島上善五郎の発言 (本会議)

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○島上善五郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま上程されました衆議院議長加藤鐐五郎君不信任決議案に賛成の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関であることは、皆さんが御承知のように、憲法第四十一条に明らかに定められているところであります。国会がこの憲法に定むる権威を名実ともに備えるためには、民意を正しく反映し、国民に信頼されることが何よりも必要な大前提でございまして、そのためには、公正・公明な選挙によってよき代表者が選ばれるということと、一つには、国会運営が、常に話し合いをもととし、十分に論議を尽くし、納得のいく民主的運営であるということが、絶対に必要な条件でございます。(拍手)
 前段の選挙のことにつきましては、ただいまの議題と直接関係がございませんから申しませんが、国会の運営につきましては、議長がその最高の責任者であることは言うまでもございません。
 私は、ここで、昨年の第三十国会までの数度にわたるクーデター的国会運営と、加藤議長、正木副議長が選ばれるに至った経緯を、諸君に想起していただきたいと思います。
 大方の皆さんは身をもって知っておられることでありまするから、詳しく申し述べる必要はございませんが、スト規制法を通さんがための堤議長の会期延長、国民の総反撃を浴びていた警職法改正案を通さんがための椎熊副議長の会期延長は、その強引さ、不法・不当さは前代未聞であり、わが国会史上に恥ずべき記録を残したのであります。(拍手)このために、国会の機能は一時全く停止し、議会政治そのものが危機に瀕したのであります。この非常な事態に際しまして、昨年十一月二十二日、両党首会談が行なわれ、危機打開のための申し合わせを行なったことは、今なお記憶に新たなるところであります。この両党首会談の申し合わせに基づき、国会を正常化し、国民の信頼を回復せんがために、三十一回国会が召集された四日目に、両党話し合いの上に、加藤議長、正木副議長が選ばれ、党籍を離脱して、一党に偏することなき公正な国会運営を行なうこととなったのであります。従いまして、加藤議長は、いかなる圧力にも屈することなく、不偏不党、きぜんたる態度をもって、常に正木副議長とよく協議をし、国会運営の正常化、民主化のために努力すべき義務があるのであります。わが党は、議長がこの任務を全うするよう心から期待し、そのために協力して参ったのであります。
 しかるに、政府と自民党は、今回の臨時国会も半ばを過ぎたころ、ベトナム賠償協定についてその不当性が鋭く追及され、窮地に追い込まれまするや、がぜん、議長に圧力をかけ、国民の不信と疑惑を残したまま、十分なる審議を尽くさずに、ベトナム賠償協定の理不尽、強引なる通過をはかろうと、横車を押し始めたのであります。このとき、大局的、国民的見地に立って、その横車を押えるべき立場にあった加藤議長は、何らそれをしなかったのみか、圧力に屈して、この重大案件を十一月二十七日の午前零時五十分からの深夜国会で通過させるという、常軌を逸した国会運営を行なったのであります。このために、国民の不信と怒りは極度に高まったことは、申し上ぐるまでもございません。
 私は、こう申したからといって、十一月三十七日の集団陳情団の一部の者が国会構内に入ったことを、すべて正当だと申すのではございません。しかし、常軌を逸した非民主的国会運営が国民を憤激せしめ、学生などを刺激して、あのような事件の重大な一因となったことは、深く反省する必要がありましょう。(拍手)しかるに、この陳情団の事件が起こるや、政府と与党は、自己の非をたなに上げて、得たり賢しとばかりに、かねてから考えていた国会周辺デモ禁止法の制定にやっきとなり、さらに、ベトナム賠償で窮地に立たされた逆攻勢のチャンスとばかりに、淺沼懲罰を持ち出して参ったのであります。(拍手)しかるに、議長は、再度政府と与党の圧力に屈して、議長発議の形でこの二つの問題を出して参ったのであります。
 国民と国会を遮断しようとする国会周辺デモ禁止法の不当なことは申し上ぐるまでもございませんが、これは、どうやら議長提案とはならないようでございますから、ここでは省略いたしまするが、淺沼書記長外三議員の懲罰宣告に至っては、公正なるべき議長の措置として、その軽率と不当をわれわれは鼓を鳴らして糾弾しないわけには参りません。淺沼書記長の懲罰は、一議員淺沼の懲罰ではなくして、実に、唯一の野党たる社会党に対する挑戦であり、侮辱であります。(拍手)このような重大措置を議長が軽々しく扱うべきものでないことは、申し上ぐるまでもございません。
 いずれ、近く事態の真相が明らかに立証され、懲罰の理由がないことが明白になると思うのでありまするが、淺沼書記長ほか社会党の議員は、あらかじめ、前日来、議長その他との事前の話し合いに基づき、陳情団代表三十名と議長、副議長の会見がスムーズに整然と行なわれまするよう、そのあっせんの任務を持っていたのであり、たまたま代表者以外の者の構内進入という事態が起こった際には、それらの者を説得し、早期に退散せしむる役割を果たしたのであって、そのために、警察官との正面衝突、流血の大惨事という最悪事態を回避し得たのであって、議長からは、むしろ、御苦労であったというねぎらいの言葉があってしかるべきものでありますペ拍手)
 その上、このような異例の重大措置をするにあたって、何がゆえに副議長と事前に十分協議をしなかったのか。副議長の存在を一体何と考えているかといわざるを得ません。
 また、与党の言うことのみを聞いて、野党となぜ十分話し合わなかったのか。一たびは、わが党山本国会対策委員長の言をいれて、十二月七日に鈴木委員長とこの問題について話し合ったのでありまするが、懲罰宣告にあたりましては、単に一枚の便せんに数行したためた書簡を委員長に送っただけでございます。これは、野党総裁に対する礼を知らざる行為であり、野党を無視し、侮辱するものであるといわなければなりません。(拍手)
 あるいは、与党の圧力に屈したのではないと強弁するかもしれませんが、しかし、皆さん、十八日の朝刊を見てごらんなさい。「自民党の圧力で踏切った議長宣告」と、大見出しをもって一斉に報道しているではありませんか。(拍手)議長のとったこのような行動は、両党首会談の申し合わせを踏みにじり、国会正常化を破壊したのは加藤議長自身であると非難されるのも当然でございましょう。(拍手)
 さらに、私は、もう一つの事実を指摘しなければなりません。それは、十七日の国会において無謀なる懲罰宣告をするに際して、その前に成規の手続によって議長不信任決議案が提出されていた事実、そして、この場合には、国会法、議事運営の慣行から申しまして、当然この決議案が先議さるべきものであったにもかかわらず、これを無視した不法・不当行為についてであります。(発言する者多し)この場合、議長としては、まず議院運営委員会に不信任決議案の取り扱いについて諮るのが当然であったのに、それをしようとせず、そうして、わが党の代表者がこれを要求して会談中に、用便に行くと称して部屋を出て、そのまま自民党議員に促されて議長席に着いて本会議を開会してしまったのであります。これは、昨年、参議院の委員会で、岸総理が、用便に行くと称して逃げ出した故知にならったのかもしれませんが、公正なるべき議長の行動としては、何んとしても承服しがたい、不当にして卑劣な行動と言うほかはございません。(拍手)不信任決議案を突きつけられた議長は、一まず副議長に席を譲り、不信任問題の結末をつけてからでなければ議長席に着かないのが、議事運営の常道であります。与党に要求されるまま、こうした、きわめて当然な議事運営の常道を無視し、しかも、与党と一部社会クラブのみが入った、りょうりようたる議場において、一方的に懲罰を宣告するという、非常識にして軽率なる行動をとるに至ってはまさに、さたの限りと言うほかはございません。(拍手)先ほど、菅家喜六君は、議長懲罰の先例を引かれましたけれども、これはもう一ぺんよくお調べを願いたい。これらの先例は、いずれも、議運において、やむなきものとして了解しての、議長懲罰の宣告であります。(拍手)だからこそ、議長不信任も何も出されなかったではありませんか。
 私は、最後に、加藤議長に一言呈したい。あなたが議長就任直後記者団に語った言葉、今、一番大事なことは、国会が国民から信頼を得ることだ、国民から国会が軽視され、軽侮されることのないよう最善の努力をする、この言葉を、いま一度胸に手を当てて静かに思い出していただきたい。そうしましたならば、ただいま提案されている不信任決議案の採決の前に、みずからの責任を明らかにすることが、国民から国会の信頼を回復する最もよい道であるということに気がつくことでございましょう。(拍手)加藤議長があえてそれをしないのであるならばやむを得ません。われわれは、ここに、国会運営の正常化と国会の権威保持、そうして国民の信頼回復のために、このような、一党に偏した、一党のかいらい議長と成り下がった加藤鐐五郎君を不信任し、すみやかに皆さんの賛同を得たいと考えまして、以上、私は討論をいたした次第でございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 島上善五郎

speaker_id: 10675

日付: 1959-12-21

院: 衆議院

会議名: 本会議