廣瀬勝邦の発言 (本会議)

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○廣瀬勝邦君 私は、ただいま上程されました日米安保条約改定交渉即時打ち切りに関する決議案に対し、社会クラブを代表して賛成の意を表せんとするものであります。(拍手)
 本決議案に賛成する第一の理由は、安保改定交渉の前提となる政府の国際情勢の見通しと判断の幾多の誤りについてであります。すなわち、一昨年、第一次岸内閣が成立直後、独立したわが国としては、現行日米安保条約による不平等性より脱却せねばならぬとする素朴なる国民感情を逆用して、自主的な、双務的なものにするとのふれ込みで、その実は、岸体制確立の一方便として、安易にその改定に手を染めたことに端を発するのでありますが、その重要なる背景をなす国際情勢が、この間、急激に変動し、日米安保条約の改定自体、その緊急性が薄れつつあるのが現状であります。
 まず、第一に、マクミラン英国首相の訪ソによって口火が切られ、本年九月のフルシチョフのアメリカ訪問、それに続く東西頂上会談への期待、さらに、最近におけるアイク大統領の十一カ国歴訪の経緯及びNATO理事会の結果など、ダレスなきあと、コンロン委員会報告、シラキュース報告等にも見られる通り、アメリカ外交路線の基底も微妙なる方向転換を指向し、東西雪解けの徴候は、今日、何人たりとも否定し得ない現実となりつつあるのであります。しかるに、岸総理並びに藤山外相は、今臨時国会において、国際情勢の変化や各国首脳の平和への努力は認めるが、今直ちに平和は招来されない、と、しいて国際情勢の好転を過小評価しようとしているのであります。政府は、すべからく、話し合いによる国際平和への努力を高く評価し、少なくとも東西巨頭会談の結果を見るまでは、わが国の安保改定は見送るべきが至当であると考えるのであります。(拍手)
 さらに、第二の情勢変化は、東西雪解けの方向と直接に関連する全面戦争否定への希望、軍縮の問題、ことに核兵器禁止についてであります。人類が手にした究極兵器の発達は、その決定的な破壊力、とどまるところなき膨大なる軍事出費の重圧面より、かえって逆に軍縮の進展を促進しているというのが実情であり、各国首脳の苦心の点もまたここに存するのであります。従って、政府としては、現時点において安保改定交渉を急ぐよりも、むしろ、わが国の非核武装を即時中外に宣明することにより、世界の核兵器禁止の方向に拍車をかけるとともに、特に中国の核武装を阻止することこそが、何ものにも優先する喫緊事であって、わが国安全の基本的命題であるといわねばならぬのであります。(拍手)
 第三には、中国の態度をめぐってであります。岸内閣は、成立以来、中国に対してはことさらに感情的となり、世上、敵視政策などといわれるくらい、かたくなな態度をとり、ことに、第四次貿易協定破綻以後、その交流は全くとだえているのであります。しかし、先般の石橋湛山氏の訪中、また、引き続いての松村氏一行の訪中は、自民党内にも中国の存在を正しく評価せねばとする良識派もあるのであって、真のわが国の外交路線は、中国を度外視し、あるいはこれを敵視しては成り立ち得ないことを如実に示しているのであります。われわれは、一部偏向分子のごとく、中華人民共和国の態度いかんによって直ちにわが国の外交を左右せねばならぬという偏見にとらわれるものではありませんが、現実に、安保改定交渉の推移が中国の対日警戒心を強めているという事実は、これを率直に認めなければならないのであります。中国との平和的な共存、台湾海峡をめぐる米・中の緊張をそのままに放置しておきながら、適時、国連軍として、あるいは米軍として、二重性格の使い分けができる在日米軍の海外出動を単なる協議事項で片づけようとするのは、あまりにも乱暴な、配慮のなさを指摘せざるを得ず、かくては、このまま安保改定交渉を続け、調印を強行することは、日本の将来をはなはだしく危険ならしめるものと断定のほかないのであります。
 決議案に賛成の第二の理由は、政府が、この安保改定交渉にあたって、当初より確たる見通しと成算の上に立っての何らの一貫性を持って臨んでいなかったという点であります。すなわち、日米新時代に即応する、対等にして双務的な、独立国にふさわしい手直しをするとして開始された交渉も、相互防衛方式を押しつけられ、次には基地貸与協定方式に変わり、最後に三転して、基地貸与協定プラス相互防衛方式の新条約に変わった一連の経過は、まさに、その無計画、無方針を端的に露呈したものといわざるを得ないのであります。(拍手)すなわち、当初における岸、藤山両氏の考え方の相違、相互防衛方式か、基地貸与協定か、あるいは、三木武夫氏の、日米の軍事的提携を強化したり、防衛範囲を拡大するものであってはならないとする意見、また、河野一郎氏の、期限の問題等、閣内及び党内の意見の不一致は、わが国の運命を左右する安保改定を進める上に、あまりにも軽率のそしりを免れ得ないのであります。(拍手)保守勢力に連なる人々が、わが国の安全を確保するために、いましばらくの間アメリカの協力が必要であるとの立場をとるにせよ、少なくとも、米軍の常時駐留を取りやめて有事駐留にするとか、また、駐留の目的を日本の防衛に限るとかの点を真剣に考慮し、世論の一致を求めるのが当然でありましょう。かるがゆえに、われわれは、何の見通しもなく、計画性も一貫性もない、ただ漫然と相手国のペースに巻き込まれた、惰性による改定交渉は、即時、最初の第一歩から出直すべきであると主張するものであります。
 賛成の第三の理由は、改定の交渉内容について、国民の納得のいく論議が尽くされていないという点であります。たとえば、新条約第三条の「自助及び相互援助による防衛力増強」の約束、第五条の「わが国による共同防衛の義務負担」等は、重大なる憲法上の疑義があるのであります。岸総理や藤山外相はしばしば、「憲法の範囲内において」という表現をもって、これらの疑義点については憲法違反にならないと言明しておりますが、今日まで、政府が憲法の拡大解釈を常に行なってきた関係から、国民はこれを真に承服してはいないのであります。率直に申して、良識ある国民は、憲法第九条を持つ日本が、なぜ軍事同盟を結ばざるを得ないのか、政府のやり方に憤りを持って、深く憂えておるのであります。
 さらに、また、第六条及び付属交換公文における米軍の装備並びに極東の平和と安全のための米軍の出動に関する事前協議と、その適用範囲についてであります。ボタン一つ押せば敵地を壊滅する時代に、はたして現実的に事前協議が行ない得るかどうか、また、日米の力関係よりして、政府の言う通り拒否権が使い得るかどうかの点につき、国民は疑問を持っているのであります。
 さらに、日本に駐留する米軍が、必要に応じて、米軍としての行動と、国連軍としての行動の二重性格の使い分けができることに関し、国連軍も事前協議の対象となると言いのがれはしているものの、最近の世論が示す通り、これまた、国民は大きな危惧の念を抱いているのであります。
 米軍の出動範囲については、極東の安全と平和維持のためにという漠たる規定によって、その範囲はほとんど無制限に近く、戦力にあらざる自衛隊の共同行動との関連において、国民は日本のためにあらざる戦争に再び巻き込まれる危険性に対し不安を感じているのであります。
 条約期限の問題については、十年というのは、最近のごとく変転きわまりない国際情勢のもとでは、あまりにも長過ぎるというのが、国民の偽らざる感情であります。中ソ友好条約の期限が三十年であり、NATO協定が二十年であるから、十年が適当であるとする政府の言い条は、米韓、米比の一年の予告期間と対照して、なぜ日本のみが十年であるのか、その説得力は根拠がきわめて薄弱であります。
 以上例示した諸点でも明らかなるごとく、今次国会における政府の答弁はまことに不明確であり、国民は決して納得していないのであります。政府は、国民に真の意図を率直に明示すべき義務があります。しからずんば、安保改定交渉は今直ちに交渉を打ち切り、国民の理解を得るよう努力すべきでありましょう。
 かかる諸情勢のもとで、岸内閣が安保改定交渉の継続を強行せんとするのは、いかなる理由によるものであるか。それは、われわれの見地からすれば、日本の安全や、真に日本の将来を思う自主独立の外交のためではなく、単なる岸首相、藤山外相の党内的延命策以外の何ものでもないといわざるを得ず、われわれの断じて許すことのできないものであります。(拍手)
 最後に、集約として、われわれの基本的立場を明らかにし、安保改定交渉打ち切り決議案に賛成の意を尽くしたいと存じます。
 すなわち、われわれは、わが国外交の基本方針として、両陣営の冷戦には一切不介入の態度を堅持し、かつ、いずれの陣営とも軍事的結びつきを持たない非軍事同盟を目標とする立場に立つものであります。敗戦、その結果としての軍事占領、引き続いての朝鮮動乱からの遺産とも言える日米間の軍事的結びつきは、その密着の度合いを薄めるべきが順当であって、日米安保条約は、冷戦の緩和、国際軍縮などの諸情勢と相待って、かつは、具体的なわが国をめぐる安全保障体制整備との見合いにおいて、段階的な方法によりこれを解消すべきものであると信ずるのであります。(拍手)しかるに、政府の改定の方向とその内容は、日本の自主性の回復を名とし、かえって新安保条約によってバンデンバーグ決議を基軸とする相互防衛条約に変質させようとするものであって、このような内容の改定は、前述の軍事同盟の希薄化と、安保条約解消の基本方向に反するがゆえに、断じて容認し得ざるものであります。従って、われわれは、政府に対し、かかる内容の改定を即時とりやめ、解消の方向に沿った改定に問題を限定すべきこと、また、その場合においては、われわれとしても独自の見解を表明する用意のあることを披瀝したが、政府はこれに耳を傾けようとはせず、ただ、いちずに、原案による交渉の終局的妥結に走ろうとしておるのであります。よって、ここに、重大なる決意を持って、政府の改定交渉の即時凍結を再度要求して、賛成の討論といたします。(拍手)

発言情報

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発言者: 廣瀬勝邦

speaker_id: 12340

日付: 1959-12-21

院: 衆議院

会議名: 本会議