森治樹の発言 (日米安全保障条約等特別委員会)

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○政府委員(森治樹君) 地位協定及び整理法案のごく概略を補足的に御説明申し上げます。
 地位協定の関係の文書は、協定そのものと、それから十二条六項の(d)項に関する交換公文、いわゆる労務に関する交換公文と、それから協定に関する合意議事録の三つでございます。
 協定につきましては、先ほど外務大臣から御説明のありました改正点について重点を置きつつ、概略を御説明申し上げます。
 第一条は、合衆国軍隊の構成員、軍属及び家族の定義に関する規定でございまして、現行法と変わりございません。
 第二条は、米軍の使用に供する個々の施設及び区域の提供、及びこの米軍に提供された施設、区域の使用は、必要最小限度にとどめるべきであるという趣旨から、アメリカ側は必要でないものをいつまでも使っているようなことがないように、いつでも検討をするという現行の行政協定の建前を継承いたしております。
 第三条は、施設、区域内及びその近傍においてアメリカ側のとり得る措置及び電波に関する規定でございます。新旧の協定を比較いたしますると、現在の行政協定では、合衆国は施設、区域内において、それらの設定、使用及び運営、防衛または管理のため必要なまたは適当な権利、権力及び権能を有する。また合衆国は、前記の施設及び区域に隣接する土地、領水及び空間または前記の施設及び区域の近傍において、それらの支持、防衛及び管理のために、前記の施設及び区域の近傍の便をはかるために必要な権利、権力、権能を有する。こういうふうな規定になっておりまして、アメリカ軍が施設及びその近傍において、あたかも治外法権的権力を有しているような印象を与える書き方になっております。しかしながら、米軍の権限は決して無制限かつ無条件的なものではなく、あくまで施設区域の使用の目的のために認められるものでありまして、またこのような目的のために必要な範囲内に限られておる次第でございます。従いまして、こういう米軍の権能の実体に合わせるため、新協定の第三条の第一項におきまして、必要なすべての措置をとることができると規定いたしまして、施設外の権利につきましては、施設、区域への出入の便をはかる主体を第一義的には日本政府に改めますと同時に、アメリカ軍隊が措置をとる例外的な場合には、常に日本側と協議して初めて行ない得るという趣旨を明らかにいたした次第でございます。
 第四条は、施設区域の返還の際の補償及び米軍の加えました改良工事の残存価値の補償に関する規定でございまして、現行協定と変わりございません。
 第五条は、米国が公の目的で運航します船舶及び航空機の日本の港及び飛行場に対する出入と、これら船舶、航空機、公有車両、軍隊の構成員及び軍属並びに家族の施設区域への出入及びその間の移動に対する規定でございまして、現行協定と実体的な相違はございません。第六条は、航空交通管制の体系と通信の体系の整備につきまして、集団安全保障の関点からの必要性に基づきまして、日本当局と米当局が緊密に協調していくべきことを定めております。これも現行協定と変わりございません。
 第七条は、合衆国の軍隊が公益事業及び公共の役務、たとえば鉄道、郵便、電信、電話、電気、ガス、水道等の利用に関する規定でございます。これも現行協定と変わりございません。
 第八条は、気象業務に関する規定でございまして、気象業務に関する日本の合衆国軍隊に対する協力を規定しております。これも現行協定と実体的な相違はございません。
 第九条は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びに家族の出入国に関する規定でございます。今回の改正で、合意議事録におきまして、その出入国数を定期的に日本側に通知すべきことにいたしました。同時に、日本政府が何らか特別の理由によりまして個々の米国軍隊の構成員や軍属に対して送り出しを要請し、またはそれらのものの家族等に退去命令を出しましたときは、合衆国当局はこれを自国に送り返す責任を負うことといたしました。
 第十条は、運転免許証及び自動車に関する規定でありまして、現行法と変わりございません。
 第十一条は、輸出入に関する規定でございまして、一定の場合における関税その他の課徴金の免除と、税関検査の免除が規定のおもな趣旨でございます。この規定に関しましては、三つの点において改正を行ないました。まず第一には、税関検査につきましては、米軍の構成員であっても、部隊として行動しない場合には税関検査に服することといたしました。また旧協定では、軍事郵便局を通ずる郵便物はすべて税関検査を免除されておりましたのを、この協定では検査免除は公用のものに限るとし、私用のものは検査を行なうことといたしました。第二に、PX等の輸入物品につきましては、今回は合意議事録で、輸入数量を軍人軍属等の私用のために必要とされる合理的な数量に限ることといたしました。第三点は、免除特権の乱用、または違反があった場合には、日本側が米国側に対して適当な措置をとるよう申し出ることができることといたしまして、また米国側においても関税法令違反の物品輸入の生じないよう、実行可能なすべての措置をとることといたしました。
 第十二条は、調達及び労務関係に関する規定でございます。今回の改正によりまして、第一に、両国政府は合意した場合には、日本国政府を通じてアメリカ側は調達することができるという趣旨を念のために明らかにいたしました。また特需関係では、その調達計画が突然変更を受けるような場合には思わざる損失をこうむるということもございますので、合意議事録におきましては、調達計画の主要な変更につきましては、前もって日本側に情報を提供すべきことといたしました。
 次に労務に関する規定でございます。現在駐留軍労務者は、調達庁が雇用いたしております間接雇用労務者と、米軍のPXやクラブ等が直接雇用する労務者とがありまして、これら労務者の賃金その他の労働条件、労働者保護のための条件等は、日本の法令によることとなっておるのでありますが、これら法令に基づく裁判所や労働委員会の決定の履行という点に問題がありまして、特にPXやクラブ等の歳出外資金機関に対する裁判所の管轄権について、両者間の意見の不一致があり、合同委員会で解決に努力してきましたが、満足すべき解決に至らなかったのでございます。今回の改正にあたっては、以上の点についての解決をはかるため、直用労務者を間接雇用に切りかえるという原則、及び裁判所の判決及び労働委員会の命令を履行するという趣旨を合意議事録に明らかにすることといたしました。ただ保安上の理由による解雇の場合には、事案の性質上、労務者の原職復帰がきわめて困難な事情にかんがみまして、判決命令が出されました場合におきまして、米国側が労働者の就労を拒否したときは、問題解決のため日米双方が協議することとし、一定期間内に解決に達しない場合には、当該労務者は就労できないこととなるが、雇用関係から生ずる給与の支払いはこれを受けるものとし、同時に先ほど申し上げました協定第十二条六項(d)に関する交換公文によりまして、米国側は、最高一年の給与の範囲内で、一定の基準に従って定めらるべき期間について、当該労務者の雇用の費用に等しい額を負担することといたした次第でございます。
 第十三条は、内国税の免除に関する規定でございまして、現行協定と変わりございません。
 第十四条は、特殊の契約者に関する規定でございます。アメリカ合衆国軍隊のための合衆国との契約の履行のみを目的としてアメリカから日本に来ますものに対して、この協定の特定の条項の利益を亨有させる趣旨の規定でございます。元来外国に駐屯します米軍は、原則としてその需要をできるだけ現地限りで充足する方針であり、きわめて高度の専門技術を要する場合等、あるいは軍機保護の関係から、特殊のものに限定される仕事の場合にだけ、本国から呼び寄せるのが普通でございますが、従来の規定によりますと、アメリカ側が、日本政府と関係なく一方的にこの種業者を指定し得るような形になっておりましたので、今回の改正によりまして、わが国の技術水準の向上等も考慮しまして、この種業者の指定は、米国が日本と協議の上行なうべきものといたしました。また技術上等特別の理由で、日本業者も入れた競争入札ができない場合に限るべきこととして、明文上もその幅をしぼることといたしました。また指定後も、契約履行が終わったときや、契約者が米軍関係以外の事業に従事し、または違法な活動を行なったときは、指定が取り消される旨を明らかに明文をもって規定いたした次第でございます。
 第十五条は、米軍関係者の用に供するためのPX等のいわゆる歳出外資金による諸機関に関する規定でございまして、現行協定と変わりございません。
 第十六条は、合衆国軍隊の構成員、軍属、及びそれらの家族等の日本国の法令尊重に関する規定でございます。現行協定と変わりございません。
 第十七条は、刑事裁判権規定でございまして、実体上現行協定と変わりございません。
 第十八条は、民事裁判ないし民事請求権に関する規定でございます。この規定につきましては、従来相互に請求権を放棄することになっておりました政府関係職員及び財産の相互放棄の範囲に関して均衡をとるために、今回の改正では、日本の自衛隊と米軍との間の人及び財産に関する損害につきましては、請求権を相互に放棄する趣旨に改めた次第でございます。なお船舶の運営等から生じまする海上の損害につきましては、NATO等の協定におきましても、普通の陸上の損害と異なりました別個の補償の手続が規定されておりますので、この規定を踏襲いたしますと同時に、ただ、わが国の特殊な事態でございます漁網の被害、あるいは海産物の浅海増養殖に対する被害、小型の船舶等に対する被害につきましては、陸上の損害と同種の手続によって補償を行なうべき旨日米間で合意をいたしておる次第でございます。なお、この点につきましては、従来、公務遂行中であったかどうかによって補償の手続が異なっておりましたが、今回は、この公務遂行中であるかどうかということに関する判定は従来合同委員会で行なうことになっておりましたのを改めまして、日本人の中から選ばれる仲裁人がこれを行なうことにいたした次第でございます。
 第十九条は、外国為替管理に関する規定でございまして、従来の規定と変更ございません。
 第二十条は、わが国が為替管理の立場から米軍が軍票を使うことを認めておりますので、これに関する規定でございます。従来と変わりございません。
 第二十一条は、米軍の設置運営いたします郵便施設に関する規定でございまして、従来と変わりございません。
 第二十二条は、予備役団体に関する規定でございまして、従来の協定と実体的な変わりはございません。
 第二十三条は、アメリカ軍及びその財産の安全の確保に関する規定でございまして、従来と変わりございません。
 第二十四条は、経費に関する規定でございます。すなわち、日米間における経費の分担は、協定に別段の規定がある場合のほか、施設提供に関する経費以外は米国が負担することになっております。なお、この点につきまして、従来、防衛分担金に関する規定があったのでありますが、これは削除いたした次第でございます。
 第二十五条は、合同委員会に関する規定でございまして、この協定の運営に関する協議機関たる合同委員会に関する規定でございますが、従来と変わりございません。
 第二十六条は効力の発生。二十七条は改正。二十八条は効力の終了に関する規定でございます。
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 次に、整理法に関しましては、各省の所管事項にわたっておりまするけれども、便宜上、私から概略御説明申し上げます。
 整理法は、法律三十一件及びポツダム政令一件の改正に関するものでございます。その大部分は名称の変更に伴う改正でございまして、きわめて技術的な改正でございます。ただ、現行行政協定の規定が実質的に改められましたことに伴う関係国内法令の改正のおもな点は次の通りでございます。
 第一は、新しい地位協定第十一条の先ほど御説明申し上げました税関検査に関する規定の改正に伴う整理法案第二十条の関税法等特例法の一部改正でございます。
 第三は、地位協定第十二条の四項の規定によりまして、PX等、米軍の歳出外資金諾機関の労務者が原則としていわゆる間接雇用になることに伴う整理法案第一条の調達庁設置法、同第四条の国家公務員法等の一部改正法、同第十六条の駐留軍労務者の支払い特例法及び同第十七条の特別調達資金設置令の一部改正でございます。
 第三は、地位協定第十四条にいう米軍のための特殊契約者について新たに指定要件が加えられましたことに伴う整理法案第十九条の所得税法等特例法の一部改正でございます。
 第四は、地位協定第十八条の民事上の請求権の処理に関する規定が改められましたことに伴う整理法案第一条の調達庁設置法及び同第十二条の民事特別法の一部改正でございます。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 森治樹

speaker_id: 4098

日付: 1960-06-08

院: 参議院

会議名: 日米安全保障条約等特別委員会