吉田法晴の発言 (本会議)
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○吉田法晴君 私は、日本社会党を代表して、去る三月二十四日、新橋駅裏のステージにおける社会党の訪中使節団の報告演説会の際の右翼諸団体の演説妨害及び暴力を初め、最近特に顕著になって参りましたいわゆる右翼の動向、これに対する政府の治安対策について、公安委員会委員長及び法務大臣、官房長官等、政府代表に、その所信をたださんとするものであります。
去る二十四日、新橋ステージの社会党訪中報告会での右翼の妨害は、ビラまき、のぼり等にとどまらず、太鼓をたたき、ヤジを組織し、のみならず、広告塔の上に上った男が、発煙筒を四本、五本と聴衆に投げ込み、これに気をとられている聴衆と関係者のすきに乗じて、二名の暴漢が壇上にかけ上って、社会党旗と弁士の氏名等を書いた紙をむしり取ったものでありますが、その目的としたところは、文書や立会演説等、いわば民主主義的な方法によって社会党と争うというのではなくて、暴力によって演説会を混乱させ、社会党撲滅に乗り出そうとしたものであることは、その押し立てていたのぼり等をもってしても明白であります。右翼団体あるいは右翼の暴力事件は、もちろんこれだけではありません。ことしの二月二十五日には、藤山外相に対して、在日朝鮮人の北鮮帰国促進に反対し、その信念が気に食わぬとして外務大臣に暴力をふるっております。また、同じ二月十一日には、昨年同様、三笠宮邸に押しかけておるし、昨年の十月十四日には、九段会館で行われた日教組臨時大会会場に押しかけて、五名の者が発煙筒五本を投入しております。その四日前の十日には、昨二十四日と同じ新橋ステージで、中国国旗を焼却する事件が起っております。昨年の九月十五日には、都の勤評反対中部地区大会に参加した社会党宣伝カーに火炎びんを投じて放火した事件が起っております。同じ日、名古屋では、勤評反対のデモに参加した教職員にたばこの火をすりつけ、塵芥を投げつける等の事件が起っております。また、その一カ月前には、和歌山で勤評反対デモに参加した者に集団暴行が行われ、年末には、同じく勤評問題で小林日教組委員長外数名に対して、これを殺しかけるほどの集団暴行を行なっていることは、周知の事実であります。
昨年中に、こうした右翼によって起された暴力事件、紛争事件は、合件七十五件の多数に上っておるというのでありますが、警察庁の説明によっても、うち二十二件は反共活動、二十件は政治活動というのであります。反共活動というのはどういうことかということを尋ねますと、スト関係あるいは勤評関係だというのであります。また別の説明によれば、昨三十三年の右翼による事件の大半は勤評に関係したものであるというのであります。右翼の諸君が言うところ、書くところ、あるいは右翼に関する研究の教うるところを総合しても、最近の右翼が反共と称して暴力的攻撃の目標とするところは、共産党あるいは共産主義よりも、反総評、反労働者あるいは反社会党であり、ソ連、中共、北鮮等、いわゆる彼らが共産主義諸国と称する諸国といかなる形にしろ接触し、あるいは友好的な外交関係をとろうとするものに対して向けられております。警務実務研究会というところで編集しております「右翼警察五十講」という本の中には、最近の右翼事件の具体例をあげた後、以上の諸事件を分析してみると、一つには、逼迫した資金面を打開するため、手段を選ばぬこの種事件の続発が考えられる。もう一つは、反共、反総評活動が、組織的にあるいは計画的に進められる様相を示していること等が言えるとし、右翼の指導者の中には、国家革新をなし遂げるには、まず維新政府を樹立することが前提であると述べておる者もあり、あるいは、大衆組織の行き詰まりの反面、彼らの分析により客観情勢が熟したと考えるときには、一挙に事態を解決しようとする意図もうかがわれ、政府要人や容共派指導者に対する行動も十分注意が肝要であるとしております。ここに警戒、警告をしておるものはテロであります。こうした最近顕著になって参りました右翼の台頭と相次ぐ暴力行動に対して、警察及び法務当局はいかなる態度をとってきたか、また、とろうとするか、まず承わりたいのであります。
社会党の訪中報告演説会の妨害に対しても、十三名の暴行容疑者がいたというのに対して、三名しか逮捕取調べをしておりません。このことは、去る二十四日のことだけじゃなくて、さきにあげました具体的な事例のすべてに当てはまることであり、あるいは中国国旗事件のごときは最も軽く取り扱われております。これが労働組合の幹部や組合員であった場合には、関係のない者まで引っぱり、あるいは弾圧の口実にされ、少からざる人々が無実の罪に問われていることは、国民をして非常な疑惑を持たしめるところであります。さきにあげた具体例等について、警察、法務当局としてはいかなる処置をとってきたか承わりたい。
なお、さきにあげた一年間の右翼事件の具体的な事例、これは警察側から提出された具体例であり、説明でありますが、その最も多いものは労働運動に関係するものであり、その特徴は、「激化していく労働運動に対して、当初とられた反対演説や、ビラ、ポスター等による大衆啓蒙運動あるいは労働団体に対する集団坑議では効果が薄いとして、最近では、直接行動による妨害、労組員に対する暴行事件等を惹起している」と、さきにあげた「警察五十講」が教えているのであります。「右翼や右翼団体の資金はほとんど寄付金にたより、特に、政界、財界の要人との連携を強める結果となるおそれがある」と書いておりますが、最近の右翼事件が、前述のように、労働運動に対して行われるという事実、このことは、一面に、財政的理由から財界あるいは資本家とつながったのではなかろうかと想像されまするが、争議の際には、最近必ずスキャップに暴力団が使われ、あるいはそれに右翼団体が関係して参っておりますが、こうした場合に、警察の不公平な取扱いが顕著に最近見られて参りました。その一つの例でありますが、昨年の十月二十一日、不当首切り反対闘争でストを行なった千葉県我孫子の千葉食品株式会社の労働者約五十名が、工場内で決起大会を行い、スキャップに対して正門のところでピケを張ったことがありましたが、会社側に団交を申し入れ、団交を予定された午後三時には、団交のかわりに五十名の暴力団が警察官の見ている前でピケを突破して工場の中に入った。五時には暴力団は増強され、工場の窓ガラスや窓ワクを投げつけられ、十数名の負傷者が出ておりますが、製造されたパンのたなに使うラックの棒を二十数本、やりのように投げつけた。佐久間保君という三十才の組合員は、この鉄棒が胸に当り、肋骨を骨折し、整骨院に入院した後、ことしに入ってでありますが、このことが原因となって死亡をいたしております。この人命を奪った暴力に対しては、警察は何ら取調べも調査もしようとしないばかりでなく、寄宿舎からほうり出された組合員に対しては、ふとんを盗んだとか、工場の周辺にビラを貼った者に対して、営業を妨害し、あるいは名誉を棄損したと、調書をとっているというのが事実であります。また、川口市の富士文化コンロ株式会社では、ことしの一月、女子従業員十六名を含む五十三名が組合を結成したとして、会社側は、二十日、この諸君にロック・アウトを行うとともに、児玉誉士夫氏と関係のあると称せられる右翼暴力団三十余名を雇い入れ、工場の者とともに駅に待ち伏せをし、自動車を二台並べ、その中に組合員をはさんで、郡司洋子(十六才)以下十数名の男女を強制的に工場に監禁、強制労働二十日に及んだのであります。これらは人権問題でもありますが、財界人というか、資本家の諸君と右翼との結びつきの一例と考えられるのでありますが、これらについて、警察、法務の当局の所見と態度とを承わりたいのであります。
最後に、政界の要人、特に岸総理あるいは官房長官等、政府要人と右翼の関係についてお尋ねをいたしたいと思います。五・一五事件及び二・二六事件は、極端な国家主義を奉じた軍人が右翼と結んで行なったテロであることは、私が今さら申し上げるまでもありませんが、こうした右翼と軍人との結びつき、軍閥と官僚の結合が、満州事変となり、あるいは満州国の建設、さらに新体制とかあるいは準戦体制、そして支那事変、大東亜戦争となっていったのでありますが、その間に、岸信介氏、矢次一夫氏あるいは児玉誉士夫氏等々が活躍したことは、今日明らかな歴史的な事実であります。こうした日本の過去の失敗は再び繰り返してはならないというのが、私ども日本国民のひとしく決意をいたしておるところでありますが、最近、岸総理は、再び矢次氏等を、あるいは台湾、韓国の外交関係にも使っておられた。あるいは児玉誉士夫氏等の名前が、政界、財界に活躍しておられるということが明らかになって参っております。「民族と政治」という雑誌を見てみますと、岸さんが中谷氏等右翼の諸君のホープであり、民族革命のにない手であるとされております。国会の周辺に貼られているポスター等を見てみますと、右翼の言っているところが自民党の言いたいところではないかと想像されるのでありますが、憲法改正にしても、再軍備の促進にしても、安保条約の改定にしても、道徳教育から勤評、警職法まで、しかも労働運動に対する考え方もそうであります。おまけに、赤城官房長官の「わが百姓の記」という本のたいこもち記事まで「民族と政治」に大きく出ております。本年度予算書には、内閣関係で報償費一億八千四百七十三万円、情報調査委託費として一億八千三百万円、その他が計上されております。報償費は機密費的な性格を持ち、総理の内政外交推進に寄与したか、あるいは寄与すると期待される者に支給されるというのであります。この中には内閣調査室費の三千万円を含み、それは重要施策の推進に協力する民間人の情報の調査に協力した者に交付支給されると説明されております。これら総理府関係の予算から右翼団体に支出されておるのではないでしょうか。これら矢次一夫氏と総理の関係、雑誌「民族と政治」の記事等を見ておりますと、まさしく動かぬ証拠がそこにあると感ぜられるのでありますが、官房長官の明確な答弁を承わりたい。もしこのことを肯定せられぬというならば、報償費、調査費等の実績と支出明細表を出して反証を願いたいのであります。
一九五二年「当時の滞日外人記者ヘッスル・ティルトマンは、「右翼分子を警戒せよ、放任すると高い代価を払わねばならぬ」という直言を書いておりますが、その中で、「日本の当局者たちが左翼分子のあとをつけ回すのに忙しいという理由から、いまだに存在し、ある場合には拡大し、場合によっては広がっているこれら右翼団体は、時期を待っている。彼らは確かに武器を隠し持っているようだ。彼らは戦前に何人かの日本の最も偉大な政治家たちを殺した者の同類である、彼らは時期が至れば他人を殺すに躊躇しないであろう。しかも、日本の政府と警察は奇妙にもこの危険に無関心のようであった。これは人に、一部の高官が思想の上で極端な国家主義思想に同調しているのではないか、との疑いを起させる一つの事実である。」こう書いている。そうしてこの記事は最後に、「また日本を再度滅亡への道に引き込むような思想の説教をやめさせることが強く希望される」と申しております。
今や、岸氏の総理就任と岸内閣の言う日米新時代に入るという事態によって、さらに事態は進展し、岸総理や岸内閣と右翼の関係も新たな段階に入ったのではなかろうかと考えるのでありますが、政府を代表し、治安対策の責任の衝にある法務大臣、公安委員長、一官房長官等は、この失敗を再び繰り返す心配は全くないと断言できますかどうか、治安の責任者として、はっきりこの際承わりたい。(拍手)
〔国務大臣青木正君登壇、拍手〕