杉原荒太の発言 (日米安全保障条約等特別委員会)

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○杉原荒太君 今国会の冒頭、本会議におきまして、私は岸総理に対し、新安保条約に関する防衛条項等、基本的問題の若干について質問いたしました。本日はその際触れなかった数個の点について質問いたします。
 第一点は、本件条約のみならず、一般に国政指導と国際情勢との関係についてであります。今日の世界情勢が米ソを両極とする東西陣営の対立を中心として大きく動いておることは申すまでもありません。この東西両陣営の対立はおそらく人類史上未曽有の事態と申さねばなりません。しこうしてその特質は、第一に、両陣営の指導的地位にある国がそれぞれ世界歴史上いまだかつて見なかった人類の自滅の危険すらあるような驚くべき新兵器をすでに持ち、かつ、今後さらにこれが計画的開発に非常の力を傾けつつある点にあると思う。第二の特質は、一方の指導国たるソ連が、いわゆるマルクス・レーニン主義の信仰のもとに一貫した社会革命の目標を持って国策を指導しつつあることであると思う。しこうしてソ連が究極において世界革命の目標を放棄したる証拠は見出されません。第三の特質は、両陣営の対立が、おおむね平和でもない、戦争でもない、いわゆる冷戦の様相を帯び、ことに共産陣営は共産主義に特有の冷戦戦術と、戦略として強大なる軍事力を背景としつつ、対外面においても軍事力以外の各種各様の闘争方式を巧みに展開してその政略目標を達成せんと努めつつある点にあると思う。第四の特質は、アジア、アフリカにわたる旧植民地の民族解放運動の介在が東西両陣営間の冷戦関係を一そう複雑危険のものたらしめておることであると思う。第五の特質は、いわゆる平和共存等のスローガンが叫ばれておるにかかわらず、実際においては二つのドイツ、二つの中国、二つの朝鮮のごとき、両陣営の力による対立関係を端的に表現する大きな政治的問題が、依然未解決のままであるばかりでなく、軍縮問題のごときも冷戦戦略に利用されている面があって、何ら解決の曙光を見出しがたく、事実において米ソ双方ともかえって軍備の質的強化をはかりつつある点にあると思う。
 われわれの見るところでは、東西両陣営の対立は、今日までの経過や、以上触れたようなその特質等の点から見ただけでも、世界史の相当長いページを飾る運命にあるものと思う。時に緊張または緩和の度合いの変遷はあろうけれども、その対立の解消は、われわれの今予見し得るような期間内にこれを期しがたいと認めざるを得ないと思う。しかるにわが国内には、国際情勢の見方についてこれと異なる傾向の見解が相当あります。国際情勢は決定的にいわゆる雪解けの方向に向かっているというような見方さえある。そしてそういう見方を根拠として、新安保条約の締結は時勢に逆行するものと論ずる者がある。一般国民の間にもそれを受け入れる傾向がある程度見られるのであります。これを西欧諸国の国民等と比べてみますとき、東西対立の問題を中心とする世界情勢の見方について、一般国民の認識の程度及び浸透度が違うということのほか、私の特に感ずることは、単に国際情勢の認識の面だけではなくして、それが国政指導の実施面において、西欧の場合のように大きく実際上具体化しておるのに反して、わが国では、歴代政府の為政者がいハろいろ申されるけれども、国政指導の基本が、世界情勢の洞察に対する関係において徹底を欠いている。その結果はこのままに放置すれば、わが国の前途は憂うべき事態に立ち至るのではないかということであります。しこうして、この点は安保条約問題についてのみならず、一般国政の指導上根本的に大事なことであります。そこで、この国際情勢の動向に対する大局判断と、これに対応する国政指導の基本方針について総理の御所信を明らかにしていただきたかったのでありまするが、先ほど総理の所信表明中にこの点に触れられました。大体了承をいたすのでありますが、その総理の言われる基本線と国政の実施面、ことに内政面における現状とを照らし合わしてみるときに、その実行の点においての不徹底の点があると思うが、今後におけるこの総理の言われる基本方針の具現に対して、総理の決心を率直に披瀝していただきたいのであります。

発言情報

speech_id: 103414961X00319600608_016

発言者: 杉原荒太

speaker_id: 25319

日付: 1960-06-08

院: 参議院

会議名: 日米安全保障条約等特別委員会