伊藤顕道の発言 (本会議)

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○伊藤顕道君 私は、日本社会党を代表してただいま議題となりました給与関係の三法案に対し、反対の討論を行ないたいと思います。
 国家、地方を通じ、二百五十万公務員は、労働者としての基本的権利であるストライキ、団体交渉権等を剥奪されてから、すでに十二年になるのでありますが、その間、政府は、公務員に低賃金を押しつけているのみか、組合運動に対する不法な弾圧を加え、公務員の利益擁護の機関として発足した人事院すら、この弾圧に迎合し、昭和二十九年以来、昨年までの六年間に、ごまかしの初任給の引き上げ、中だるみの是正などを勧告したのみで、全面的なベース改定をただの一回も勧告していないことは、まことに遺憾のきわみと言わなければなりません。(拍手)今回の人事院の勧告でも、全く政府の政策に従属したものであって、たとえば官民給与の比較においても、一かけらの「科学」も見出し得ないお粗末なものであることを指摘せざるを得ないのであります。この品ような人事院の勧告を、そのまま、うのみにした政府の改正案に対し、以下順を追うて反対の理由を明らかにいたしたいと思います。
 まず、第一にあげなければならないのは、俸給表の体系が極端なる職階給制を打ち出しているという点であります。理解を容易にするために、行政職俸給表第一表に例をとって申し上げますならば、事務次官の一等級から下級係員の八等級までの職階の、各等級間における同金額の昇給間差額は、現在ほとんど同一でありますが、改正案によりますと、その昇給間差額は、上の等級にいくほど大きくなっておるのであります。従いまして、課長とか、部長、局長というような役付にならなければ、きわめて低い給与で頭打ちとなってしまうのであります。現在同じ額の俸給を受けている者でも、新俸給に切りかえられたとたんに、上位等級者と下位等級者との俸給月額には相当額の差がつけられるのでありますが、それだけではありません。今後昇給のたびごとに、下位と上位の者との間には著しい差がつけられてしまうという仕組みになっているのであります。そこで、一刻も早く上位等級に格上げされなければ、どんどん差がつけられてしまうのであります。これをいわゆる折れ曲がりの強化と言っておりますが、このような折れ曲がりも、特に下級公務員である八、七、六、五等級あたりに極端にしわ寄せされているのでありまして、下級公務員のたまり場をがっちり作り上げて、低賃金にくぎづけしようとするのが、今回の改正案による給与体系の本体というべきでありまして、かかる改悪には断固として反対せざるを得ないのであります。(拍手)
 反対の理由の第二は、今回の給与改定が極端な上厚下薄であるという点であります。人事院の本年度における民間給与の実態調査により、官民給与の格差は一二・五%あるから、これを是正するため全公務員を通じて一二・四%程度の引き上げを行なう、これが今回の改定の趣旨だと言っておりますけれども、この官民給与の格差と今回の給与改善率とを詳細に検討してみますると、次のようなからくりとなっていることが判然とするのであります。以下、数字をもって指摘いたします。まず、行政職俸給表第一表に例をとって申し上げますと、いわゆる幹部公務員と言われる局部長級である二等級、課長級である三等級の官民格差はそれぞれ二九・四%、二二・九%でありますが、これを今回三一・六%、二三・九%と、それぞれ民間よりさらに上回るほどの引き上げを行なっておるのでありますが、四等級以下につきましては極端に民間より引き下げているのであります。すなわち四等級は二七・九%低いというのに一七・五%しか引き上げておりません。五等級は二三・六%低いというのに一四・七%しか引き上げておりません。七等級は二〇%低いというのに一〇・七%しか引き上げておりません。このように、いずれも民間より一〇%程度も下回っていることは、冷酷きわまるからくりであると言わなければなりません。さらに、行政職第一表に当然統合すべき性格の行政職第二表、また、医療職第二表に当然統合すべき医療職第三表、さらに海事職第一表に当然統合すべき海事職第二表等につきましても、ここでは数字をあげることは避けたいと思いますが、いずれも同じ傾向の数字を示しているのであります。あまり信頼できない人事院の民間給与の実態調査による数字を、目をつむって、そのまま、うのみにいたしましても、以上申し上げましたように、上にきわめて厚く下にきわめて薄いというのが実態であると言わなければなりません。今回の改定で、事務次官級については三二・七%、金額にして約二万二千円も引き上げているにもかかわらず、下級公務員にはわずかに一〇%足らず、金額にして八百円程度しか引き上げていないことは、池田内閣の良識と誠意が那辺にあるやを疑いますとともに、自民党政府担当の人多き人の中にも人なきを心から嘆かざるを得ないのであります。かかる暴政によって、最高俸給と最低俸給の格差、すなわち給与の上下差は一・挙に十三倍という、まことに世界に類例のない驚くべき倍率を示しているのでありまして、下級公務員の不平不満はその極に達しているのであります。安保国会のあとを受け継いで組閣された当時の池田総理は、政治の信頼を取り戻すために自分は選ばれた、こういうふうにおっしゃっておりましたが、こんな不合理な暴政をあえて強行しても二百五十万公務員の信頼を集め得るとお考えになっているのかどうか。この公務員の信頼なくしてどうして政治の信頼を取り戻すことができましょう。かような観点からも、池田総理の反省を強く求めるとともに、この上厚下落の給与改定を抜本的に是正されることを強く要望するものであります。
 第三にあげなければならない点は、公務員の初任給がいかにも低いという点であります。初任給は低過ぎるという点であります。人事院の民間給与の実態調査の結果を見ても、官民給与の格差がきわめて大きいということが明確であります。今回、衆議院での給与法案審議の過程において、自民党より、中卒者の初任給あたりを百円程度増額しようとの修正案が出されましたが、これこそ全く焼石に水であって、百円ばかりのスズメの涙で正直な公務員をごまかそうとしたその心根こそ、強く批判されなければならぬと思うのであります。(拍手)これらの下級公務員は、今回さらに折れ曲がり俸給表によって昇級昇格を押えつけられますので、就職後十年以上経っても、その俸給は一万二千円程度にしかならないのであります。二十七、八才になって結婚適令期を迎えても、このような一万二千円程度の給与では結婚生活は不可能だと言わざるを得ないのであります。民間より、はなはだしく低い初任給をカバーするため初任給調整手当を新設いたしましたけれども、科学技術関係者に対し、就職後三年の期間を限って二千円以内を支給しようとするこの手当の本旨は、まさに羊頭狗肉の策というほかありません。初任給が低過ぎて公務員の志望がないことをほんとうに憂うるのであるならば、堂々と俸給月額を引き上ぐべきであります。衆議院における修正案といい、初任給調整手当の新設といい、これらは結局、公務員の初任給が不当に低く押えられているということを裏書きしているのに過ぎないのであって、低い初任給を実質的にカバーするものとはとうてい考えられないのであります。今日、全国家公務員の約七五%を下級公務員が占めておるのでありますが、今回の給与体系と極度に低い初任給では、将来に対する希望を全く失い、勤労意欲も極度にそがれる結果とならざるを得ません。これはまことに重大な問題と言わなければなりません。そこで政府は、すみやかなる機会に初任給並びに中だるみの是正を真剣に検討すべきであります。
 次に、反対の第四の理由は、期末手当が〇・一カ月分の増額では不当に低過ぎるという点であります。人事院の民間給与の実態調査の結果を見ても、官民期末手当の格差は〇・二九となっておるのであります。昨年における民間特別給と比べてさえ〇・二九の格差があるのでありますが、本年末は空前の消費ブームといわれ、年内における民間特別給の総額は五千億にも上ぼるといわれている、こういう今回の実情から見ても、この際、年末手当は二・五カ月分支給してしかるべきだと言わざるを得ないのであります。なお、公務員の特別給は、現在、期末、勤勉という二つの手当に分かたれておりますが、勤勉手当は昭和二十七年に設けられて以来、実際の支給方法は期末手当と異なるところがない実情であるのみならず、給与の簡素化という点からもすみやかに一本化すべきであります。現に、浅井人事院総裁は内閣委員会での私の質問に対して一本化することが適当であろうと所信を表明しておるわけであります。
 反対の第五の理由として申し述べなければならない点は、実施の時期についてであります。今回のべース・アップについて、人事院はその実施の時期を本年五月一日と明らかにしておるのでありますが、人事院が四月に官民との格差を比較したら一二・五彩であったと発表している以上、四月一日にさかのぼって実施の旨を勧告しなければ、どうしても筋が通らないわけであります。この際、百歩譲って、人事院の勧告通りということであるならば、この勧告を尊重すると言い続けてきた政府は、当然に五月一日にさかのぼって実施すべきであります。第三十四国会の内閣委員会で、当時の益谷給与担当大臣は、私の質問に対し、人事院勧告に沿うて給与改善を行なう場合、その実施の時期はその年度の四月にさかのぼるべきものであることは認める。政府は今後、人事院勧告の提出された場合、すなおにこれを尊重し、勧告がその年度の四月一日実施とその期日を明らかにした場合には、四月一日から実施する決意であるということは間違いない。かように公約しておるわけであります。池田内閣が国会の場でのこの公約を踏みにじることは、行政府が立法府の権威を傷つけることにもなるわけで、まことに遺憾のきわみと言わなければならないわけであります。政府の各責任者は、口を開けば、勧告を尊重すると言い続けて参りましたが、それはただ口先だけで、御用機関たる人事院勧告など無視しておるのではなかろうかと疑わざるを得ないのであります。
 最後に、重要な一点を強く要望申し上げておきたいと思います。それは、職務給制度の中で作られた極端な上厚下薄、それと差別賃金制度は、一律方式によらなければ本来永久に是正されないという点であります。政府、独占資本の当面の賃金対策である平均方式をすみやかに一律方式に改めない限り、政府と労働者との間の賃金政策のかみ合いがいよいよ前面に出てくるという事態は到底避けられない、こういうことを断言せざるを得ないわけであります。かような意味からも、政府はその賃金政策についてすみやかに是正の措置を講ずるよう強く要望申し上げまして、日本社会党を代表しての反対討論を終わります。(拍手)
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発言情報

speech_id: 103715254X00719601221_011

発言者: 伊藤顕道

speaker_id: 16352

日付: 1960-12-21

院: 参議院

会議名: 本会議