酒折武弘の発言 (農林水産委員会)

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○酒折説明員 引き続きまして、農業協同組合法の一部を改正する法律案の提案の趣旨につきまして、補足説明を申し上げます。
 農業協同組合法の改正は、農業法人制度の法的措置を講ずるための当面の措置の一つでありまして、農地法の改正により現行制度に基づく法人組織に農業経営の道が開かれることになりますので、これに伴い農業協同組合においても農業経営をその事業として行なうことができるよう関係規定の整備を行なおうとするものであります。
 従来の農業協同組合は、信用、販売、購買、共済等の事業を通じて組合員たる農民の個別の経営の育成発展に資することをその建前としており、農業協同組合が組合員たる農民の個別の経営を吸収し、みずから独立の事業主体として農業経営そのものをその事業として行なうことは、現行法においては認められていないのであります。しかしながら、最近見られますような農業経営を法人組織により行なって農業生産の合理化をはかろうとする要請にこたえるには、このための道を開く措置が必要と考えられるのであります。
 従いまして、農業協同組合法の一部を改正する法律案におきましては、改正点の第一としまして、農業協同組合が農業経営をその事業として行なうことができることとしております。ここに農業経営と申しますのは、農業協同組合が独立の事業主体としてみずから農業経営に伴う危険負担を負い、組合員の協同により耕作、養畜または養蚕の事務を行なうことをいうのでありまして、農業協同組合が採種圃、稚蚕共同飼育桑園の経営等組合員たる農民の個別の経営に便益を供するために供給事業、利用事業等として農業経営に相当する業務を行なうことは、言うまでもなく現行農業協同組合法のもとにおいても認められた適法な業務でございます。
 改正点の第二は、農業協同組合の准組合員資格に関する規定を整備したことであります。改正後の農地法の適格法人として設立の予想されます法人には、協同組合組織によるもののほかに各種の会社形態によるものが考えられるのでありますが、これらの農業法人には、農業協同組合に准組合員として加入させ、農協系統組織の一環としてその事業の円滑な軍営に資せしめる必要があります。しかしながら、現行法の規定におきましては、株式会社、有限会社の物的会社が准組合員資格たる農民の組織する団体に該当しないのではないか等という疑義もありますので、このたびの法律改正を機会に、この疑義の余地をなくするため、規定の整備をすることとしております。
 改正点の第三としまして、農業経営のみを行なう小規模の農業協同組合の設立を認めることとしたことであります。現行法のもとにおきましては、農業協同組合の設立には十五人以上上の組合員が必要とされているのでありますが、肥培管理、飼育等の農作業を主たる業務とする農業経営にありましては、とりわけ組合員相互間の強い結合が要求されるために、二戸、三戸といった血縁的または地縁的結合に基づくものも少なくないと予想されますので、農業経営のみを事業にとする場合に限り、組合員の最低数を五人に引き下げ、小規模な農業協同組合組織の設立を認めることとしております。
 この組合員数の引き下げに伴いまして、役員の数につきましても、現行法の理事五人以上、監事二人以上とあるのを、理事三人以上、監事一人以上に引き下げるほか、組合員数が五人未満となった場合には法律上当然解散をする等の措置を講ずることとしております。
 なお、従来の農業協同組合組織は、主として信用、販売、購買、共済等の流通関係の事業を行なってきておりますために、ただ農業協同組合と言います場合には流通関係の事業を行なう農業協同組合を思い浮かべるのが通例であるとも考えられますので、これらの農業協同組合との誤認を予防するため、農業経営のみを行なう農業協同組合の名称を農業生産協同組合として、これらの農業協同組合と区別することとしております。
 改正点の第四は、剰余金の配当の方法として、従事分量配当の方法を認めることとしたことであります。現行法のもとにおきましては、出資組合の剰余金は、法定準備金、法定繰越金等の引き当て及び出資に対する配当を行なってなお剰余があるときは、組合員の利用分量の割合に応じて配当するものとされておりますが、農業経営の事業にありましては、組合員の利用行為はなく、組合員の農業経営に対する従事という関係になりますため、剰余金の配当の方法として、組合員の従事する実務の種類、組合の業務に従事した時間その他組合員の業務に従事した程度に応じて剰余金の配当を行なうことができることとしております。
 なお、農業協同組合法の改正に伴いまして、農業経営のみを行なう農業協同組合、すなわち農業生産協同組合につきましては、法人税法、地方税法及び租税特別措置法の整備を行なうこととしております。これは、農業生産協同組合で、その事業に従事する組合員に対し給与を支給しないものには、一般の農業協同組合と同様に、法人税及び事業税につき、特別税率の適用、従事分量配当の損金算人、協同事業用機械等の三年間五割増償却及び再建整備を行なう場合における留保所得の非課税の特例を認めるが、その事業に従事する組合員に対し給与を支給する農業生産協同組合は、独立の事業体としての性格が強く、他の一般の企業体と類似したものとなるので、この農業生産協同組合に限りこれらの特例を認めないものとすることを内容とするものでありまして、このように事業軍営の実質により税法上の取り扱いを区別することは、すでに漁業生産組合及び森林生産組合につきまして確立された税制であります。
 以上が農業協同組合法の一部を改正する法律案の概略であります。この法律改正を行ないまして後、なお、農業協同組合がみずから事業主体としてより一そうの生産性の向上及び経営の合理化をはかりながら、同時に、零細経営の克服、経営形態の近代化、経営構造の両度化等のいわゆる農業の構造問題の解決の一環として機能し得るためにはその組織・運営をいかにあらしめるべきかという根本的な問題につきましては、組織法たる農業協同組合法の基本理念にかかわる問題であるのみならず、農業の構造政策の基本にもつながる重要な問題でありますので、これらの点につきましては、農業経営の実態、農業法人の業務運営の実情をも勘案いたしまして、農業協同組合制度全般の問題として今後とも引き続き根本的に検討をいたしたいと考えております。
 このように、このたびの法律改正は、法人組織により農業経営を行なおうとする農民の創意と要請にこたえて、農業協同組合について農業経営を行なう道を開くための措置でございますので、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。

発言情報

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発言者: 酒折武弘

speaker_id: 10694

日付: 1960-05-17

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会