下村定の発言 (日米安全保障条約等特別委員会)
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○下村定君 了解いたしました。
次は、条約の第四条並びにこれに関連する条項について、総理大臣、外務大臣及び防衛庁長官にお伺い申し上げます。
第四条には、緊急の場合における事前協議並びに両国間において条約の実施に関して随時協議すべきことが規定されております。私は、この随時協議なるものを常続的に、かつ、最も効果的に行なうことを特に重要視するものであります。一昨日、永野委員は、経済協力の見地から常設的な協議機関を設けることを強く要望されましたし、また鹿島委員もこの点に言及されました。私は、新条約の一つの特色は両国の経済協力を約束しておる点にあることを思いまして、永野委員の御説に全面的の賛意を表しますとともに、軍事上の見地からは、一そうこの随時協議の必要を痛感ずるものであります。
次に、その理由の大要を申し述べます。
第一の理由は、条約の第五条に基づきまして、日本の領域内において日米両軍が共同して防衛作戦に任ずる場合のため必要であるということであります。本条約の目的は、もとより戦うためのものではなく、戦争を防止するための有効なブレーキを形成するにあることは申すまでもありません。しかして、このブレーキを最も確実なものにするためには、単に両国が防衛上必要な兵力を保有するだけでは不十分でありまして、両軍の当事者が平素からお互いによく話し合って、有事の場合に、両軍が、たとえばどれだけの兵力を出すか、共同作戦はいかなる要領でやるか、補給はどうする、また両軍間の連携をいかにするかというようなことを、具体的に約束しておくことが必要で、これをいざ鎌倉という場合にあわててやったんでは目的を達することはできないと思います。もしこのことがなくしては、日本の自衛隊自身も作戦計画を立てることも困難であろうと存じます。
随時協議を必要とする第二の理由は、事前協議との関係であります。事前協議につきましては、本条約において第四条にもあります。また本年一月十九日の交換公文に基づきまして、重要な配置もしくは装備の変更並びに日本の基地からする米軍の戦闘作戦行動に関する事前協議ということが述べられてあります。事前協議につきましては、これまでもいろいろな議論が行なわれましたが、私は、拒否権があるとかないとか、協議と合意がどう違うとかいうことは、そもそも末節の議論であって、要は、今朝外務大臣が御説明になりました通り、また、いやしくもアメリカの大統領が米軍は日本の意思に反して行動することはないと言明しております以上、常識的に見れば、これ以上信頼する約束はないと存ずるのであります。しかしながら、事前協議をやりましても、長いものに巻かれる心配があるとか、火急の場合に間に合うまいという素朴な不安は、これはある程度うなずけると存ずるのであります。かくのごとき不安を除くためにも、平時から日米合同の軍事委員会を作りまして、互いによく腹を合わせることが最も必要であろうと思うのであります。すなわち、この随時協議によりまして、お互いの国の立場を理解し、情報を交換し、意思の統一ができておりますれば、配備とか装備の変更ぐらいでは、わざわざそれについて事前協議を開く必要がないかとも思われます。そういう場合も生ずるだろうと思います。また、ことに米軍が日本の基地から出発する場合の事前協議でも、この随時協議を平時から厳密に励行しておりますれば、万が一にも両軍の意見が一致しないようなことは生じないであろうと思われるのであります。
以上二つの理由からいたしまして、この種の協議は、単に政府の高官、日本におけるアメリカの代表者、また太平洋軍司令官及びその代理者等おえら方が、ときどき会って話し合いをせられるとか、あるいは正常の外交ルートを通じてやられるといったくらいのことでは、満足に行なわれるかどうかは私は疑問を持ちます。どうしても、前に申しました経済問題に対すると同様に、この頂上機構のもとに専門の下部組織を常設する必要があると思うのであります。なお、このことは単に理屈の上から申すのではありません。私はこれに類する幾多の資料を調査しました。また、私自身も、短期間ではありますが、かつて第一次大戦後ヴェルサイユ条約の実施に関して、ドイツ国の違反を監督するために、フランスのフォッシュ元帥を主宰者として、アメリカ、イギリス、イタリア、ベルギー、それと日本から、それぞれ専門委員が出まして、この随時協議に類するものを二カ年間続けてやった経験を持っております。申すまでもなく、これらの諸国はドイツを共通の敵として戦ったのでありますが、その立場はそれぞれであります。みな違います。問題の起こることに意見が反しましたが、この随時協議によりまして、先ほど私の申しましたような意思の疎通が常にできておりましたために、私の見るところでは、その結果として、ドイツに要求されたことはおおむね妥当であったと存じております。浅薄な私の経験まで申し上げまして、はなはだ失礼でありますが、これに対しまする政府のはっきりした御意見を承知いたしたいと思います。