千田正の発言 (本会議)
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○千田正君 私は、ただいま上程されておりますところの昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)並びに他の二件に対しまして、多くの不満の点を残しつつも、現在寒さに向かい、年末を迎えつつある今日、罹災者あるいは離職者の立場に思いをいたしまして、無所属クラブを代表いたしまして賛意を表し、二、三点につきまして希望を付しつつ、簡単なる賛成討論を行ないたいと思うのであります。
今次補正予算の主たる眼目は、申すまでもなく風水害対策と炭鉱離職者援護の二点であります。
わが国は例年の台風常襲地帯として、その惨害は毎年のごとく繰り返され、しかも十年一日のごとき政府の無策に災いされて、その被害は次第に大きくなり、政府に対する不信の念の増大とともに、あきらめにも似た感情が支配し、これがため毎年多くの識者によって政府の施策の不備が各方面から指摘され、追及されて参ったことは、各位のひとしく御存じのことと存じます。史上空前の惨事とさえ言われる伊勢湾台風による中京地方の一大被害の発生を見るに及んで、その規模のあまりに大きく、その打撃のあまりにも深刻であったことは、国民各層に甚大なる衝撃を与え、ここに臨時国会の開催と補正予算の提出を見たことは、当然のこととは言いながらも、そのおそきに失したことを多くの国民とともに深く遺憾とするところであります。今後この種の災害発生に際しては、一段と強力にしてすみやかなる予算措置を講ずるよう、この際強く要望する次第であります。
次に、今次補正予算は、伊勢湾台風による被害の復旧に関して応急の措置を講ずるための臨時的支出の性質を帯びるものが大部分であり、その限りにおいては、災害に対応せんとする政府の労を多とするものでありまするが、同時に、その内容を省みまするときに、幾多の危惧の念を表明せざるを得ないのであります。ここに忘れてならないことは、今次伊勢湾台風とその被害は、いわゆる人災であって、決して避け得ることのできない天災ではなかったという事実であります。そしてまた、それが人災である限りにおいて、もし政府の従来の施策のよろしきを得ているならば、その被害の大部分を避け得たであろうことは理の当然と言うべく、この点について、従来の主とし工公共事業費の予算とその執行及び被害の臨時対策の適不適に関して、政府の反省を促すところまた大であると考える次第であります。
次に、補正予算の内容について若干触れてみたいと思うのでありまするが、その総額を押えに押えて六百十四億余円、しかるに政府提出の昭和三十四年発生災害復旧補助事業費所要見込額調査によって見ましても、一千七十二億が査定見込み事業費となっており、現行法による所要国費だけでも七百九十九億に上り、これらはいずれも被害報告額の三分の二程度であります。われわれはいたずらに誇大なる数字をもてあそんで政府の無策を責めるものではありませんが、しかしながら、これらの事実と数字は、もしも政府が災害復旧と民生の安定を現下政治の第一義的要請として受け入れるならば、すなわち、おそらく実戦には何ら役にも立たないであろうところの飛行機に五億四百万円の巨額を投じて国民の不信をかうよりは、今寒空にふるえて救援を待つ多くの被災者のために万全の策を講じ得るであろうことは容易にわかる道理であります。
これを前提として補正予算を見るに、たとえば一番力点を注いだと思われる三十四年度発生災害復旧事業費、伊勢湾高潮対策事業費等々をとってみましても、政府側の説明によれば、前者については二十八年災害と同等に、後者については原形復旧をやめ、干拓工事中の堤防に対して全額国庫負担、三重、愛知二県にわたる対策事業の関連事業には八割の高率補助等々となっておるのでありまするが、その実態は果していかがでありましょうか。また一般に災害復旧補助事業の適用率二割八分五厘となっておりまするが、総予算額の不足はおそらく適用範囲の拡大と進工率の成長に伴って、計画通りの実現は不可能となることは火を見るよりも明らかであることを考えざるを得ないのであります。さらに民間災害の復旧に深くつながる財政投融資による災害復旧費について見るならば、その内容はおおむね農林漁業関係に四十一億、中小企業関係に百六十六億、住宅復旧関係に四十億、地方債百六十億等々となっておりますが、中京地方は言うまでもなくわが国の重要工業地帯であり、金属、化学を初めとする各種産業の密集する土地として、人口密度もきわめて高く、ために今回の災害においてもその被災世帯数が約五十万といわれておる現況において、年末金融の分まで含めての歳出が以上の通りであるとするならば、そのあまりにも過小であることを指摘せざるを得ないのであります。
しこうしてわれわれが了解に苦しむのは、今次補正予算の財源措置を講ずるために既定経費の節約が行なわれたという点であります。本年度一般予算のうちから総額六十九億円を見込み、農林、建設、文部、運輸、厚生等の重要な建設面から棚上げを行なっている事実であります。これらはいずれも漁港であるとか、港湾、河川、道路、校舎等々の建設改修を内容とするもので、さなきだに少ない本年度予算からこれらを削減することは事の本末転倒というほかはなく、ここにもまた政府の根本的施策の欠如と認識不足を言わざるを得ません。しこうして、ただいま簡単に論及した若干の問題は、今次補正予算の示す幾多の諸問題のうち、ほんのわずかな点であります。時間の関係上きわめて簡単に申し述べたのでありまするが、われわれは伊勢湾台風の残した被害と教訓の大きさの中から、今後に残された対策の万全を期することを政府に対し強く要請するものであります。
次に、現在の石炭危機の克服と炭鉱離職者の援護措置について見るならば、現在の深刻なる石炭危機の実相とその全体的把握、今後の見通し等々、総合エネルギー対策の観点よりする政府側の明快なる答弁に接し得なかったことをきわめて残念に思う次第であります。わけても伊勢湾台風の被災者と同様に悲惨な状況におかれている炭鉱労務者、その離職者の援護措置について、政府の確信に満ちた態度と対策の樹立を聞けなかったこと、七億二千万円の予算計上と炭鉱離職者援護臨時措置法案が貧弱な政府の対策を物語っているかのように示している事実は、まことに遺憾至極というよりほかはありません。これらはただ単に通例の失業問題として見るにはあまりにも深刻であります。すなわち、それは貧困という事実に関連して、収入の劣悪化、転職の見込みの薄いこと、学童の就学不能と浮浪児化、治安の悪化等々、各種の社会問題を一つに集約したかのごとき諸問題を発生させ、これが対策に力を尽くさなければならないことは言うまでもなく、かりにも各民間団体の援護運動や、いわゆる黒い羽根募金運動等々に、あたかも責任を転嫁するかのごとき失態を招いて風ならないと警告するものであります。すなわち、この際、政府としては、確固たるエネルギー対策のもとに、今日危機にあえぐ多くの離職者に対し、災害対策の場合と同じく、あくまでも民性安定に主眼を置いた各種の総合的緊急対策を立てるべきであると考える次第であります。
最後に、現在昭和三十五年度本予算案の編成期に直面しているおりから、国土総合開発計画を前提として真の災害対策を恒久的に樹立し、その予算上の裏づけを可能ならしめるような政府の積極的施策を、さらに、それを英断をもって実施することを切に政府に期待しつつ、また多くの被災者あるいは離職者諸氏が打撃から回復され、一日も早く立ち直ることを心から祈って、私の賛成討論を終わる次第であります。(拍手)
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