千田正の発言 (本会議)

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○千田正君 私は、ただいま行なわれました藤山外務大臣の日米安全保障条約改定交渉に関する中間報告に対しまして、賛否の態度いかんはいずれ他日の機会に譲ることといたしまして、きわめて限られた時間ではありまするが、二、三の点について若干の質疑を行ないたいと思うのであります。
 まず、日米安全保障条約の改定交渉の根拠につきまして総理大臣並びに関係大臣にお伺いしたいと思います。従来の政府の国会答弁、各地における講演等の断片的報道を総合してみますると、安保改定交渉の根拠となったものは、およそ次のものであると思われるのであります。すなわち、それは、第一に日米安全保障条約を必要とする理由として、かつて政府はまず(1)単独で強大な軍事力を擁して自国の防衛を果たし得る国は米ソのみであり、日本は集団安全保障体制の力を必要とするということ。(2)国際連合が平和の確立のために十分な力と機能を発揮するまでは、日米の提携を必要とするということ。(3)米ソ首脳の交換訪問により緊張緩和の傾向がみられるが、ドイツ問題を初め、いまだ具体的に解決したものはないという点。(4)中ソ友好同盟条約の中に、日本を仮想敵国とした軍事条項があり、これに無関心ではおられない等々をあげ、第二には、七年前の現行条約を改定しなければならぬ理由として、現行条約がその後の事態の推移により実情にそぐわなくなったという点をあげ、具体的には自主性の回復、対等性の確立、双務性の創設、あるいは防衛体制の本格化等々をあげているのであります。これによってみると、主として政府は、アメリカと日本が自由主義ブロックの一員として対等に存在し得るようにすること、換言すれば、日本の完全なる独立のために改定に踏み切ったというのでありますが、その中において非常に危惧される点は、改定交渉の実体的基礎が、自主性や双務性云々という言葉に表わされているように、いかに政治的、経済的協力をうたっておりましても、それは七万五千の警察予備隊から出発して、今日は十八万の地上部隊を持つ旧陸軍に匹敵する兵力を中心とするところの、陸海空三軍の自衛隊の拡張と、その兵力の行使に重点を置かれているのではないかという点であります。自衛隊の違憲論争はすでに古くからあり、その結論も出ないうちに、自衛権に関する政府のいわゆる統一見解が次々に変貌している現在、憲法第九条が改正されたというのでもなく、国防軍が創設されて、それが個別的及び集団的自衛権を有することが確認されているという事実もないままに、自衛隊の増強という事実を基礎に安保改定をはかるということは、憲法違反の疑いがあると思うのでありまするが、これらの点に関して岸総理にお伺いいたしたいということは、第一に現在の科学の進歩は、戦争を起こす要因よりも、戦争を起こせないという国際情勢に対し、いかなる国を仮想敵国にし、また軍事同盟にひとしい改定をするのであるか。正しい判断のためには月の裏面をも観察する態度が必要ではないか。この点について御見解を承りたいのであります。第二には、集団的自衛権は自衛隊の増強を意味するのではないかという点であります。第三には、集団的自衛権と憲法第九条との関係に矛盾はないかという点であります。第四には、法律論的にはとにかくといたしまして、政治的に岸内閣の動向に不安を抱く国民に、安保改定と自衛隊の増強並びに国民の財政負担の増加等の関連を何と御説明になられるかという点であります。
 第五は、国民の世論のいかんを問わず、内閣の運命を賭しても改定断行の意思であるかどうか。昨日の新聞報道によりまするというと、滞米中の河野一郎氏は、ハーター国務長官との会談において、期限内改定論について話し合ったことが問題になっておるようでありまするが、首相は、このように党内の統一が十分でないままに、なおこの問題の強行をする意思があるのかどうか、この点の御答弁をいただきたいと思うのであります。
 次に、藤山外務大臣並びに赤城防衛庁長官にお伺いいたします。
 まず第一に、国連憲章の中で最も不十分であり、かつ例外的規定とさえ言われるところの第五十一条に基づく軍事同盟方式は、明らかに時代逆行のそしりを免れず、平和憲法を持つ日本は、この解消のためにあらゆる努力をなすべきであるという観点から、まず第一に、現行条約を国連憲章第五十一条に基づく軍事同盟方式の条約に改定することは、国連憲章の精神及び変化しつつある国連中心主義外交の妨げにならないかどうかということと、軍事同盟方式を白紙に還元して、むしろアメリカとアイスランドの関係のごとく、軍事条項を含まない日米間の条約に改める考えはないかどうか。また、国の運命を左右するこの種の外交問題の処理にあたっては、国論を統一してこそ真の外交というべきであって、国会を中心として各党各派の代表あるいは各界の代表からなる審議機関を設けて、慎重に研究して、統一したる方針を打ち出して、将来の日本の国民のために永遠の生命を守るべきが至当ではないか、この点をお伺いしたいのであります。
 次に、第二の点については、まず最初に、わが国の自衛隊に個別的自衛権があるとしても、日本の領土内にある米軍への攻撃に対抗して、自衛隊が米軍に協力して作戦行動を起こした場合、これは個別的自衛権の発動であるのか、その延長であるのか、あるいは集団的自衛権の発動であるのか、その区別をはっきりさしていただきたいと思うのであります。次に、わが国の自衛隊にも集団的自衛権があるという根拠を示していただきたい。たとえ海外派兵のおそれがないと仮定いたしましても、集団的自衛権の確立の結果、極東における国際の平和及び安全に寄与するための米軍の軍事行動により、わが国もまた戦乱に巻き込まれるであろうというおそれは、戦後十四年を経ました今日といえども、微妙な国民感情と心理に多くの暗影を与えるであろうことは、為政者として最も警戒しなければならないことであると思いますが、この点はいかがでありますか。
 第三には、内乱と安保の関係についてであります。現行条約の内乱条項は、あまりにも独立国としての体面を傷つけ、不当な内政干渉の印象を与えることは、今までも多くの論者の指摘してきたところであります。今回これが削除されることと思いまするが、外相みずから認められるように、第四条の協議事項は、明らかに米軍もまた内乱に出動し得るものであり、これでは、自主性の回復や独立の完成とは事実上ほど遠いものであることをおそれざるを得ないのであります。日米協調は、あくまでも独立国同士の対等の協調でありたく、かりにも不必要な誤解を招くような規定は、これを消滅させるにしくはないのであります。今後の交渉にそれを期待しつつ、この点についての外務大臣の御所見をお伺いしたいのであります。
 第四に、きわめて多くの論争を呼んだ事前協議について質問いたします。多くの反対論者は、事前協議が、その内容において承諾または同意の意味を含まないがゆえに、きわめて一方的で、日本から見て力のないものであり、ミサイル戦略の現代においては、アメリカが全く無視しており、まことに無益な空文であると主張しておることはすでに御承知の通りであります。しかしながら、条約としてかかる規定は、全く存在しないよりは存在している方がより多く妥当であると考える人もあるのでありますが、ただ一つ危惧すべき点は、事前協議に拒否権を含め得るとしても、日米間の力関係に依存する度合いが大きく、政治的には、わが国が独立を真に達成するまでは、これが実効を期待することはきわめて少ないということのみならず、軍事的には全く疑問であり、また、もし政府の説明するように拒否権を発動した場合、すなわち、米軍が日本国の領域内における施設及び区域を日本の防衛以外の目的で作戦行動に使用することを不可能ならしめた場合、日本の防衛のみならず、新しく極東の平和と安全の維持を目的とした新条約の意味が全く失われるという、前後撞着した結果を生むこと、及び、その場合に、交換公文による事前協議によらず、条約案第四条の協議事項による協議で切り抜けるという裏道が用意されているのではないかという点であります。これらの諸点について、疑問の残らぬように外務大臣からお伺いしたいと思うのであります。
 さらに第五の質問は、核兵器の持ち込みについてであります。最近の米比基地協定によれば、フィリピン側と事前協議することなしに米軍基地に長距離ミサイルを持ち込まない旨の協定が成立したようでありますが、大多数の日本人の核兵器の製造、実験、使用を禁止すべきであるとの希望がますます広範に要望されている現状にかんがみまして、核兵器持ち込み禁止に万全の努力を尽くされるであろうと信じますけれども、防衛用小型核兵器の使用は違憲ではないという再三の政府答弁を思い起こすごとに、アメリカに対して核兵器持ち込み禁止を要求しようともしない政府の態度に不安の念にかられるのは、あながち私一人ではないと思うのであります。まして、核弾頭をつけないとはいえ、サイドワインダーが到着した今日においてはなおさらであります。政府は、この際、小型核兵器を含めて一切の核兵器を持ち込まないこと、核武装はこれを避けることを、外務大臣及び防衛庁長官に強く要望し、明確なる御答弁を得たいと存じます。
 最後にただ一点、かくも多くの問題点を持つところの日本の安全保障体制について総理大臣にお伺いいたしまするが、日本が自由主義ブロックに属し、対米協調を基本とすることを正しいと仮定しても、日本と同じく自由圏に属し、西欧陣営の一員でありながら、一切の軍事同盟を拒否することによって安全保障を得ているところのオーストリア方式にこれを切りかえるという考えがないかどうか。将来の日本の命運をかけての重大問題でありますので、何とぞ総理大臣の明快な御答弁をお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 103315254X00719591111_012

発言者: 千田正

speaker_id: 27068

日付: 1959-11-11

院: 参議院

会議名: 本会議