田畑金光の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○田畑金光君 私は社会クラブを代表し、藤山外相の安保条約改定交渉に関する中間報告について、総理、外相、防衛庁長官に対し、以下数点の質問を行ないたいと思います。
まず、外相は、今回の条約改定の必要論は日本国内の事情だけによるとしておりますが、はたしてそうでありましょうか。すなわち、日本の国力の充実、国連加盟による国際的地位の向上、防衛力の充実のみが改定交渉を可能にしたと見ておりますが、これは他の反面を見失っておると思います。米国が改定交渉に応じた背景は軍事政策の変更のためであり、また、ミサイル戦略の現在、基地としての日本の価値が減じてきたところに重要な要因があると思います。米陸上部隊の引き揚げもその現われであって、政府があえてこのことに触れるのを避けるのは、対等性の名のもとに軍備の強化をはかろうとする意図が隠されておると思います。政府の見解を承ります。
次に、現行安保条約は、米ソの軍事的衝突が頂点に達した朝鮮戦争を背景として結ばれた条約であるということであります。平和条約は日本に独立を許したが、同時に調印された安保条約は、独立体制に重大な制約を加えたのであります。ゆえに、安保体制をどうするかという点で意見の対立がありまして、安保体制を強化し、アメリカとの関係を強めることが日本の安全保障の道であり、望ましき方向であるとするのが政府のとっている態度であります。これに対し、世界の対立する二大陣営の中にあって、一方に味方し、一方を仮想敵国とすることは、対立の激化をもたらすだけであって、平和の保障とはならない。対立の緩和はノン・アラインメントの立場に立つことであるとする。従って、現行条約は解消されなければならないとするのが、私たちの基本的立場でございます。政府は、現行条約は無期限であるが、これを十年に定めることにより、自主性を回復したと言っております。はたしてそうでありましょうか。政府の見解とは逆に、現行条約は暫定条約と見るのが妥当でございまして、しかも十年間は固定化し、一方的選択により改廃の可能性の道を閉ざしたことは、明らかに政府の主張とは正反対に、自主性の喪失を意味するものといわなければなりません。流動する世界情勢下にありまして、わが国のみが条約改定を通じアメリカとの軍事体制を強化することは時代逆行にほかなりません。この際、国民世論に耳を傾け、条約解消の方向に沿いつつ、改定に再検討を加えるとか、あるいは期限については一年の予告期間をもって改廃の自由を保留する等、国民の不安と疑問をやわらげるべきであると考えますが、政府の所信を承ります。
第三にお尋ねしたいことは、条約適用地域についてであります。政府与党においては、当初、沖縄、小笠原を含めるかどうかという点で意見の対立を来たしましたが、結局はこれを除外いたしております。しかし同時に、沖縄住民の感情から申しますならば、大きな不満であり、憤りを禁じ得ない問題でありましょう。この際、政府は独自に、あるいはアメリカと協力しつつ、経済の発展、住民の福祉向上に努力し、あわせて施政権返還のために強く交渉を持つべきだと考えますが、どうでございましょうか。過般、発表されたコンロン報告書によれば、アメリカは沖縄を最終的には日本へ返還する準備を進め、一方その間、沖縄に対する経済援助を増加し、政治的自治拡大を行なうべきであると申しておりますが、このようなアメリカ国内における動き等を十分に政府は考慮すべきであると考えます。さらに、沖縄、小笠原につきましては、施政権返還と同時に適用地域に入れることになっておりまするが、これら米軍基地に対し、あらかじめ防衛義務を想定しながら返還問題を取り扱うことは、大きな疑点を残すものであると考えます。将来、返還後、あらためて日米協議事項として措置することが、自主性の立場においても必要であると考えまするが、政府の所見を承りたいのでございます。
次にお尋ねしたいことは、日本の領域内におきまして攻撃が加えられましたときには、日米両国が共同の行動をとることになっております。このほか、駐留米軍は事前協議を条件といたしまして極東の平和と安全のため出動することができる、この問題でございます。これらのことは、昨年八月の金門、馬祖をめぐる台湾海峡の緊張状態を見ましても明らかなように、日本が他国の戦争に巻き込まれる危険性が強くあるのでございまして、現行条約と何ら変わりのない深刻な不安を国民に与えるものと申さなければなりません。
〔議長退席、副議長着席〕
一体、極東とはどの範囲をさすのであるか。衆議院における藤山外相の答弁を見ますと、フィリピン以北、中国の一部、沿海州に至る日本を中心とする地域と申されておりますが、これによって見ましても、改定条約の軍事同盟的性格はいよいよ濃厚になって参っております。政府の説明を聞くと、極東の平和と安全がすなわち日本のそれと同一であるかのように思い込ませることによって危険性を薄めようとしております。こういう理論を展開いたしますならば、極東の平和と安全のためであるならば、極東地域の外に出ることも可能であると考えまするが、この際、政府の所信を承っておきたいと思います。政府はあらためて、極東の平和と安全のために米軍の出動を認める条項は、協議事項があるから不安はないのだというような言葉のごまかしではなく、勇気を持ってこれが削除に当たらなければならないと考えまするが、政府にその勇気があるかどうかを承っておきます。
次にお尋ねすることは憲法との関係においてであります。政府の説明は、憲法上の制約を設けてあるから新たな義務負担はない、自主性はそこなわれないと言うのであります。バンデンバーグ決議の趣旨も、「憲法の規定に従い」という修飾語があれば新たな義務負担にもならない、軍備の強化にもならないと言うのでございます。相互防衛義務も、憲法上の手続に従うという規定を入れれば憲法違反にあらずと言っております。わが国憲法は、御承知のように開戦手続等を定めておりません。このことは、わが憲法が、相互防衛義務の履行等は全然予測していないことを意味しているわけであります。ゆえに、条約改定の内容は明らかに現行憲法の精神に矛盾衝突するものであると考えますが、あらためて政府の見解を承りたいと思います。
次に、私は総理並びに外相に国際情勢の認識についてお尋ねいたします。政府の情勢判断は、十年一日のごとく、冷戦の論理、力の均衡論でありまして、何らの発展性も融通性もございません。岸総理は本年夏、一ヵ月にわたり、欧州、中南米諸国を歴訪され、各国の首脳と会談され、大いに国際情勢特にアジアの情勢について検討を重ねてこられたはずでありますが、驚いたことには、いよいよ力の政策に自信を深めてこられたというこの事実であります。国民の期待に反するもはなはだしいと申さなければなりません。察するに、この段階において方針を変えることは岸内閣の死命を制することになるから、あえて世界の大勢に目をおおわんとするものではなかろうかと考えるわけでございます。一内閣の存立のために国家民族の運命を誤ってはならないのであります。核兵器の手詰まりは、東西首脳の軍縮に対する真剣な取り組みとなって現われ、米ソ最高指導者による、国際紛争の解決は力によらず平和的方法によるとする原則確認は、平和共存に大きな前進のきっかけを作っております。このとき、自由主義陣営の力の結束こそ平和保障の道であるとする岸・藤山路線は、深刻な自己反省を加える必要があろうと考えます。今日必要なのは、日米安保条約を相互軍事同盟に強化することでなくて、どうすればこれを解消するかの漸進的段階的方途を求めることでなければなりません。
〔副議長退席、議長着席〕
単に言葉で国連憲章を尊重することではなくて、軍事同盟を排除して、どうすれば国連の一体化、国連の強化をはかるかという問題に、真剣に取り組むべき時期であると思います。また、日本の安全保障のためには、東西両陣営の話し合いを進め、緊張緩和のため日本自体が努力する必要があろうと考えます。すなわち、日中国交回復の方途を探究し、アジア非核武装地帯の設置提唱等は、まさにその具体化の一つでございます。この際、岸内閣は、謙虚に内外情勢の見通し判断について反省を加えられる必要があろうと考えまするが、御所見を承りたいのでございます。
最後に、政府の防衛方針についてお尋ねいたします。過般、政府は、次期主力戦闘機の機種選定を終わり、二百機の国産化を予定しております。さらに、数日前、国民の目をごまかし、抜き打ち的にサイド・ワィンダーの受け入れを終わりましたが、三十五年度以降はミサイル化を急ぐ方針のようであります。国民の側から見れば、たまらない不安と焦燥感を禁ずることはできません。好況とはいえ、一部産業の不振や深刻な失業問題、不完全きわまる社会保障、災害対策予算の追加支出等を考えるとき、政府がなおかつ今日の国内国際情勢に背を向けて第二次防衛六カ年計画を遂行しようということは、時代錯誤であると考えますが、政府の見解をあらためて承りたいと考えます。
以上をもって私の質問を終わることにいたします。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕