基政七の発言 (本会議)

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○基政七君 私は社会クラブを代表して、政府提出の補正予算三案に反対の意向を明らかにするものであります。
 今度の臨時国会は、伊勢湾台風までの本年度の自然災害に対する復旧対策と南ベトナムに対する賠償支払い承認が、政府より提出された主要な案件でありました。ところが両案が衆議院に上程されて以来今日に至るまで、われわれは一回といえども両案につき納得のいく説明を政府より受けたことはございません。南ベトナム賠償につきましては、政府はほとんど一年をこえる国会答弁の準備が可能であったはずであるにもかかわらず、少々細部にわたる質問があれば、たちまち答弁に詰まる状態であります。これでは膨大な国費を賠償支払いや借款供与に充てている財政支出を、われわれは軽々しく承認できなくなるのは当然なのであります。国会における承認がはなはだしく遅延する形勢にありますのも、責任はすべて政府にあると言っても過言ではないのであります。今回の補正予算案について言えば、予備費五十億円を含めてわずか四百億円の予算規模をもって災害復旧対策に充てているのでありますが、この程度の歳出をもって、激甚地指定が被害地域の約六割、復旧事業の進度が平均三〇%という政府の本年度の計画がとうてい実現できるものでないことは、大蔵大臣みずからが衆議院における予算案審議の最後の日に、経費不足の場合には歳出追加もあり得ると苦しい答弁をしたことでも明らかであります。また本院としてはきわめて遺憾にたえない点は、政府みずからが歳出不足があるかもしれないと明言している予算案を、いかに自民党と社会党の妥協の産物であるとはいえ、平然として本院に提出している点であります。これは本院を軽視するもの、侮辱するものと言わざるを得ないのであります。さらに加えて、昨日は岸総理が本院の予算採決の本会議に定刻を過ぎるも出席せず、ついに総理の全責任において本会議を流会に至らしめたことは、まさに前代未聞の本院軽視の重大事と申すべきでありまして、われわれがはなはだ遺憾に存ずるところであります。
 私ども社会クラブが政府提出の補正予算三案に反対せざるを得ない理由は、第一に、同じように財政支出を伴う南ベトナム賠償支払いについての政府の答弁が今日のようにあいまいである以上は、同じ本年度の歳入財源に依拠している災害予算案を軽々しく承認することは不可能なのであります。これは安保改定中間報告や、戦闘機の機種決定についての政府の答弁についても同様であります。明年度の戦闘機計画が二百機であったのか三百機であったのか、責任者の答弁が食い違うような政府を相手にして、五千人の死亡者を出し、三十万四千戸の罹災戸数を生じ、いまだに浸水地域が残されている状態にある中部地方三県の災害復旧に対する予算案が、何ゆえに政府原案通りで十分と認め得るのか、これを承認せんとする会派諸君の精神を疑わざるを得ないのであります。
 私の第二の反対の理由は、災害対策費並びに石炭産業離職者対策費の双方を含めた政府の歳出補正規模は、政府の提案した歳入補正の財源を上回る歳入を想定することが可能であるから、当然に歳出補正をもっと増額してもよいはずであったのであります。私ども社会クラブは、政府が本年度租税収入の自然増として四百九十億円を計上している点は明らかに過少評価であると思うのであります。大蔵省が今月二十日に発表した十月末までの本年度一般会計税収実績は六千三百十八億円でありまして、これは補正後の税収予算の五四%の税収割合であります。これから年末にかけてのボーナスによる源泉所得税が昨年度を上回る伸びを示すことが必至であり、九月期決算の好調を反映して法人税が昨年度を相当に上回ることは必至であると、大蔵省みずからが認め、補正後の歳入予算はすでに確保できたと、十一月二十日現在、政府みずからが認めているのであります。すなわち本年度の租税収入の自然増は四百九十億円を上回ることは、本案を審議している過程において政府みずからが承認している事実なのであります。私は政府に対し、四百九十億円を上回るプラス・アルファを、罹災者の方々並びに石炭産業離職者の方々のために補正予算案に計上することこそが、政府の行政当局としての責任であると思うのであります。また、このようなプラス・アルファを補正予算案に計上せしめることが立法府の任務であると思うのであります。さらに加えていえば、このような衆議院で審議し尽くされなかった点を審議し是正することこそが、本院の当然の義務であり責任であると思うのであります。私ども社会クラブは、政府みずからも誠意を尽くしていない予算編成を認めることはできないのであります。
 私が政府案に反対する第三の理由は、政府はすでに明年度予算の編成に着手しており、今回の補正予算案は当然に明年度予算につながる財政措置となるべき予算案なのであります。ところが政府の明年度予算編成は、いまだに編成大綱さえきまらぬスロー・モーションぶりであります。この原因が、深刻な財源難、これに加えて、表面的には国土保全予算と宣伝しながら、実は安保改定後に防衛分担金をすべて防衛庁費に振り向けようとする、実質的には軍事費の増強をねらっている財政膨張の二つの原因があるのであります。このような財源難と財政膨張の矛盾に当面し、しかも、なおかつ国土保全と自衛隊の増強という二兎を追っているのが、政府の明年度予算編成の現状なのであります。今回の政府提出の補正予算案は、政府みずからの矛盾と二兎を追う無定見との犠牲になって、当然計上されるべき災害対策費も計上されていない予算編成なのであります。
 社会クラブはすでに衆議院に予算組みかえ動議を提出し、一般会計予算規模は政府案より四百三十八億円を増額して約一千五十二億円とし、特に災害対策費は政府案より三百七十五億円を増額して、約七百十九億円を計上することを政府に要求しました。私どもの要求は少数否決されたのではありますが、歳入補正の財源は政府計上額や政府編成項目のほかにもあることは、政府も自民党も社会党も認めているところであります。災害対策費が政府計上額で不足している事実は、これまた政府、自民党、社会党が認めているところであります。私どもも災害予算の緊急性を認めており、これの成立に対しては積極的に協力してきたものではありますが、民主国会は、緊急性のゆえに立法府の自主的な審議権を放棄すべきではありません。私どもが政府原案に反対する理由は、政府の手によって、今日現在において、よりよき予算案が編成できるはずであることを国民の権利として要求するための手段なのであります。私は、緊急性のゆえをもって、みずからの主張を簡単に放棄して政府案に同調した社会党の態度をはなはだ残念に思うのであります。願わくは、自民党、社会党の諸君は、みずからの政治識見のために政府案を再検討し、政府案反対、政府案を組みかえ再編成の社会クラブの意見に賛成されんことを希望して、私の討論を終わります。(拍手)
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発言情報

speech_id: 103315254X01119591126_008

発言者: 基政七

speaker_id: 9680

日付: 1959-11-26

院: 参議院

会議名: 本会議