永野護の発言 (日米安全保障条約等特別委員会)

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○永野護君 先ほど申しますように、今日の日本は、安保条約を承認してもいい、しなくてもいい、自由に考えたらいいのだというような日本の経済の実質ではないと私は判断しておるのでありますが、しかし日本も独立国である以上、一日も早くそういう考えが自由にできるような立場になりたいということは衷心念願しておるのであります。つまり経済的に自立して、そして日本がソ連側に付こうとアメリカ側に付こうと、あるいは全くどこの世話にもならぬ、中立の政策をとろうと自由に考え得る実力を、一日も早く持ちたい。私は先ほどお話のありましたように、国内の所得倍増計画、日本国民の生活をもっと自由にしようというような目標もまことにけっこうでありますけれども、具体的にいえば、日本の経済をどこの国のお世話にもならない、国として自立のできる経済を一日も早く作りたい、こう考えておるのであります。それまでは隠忍自重いたしまして、どうしても心ならずもどこかの国のお世話にならなければならぬ。たとえが卑近で非常に失礼でありますが、非常に優秀な子供——これは大学を出ればりっぱな大金持ちにもなり、あるいは隆々たる位置にもつき得る人でありましても、子供で、まだ小学校に通うようなときに、将来非常に伸びる素質のある子供だからといって、今すぐその重任をそれに背負わせることはできない。先ほど菅野長官も言われましたように、私も同感で、日本民族の本質には非常な期待を持っております。必ずや、人様のお情けにたよらなければ生きていけないというそんないくじのない国民ではないと考えておりますけれども、しかし、その間にタイミングの問題のあることだけは、いかんともしがたいと思うのであります。私どもは、よくアメリカのいろんな雑誌や新聞、あるいは議会の論議の中に、日本人はアメリカの納税者の負担において飯を食っておきながら、何んてなまいきなことを言うというような記事を見ますときには、ほんとうに憤慨するのであります。一日も早くそんなことを言われないように、りっぱに日本国民の自力で食っていける時代を念願しておりますけれども、それまでは、そのある一定の期間までは、どうしてもアメリカの力を借りて、そういう時期が一日も早くくるようにしなければならぬ、こういうこと、これが同時にアメリカの利益だと思うのであります。すなわち、アメリカの納税者の負担が少しもなくなって、そうしてアメリカにそういう親近感を待つ国が東洋にできるということは、これはアメリカの利益になると思うのでありますから、そういうことを、どうしたならば日本が一日も早くアメリカの世話にならなくて自立ができるという方途を、具体的に研究する委員会があってもいいじゃないか。私は、こういう経済委員会でも作ると、すぐ関税率の問題や割当の問題なんかで何か文句を言ってくるであろうというようなことをアメリカ人が心配するのは、これはとんでもないこと、そんなことを考えておるのではございません。日本経済自立のためにやることは、アメリカとの今の貿易の割当とか関税の問題とかを抜きにしてもたくさんあります。先ほど総理も言われましたけれども、東南アジアとか、あるいはアフリカ、まあAA地域、さらに南米におきましても、たくさんの仕事が今、日本にきております。日本の優秀なる技術と、それらの土地の天然物、これはそろっておるのでありますけれども、残念ながら資金が足りない。これをアメリカの力によって、その資金と技術と物資と、この三位一体の運営ができましたならば、日本の経済の将来というものは実に明かるい期待が持ち得ると思うのであります。私は東南アジア各地を歩きましていつも感ずることでありますけれども、今までの日本の東南アジア経済政策が、すぐそこから何か持ってくるものがないと、経営の価値がない、あそこには一体何があるか、何を持ってこれるのだということで、その先方の価値判断をしておったのでありますけれども、それは非常な近視眼的な方法であって、まずその国を金持ちにすることによって、そしてその国の生活水準を向上することによって生ずる購買力を日本の商品の市場にする以外に、安定した輸出振興策というものはないと、私は現地についていろいろ見聞きしまして、そういうふうな確信を持っておるのであります。で、現地を金持ちにするためには、今申しましたように、日本の技術で応援することはもちろんでありますけれども、その資金をアメリカの資金にたよる。ことにこれらの地方においては、白人種に長いこといじめられておりましたために、アメリカの資金を直接に借りますと、また再びあの奴隷生活に戻る何かのそれが結びつきになりはしないかということを、日本人には想像もつかぬぐらいおそれております。私はかつて東南アジアの向うの有力者に会ったときに、金が非常になくて、のどから手が出るほど金がほしいときに、アメリカがポイント・フォアの資金を国会で議決して出してやろう、無償で出してやろうというようなことができましたので、なぜ飛びついてあれを借りないのかと申しましたときに、お前はあの小さな三つの子供にその前で土下座をさされたような、あの苦しい体験を持たぬから、すぐそんなことを言うのだ、あの苦しい生活体験を思い出すと、再びああいう目にあうかもしらぬという懸念のあるものは、どんなにのどがかわいても手が出ないのだ、お前はその苦しみを知らないからだと、その土地の財政当局に言われたことがあるのであります。ああそんなものかなと、今さらのごとく感じたのであります。従いまして、これらの資金も、日本というルートを通りますると、非常に受け取りやすいのであります。ことに、いろいろなことは申しますけれども、少数のいろいろな例外がありますけれども、大多数は、この東南アジア一帯の新しい独立国は、今日自分たちが独立し得たのは日本の尊い犠牲のおかげだということは、十二分に了承いたしております。従いまして、日本の技術や日本の資金の援助を受けますときには、今申しましたような奴隷生活の再現に結びつくというような懸念はほとんどないと言ってもいいのでありますから、アメリカが直接に出ていくよりは、日本というワン・クッションを通っていく方がアメリカのためにもいいと思うのであります。そういう意味におきまして、単にアメリカの国内産業に関する影響のある点ばかりでなくて、広く世界の資源開発のために、今申しましたようなアメリカと日本との協力を考える余地がある。それを具体的に考える機関が何かあってもいいのじゃないか。もちろん外交ルートの道は開けております。けれども、何と申しましても外交官はいわゆる専門の領域がございまするので、そのいう経済に限られましたことを専門に研究するというような時間もありませんし、また知識、経験にも乏しいところがありますから、そういう経済問題を中心にして研究する委員会をぜひ作っていただきたいということを念願いたすものでございます。これは私の希望を申し述べておきます。
 で、きわめて小さいことでありますけれども、立ちましたついでに一つ伺っておきたいのは、第二条に、「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め」と書いてありますが、この条文をお作りになりますときに、日本の経済政策と、アメリカの経済政策との間に、どういう食い違いがあるというふうに認識せられて、この条文ができたのかということを、ちょっと参考に伺っておきたいと思います。

発言情報

speech_id: 103414961X00519600610_014

発言者: 永野護

speaker_id: 17914

日付: 1960-06-10

院: 参議院

会議名: 日米安全保障条約等特別委員会