小泉純也の発言 (本会議)
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○小泉純也君 日本社会党から提案されました日米安全保障条約改定交渉の即時打切りを要求する決議案に対しまして、私は、自由民主党を代表し、反対の討論をなさんとするものであります。(拍手)
本決議案の前提をなすものは、国際情勢が緊張緩和に向かい、軍備撤廃及び平和共存の可能性が強くなったという、いわゆる世界雪解け説に出発をしておるのであります。従って、米ソ両巨頭相互訪問を契機とする東西冷戦の好転を希望することは、もとより、日本政府のかつてからの主張するところでございます。しかしながら、雪解けを希望することと、真に平和共存が可能になるということは、問題がおのずから別であるといわなければならぬのであります。(拍手)特に重要なことは欧州における東西融和の動きは東西両陣営の集団安全保障制度を基礎としておることでございまして、自国の安全を保障するための集団安全保障制度をゆるめる徴候は世界のどこにも存在しておらないのであります。(拍手)日米安全保障の体制あってこそ、講和締結後八年間、国民は安心して暮らすことができ、今日の、平和で、栄えた日本を築き上げることができたのであって、日米安全保障条約の重要なる役割というものは、歴史の事実がこれを証明して余りあるといわなければならぬのであります。(拍手)
今回の安保改定は、七年前に規定いたしました不平等なる日米関係を脱却し、岸・アイク会談の成果による日米新時代を作り出さんとするものであります。戦後におけるアジアの緊張状態は、一九五一年九月日米安全保障条約が出現する前に、その一年有半前、日本を仮想敵国とする中ソ軍事同盟が締結をせられ、続いて、三十八度線を突破いたしました北鮮共産軍の南鮮攻撃が行なわれ、これら共産陣営の脅威こそは、わが日本をして安保条約の締結を促進させたものであるといわなければならぬのであります。(拍手)社会党は、安保条約の改定が軍事同盟であると独断し、これがアジアの危険状態を誘発するというがごときは、顧みて他を言う、驚くべき論理の飛躍であり、従来より繰り返されております容共的宣伝の域を一歩も出ないものと指摘せざるを得ないのであります。(拍手)
以下、決議案中の各項に対しまして、きわめて簡単に反論を申し上げます。
第一は、社会党は、バンデンバーグ決議の趣旨を条約に織り込むことは憲法に違反するものとして反対をされておるのでございますが、新条約は、日本の負うべき義務を厳に憲法の範囲内にとどめるということを交渉の大前提にいたしておるのでありますから、憲法に抵触する心配はごうもないのであります。元来、バンデンバーグ決議の趣旨は、条約当事国が、自由の安全を守るため、すべてを相手国に依存せず、みずからも応分の努力をなすべきであるという趣旨のものでございます。日本が自国の安全を守るため自衛力を整えることは、憲法の認むるところであるのみならず、むしろ、独立国として当然の措置でなければならないのであります。(拍手)また、米軍基地に対する攻撃を日本に対する攻撃とみなすことは、戦争に巻き込まれるものとして社会党は反対をせられておるのでございまするが、在日米軍に対する攻撃は事実上、日本に対する攻撃を意味するものでなければならぬのであります。日本が、このような事態に対しまして、自衛上これに対応することは当然であり、かかる決意を明らかにすることによってのみ日本に対する侵略を未然に防ぐことができると信ずるのであります。(拍手)しかるに、日本に対する攻撃を是認するがごとき口吻をなし、しかも、非が日本にあるというがごとき論理は、社会党の指導理念がいかなるものであるかという、その暴露以外の何ものでもないのであります。
第二は、新条約を契機として軍備拡張が行なわれ、国民負担を増大すると宣伝をされるのでございますが、これは全く事実に反し、国民を惑わすものでなければならぬのであります。日本の防衛計画は日本が自主的に決定するものであり、新条約によって防衛費が急増するがごときことは断じてないのであります。むしろ、行政協定の改定によって防衛分担金が削除されるのであります。
また、社会党は、反民主的立法がこれによって強行されるであろうと非難をしておりまするが、かくのごときは、まさに天に向かってつばきするものであり、現在日本の民主主義を脅威しておるものは何であるかと社会党に問いたいのであります。去る十一月二十七日、安保改定反対のデモ隊が神聖なる国会を暴力をもってじゅうりんしたこの不祥事こそは、まさに反民主主義的行動であり、社会党が平生言われる平和主義とはほど遠いものであるといわなければならぬのであります。(拍手)日本の民主主義を否定するものは左翼全体主義でありまして、わが自由民主党は、民主主義、議会主義を守ることを最大の使命とするものであることを、この際、特に明らかにしておきたいのであります。(拍手)
第三は、事前協議についてでございます。現在の条約は米軍の行動について何ら制限がないことは、周知の通りであります。新条約は、米軍の行動について発言権を確立せんとするものでございまするので、米軍の行動については事前協議をするということを織り込んでおるのでございます。この事前協議は、当然、協議成立を前提とするものであることは、政府がたびたび声明をいたしておるところであります。また、在日米軍が国連軍の資格において行動する場合においても事前協議の対象になり得るのでございます。米国が日本の意向に反して一方的な行動をとらないということは、すでに日米間に明瞭に了解されておるところであります。社会党は、交渉を打ち切るべしと言うのでありまするから、現状のままでよろしい、米軍は自由勝手にふるまってもよいということを意味するものでございまして、その主張するところは矛盾撞着のきわみであるといわなければならぬのであります。(拍手)
次は、極東の概念及び米軍の行動範囲についてであります。米軍の行動は極東の平和が乱された場合のみにとられるのでございまして、その行動は、おおむね極東地域内に限定さるべきものであります。社会党は、米軍の行動に対する責任を公式分担するの危険があると言っておられまするが、米軍の海外出動や核兵器の持ち込みについて、条約上の発言権がなければ責任を負う必要がないというような論旨は、独立国としての立場を失うものであり、天下の公党として断じてとらないところでなければならぬのであります。(拍手)
第四は、条約改定が日中関係を阻害するとの点であります。さきに、私は、日米安全保障体制はアジアの緊張状態の所産であると申し上げましたが、この緊張たるや、日本の行動に基因するものは一つもないのであります。日本は共産圏を含むアジア各国との善隣関係の確立を希望し、アジア地域に平和が招来されることを熱望しておるのであります。しかるに、不可解なことには、日本国内において、日本がアジアの緊張に責任があるとか、あるいはまた、日本が中共を敵視しておるがごとき言辞を弄する者がありますることは、まことに嘆かわしい限りでございまして、戦後における日本の立場というものは全く受動的なものであることは、世界の学識でございます。さらにまた、安保改正によって日本が国際的に孤立すると社会党は言われまするが、国際的に孤立するのは、衛星国以上に共産圏の外交路線に盲従する社会党の姿であろうと思うのであります。(拍手)野党として何ら責任のない立場におるとはいえ、もし日本が社会党の言われるごとき外交路線をとるといたしまするならば、自由世界との経済交流は破綻を来たし、日本経済は破滅のほかなきに至ることは、火を見るよりも明らかであると思うのであります。(拍手)
第五は、安保条約改定に関し、政府は国民に疑惑と不安を与えておると言われまするが、この責任はあげて社会党にありと断言せざるを得ないのであります。(拍手)かつては、現行安保条約が片務的であり、不平等であるからということで、その改正を迫りながら、藤山外務大臣の努力が実を結ばんとする今日に至って交渉打ち切りを叫び、あまつさえ、これにかわるべき何らの具体案を示さないということは、国民の何人も理解に苦しむところであります。(拍手)アメリカ、イギリス等における政党は、朝野の別はありましても、その政治理念においては共通の基盤に立って外交が推進をせられておるのであり、かくのごときが外交本来の姿でなければならぬのであります。しかるに、日本においては、民族の安危にかかる重大なる安全保障条約がよりよく改定されんとするのに、社会党はこれに反対をして、これを中止せよとの決議案がここに提出されておるのでありまして、国会未曽有の決議案であり、まさに世界外交史上空前の狂態でなければならぬのであります。(拍手)この結果、民主主義陣営の信用を失墜し、日本に対して謀略的働きかけをする国を利するのみでございまして、百害あって一利なき決議案といわなければならぬのであります。(拍手)私は、社会党の指導原理によって日本が動かされた場合、いかなる事態を生ずるかを考えまするとき、まことにりつ然たらざるを得ないのであります。(拍手)
以上申し述べましたごとく、社会党提出の決議案は、ことごとく、事実の歪曲と、論理の矛盾と、反対せんがための反対以外の何ものでもないのであります。切に社会党の猛省を促してやみません。安全保障条約の改定こそは、平和を愛好する良識ある国民各層に共通する民族的要請であることにかんがみまして、私は、ここに本決議案に反対し、岸内閣はますます所信をかたくせられ、改定交渉を促進されるよう強く要望いたしまして、私の討論を終わる次第であります。(拍手)