栗山良夫の発言 (本会議)

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○栗山良夫君 私はこの際、池田首相初め関係閣僚に対し、日本社会党を代表いたしまして、施政方針、特に政治危機に関し、その所信を伺うものであります。
 顧みまするに、池田内閣は国民の求めた清新な内閣への期待を裏切り、岸亜流政権、岸延長内閣としてスタートしたのであります。でありまするから、池田首相は組閣と同時に国会の解散を行ない、三十五国会でくずれ去った議会の権威を取り戻す仕事から着手すべきでありました。にもかかわらず、首相はその職務を怠り、政治、外交の問題を二の次として、みずから経済政策に重点を置いた新政策なるものを発表し、低姿勢を宣伝しながら池田ブームを作り上げ、長期政権への工作に入ろうといたしておるのであります。このような筋の通らない、国民の目をかすめるような政治は、三十五国会混乱の真の政治責任を不明確としたため、河上丈太郎氏または岸信介氏に加えられたテロ行為に対しましても、深い反省と、そして適切な措置を講ずる機会を失わしめたのであります。そしてついに去る十月十二日には、社会党委員長淺沼稻次郎氏が凶刃に倒されるという、未曾有の不祥事件を惹起したのであります。公の団体の主催する三党首立会演説会で、政治の最高責任者である池田首相が至近の距離に控え、ラジオ、テレビを通じて全国民の注視の中で政策の発表の中途において暴漢に刺殺されるなどということは、想像を絶する痛恨事であります。映画や芝居ならいざ知らず、淺沼委員長刺殺の、あの身の毛もよだつような場面が写真にとられ、またテレビで実況放送されるなどということは、近代社会においてあり得べからざることであります。事実、世界において例のないことであります。まさに主権在民の民主政治はおそるべき最大の危機に陥れられたのであります。このことは、国内のみでなく、海外に与えたショックもまた想像を絶するものがあります。日本の軍国主義の復活のきざしではないのかとして国際信用の失墜は、はかり知れないものがあります。
 この日本政治の重大関頭に立って、池田首相の今とらるべき道は、あらゆるものに優先して、この救いがたい日本の民主主義を、憲法の定めるところに従って直ちに軌道に乗せること、ただこれのみであります。(拍手)民主政治の確立なくしては、外交を論じ、経済を説いても、およそナンセンスであります。デモや請願行動は、憲法が保障している国民の権利でありまして、このデモという示威圧力と、個人の生命をねらうテロ行為とを、左右の暴力という一語で相殺しようという言動ぐらい、民主主義を理解しないものはありません。(拍手)デモに若干の行き過ぎがあったとしても、テロとは全くその次元を異にするのであります。事態は遷延を許しません。テロを根絶し、民主主義を守るため、池田首相の不退転の決意と、すみやかなる行動を要請するものであります。首相とし、人間池田とし、淺沼刺殺現場の目撃者である池田首相は、いかなるショックを受け、何を直感されたか。あらゆる利害を越えて、安保国会以来、首相のとられた政治行動を内省しながら、その心境を本議場を通じて全国民に明らかにせられたいのであります。
 第二に、一切のテロ行為の絶滅を期し、治安の確保のための有効適切な措置を講ずるには、まずもって、事件の全貌、その背後関係を余すところなく明らかにすることでなければなりません。世論は、今回の事件を十七才の少年の単なる偏狭な時局感より起こった偶発事件ではないといたしております。有識者、報道機関、世論は、今春以来のテロ行為と合わせて、具体的な事実をあげて、その行為が組織的であり、保守党にも深い関係の疑いのあることを指摘しておるのであります。たとえば、十月二十一日付日本観光新聞は、「最近の右翼の動きと、その資金源を、当局のメモから探ってみた」として、その資料の根拠を示しながら、これを詳細に報道しておるのであります。他の記事をも参照しながら、おもなるものをあげますると、一、大日本愛国党を本年五月脱党し、全アジア反共青年連盟を結成した吉村氏は、七月あたりから、かなりの資金を集めており、そのとき、「近く大きな政治力の仕事をする」と漏らしていたということ。二、十月十日、赤尾氏等、大日本愛国党員が東京都選挙管理委員会に来て、「選管がわれわれを除外して三党だけの演説会を開くのはけしからん。淺沼は赤じゃないか。実力で阻止してみせる」とすごんで帰っておるということ。三、淺沼委員長暗殺事件当日、山口二矢は、愛国党員が舞台に向かって左そで付近で盛んにアジリ、またビラがまかれて、会場の注意がその方に向けられているすきに、反対側からかけ上がって凶行に及びましたが、これは全く計画的であり、警察本部では、山口という十七才の少年を使っての犯行は、必ず演出者がいると称しているということであります。四、短刀を腰につけて、体当たりでぶつかったやり方は、とうてい十七才の少年の、偶然に激発した感情に基づく行動とは何としても受けとれない。殺し屋として相当の訓練を経なければ行ない得ない行動であるということでありました。五、刺殺された淺沼委員長の遺体が日比谷病院から自宅に向かうとき、右翼のトラックがその付近をデモリながら、淺沼の死は当然の報いで、天罰であるなどと叫び、淺沼委員長の死をいたみ、涙している多くの市民のまゆをひそめさせたということ。六、事件の翌十三日、治安確立同志会、大日本愛国党、防共挺身隊、大日本独立青年党など、右翼十三団体の関係者が虎の門の霞山会館に集まり、愛国者懇談会を開き、山口二矢救援対策本部を治安確立同志会高津氏宅に設け、留置されている山口を激励し、救援することをきめた。こうしたことから、捜査本部では事件の背後に組織的なつながりがあると見ておるということ。以上の指摘点がもし事実であり、右翼の組織的活動が行なわれておるとしますならば、実にゆゆしいことであります。特に、右翼団体が殺人の現行犯を肯定するのみでなく、愛国者として賛美し、英雄視しようとさえしておる模様でありまするが、これはまさに傍若無人なテロ宣言とも言うべきであります。(拍手)また、従来のように表面的な形式調査のみで、背後関係なし、山口の単独犯行とでも結論されるならば、第二、第三のテロを誘発するおそれがあり、報道機関を通じて不確定ながら若干の真相を知らされて深い疑いの目をもって見ておる国民に、底知れない不安と動揺を与えるものであります。政府、特に首相、公安委員長は、万難を排して真相を究明して、その全貌を包み隠さず発表するとともに、テロ行為撲滅のためにとるべき政治的及び行政的具体策を明示すべきであります。
 第三に、いかに右翼団体といえども、資金なくしてその活動はあり得ないのであります。そして、その資金関係について、右翼団体と財界または自民党、またはその幹部との関係が問題とされていますが、これについても日本観光新聞等は次のように指摘しているのであります。一、捜査本部では、今右翼の活動資金がどこから出ているか内偵を進めているが、興業界、財界の一部または保守党の有力者がかなり個人的に金を出していることの確証をつかんでいる。山口の場合も、ことしの五月、愛国党を脱党した吉村、中堂両氏とともに、銀座の鳩居堂二階に全アジア自由反共連盟の本部を開いた。鳩居堂といえば銀座の一等地、部屋を借りる権利金のみでも坪百万円以上する。この金がどこから出ているか。山口の自供によると、資金源は日本浪曲協会、Nキャバレー、某信用金庫だといっているとのことである。二、山口が通学していた大東文化大学は右翼青年が多いという。山口の自供によると、同校に資金的援助を与えているのは、自民党の某実力者だという。同氏は同校の援助について、共産主義は最大の脅威である、これを粉砕しなければならない、参議院議員平島敏夫学長は個人的に親しいので、趣旨に賛同して応援すると語っているとのことである。大東文化大学は在学生に右翼のデモに進んで参加するよう呼びかけ、デモに参加すると一日二百五十円の日当を支給していたことがわかり、文部省では、公的な性格を有する学校の行為として疑問があると重視しているとのことである。三、また警視庁公安二課は、さる七月十四日、岸首相を首相官邸で刺した荒牧退助の調べから、自民党が昔の院外団に当たる団体、特に名を秘しているが、この団体に活動資金を出していたことを突きとめた。政談演説会の整理や、政治家の私設護衛などには、この団体を通じて右翼や「やくざ」が動員されていたということである。それを裏書きするように、当の荒牧は保釈金十万円也を払って出所し、事件前にはその日の生活にも困っていた老人が、豊島区池袋にある福泉閣アパートに、新品の家具、テレビを備え、新調のせびろまでととのえて、ぜいたくな生活を送っているとのことである。また、保釈金十万円は自民党の某氏から元尾崎咢堂氏の秘書横山老人の手を経て渡されたとのことである。四、また元法相、元防衛庁長官であった参議院議員のK氏が右翼の結集に力を注ぎ、資金ルートを作り与えたこと、自民党幹部の衆議院議員K氏が東京の某右翼に月十万円の応援費を支出していたこと等が詳細に述べられているのであります。これらの指摘された諸事項につき、真疑のほどを伺いたいのであります。
 聞くところによりますと、総選挙を控え、このたびの事件で受け身に立たされた政府及び自民党は、極力右翼との間には運動の面でもまた資金の面でも関係のないことを力説しようとの由でありますが、もしこれらの報道記事が若干でも事実である場合には、これを包み隠すことは、事件後発せられた首相及び関係閣僚、党幹部の、事件の背後関係を徹底的に追及してテロ行為の絶滅を期するという言明と全く相反することとなるのであります。政府声明のごときは全く空疎なものとして、国民の信を失うのみでなく、テロ行為の封殺のごとき百年河清を待つのたぐいとなり、日本の政治は好むと好まざるとにかかわらずファッショの道をたどるのであります。浜口首相の暗殺から始まって敗戦に終わったテロと軍国主義の時代を振り返って見ますときに、やがては自民党の諸君の上にもその害の及ぶことを覚悟されねばならぬと思うのであります。この際、政府、特に首相及び公安委員長は、民主政治を守るために、たとえ若干の不利な立場になりましょうとも、率直に右翼と保守党や財界との資金関係を積極的に明らかにし、これを公表するとともに、この関係を断ち切る具体案を提示せられたいのであります。
 第四は、この事件に対する政府の責任問題についてであります。すでに政府もその態度を明らかにせられた通りに、この事件の政治的、行政的な責任を徹底的に追及し、責任の所在を明白にすることが、事件解決のため当然過ぎるほど当然のことで、まさに国民の声でもあります。しかるに、これにこたえるべき政府や警察当局の今日までにとられた態度はきわめてあいまいで、不得要領、国民の納得し得ないものがあります。
 まず、事件突発直後この報を受けた自民党は三役会議を開いて、事件の政治責任を明らかにすべきことをきめ、首相に進言せられるとともに、一方、益谷幹事長、大橋副幹事長ら党執行部は、山崎公安委員長を初め柏村警察庁長官、小倉警視総監の辞職をも主張されたと聞いております。しかるに政府は、政治責任の所在について一片の説明すら表門することなく、山崎国家公安委員長の更迭を行うことによって政府責任を果たしたとされておりまるが、この唐突にして不鮮明な責任のとり方は国民の理解し得るものではありません。総選挙に臨む政府、与党の立場の苦しい点はわからぬではありませんが、この重大な問題は党利党略で規制すべきものでなく、あくまでも国民に納得と理解を与えるものでなければならぬのであります。政府の政治責任に対する考え方をこの際あらためで伺いたいのであります。国家公安委員会は警備に手落ちなしとして、政府、自民党の意見と対立したとのことであります。政府、自民党が警察行政に責任ありとし、政府が任命しながらその力の及ばない公安委員会が反対の結論を出した以上、政府としては当然に内閣総辞職を持って公安委員会の反省を求めるべきであると思うのであります。(拍手)
 また、公安委員会は具体的な説明を行なうことなく、警察行政の責任を否定されておるのでありますが、国民として承服し得ないものがあります。すなわち、このたびの事件は、演説会の開始と同時にマスコミを通じて全国に報道されましたから、その一部始終は国民周知のことであります。会場がヤジで荒れ切っていたこと、ビラまきが会場内で行なわれたこと、演説の雄である淺沼委員長の力をもってしても演説を中断せざるを得なかったことなどからして、何事か起こるなという予感がつきまとったというのが多くの聴衆の声でありました。治安の専門家として、このような雰囲気から判断して、事態のただならぬことを予知し得ないはずはありません。未然に不祥事を防止する策がなかったのでありましょうか。一年間に九回の検挙実績のある山口を見のがし、やすやすと壇上にかけ上がらせたことなど、警察当局の手落ちなしとの言明は、国民として承服できないのであります。政府との間にいかなる事情があるのか、うかがい知ることはできませんが、公安委員会は治安の責任を国民に対して持っておるのでありまするから、本議場を通じて、国民の承服し得る説明を求めるものであります。
 第五は、今後右翼の蠢動に対する政府の警備方針について伺いたいのであります。私どもの聞いておるところでは、今次総選挙にあたり、社会党の進出を実力で阻止するとのことで、右翼の活発な動きが見られるのであります。言論をもって争われる総選挙にあたり、候補者や運動員等に対し、このようなテロ行為が加えられるといたしまするならば、もはやこれだけで、言論、結社、集会の自由は奪われ、民主選挙は失われ、ファッショヘの道が残されるのみであります。これのみではありません。今春、毎日新聞が右翼の襲撃を受けましたことは記憶に新しいととろでありますが、十月十七日、信濃毎日新聞の報道するところによりますと、十月十五日、右翼の内幕をあばいた記事を掲載したという理由で、雑誌「政治経済」の編集責任者、小名孝雄氏は、多数の右翼人に料亭へ呼び出され、軟禁状態のもとで激しくつるし上げられたということが起こっておるのであります。政府は、即刻、東京はもとより、全国的に、右翼の組織の全貌、性格、活動の状況等を明らかにするとともに、憲法の条章に従い、言論、結社、集会、出版、その他一切の表現の自由を保障する具体的措置をとらなければならないのであります。特にこの社会不安の中で行なわれる選挙でありまするから、政党の幹部や候補者の身辺保護については、万全の警備を必要とするのであります。政府の具体的な措置を伺いたいのであります。
 第六に、文教政策の基本にいって首相の所信を伺いたいのであります。特に、今回の政治テロをきっかけとして、文教政策について各角度よりの批判が投げかけられております。わけても、池田低姿勢内閣中ただ一人の高姿勢大臣荒木文相は、十月十五日、参議院文教委員会において、終戦直後や司令部による教育の基本方針は、日本を再び立ち上がらせないことにあった、憲法もこの線に一貫しており、必ずしも国民の総意で作られたものではないとして、教育基本法を再検討するよりどころとしているようであります。さきにも述べたように、日本を再び立ち上がらせないことにあったというのは、軍国主義国家として立ち上がらせないという意味でありまして、米国が平和国家としての日本の隆昌を押え、敵国として日本に報復措置をとろうとしたものでないことは、憲法の前文を初め、すべての条章が明らかにしているところであります。この荒木文相の誤解に満ちた教育基本法に関する考え、憲法に関する批判は、憲法改正をしないという池田首相のもとにある閣僚としては不穏当のきわみではありませんか。特に、たびたび教育基本法の改正を唱え、占領軍から押しつけられたものだから、改正するのが当然だとか、いい日本人を育てることを明記していないから改めるべきだとか、いろいろの談話が報道されております。しかし、教育基本法第一条には「平和的国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民」と定めておって、この基本法で教育された若い世代の大多数の人々が、民主的国家にふさわしい憲法をわきまえた世代として、あるいは都市に、あるいは農村において活動を続け、池田首相御自慢の世界に誇る経済の成長をささえておるのであります。これ以外に文部大臣はいい日本人として若い世代に何を求めようとしているのでありましょうか。淺沼委員長を刺し殺した山口青年は、「忠義とは自分を無にすることである、今は真の愛国者がいない」と力説していたということでありまするが、文部大臣はかかる青年を求めているのでありましょうか。私どもは再び愛国の美名のもとに、多数の若人の生命を奪い取るような戦前の体制に戻すことには絶対に賛成できないのであります。文相のこの考え方に対し、首相の率直な所信を求めるものであります。
 第七には、自衛隊の志願兵制度の限界と兵役の義務制について、首相の所信を求めます。御承知の通り、現在陸上自衛隊は、十七万名の定員に対し欠員が一万一千五百人に及んでいるのであります。現地部隊での定員不足はひどく、自衛隊が重点的に配置をしておる北海道でも、兵は定員の七〇%、中隊長、小隊長は半数あればよいほうだと伝えられておるのであります。また、兵の任期は、特殊部隊を除いて二年が原則でありまして、毎年二万ないし三万が除隊をし、警察予備隊以来の除隊者は十八万四千名に達しておりまするが、一度除隊をすれば、大部分が自衛隊とは全く無縁の青年に戻っておるのが現状であります。これはしごくもっともな話で、今まで経済界の不況時には、就職口のない青年または学資に恵まれない青年が、就職なり勉学の方便として自衛隊にその道を求めたのが大部分なのでありましょう。明年度の学校卒業予定者が引っぱりだこでありますように、経済界の好況が続き、就労条件が好転をし、また育英事業の発展で学生の就学条件がよくなればなるほど、将来の職業としては安定性の乏しい、しかも、性格のはっきりしない自衛隊は、ますます敬遠されることでありましょう。特に、池田首相提唱の所得二倍論が実を結び、完全雇用へ前進していくとするならば、さらにこの傾向は激しくなり、一万名増員すらおぼつかないことであります。志願兵制度は全く行き詰まることとなるのであります。このような状況の中でその定員を確保するためには、隊員に特別の待遇を与えて自衛隊への魅力をつなぐか、国民に兵役の義務を課して強制徴兵に進むか、いずれかの方法を必要とするのであります。兵役の義務制につきましては、自民党は今日まで、社会党の空疎な根拠のない自衛隊への誹謗であるとして軽く一笑に付してきましたが、現実の事態は、イデオロギーの問題としてではなく、経済の問題として切実に相なっておるのであります。また、右二つの方法によらないといたしまするならば、道はただ一つ、韓国が踏み切って五万人の兵力削減を断行いたしましたごとくに、わが国もまたこれに従う以外に道はないのであります。所得二倍論を中心として完全雇用への熱心な提唱者である池田首相は、以上三つのいずれの方法を選ばれるのでありましょうか、端的なお答えをお願いいたします。
 第八に、首相に伺いたいのは、現下わが国の思想的混乱の背景と混乱収拾に対する根本的な考え方についてであります。今次右翼テロに対する直接的な諸問題につきましてはすでに伺いましたが、問題はさらに深いところに根があるのであります。実は本年七月四日、ニューヨーク・タイムズはC・L・ザルツバーカーの論文を紹介して、「アメリカ政府は共和、民主両党の超党派的承認で、日本の中立、非武装を主張していたが、今では日本の非中立と軍備を主張する一大転回をやってのけた。明らかにこれらの政策のうちどちらかが誤まっているか、あるいはすでに誤まっていたのだ。」と述べ、「おじのマッカーサー元帥が日本を中立化するために奮闘したのは、わずか十数年前であった。」ところが、今では、おいのマッカーサー大使は、この日本の中立化を阻止するために奮闘している。このマッカーサー家の矛盾は、現在のアメリカの直面している苦難の根源である。」と書いているのであります。これを日本流に表現すれば、マッカーサー元帥は日本国憲法を指導し、おいのマッカーサー大使は憲法違反の指導をしているということであります。実に日本の思想の混乱はここからきているのであります。米国は、朝鮮戦争以後の国際政局に備えるために、対日政策を変更して、日本に強要したのであります。これを受けた自由民主党は、軽率にもこれに同調をし、憲法を軽視し、民主主義諸制度をあわよくば戦前の体制に一歩でも戻そうと努めているところから、この混乱が起きているのであります。
 これは単にマッカーサー家の矛盾、アメリカの苦難の根源であるという表現で済まされる問題ではなく、実に日本の悲劇であります。特に日本国憲法第九十九条の規定により、天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負うているのであります。この義務を負うている保守系の諸君が、その職責を怠り、外国の要請に基づいて、実質的に憲法を改正したと同一の行為を法律的にまた行政的にとろうとするところに、今日の混乱があるのであります。(拍手)
 もちろん社会党は、現憲法を、その前文が示しておるように高く評価し、多数国民の支持を得て、被占領当時と国際情勢がいかに変わろうとも、日本の安全のために、また、国内の秩序を維持するためにも、現憲法を守り抜くことが義務であるとともに、日本のために最善であるとしているのに、保守系の諸君がこれに耳をかされないからであります。そればかりではありません。憲法第九十九条の規定に従い憲法を守り抜こうとする革新系に対し、誹謗の限りを尽くす保守系の諸君の理不尽な態度にあるのであります。第三十五国会すなわち安保国会の混乱も、このためでありました。世論の反撃の前に岸首相が退陣せざるを得なくなったのは、自民党の政治が無理であったことをみずから認められたからであります。
 池田首相が、「力の政治はよくない。相互信頼を根本としなければならない。話し合いによって進めていくことが民主主義の本義である。」と言明されたのは、その非を認められたからにほかなりません。池田首相はまた、九月九日、大阪中之島公会堂の演説会で、「社会党は、総選挙で社会党が三分の一を獲得とない場合、自民党は憲法を改正することになると宣伝しているが、たとい憲法調査会が憲法を改正すべきであると結論を出しても、国民のほとんどが賛成をせず、しかも社会党の協力が全然得られない形で、一国の基本法である憲法の改正などできない。」と述べておられるのであります。この首相の言に従いまするならば、社会党が参加していない憲法調査会など全く無用の存在でありまして、首相は即刻これを解散させるための法的措置をおとりになる用意があるかどうか伺いたいのであります。
 また、憲法の改正は一応池田首相の言明のようにたな上げされるとしましても、今日までのごとく、憲法を軽視し、憲法の精神に反するような政治が行なわれては、世論を一そう惑わし、思想の混乱を深めることとなるのであります。かくて暴力の温床はますます発酵を続けるのであります。この際、非武装中立の憲法精神にのっとり、憲法を誠実に守ることにより国論を統一し、外交関係はもとより、国内体制全般にわたって政治の方向に再検討を加える理性と勇気を池田総理大臣はお持ちであるかどうかを伺いたいのであります。
 最後に、重ねて首相の誠実なる答弁を求めまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣地田勇人君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 103615254X00419601022_006

発言者: 栗山良夫

speaker_id: 24197

日付: 1960-10-22

院: 参議院

会議名: 本会議