福田赳夫の発言 (本会議)
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○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
所得の倍増計画を策定するにあたりまして最も重大な点は、ただいま総理からもお話がありましたが、その量の点もさることながら、その質の点にあることと、かように考えております。質の点といたしまして、私が非常に困難であり、かつ重要な問題であると考えておりまするのは、農業の所得をいかに倍増するかという点でございます。過去の趨勢を見ますると、各国でもそうでございまするが、農業所得は一般の所得の伸びに比べまして大へんおくれておる。しかしながら、最近数カ年間豊作状況が続いておるというようなことで、かりに三十一年から昨年までの統計をとって見るというようなことになりますると、悪い悪いと言われる日本の農業でございまするが、四・三%の前進をいたしておるわけであります。もっとも、これは農業総生産の話でございまするから、これにさらに農村から鉱工業の方への人口の移動の要素というものを考える必要があるのでございまして、それは私ども推定するところによりますとおおむね二%ぐらいの移動が行なわれております。さようなことを考慮いたしますと、六%内外の所得の向上がこの四カ年間には行なわれてきたと、かように考えておるのでございます。私ども、今後長期計画を作るにあたりまして、どうしても農業総生産、すなわち農業の生産性を上げるということが、これがもとよりこの考え方の根幹でなければならぬと、さように考えております。しかし、同時に、やはり伸びゆく日本経済全体の中に農業人口も大いに参加していくというこの考え方も取り入れなければならぬ。かような考え方をとっていきますれば、十年で所得倍増、年率は七・二%でございます。しかも、それは総所得の話でございまするが、人口を考慮した一人当たりの年率所得の伸びというものは六彩内外である、かような程度のものは農業におきましても実現できる、またその実現のために私どもは予算等を通じまして最大の努力をしていかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
予算の点につきまして、額はふえておるが、その所得倍増というものを実現するために必要な額があるかというようなお話でございます。私も、今回の農林予算を組むにあたりましては、非常に心配をいたしておったのであります。と申しますのは、災害の年でございまするから、予算がどうしても災害対策中心になりはしないか。しかるに、農林関係の問題といたしましては、すでに着手いたしておりまする農業基本問題調査会の方向の考え方があるわけであります。すなわち、農業所得をこの際大いに増加するための施策をとらなければならぬ、さような時期に際会しておるその際に、さようなことになりますると、私どもといたしましても、農家のために、またひいては日本経済全体のために困りはしないかというふうに心配をいたしておったのでございまするが、結果におきましては、先ほどもお話がありましたように、三十四年度に比べて二百五十億、実質におきましては三百億円の増加を見るところの予算ができた、かように考えておるので、この予算をもちまして、農業の生産性、すなわち土地一改良政策、また酪農政策、あるいは果樹の政策だとか、あるいは農家の集団化、共同化という方向を進める。また、御質問がありましたが、農業法人問題等の解決にも当たりたい、かようなこと。さらに、零細農家に対しましては、今回、開拓民、沿岸漁民等につきましては、特に配慮いたしまして、開拓問題といたしましては今まで言われているいろいろの方策ほとんどを今回の予算で解決するということを企図しておるわけでございます。
なお、自由化の問題につきまして、農産物資につき特に考慮を払わなければならぬ。これはお話の通りでございまして、私どもは何も手放しで自由化ということを考えているのじゃありません。十分手段を整えた上で農林物資につきましては自由化というものを考えていきたい。また、重要な根幹的な農産物―米麦だとか、酪農製品だとか、さようなものについては毛頭自由化というものを考えておりませんということを申し上げたいのであります。
次に、農業基本問題でございます。政府におきましては、さきに農業基本問題調査会を設定いたしまして、ただいま農業、漁業、林業等にわたります農業の基本政策について検討中でございます。いつごろ結論が出るかというお話でございますが、これは御審議願いました法律によりまして、本年度並びに三十五年度両年度にわたる、こういうことになっておりますので、最終的な結論が出ますのは三十五年度末ということになろうというふうに考えておる次第でございます。しかし、この農業基本問題調査会の結論が出るまでもなく、私は、転換期にある農村をどういうふうに持っていくかという問題につきましては、ただいま申し上げましたように、生産性の向上をはかる。これはあらゆる角度の努力をしなければならぬと同時に、日本全体の中における人口問題という点も考えなければならぬ。かように考えておる次第でございます。それから、農業基本問題を考える場合におきまして兼業農家をおろそかにするのじゃないかというお話がありましたが、私は毛頭そういうことは考えておりません。先ほど開拓者等につきまして申し上げました通り、いかに零細でありましても、まじめにやっている農家に対しましてはできる限りの助成をする、かように思っております。
なお、価格政策につきまして、現在とっております価格支持政策を変更するような傾向があるかどうかというお話でございますが、私どもはさような考えは毛頭持っておりません。全国的に見まして、重要な農産物につきましてはすでに価格支持政策がとられている。この運用をますます改善していきたい、かような考えをいたしておる次第であります。
それから農業法人の問題でございますが、このことにつきまして、早く法案を出したらどうかというお話でございます。私も、農業法人というものは、今日の農業の状態から見ますると、どうしても、農業の生産性を向上するという政府の施策と相待ちまして、やはり農家自体がその経営を改善していくということに待たなければならぬ、かように考えておる次第でございます。さようなことから、政府の方でも、集団化、共同化というような考え方をしておりますが、しかし、農家自体もその経営方式というものを考え、農業法人というものを考えられることは、きわめてこれは時宜に適した風潮であると、かように考えておる次第であります。ただいまこれを法制化するということにつきまして鋭意検討中でございます。できる限り今国会で御審議をわずらわしたい、かように考えております。なお、その際におきまして、その考え方につきましては、農地法の精神につきましては、これをそこなうことなしにということを基本的な考え方としておるのでございますが、これを特殊法人として単独の法律案によるべしということにつきましては、なお慎重に検討してみたい、かように考えておる次第でございます。
次に、米価の問題につきましてのお話でございますが、これは私は、米価審議会におきまして慎重御審議を願って、そうしてその結論を尊重してきめていきたい、こういう考えを持っております。数年来、米価審議会におきましては、生産費並びに所得補償方式を採用すべしという考えがあるのでございまして、昨年の米価審議会におきましてもさような勧告を受けております。その勧告に従いまして、特に今回の米価審議会に小委員会を設けまして、この所得補償方式をいかに取り入れるべきものであるかということを検討していただいておる最中でございます。私は、米の問題につきましては、統制、これはどこまでもその根幹を維持していきたいものだ、こういうふうに考えております。しかるに、米価問題につきまして、一部の方の間には、一挙にこの際、生産者米価を上げろ、極端な人の意見は、今一万三百三十三円の米価になっておるのでございますが、これを一万二千何百円まで持っていけというようなお話でございます。しかし、そういうことをしたならば、これは統制は一体どうなるかというと、私は統制は維持していけないと思うのです。統制を維持しようと思うと、どうしても生産者米価も消費者米価も、これは大きな経済常識、この線をはずれるということはなかなかむずかしいのではあるまいか、こういうふうに考えておる次第でございまして、まあ、そういうような考えをもちまして米価審議会には臨んでおりますが、とくとその結論を待って善処していきたいというふうに考えております。
最後に、農災制度の問題でございますが、農災制度につきましては、お話の通り、全国から、今や大勢といたしましてこれを改正すべしというふうにまあ私どもに来ております。この制度はまあ無事戻しということを考えたらどうかというようなこと、また防除共済というようなことをしたらどうかというような意見もある。いろいろなことがございますが、しかし、これを私ども考えてみまして、まあ百億円以上の金を政府が支出いたしまして全国の農家から喜ばれないというようなこと、これはどこかに私は非常に大きな欠点がある制度である、かように考えておるのでございます。私も農林大臣就任以来この問題を検討いたしております。大体私どもの検討も終わりましたので、私どもの意見も持ちまして各界の衆知を集めて、これがいかなる点をどういうふうにすべきかというふうに進めていきたいと思いますが、結論を得次第、また法律案をもって御審議をお願いしたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕