなわち、自民党政権と大企業との結合は、ますます緊密化し、強化されていくことは必至でありましょう。そのことは、すでに現実の姿として現われてきているのであります。勤労者の盛り上る力を抑圧し、警職法の改悪を抜き打ち的に上程してみたり、勤務評定を強行し、労働運動に弾圧を加えてきていることが、これを如実に示しているところであります。しかも、このような大企業本位の経済政策の結果として、国内有効需要はおのずから狭められ、一方、大企業の設備投資の行き過ぎ、設備過剰、生産過剰の再発は再び迫ってきておるのであります。
このような経済政策を基調として編成された明年度予算案の特徴をあげるならば、まず第一に、防衛関係費については、アメリカ政府の承認を得なければ案作成の決定ができないという、文字通りアメリカ政府のひもつき予算であり、憲法第七十三条に規定されておる、「予算を作成して国会に提出する」という内閣の職務を履行しない、自主性のないものとなっていることであります。しかも、明年度の防衛庁費には千三百六十億円が計上され、国庫債務負担行為は百九十八億円、継続費は六十八億円、このほか多額の繰り越し明許費を持つという飛躍的な大増額を企図しており、ミサイル試験部隊の設置によって核兵器持ち込みを策し、かつ、日米安保条約の改定と相待って、中ソ両国をますます敵国視する方向べ持っていこうとしておるのであります。しかも、アメリカよりの軍需品の供与が減少しておることを口実に、国内での兵器生産を、戦前同様、国費によって育成せんとし、その膨大な国費を、すでに使いものにならない戦闘機の生産に向け、国内大企業利潤のために奉仕せんとしておるのであります。
政府案の第二の特徴は、大企業及び高額所得者だけに奉仕する階級予算であることであります。(拍手)まず、歳入面では、毎年慶大企業に対して八百億円をこえる減免税の特典が租税特別措置法を通じて実施されておったのでありますが、政府は、明年度は、このうちわずか七十億円を改廃するにすぎないのであります。しかも、歳出面では、総額千七十一億円の増額の中で、公共事業費、防衛関係費、賠償費の増額だけで五百六十四億円になっており、これらの予算歳出が、利権と汚職の巣くつとなり、政治の堕落腐敗の財源となっておることは、国民周知の事実であります。(拍手)ざらに、公共事業費のひもつきとなって、地方自治体の自由に使用できない地方交付税交付金の増額分二百四十六億円を加えますならば、千七十一億円のうち、まさに七百九十二億円までが、大企業と自民党の、うまい汁の吸いどころにせんがための増額なのであります。(拍手)同じように、財政投融資計画を見るならば、開発銀行、電源開発会社、輸出入銀行、石油資源の四社に対する投融資たけで四百六十三億円が増額になっているにかかわらず、国民金融公庫、中小企業金融公庫、一商工中金に対しては、逆に四十二億円の減額になってきておるのであります。また、農林水産予算については、岸内閣の重大施策の一つとして取り上げ、施政方針の中に、特に格別の考慮を払うとまでうだいなから、その実、国家総予算から見ると、農林予算の占める比率は、逆に年々減少の一途をたとってきているのであります。農産物価格のごときは、一審議機関の意思とは逆に、生産費も補えぬ低価格に押えんとしており、一方、零細なる沿岸漁業の振興に対しては、昨年度よりその予算を減額するというごとき、実に場当り的なものであり、全産業を通じて最も水準の低いこれら第一次産業部門に対する操護政策を全く放棄しておるのであります。
そのことは、中小企業の予算についても同様であります。中小企業者一千万人に対し、わずか二十億円の振興費が計上されているにすぎないことから見ても明らかなところであります。(拍手)
さらに、勤労者に対する課税を見るならば、租税収入の自然増収を一千八十六億円と見積り、これから景気がよくなるという理由で、その大半を所得税と間接税関係で見積っており、まさに徴税強化を意図しておるのであります。しかも、法人税に対しては、景気が悪かったからという理由で、税収見積りはほとんど横ばい程度にすぎないのであります。
岸内閣の減税公約とは、このような課税公平の原則におよそ正反対な方針の上に作文ざれたものであり、形式的には所得税の免税点は引き上げられたが、実は、私鉄バスの値上げに始まる諸納金の値上げ、これの消費者物価へのはね返りで、たちまち相殺される順序が組まれておるのであります。われわれは、このような減税のからくりを国民の前に明らかにし、岸内閣を糾弾することこそ、われらの使命であると存ずるのであります。(拍手)
政府案の第三の特徴は、勤労者の生活向上を全く無視しておる点であります。岸内閣は、所得税の免税引き上げを大宣伝しておりますが、これの適用を受けられるのは、所得税納税者約二千万人のうち、わずか八十六万人にすぎません。納税していない二千万人の低所得の勤労者については、諸物価値上げの被害だけを岸内閣より受けることになるのであります。(拍手)従って、政府の見通しでは、個人消費支出がごそごそ上昇することになっているが、実は、これは相当高額の所得者のみに適用されることであり、低所得者は、物価値上げに苦しめられ、失業の不安に脅かされておるのであります。
さらに、岸内閣は、公約実現の一つとして、無拠出年金の実施をうたっておるのでありますが、実は、生活保護世帯を除外してその上積みとなる二百五十七万人に、月額千円から千五百円程度が、十二月から四ヵ月間だけ支給されるにすぎないのであります。これでは、当然に生活保護を受けるべき貧困者に対して、もっと割安な国民年金という名の救貧援護をしておるにすぎないのでありまして、国民年金の基本性格である、国民の所得保障の目標とは、およそかけ離れた、インチキ公約なのであります。(拍手)岸内閣も自民党も、口を開けば福祉国家の建設を唱えながら、その政策の実態たるや、まことに欺瞞の連続であります。まだ不況のあらしが吹いているのに、生活保護人員は削減されました。失業対策費は、横ばいどころか、減額されております。一千万人の加入者を持つ厚生年金を初め、社会保険の料金は引き上げられ、この面からも勤労者の家計負担は苦しくなっておるのであります。
もう一つの政府公約である、すし詰め教室の解消はどうか。一万七千教室のすし詰めを解消するために六百七億円が必要というのに、わずか七十七億円が計上されているにすぎません。これで五年間で解消するとは、いかなる算術をもって計算したのでありますか。全く小中学校の児童をも侮辱した予算編成であると断ぜざるを得ないのであります。(捕手)
政府案の第四の特徴は、地方自治体を国の財政の下請機関化せんとする点であります。政府案を外見上見ますると、交付税率を一先引き上げ、かっ、地方財政計画は一千十八億円増額し、地方財政は拡大の方向に向うかのように見えるのでありますが、この一千十八億円の五一%までは国のひもつき事業に使われるのであり、地方の単独事業のための増額は、わずかに〇・七%しか残っていないのであります。歳入面で地方の自主財源が四百十九億円ふえる予定になっておりますが、これも大半は国のひもつき事業に向けられるのであります。従って、地方自治体は、地方職員の給与を支払い、単独事業費をまかなうには、どうしても地方住民より寄付金などの税外収入を割り当てざるを得なくなっております。かくして、再び地方自治体には赤字団体がふえ、憲法で保障されている地方自治は、岸内閣の手によって全く侵害されておるのであります。
以上、私がここにあげた政府案の諸特徴は、本院における予算審議の過程においていずれも明らかになったのでありますが、驚くべきことには、予算審議の最中に、岸総理は、わが党の非核武装宣言決議の提唱に賛成しておきながら、自民党総裁としてはこれに反対して、首相と総裁との二重人格を使い分けたのであります。(拍手)政党政治をベースとして、われわれが本院において予算審議をしておる最中に、岸総理は、みずから政党政治を否定したのであります。また、三十四年度予算審議の最中に、突如として、同年度の二百五十億に及ぶ補正予算を提出して参りました。かくのごときは、およそ、その例を見ざる、無定見きわまるものであります。(拍手)さらに、奇々怪々なる事実としては、本予算案を提出した岸首相は、自民党大会において党内三分の一の議員より不信任を突きつけられておるのであります。(発言する者あり)今や党内的にも長期政権担当の夢が春の淡雪のごとくはかなくも消え去った岸内閣に、本予算提出の資格は断じてないと思うのであります。(拍手)かくのごとき、国民より見離された、お粗末な内容を持つ予算でありますために、従来社会党が取り来った組みかえ動議のごときものも提出でき得る形を整えた予算ではないのであります。(拍手)
世界の政治経済は、東西の武力対立に血の道を上げておる時代は去りました。激しい経済競争の中にあって、経済協力の努力を積み重ねることこそが、現在の世界政治経済の進路なのであります。日本社会党は、この見地に立って、明年度の予算の編成は、雇用の増加、国内有効需要と輸出の増加促進を目標として、第一に、国民年金制の実施を主体とする社会保障費の大幅増額、第二に、国民の租税負担の不公平是正、第三に、農林漁業と中小企業の近代化促進、第四に、アジア・アラブ諸国との経済提携を促進するための資金、技術援助の強化、第五に、地方財政の財源補てんのため地方交付税率を百分の三十に引き上げ、第六に、防衛関係費その他不急不要費の大幅削減、第七に、民間金融と財政投融資とを一元的計画に基いて配分し、二重投資を排していくと同時に、大企業と巨大銀行との系列的金融集中の防止であります。これら七つの基本方針を持って予算編成を行うべきであると考えるのであります。国内有効需要の拡大とは、何よりも、まず、勤労者の半分を占める年収三十万円以下の低所得者を中心にして勤労者の購買力を高めることであります。このため、所得税の免税点を標準家族年収三十四万円に引き上げ、一方、大企業に対する租税特別措置法の恩典を撤廃し、その中で増収をはかるものであります。社会保障については、昭和三十五年度中に国民皆保険を実現して、医療保障一応完成し、所得保障の面では、直ち」、六十才以上の老人に月千円、六十五才以上に二千円の老齢年金、二十才以「の子弟のある母子世帯に月三千円の母子年金、一級から三級までの身体障青者に四千円から二千円までの障害年金を支給する、この二つの、医療と所得との両保障をささえとして、働いている者には全産業に同じ基礎を持つ最低賃金制を実施し、ここに国民最低生活を保障する場を作り、その上に勤労の意欲を高めつつ生産態勢を作り上げていくのであります。
このように、国内に勤労者の購買力引き上げの努力を払わずして、いたずらに設備投資しても、生産過剰となるはかりであります。従って、岸内閣のように、全く国民のうちに市場を持つ必要のない軍需産業を国民の血税によって育成するような結果になるのでのります。日本経済の安定と発展とは、勤労者の生活水準の上昇と雇用の増加に基礎を置かずして実現し得る道理はありません。しかも、この道は、再軍備の道とは財政的に両立しないのであります。一部の特権階級にのみ奉仕する予算ではなく、1全国民大衆の生活を守り、日本の独立と平和の達成を期し得る、わが日本社会党の予算編成方針に同調せられて再出発されることを強く要求するものであります。
以上申し述べました理由により、政府案に断固反対いたしまして、私の認論を終ります。(拍手)