岸信介の発言 (本会議)

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○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 質問の前提となっております国際情勢の問題をいかに把握認識するかという問題に関しましては、一昨日来しばしば申し上げております通り、いわゆる全面的な戦争というこの危険は去りつつあるが、東西両陣営の対立は依然として存しており、そうしてその対立の間において、力によらず、話し合いで懸案を解決しようという空気が醸成されておる。一面、共産主義国間におけるところの団結というものについてはいよいよこれを強化する方向に行っておるし、自由主義国間における協力関係というものもこれを強化していって、そうして、両陣営の間におけるところの今まで未解決であった幾多の問題をどんな困難があっても話し合いによって根強くこれを解決するように努力する、というのが現在の国際情勢の実情であります。そうして、それが平和的共存であるとか、あるいは競争的共存であるとかという言葉でいわれているように、共産主義の陣営と自由主義の陣営との間のものの考え方や、あるいは世界政策上の考え方というものについては、両方は根本的に違っておるけれども、しかしながら、それを力で解決せずに話し合いでやるという考えであり、その間において両陣営が団結を固め、あるいは経済面における競争であるとか、あるいは文化面における競争であるとかというようなことが、依然として強力に行なわれておるというのが実情であると私は思います。こういう情勢のもとにおいて、従来ありますところのいわゆる集団安全保障の体制というものは、依然として、自由主義の陣営におきましても、また共産主義の陣営においてもこれが維持されていっておる、というのが今日の現状である、こういう情勢に立って、一体、日本の現在ある安保条約というものが、どういう体制であり、どういう内容をもっておるかということについては、すでに千田議員も御指摘になっておるように、非常な不平等な点もあり、また、日本の自主体制の認められておらない現行制度というものを、これを合理的に改正するということは、多年のわれわれの熱望であり、また、これを、今申しましたような国際情勢において、合理的な基礎において改定するということは、日本の最近における国力の充実、国際的な地位の向上からいって、われわれは一日も早くこれを実現しなければならない問題であると、私はかように考えております。
 この安保条約の改定と対共産圏に対する外交についてどういうふうに考えておるかという、根本の問題についての御質問であります。また、この改定と、日本が潜在主権を持っておる沖縄の問題はどうなるか、あるいは北方領土がどうであるか、特に最近におけるソ連の覚書等に見るがごとき、北方の領土についての非常なソ連側の強硬な申し入れに対してどういうふうに考えるかというような問題についてでありますが、沖縄の問題につきましては、言うまでもなく、われわれがここに潜在主権を持っているということは、この前、私が訪米の際に、日米共同宣言におきましても主張し、アメリカ側においてもそのことは認めております。ただ、施政権を今日の状態において直ちにこれを返還するということを情勢が許さないのであります。私は、しかしながら、この返還は国をあげての要望であり、住民の非常な悲願でございますから、これを実現するためには、やはり順を追うてこの実績を積み重ねることが適当である。
 施政権を米国が持っておるといって、日本政府が全然これに関与しないということではなくして日本政府ができるだけいろいろな施策に対して関与し協力して、そうしてここに住民の福祉の向上と経済の発展に資したい、かように考えて、そのことの申し合わせを今回の会談におきましてもいたしております。現実に西表の開発計画等においてはこれが実現しつつあります。
 北方の領土については、従来日ソ間の交渉におきましても、不幸にしてわれわれの主張とソ連の主張とは全然違っております。共同宣言によっていわゆる平和条約を結べなかったこともその理由であります。さらに、北方における安全操業等に関連して、依然としてわれわれの国民的の主張はソ連のいれるところになっておりません。従って、これは安保条約のいかんにかかわらず、まだ解決する状況には私はないと思います。今回の安保条約の改定に関連してのソ連の覚書は、私は、国際信義の立場からはなはだ遺憾であり、従って、そのソ連の主張は私は全く理不尽であると考えております。これに対して政府として強硬な反省を求めるつもりであります。共産圏の国々が、安保条約改定について、調印前からこの問題を取り上げていろいろと日本国内に対し、また、いろいろな声明やその他の方法によって反対の意向を示しておることは御承知の通りであります。私どもは、一国の安全保障に関する問題や外交方封の基本というものは、独立国として、その国民が自主的にきめるべきものであって、他から内政干渉を受けるへき性質のものではないと、私は強く考えております。(拍手)安保条約体制をとるということは、日本が自由主義の立場を堅持し、あくまでも自由主義の国々と手を握って世界の平和を増進しようという国の基本の態度をきめたものであります。しかしながら、それが決して共産国を敵視するものでもなければ、これとの話し合いをわれわれは拒否するものではございません。あくまでもわれわれは、必要な話し合いによっていろいろな問題を解決していこう。現に貿易協定の日ソ間の改定は順調に進行しております。また、日ソ漁業交渉の問題につきましても、これは例年、御承知のように、その漁獲高については両国の意見がなかなか一致しないのでありまして、ことしは安保条約のいかんにかかわらず非常にその交渉が困難であろうということは、われわれ予想しておるのでありますが、われわれは、あくまでも科学的な基礎に基づいてこの漁業協定の交渉を委員会においてやっていくつもりであります。
 安保条約の期限の問題に関して、今後アジアの情勢をどういうふうに見るかというふうな御質問でありました。こうした独立国お互いが理解と信頼の上に協力をしていく、防衛のみならず、寅るいは経済、政治、各方面について強い協力関係を作っていくというような条約が、一定の安定の期間を持つということは、これは世界の各地に見られることであり、また、それは望ましいことであると思うのであります。はたして期限十年が適当であるか、あるいは二十年が適当であるか、あるいは十五年が適当であるかというような見方につきましては、私はいろいろな見解があると思います。現に存しておる中ソの間の場合は三十年、あるいはNATOが二十年というふうな安定期間を持っておることも御承知の通りであります。ここに、現行の条約が無期限であるのに対して、われわれは一定の安定の期限を置き、同時に国際情勢の変遷等も頭に置いてこの十年ということをきめたのであります。決してこれが科学的に算術的に証明のできる問題ではないと思いますが、大体十年くらいがいろいろなものと関連して適当ではないか、こう思っております。もっとも、われわれは、あくまでも国連における安全保障機構ができるということを念願しており、それができれば、十年の間におきましてもこれが消滅することは、これは当然であります。ただ、十年の間にはアジアにおいてもいろいろな変化があるだろう、これは私どもそう思っております。中華人民共和国の国連の加入もその間には起こるじゃないかというふうな御意見もございます。これもどうなるということを今からはっきり申し上げることはできないと思いますが、しかし、私は、かりにこの中華人民共和国が国連に加盟いたしましても、私は、この安保条約というものがそのために変更しなきゃならぬという直接の関係はないと思います。あくまでもとの条約は防衛的なものであり、また、日米の協力を一そう対等の形において増進しようという性質のものでありますから、私はそういうことによって直ちに変更する必要はない、かように思っております。
 経済協力の問題あるいはさらに日米間においてより一そう文化的なあるいは各方面におけるところの協力関係を進めていくべきであるという問題につきましては、私どももそう思い、また、今度の条約の二条にその意味のことを規定しておるのでありまして、しこうして、このことは、単にこの条約のうたい文句だけではなくして、日米の間に存するところの貿易関係をどういうふうに今後増進していくか、あるいはそれをスムーズにやっていくか、また、外資導入を円滑ならしめるかどうか、あるいは低開発国に対してどういうふうに日米が協力していくかというような実質的な問題に関して常に緊密な関係を持っていくことが必要であり、また、それについての機構等についても研究して参りたいと思っております。
 青年対策の問題に関して、私の出発に際しての全学連の一部の学生諸君の常軌を逸した行動については、はなはだ遺憾と思うということを施政方針に亀述べまして、これらの青年、将来の長本を背負うべきこれらの有為の青年が、正常なる、正当なる学生運動、また、学生が学生として、将来の活動に備える教養を積むように強く要望をいたしておるわけでありまして、私はそういう点に関しても、一部においてはそういう過激な運動もありますが、大多数の学生諸君が、正常な学生として勉学に努め、修業に努めておられるそれらの学生が、そういう一部の過激な行動のために、いろいろな迷惑を受けておるというような実情も考えまして、将来に向かって十分反省を促していきたいと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 103415254X00519600204_013

発言者: 岸信介

speaker_id: 6788

日付: 1960-02-04

院: 参議院

会議名: 本会議