岸信介の発言 (日米安全保障条約等特別委員会)

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○国務大臣(岸信介君) 日本の平和と安全を守る上におきまして、ソ連というものに対して国民が非常な関心を持っていることは、歴史的に申しても御指摘の通りであります。われわれは、国柄、国の立っておる基礎的な考え方においては異にいたしておりますけれども、お互いに内政に干渉しない、お互いの立場を尊重し合うというこの理解と信頼の上に立って友好関係を進めて、平和的雰囲気を作っていくことが絶対に必要であると思う。この点において、日ソ共同宣言に示されておる原則と今度の安保条約に示されておるところの原則は、全く同一の基礎に立っておりまして、ともに国連憲章の精神を体して、この上に成り立っております。すなわち、今おあげになりましたように、両国が武力でもって威嚇し合うようなことはしない。あくまでも平和的手段においてすべての問題を解決する、あるいは両国の独立国として基礎であるところの個別的または集団的の自衛権は、これを持っておるということを確認し、お互いにお互いの立場を尊重して、内政に対しては干渉しない、そうしてお互いの友好関係を進めるということでございまして、何らこれに矛盾することはないのであります。従って、本来現行の安保条約もまた同じ趣旨においてできておるわけでありまして、現行の安保条約のもとに出されたところの日ソ共同宣言、現行の安保条約の存在ということを両国が確認し合って出しておるこの日ソ共同宣言が、今回の新しい安保条約と何ら矛盾抵触するところのものではございませんし、また将来、新安保条約の運営にあたりましても、ソ連に対して脅威を与えるとか、あるいは日ソ共同宣言の趣旨に反するような運営が行なわれるというようなことは、これは絶対にないのであります。私どもは、この意味において、ソ連が何ゆえに現行の安保条約はこれを認め、われわれのこれを合理化し、日本の自主的立場をいれて日本にふさわしいものにするという、その内容的に申しましては、先ほど外務大臣も説明しておるように、何ら近隣の国々に脅威を与えるような意味において改正されておる点は一つもないのであります。これをしも、数回の覚書やその他によりまして、新安保条約にソ連が反対の意思を表明し、非難を加えておるということは、私どもは全く了解に苦しむところであります。いずれにいたしましても、このソ連との間において、日ソ共同宣言の精神に基づいて両国間の理解と友好を進めていくことは、当然われわれとしてはやらなければならぬと思います。御承知の通り、共同宣言において解決できなかったところの問題——領土問題の両国間におけるところの懸案がございます。これがゆえに、ついにいまだ平和条約を結び得るに至っておりません。この点に関しては、まだソ連は依然としてソ連の主張を曲げておりません。日本としては、日本の主張はあくまでも正しい、歴史的に言っても、また理論的に言っても正しい主張を、ソ連をして理解せしめ、この国民的一致した信念を認めて、そうして領土問題が解決される日を作り上げるように努力をしていかなければならぬと思います。これがためには、やはり貿易、経済の関係であるとか、あるいは文化的な交流の問題であるとか、その他両国の理解を深める手段を積み重ねていって、この領土に対する日本国民の動かすことのできない考え方を十分に理解せしめて、そうして平和条約を締結する日を作り上げ、両国の関係をさらに一そう進めていくようにしなければならぬ。それには、決してわれわれは共産主義をとるものではありません、共産主義にはあくまで反対するものでありますけれども、共産主義を理念として立てておるところの国と、これを混同してはならぬという杉原委員のお考えは、私どももそう思っております。従ってそういう違っている国との問においても、お互いの立場、お互いの国柄というものに対して十分に理解して、それを尊重して侵し合わない、この基礎の上に友好親善を進めていくということが必要であり、また日本にとって歴史的に見ましても、また国民全体が非常な関心を持っておるソ連の関位を、今日のようなソ連側の誤解かあるいは他に意図あっての考えか、われわれの真意に反しているような行動なり、考え方をなくするように努力をして参らなければならぬ。こう思っております。

発言情報

speech_id: 103414961X00319600608_023

発言者: 岸信介

speaker_id: 6788

日付: 1960-06-08

院: 参議院

会議名: 日米安全保障条約等特別委員会