北條雋八の発言 (本会議)

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○北條雋八君 私は、質問するに先立ちまして、去る十二日に惜しくも凶刃に倒れられました社会党委員長淺沼稻次郎君の御逝去に対しまして、衷心より哀悼の意を表し、つつしんで御冥福をお祈りするものでございます。
 さて私は、昨日行なわれました池田総理大臣の施政演説並びに閣僚の演説に対しまして質問したいと思います。
 質問の第一は、暴力の追放と議会政治の擁護についてであります。去る十二日、三党首公開演説会場において淺沼委員長が凶刃に倒れましたことは、党派に対する感情をこえて、国民あげての怒りであり一大痛恨事であります。たび重なるテロ事件の横行に対し、政府並びに取り締まり当局に対して、強くその責任を追及するものでございます。特に、淺沼事件は、総選挙を直前に控え、三党首がそれぞれ政策を発表して信を国民に問う、第一回の、しかも公開の演説会場において起こり、かつ、一未成年者の犯行の裏には、その背後に糸を引く黒幕の存在を全国民に思わしめておることは、事きわめて重大だと思います。他の主義主張に耳をかさず、問答無用的の直接行動は、民主主義を否定し一議会政治を破壊する民衆の敵であると思います。今こそ、現在の世相にひそむ、人命を軽視し、暴力行為を英雄化する険悪なる風潮に対しまして、政府は全力を傾倒してその根源を徹底的に糾明し、万全の策を講じて、淺沼君の死を意義あらしむべきことと固く信じます。暴力追放は、岸内閣の三悪追放の一つとして取り上げられた問題でありますが、追放どころか激増しておることは、まことに憂慮にたえません。その弊風一掃のためには、国会はもちろん、家庭、学校、職場、社会を通じ、環境を正すこともに、国民全体の責任と反省によりまして道義の高揚をはからねばならないと思います。国権の最高機関たる国会における過去幾たびかの乱闘事件も、「下、上にならう」のたとえのごとく、大衆に暴力容認の思想を醸成、助長したことは明らかであります。院内における実力行使はもちろん、審議権の放棄、数で押し切る単独審議、単独採決等の、形こそ変われ、暴力の一つと見るべきと思います。無理が無理を生む悪循環は、この際、断ち切らねばなりません。国民に垂範すべき国会議員上る者は、まずもって自粛自戒し、与党は大政党の矜持をもって野党に対し、説得と納得で協力を求め、野党もまた 寛容と妥協の精神を堅持して、あくまで法と秩序のワク内で行動を律し、党派の別なく順法精神に徹して、民主主義本来の姿に立ち返らせるよう、互いに最善の努力を尽くすべきときだと思います。そこで、次の四点について質問いたします。
 第一は、池田総理は、十八日の淺沼委員長に対する追悼演説の中で、暴力は共通の敵であるとして、これを根絶することを誓いの言葉とされております。私も同感でありますが、言葉のしたけでなく、あくまでも具体的にかつ強力に実行されることを心から切望してやみません。国民もこの点を大いに注視しておると思います。今や、暴力追放の声が全国に満ち満ちておるとき、国民が最も聞きたいのは、暴力はなぜ起こるのか、暴力はいかにして追放すべきであるかという点でございます。総理は、暴力を追放するため、全国民の不退転の決意が云々という言葉で、全国民的規模で暴力追放を実現せんと考えておるようであります。その具体的内容はしからば何であるのかを、この際、総理よりはっきり承りたいと思うのでございます。
 第二は、議会政治の擁護は、まず、自民、社会両党を初め、各党派がともに協力して審議に最善を尽くすことから始まると思うのであります。しかるに、この機会に当然各党一致で議決されてしかるべき暴力排除決議案すら、自民、社会両党間で、集団暴力の字句を決議案の文面上に表現するかどうかということについてもんちゃくを起こし、いまだにまとまりません。この一事によっても、両党間の感情的、政略的対立抗争意識は今なお強く、妥協協調の精神に沿って歩み寄りの気配が見えませんのは、まことに残念でたまりません。このような情勢下で、議会政治擁護のため特に与党総裁としていかなる新方策をもって臨まれますか。総理よりお答え願います。
 第三は、淺沼事件について治安当局に警備上手落ちの責任があったこと、及び責任者の処置について、選挙対策上、警察行政の中立性を侵害するがごとき言動のあったことについては、まことに遺憾であります。責任の所在を明らかにし、国民に納得させることは、将来のため当然でありますが、事件発生後の今日、国民の最も願望するところは、再びこのような事件を絶対起こさせないという治安当局の確信ある言明と謙虚な態度であると考えます。今後の心がまえと対策について、国家公安委員長より確信ある御答弁を願いたいと思います。
 第四は、右翼団体との関係についてであります。今回の淺沼事件につきまして背後関係があるということは国民大部分の観察であり、国民は治安当局の背後関係の糾明について、非常な期待を持ってその結果を注視しております。政府の取り締まりは、左翼にきびしく、右翼に手ぬるいとか、右翼の暴力団には自民党から資金が出ているかという風評すらあります。かって自民党議員がボスの葬式に花輪を呈し、国民のひんしゅくを買いました。個人、党を問わず、暴力団、ボスとのつながり、特に資金的つながりがあるとの疑惑一掃のため、政府はこの際、本事件を徹底的に糾明し、その潔白を立証する必要があると信じます。総理及び党の総裁として、池田首相より明確なる御答弁を願いたいと思います。
 質問の第二は、公職選挙法の改正であります。昨年六月、前内閣は、三十四年第五回参議院通常選挙における目に余る買収行為等に対するきびしい世論の批判にこたえてか、安保改定、所得倍増計画とともに、公職選挙法の改定を三大公約の一つとして明確に国民に約束されたのであります。昨年十月より、選挙制度調査会等の審議を経て、一成案を得たようでありましたが、その後変則国会に突入したため、これが実現を見るに至らず、ようやくにして、先ごろ来、衆議院公選法改正特別委員会におきまして、自民、社会、民社三者共同のもとに慎重審議を重ねたと称するものの、実際は二転、三転の醜態を重ねまして、しかもその内容たるや、国民の期待しているものとはおよそかけ離れたものでありまして、むしろ改悪的な傾向すら示しており、たわいもない妥協案とか、あるいは原始的な連呼法などと、国民の非難を受けております。国民の真に期待するものは、かような枝葉末節の改訂ではなく、買収行為等の絶無を期し、腐敗堕落せる選挙を明るくし、正しくして真に国家国民を思う、高邁にして有能なる人材の選出を願っておるものと思います。以下、選挙法改正の根本対策であり、国民が疑惑の目で見ておる次の二点についてお伺いいたします。
 第一は、金のかからぬ選挙を実現する一手段としては、まず政治資金規正法の改正であろうと思います。自治省発表による昭和三十二年以降の二大政党の政治資金収支状況を見ますのに、自民党は、三十二年、五億五千三百万円、三十三年、十四億五千七百万円、三十四年、十七億八千二百万円、また社会党は、三十二年、九千二百万円、三十三年、二億四千五百万円、三十四年、一億八千万円、かくのごとき数字となって現われております。この莫大な費用といえども実際は氷山の一角にすぎないのであります。しかしてその支出の大半は、公認料、貸付金、陣中見舞等の名義で、所属候補者に渡す軍資金となり、かくして買収の温床となることは、国民周知の事実でございます。金で選挙に勝ち、金で政権をとるならば、まさしくこれ利権政治であり、金権政治であると言えましょう。このようなことは、政治家のあるべき姿ではなく、また、政治は絶対にそうあってはならないと思います。また、政治はかくのごとき腐敗せるものとは決して考えないのでございます。かような幾多の不合理な点を見受けられる政治資金の規正に、今まで手をつけない政府与党のほおかぶり的態度は、いかなる理由に基づくのか。また、将来いかように改正するのか。池田総理大臣並びに自治大臣の御意見と御構想を伺います。
 第二は、連座制の強化についてであります。およそ総括主宰者や出納責任者は、その候補者の選挙運動に対し候補者より全幅の信頼を得て依頼された責任者であり、参謀であります。かような地位にある人が、たとえ善意にあれ悪意であれ、買収等の選挙違反を犯した場合は、候補者自身においてまず責任を国民に対してとるべきであろうと思います。総括責任者が多額の買収違反をなしているにもかかわらず、候補者か涼しい顔をして議席を得ることは、国民を欺瞞することもはなはだしく、議会の恥であると思います。過去幾たびかの例を見ましても、この種違反は新聞をにぎわしております。連座制を強化することは公明選挙への一歩前進であると思いますが、自治大臣の御意見はどうですか、お尋ねいたします。
 質問の第三は農林政策でありますが、いまだ予算の裏づけもなく、時間もありませんから、次の点だけお尋ねいたします。
 第一点、わが国の農家人口は全人口の三九%で、農業総生産は国民総生産の一三%であります。また、一般産業に対する農家所得は二分の一以下の低率で、従業者一人当たり所得は、製造業従事者の三四%であります。これは農家人口の過剰と経営規模の零細によるところが大きな原因であります。池田総理大臣は、高い経済成長が続けば、毎年七、八十万人の労働力を農村に求めなければならないので、十年間には六割ぐらい農家人口は減るだろう、さすれば単位労働当たりの所得の分配も当然ふえるという見解で、経済成長さえあれば、農業部門における所得格差の問題も、経営規模を拡大するという問題も解決できるという考えであります。しかし、農業就業人口は、昭和二十五年から三十年の五カ年間で、年に二十五万人、年率一・六%の滅で、この調子でいけば、十年後農業就業人口は約一千百七十万人となりまして、二割減で、六割減には、はるかに及ばないのであります。内容から言っても、青壮年が離農すれば、老人と女子がこれにかわって働きますから、就業人口を減らすためには、農家戸数の減少をはからなければなりません。しかるに昭和二十五年ないし三十年の五カ年間では〇・九%の減で、農業就業人口ほど減少しない実情であります。従って、この計画を推進するために、農村工業の振興、一般産業の地方分散、職業の補導・移民の推進、また、現行農地法による農地所有制限を緩和し、共同経営または法人化のための現行法の改正、その他特別な施策を講じなければならないと思いますが、これに対しまして農林大臣はいかなる具体策を持っておられるか、お示し願いたいと思います。
 第二点は、現在まで離農しても、雇用条件が悪く、低所得で、将来への不安から、飯米自給のため最小限度の農地は最後まで手離さない傾向であります。第二兼業農家として存続し、農家戸数の減少はなかなか容易なことではないと思います。就職先における将来の生活の保証がなければ、農業就業人口及び農家戸数の減少を期待し、推進することは、農家を自滅の道に追いやるにひとしく、きわめて危険と思います。農林大臣は、離農する農民に対する施策として、いかなる点を考慮に入れておられますか伺いたい。
 第三点は、移民は池田政策遂行のためにはきわめて重要かつ密接の関係を持っておるものであります。これまでも国策の一つとして重視されてきたにもかかわらず、実績は、昭和三十四年度送り出し計画一万人に対し、公募による移住者は計画の三分の一という低調ぶりであります。これは移民行政機構が複雑で総合性を欠き、運営が合理的でなく、移住者に対する援護、特に財産の処理、資金融資の不十分、現地受け入れ体制の不備など幾多の欠陥、隘路があります。これらについては、先月行政管理庁が移住行政について監査の結果を外務、農林両省に勧告しておる通りであります。移住促進のため、従来の棄民政策を改め、今後いかなる積極政策を講ぜられんとするか。また池田政策にはきわめて密接な関係のある移住問題が大きく取り上げられていないのは、移住政策を軽視しておるのではないか。この点、外務大臣、農林大臣よりお答えを願います。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 103615254X00419601022_022

発言者: 北條雋八

speaker_id: 28998

日付: 1960-10-22

院: 参議院

会議名: 本会議