山花秀雄の発言 (本会議)

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○山花秀雄君 私は、日本社会党を代表して、衆議院議長加藤鐐五郎君不信任決議案の趣旨弁明をいたすものであります。(拍手)
    主 文
  衆議院は、議長加藤鐐五郎君を信
 任せず。
  右決議する。
    〔拍手〕
 衆議院議長加藤鐐五郎君は、去る十一月二十七日の日米安全保障条約改定阻止のための国会陳情行動に籍口して、一方では憲法に保障された国民の基本的人権を剥奪するデモ規制法の提案に策動し、他方、去る十二月十七日、突如、何らの理由なく、また、正当なる手続を経ることもなく、わが党淺沼書記長を初め、岡田春夫、小林進、柏正男等の四名に対し、議長職権による懲罰宣告を行なったのであります。
 本来、十一月二十七日に行なわれた国民大衆による国会陳情は、政府・自民党のベトナム国に対する賠償案件の審議に見られておる疑惑や、国民の血税を浪費する戦闘機購入をめぐる悪政を、国会の多数横暴による運営によって隠蔽し、押し通さんとする、その強引と暴挙に対する国民大衆の心からなる憤りの現われであります。(拍手)しかるに、加藤議長は、これら非民主的国会運営のあり方を反省することなく、デモ規制法の制定を策動したり、わが党議員の懲罰を自由民主党の圧力に屈して強行せることは、衆議院議長としての権威ある職責にかんがみて絶対に許すことができないと同時に、われわれは、議会政治擁護のため、かかる不見識きわまる議長の在位を一日といえども黙許することはできないのであります。(拍手)
 私は、今、私の議長不信任案の趣旨弁明を、本来ならば加藤議長が議席に着かれて聞いておられれば一番いいのであります。しかし、加藤鐐五郎君は議席に着いておられませんが、私は加藤鐐五郎君に申し上げたいことがあります。それは、昨年、本国会に警職法の一部改正法律案が提案されて、国会審議が混乱し、その収拾のために、十一月二十二日に、自由民主党岸総裁と、わが党鈴木委員長の両党党首会談が行なわれた。その詳細なるいきさつは、加藤議長が最もよく知っておられるところであります。そして、あなたが議長に就任されました。議長の職責を公正に果たされるために、党籍をも副議長と同時に離脱されたのであります。このことは何を意味しているかということは、あなたの政治的信念と良心に静かに自問していただきたいのであります。(拍手)
 当時の岸、鈴木の両党首会談においては、国会の権威と正常化のために三つの要点を話し合いなされたのであります。
 その一つは、会期延長の問題であります。岸総裁は、今後は軽々に国会の会期の延長はしない、警職法の一部改正は廃案にする、衆議院はこのまま開かなくてもよろしい、だが、予算と予算に伴う関係法律案は何とか参議院で一日だけでも開いて通してもらいたいという哀願でありました。会期延長は間違いだということを岸総裁は自認されたのでありますゆえ、わが鈴木委員長は、これに暗黙の了解を与えたのであります。
 その二つは、岸総裁が、国会周辺の正常化について、デモ規制法はやらない、このことに関しては数多くの関係諸法律をお互いに信頼し守っていくことで解決したいと鈴木委員長に申し出て、解決したのであります。
 その三つは、会期延長問題に関連して、当時の星島二郎議長、椎熊三郎副議長のとった非常識きわまる国会運営のあり方については、岸総裁もその非を十分認めて、自由民主党としても善処したいが、会期もない今日ただいまというわけにはいかないので、すぐ召集される通常国会で解決するということになり、今後は、議長、副議長の職責を公正に行なわしめるために、両党、すなわち、与野党より推薦し、就任の暁は党籍離脱を条件として、なお、重要問題については議長、副議長ともに相談して合意に達することによってその職務を実行することをも申し合わせをし、一応昨年の国会混乱の跡始末をつけたのであります。(拍手)しかるに、何ごとぞ、わずか一年たった今日、両政党の最高責任者が国会の権威保持と正常化の問題を中心に申し合わせしたことが一方的に破棄される結果を生む会期延長やデモ規制法の提出に狂奔せる自由民主党は、天下の公党として信を置き得ず、また、その圧力に屈して、いたずらに特定政党の願使に甘んじ、尊厳たるべき議長の職責を汚せる加藤鐐五郎君の責任を本院において追及されるのは、また当然のことであります。(拍手)
 国会が開設されて以来、議長職権による議員懲罰事犯は、今日まで三たび行なわれたと聞いておるのであります。これらの事犯は、いずれも、明らかに、国会法の規定による議院の品位を汚し、院内の秩序を乱したものであります。しかるに、このたびの問題は、その理由に何らの根拠なく、全く政治的意図によって行なわれたものであります。重大なる悪例を議会政治の上に残し、かつまた、汚点を加える結果となり、われわれ議員一同、まことに遺憾千万と存ずるものであります。(拍手)
 わが日本社会党は、常に国民の権利行使を忠実に守って今日に至りました。十一月二十七日の集団的、大衆的な国会に対する請願・陳情運動は、憲法によって保障されたる国民の権利行使であります。(拍手)国民大衆の政党であるわが日本社会党が、その中にあって岸総理や衆参両院議長にあっせんの衝に当たることは当然の行為であります。国会の権威と正常化をはばんでいるとして、わが党淺沼書記長外三名の本院議員に懲罰の宣告をしたが、各位も御承知のごとく、淺沼書記長ほか多数の社会党本院議員は、陳情団の本院前広庭に参集した人々に身を挺して早急引き上げ勧告をなし、事なきに至った功績を高く評価されてしかるべきものであります。(拍手)にもかかわらず、議長職権によって懲罰事犯とは、まことに不可解千万なことであります。
 私は、思うに、国会の権威と正常化を否定した行動をとっているものは、皮肉にも、わが党議員に懲罰事犯を宣告した加藤鐐五郎議長そのものであると断定するものであります。(拍手)あなたは、わが党より議長不信任案が国会法に基づいて提出されたことは熟知のはずであります。何を血迷ったか、議長不信任案を議題として提出を受けながら、加藤議長は、これを先議とせず、自民党の圧力に屈して、議事運営の規則を乱し、みずから議長席に着いて懲罰事犯の宣告を行なうがごときは、許すべからざる行為であり、この懲罰事犯そのものは、国会法に照らして、当然無効であります。(拍手)同時に、加藤議長は、議長としての職責を果たす能力にもはや限界を来たしたことを如実に示しているものであります。昨年、両党首、岸・鈴木会談で申し合わせ、確認された重要案件については、国会運営正常化のために、正副議長の同意のもとにこれを行なうということにも反し、このようなことでは、どうして国会の権威と正常化の具体化がなされるや、加藤議長みずから反省すべきことであります。(拍手)
 この際、私は一言申し述べたいことは、あなたも、先ごろ、本院在職二十五年の永続議員として表彰されました。この期間、幾たびか本院を代表して海外旅行をなされたこともあると存じておるのであります。私も、戦後五回外地におもむく機会を得ました。そして、三回米国に渡ることになりました。米国の首都ワシントン市にある米国国会をもたびたび訪れる機会に接してきました。率直に申して、米国国会は、民主主義にふさわしい国会と国民のつながりでありました。さんさんたる太陽の光を浴びながら、多くの国民が国会の正面玄関から喜々として自由に出入りしているありさまを見て、まことにうらやましい限りであると思いました。(拍手)そのとき、私は、日本の国会のあり方にも、主権在民の憲法を制定した上は、主権者たる国民が国会の前庭や院内通行に表正門や正玄関が開放されてしかるべきものであるというふうに感じました。わが国憲法は、従来の帝国憲法と異なり、国民主権をうたった民主憲法であります。天皇の神格化は、人間天皇として誕生されたのであります。現在の国会と国民との関係は、帝国憲法の残滓が払拭されないまま残っておるのであります。いたずらなる権力主義がそのまま国会の中に座を占め、主権者たる国民を近寄りがたいものにしておるのであります。真に国会の権威を保持し、その正常化を期するというならば、国民が親近感を持ってもっと自由に国会に近寄りやすい環境を作り出すべきであろうと私は思うのであります。(拍手)このことは、将来のため、議長も政府も政党も検討されるべき重要なる事項ではなかろうかと思うのであります。国民と国会の中をはばんでおる権力主義の観念を現在の国会から一掃することが、真に国会の尊厳を高め、正常化する唯一の道であると同時に、これこそが真の民主主義政治の真髄でなかろうかと私は思うのであります。(拍手)
 私は、十一月二十七日の国民大衆の陳情運動に若干遺憾の点があったからといって、この際権力弾圧を用いることは本末転倒であると思います。結果論を追及する以前に、その以前の問題として、主権者たる国民大衆がなぜあのように憤激したかを冷静に反省・判断することが、われわれ一同に与えられたる機会ではなかろうかと思うのであります。(拍手)
 鶏三羽に二百億円とうたわれておる南ベトナムの賠償問題や、米国で廃止した戦闘機ロッキードを一千億円以上の予算をもって買付を発表したり、民族の運命を左右する、間違えば戦争の渦中に巻き込まれる危険性を持つ日米安全保障条約の改定問題等を、深夜国会を連続したり、会期延長までして強行せんとする政府や自民党の多数横暴の国会運営のあり方が、十一月二十七日に行なわれた国民大衆の集団的な陳情・請願運動になったことを、各位は深く反省する必要があります。(拍手)本院全体が自己批判することが今次問題の解決の焦点ではなかろうかと存ずるのであります。今、国民大衆が政治に要求しておることは、将来に物議をかもす南ベトナム賠償は南北統一後に残し、米国で不用になったロッキードの購入をやめ、それらのすべては災害対策や石炭産業の不況対策、その他民生安定のために活用されんことを、国政の上にすべての国民が望んでおるのであります。(拍手)
 さらに申し上げたいことは、今日、議長と自民党の関係は、ちょうどお家騒動を脚色せる歌舞伎芝居のごとく、悪ざむらいにさんざん利用されたそのあげく、ごほうびちょうだいと思ったとたんに、下郎は口のさがないやっとばっさりけさ切りの運命に置かれておる立場が、あなた、加藤鐐五郎君の立場である、ということをお考え願いたいと思うのであります。(拍手)今日、国会の権威保持と正常化のための国会のあり方は、一片のデモ規制法や議員の懲罰事犯を強行することによって解決するものではない。公正な議長のもとに、議員各位が、真に国家の前途を憂え、愛国の熱情を傾けてその職責を果たしてこそ、真に民主的な理想国会が実現可能となるのであります。(拍手)
 そこで、最後に一言したいことは、加藤議長、議長就任のいきさつにかんがみ、党を離脱した精神を生かし、この際、十二月十七日、わが党淺沼書記長初め岡田、小林、柏議員等に対する懲罰事犯の宣告を手違いであったと取り消されて、議長の公正なる任務を全うして最後を飾られんことを願うものであります。(拍手)いずれは自由民主党より追い打ちをかけられる運命にあるあなたの立場でありますから、この不信任案採決以前に、十一月二十七日夕刻とられたような、あのきぜんたる態度のもとに出処進退を明らかにされて、政治家としての反骨を示されんことを願って、私の趣旨弁明といたす次第であります。(拍手)
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発言情報

speech_id: 103305254X02219591221_005

発言者: 山花秀雄

speaker_id: 27682

日付: 1959-12-21

院: 衆議院

会議名: 本会議