周東英雄の発言 (農林水産委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○周東国務大臣 今国会に提出いたします農林省関係の予算案及び法律案につきまして皆様の御協力を得て御審議をいただくにあたりまして、農林水産施策の方針につきましてその概要を申し上げたいと存じます。
 農林漁業は、国民経済の成長発展と社会生活の安定に大きな寄与をいたしておりますが、経済、社会いずれの面から見ましてもきわめて重要なる地位を占めているのであります。しかしながら、わが国の農林漁業は、その置かれております自然的・経済的・社会的諸条件とも関連いたしまして、他産業に比べまして生産性が低く、農林漁業従事者の生活水準も他の産業従事者のそれに比較いたしますると及ばない点があるのであります。他方、経済の高度成長の過程におきましては、需要が高度化し、また労働力の需要が増大をいたしておるのであります。このような事情を背景といたしまして、農業について考えますと、従来のような米麦依存度の強過ぎる農業、零細でしかも分散している耕地における非能率な農業を克服いたしまして、生産性の高い農業、今後需要の伸びが大きく見込まれる畜産、果樹作等の成長財生産に重点を置いた収益性の高い農業を目ざして諸施策を展開しなければなりませんし、かくして農林漁業者に明朗にして豊かな生活を享受させ得る道が開かれねばならないと信ずるのであります。政府は、以上のような見地に立ちまして、三十六年度におきましては、これらの点について予算上特段の配慮をいたし、農林関係予算総額を大幅に増額いたす所存であります。
 次に、施策の重点につきまして、その概要を申し上げます。
 農業についての重点の第一は、農業の生産性の向上と生産の選択的拡大をはかるため、農業生産基盤の整備を計画的に推進するとともに、進歩した技術の採用等による生産の合理化、畜産物、果樹等成長農産物の生産の増大、大麦、裸麦の転換の推進等を進めることであります。
 まず農業生産基盤の整備について申し上げます。
 土地改良事業につきましては、農業の土地条件の整備と水利施設の近代化を通じて生産性の向上、営農技術の転換、水利の安定と水の利用の合理化をはかる見地に立って、事業の早期完成に努めますとともに、特に、団体営事業につきましては、各特殊立法による振興計画の達成を目途といたし、かつ、畑作営農の振興及び農地の集団化と末端における圃場条件の整備との有機的関連を重視して事業の推進をはかる考えであります。
 干拓事業につきましては、農用地の壊廃の趨勢に対応しつつ、経営規模の拡大に資することを旨とし、また、開拓事業につきましては、不振開拓者の営農の早期安定をはかるとともに、既存農家の経営規模の拡大と畜産物、果実等の成長農産物による営農の新しい展開を期することといたし、新たに開拓パイロット事業に着手する所存であります。
 さらに、農業生産の選択的拡大をはかるための諸施策について申し上げます。すなわち、今後需要が著しく伸びると予想される畜産物、果実、てん菜等の増産のための施策を強化するとともに、大麦、裸麦の成長農産物への作付転換を促進することといたしております。
 わが国農業の成長部門の一つであり、農業の近代化の根幹をなすべき畜産の振興につきましては、特に重点を置いてその発展拡大を強力にはかって参る所存であります。すなわち、従前に引き続き経営技術の普及促進対策、家畜改良対策、家畜導入対策及び家畜衛生対策を強力に進めて参るほか、大規模草地改良事業の実施、一般草地改良事業の補助率引き上げ等による飼料の自給化の促進並びに流通飼料の需給と価格の安定及び品質向上をはかる等飼料対策を強化するとともに、家畜の飼養が適地において合理的な経営形態と適切な市場条件をもって進展するよう集約酪農地域等における酪農振興の強化はもちろん、新たに肉畜等についての主産地形成の推進等の措置を講じて参る所存であります。
 さらに、牛乳、乳製品、食肉等の主要畜産物について新たに価格安定機構を設置し、従来畜産振興について最も要望せられていた価格安定措置を講ずることとし、今後の畜産業の一そうの推進をはかりたい所存であります。
 果樹につきましては、果樹園の集団化、経営の合理化、優良種苗の確保等の振興措置を講ずるとともに、これに必要な資金について農林漁業金融公庫資金の融資の道を開くことといたし、また、てん菜につきましては、北海道のてん菜長期生産計画に基づく生産の振興及び適地府県への導入を着実に推進する所存であります。
 次に、大麦、裸麦につきましては、食糧としての需要が逐年大幅に減退しておりますので、小麦、菜種、てん菜、飼料作物、果樹等への転換を積極的に推進するための総合的な助成措置を講ずることとし、このため都道府県、市町村、農業団体を通ずる麦作転換の指導協力体制を整備するとともに、三十六年度においては大麦、裸麦からの作付転換に対し転換奨励金を交付することといたしております。さらに、転換作物たる小麦、菜種、てん菜について生産の合理化をはかる措置を講じ転換を促進するほか、麦作地帯における飼料共同施設の設置、乳牛・肉牛の導入の助成等によりまして飼料作物への転換を促進することといたしました。
 蚕糸業につきましては、繭糸価格の安定及び生糸需要の増大をはかることはもとより、養蚕経営の合理化によるコストの引き下げ等、蚕糸業の体質改善をはかることがぜひとも必要であると考え、年間条桑育を中核とする省力養蚕の確立、桑園の集団化等による協業化の推進、普及組織の強化等により経営の合理化をはかることといたしております。
 重点の第二は、農産物の価格流通対策を強化いたしまして、農業所得の安定向上をはかるとともに、あわせて生産の選択的拡大に資することであります。
 まず、食糧管理制度のうち米の管理につきましては、農家経済と消費者家計の安定をはかるため、その制度の根幹は引き続きこれを堅持することといたしますが、麦の管理につきましては、麦の生産を需要に即応せしめるため、食糧管理法による麦の政府買い入れ及びその買い入れの価格につき特例措置を講ずることとし、小麦については一そうの生産合理化対策を進め、大・裸麦につきましては、さきに触れました転換対策によって裏づけをしながら、無制限買い入れによらず制限買い入れとするとともに、麦の価格を農業パリティ指数を基準とし需給事情、経済事情を参酌して定めることにする方針といたしております。
 また、これからの成長農業部門でありまする畜産の飛躍的拡大をはかるためには、牛乳、乳製品、食肉等の価格の安定を期することが最も重要であります。このため三十六年度には、牛乳、乳製品、食肉等の価格安定機構を発足せしめることはさきに申し上げた通りであります。
 さらに、生鮮食料品の流通改善対策の一環として中央卸売市場の施設整備、卸売業務の適正かつ健全な運営の確保等をはかるとともに、青果物につきましては、出荷調整に対する助成等、施策の充実をはかって参りたいと考えております。
 次に、遠からず実施を予定しております大豆の輸入自由化に伴い、これによる大豆及び菜種の生産農家の所得の減少を避け農家所得の維持安定をはかるために必要な交付金を交付する等の措置を講ずることとしております。
 他方、大豆の輸入の自由化に対処して、国産大豆及び菜種の生産改善対策につきましても、能率的栽培技術の推進等、その生産性の向上に努める所存であります。
 なお、大豆のみならず、農林水産物の貿易の自由化につきましては、万全の対策の確立を待って十分慎重を期して参る所存であります。
 重点の第三は、農業経営の規模の拡大、農用地の集団化、家畜の導入、機械化の促進等によりまして、農用地保有の合理化及び農業経営の近代化をはかること、すなわち、農業構造の改善であります。
 農業構造改善対策の第一は、農業構造改善事業の推進をはかることであります。三十六年度におきましては、まず普及指導体制を充実し、先駆的な全国九十二地域について農業構造改善農村計画の樹立を助成するとともに、全国五百地域についてその予備認査を行なうことといたしました。
 その第二といたしましては、農業経営の規模の拡大、分散農用地の集団化、機械化の促進等、農用地保有の合理化と農業経営の近代化によって、自立経営の育成と協業の助長をはかることといたしました。すなわち、農業者の農業生産についての協同組織の整備をはかるとともに、農業協同組合が主体となって農用地の移動を円滑にする事業の実施をはかることとし、農業協同組合法及び農地法をそれぞれ改正する法律案を本国会に提出する予定であります。さらに、自作農維持創設資金につきまして、その経営規模拡大資金としての機能に着目し、その運用に改善を加えるとともに、融資ワクの拡大及び貸付限度の引き上げをはかる所存であります。また、開拓パイロット事業の実施を通じまして構造改善事業を推進するよう努めることは、さきに述べた通りであります。
 農業近代化の基幹である農業機械化の促進につきましては、大型トラクターの導入による深耕、土層改良の計画的拡充をはかるとともに、中型トラクターによる農業機械化実験集落の増設等に努める所存であります。
 なお、他産業における旺盛な労働力需要に対応して農業からの労働力移動が著しいのでありますが、就業条件の一そうの改善に役立つよう、三十六年度におきましては、農業委員会等の組織による農業労働力調整協議会の開催等により農村における労働力の合理的調整に資することといたしたほか、海外移住についても引き続き力を注いで参るとともに、職業訓練施設の新設拡充、職業安定機関の活用等を通じ関係各省との緊密な連絡のもとに対処して参る所存であります。
 重点の第四は、近時次第にその充実を示しつつある系統資金の農業内部への積極的活用を期し、新たに利子補給、債務保証についての助成措置を伴う農業経営近代化資金融通制度を設けますほか、農林漁業金融公庫の貸付ワクを大幅に拡大し、これによって農業経営の近代化を推進するために必要な資金の円滑な供給の確保をはかったことであります。
 次に林業の振興対策の推進について申し上げます。
 三十六年度におきましては、森林資源の育成開発と国土保全の見地から、治山事業と造林事業を計画的に推進することとし、造林融資の拡充をはかるとともに、特に、水源林の造成を急速かつ計画的に行なうため、従来国有林野事業特別会計において実施して参りました官行造林事業の方式を改め、今後の新規造林契約分は森林開発公団に実施させることといたしました。また、林道網の整備を推進するとともに、新たに山村振興の見地から林業を主目的とした多目的林道の開設を助成することとしております。
 また、林業の基本対策につきましては、農林漁業基本問題調査会の答申の趣旨に沿ってその具体化につき検討を進めておりますが、三十六年度におきましては、このための資料を得るため、林業経営、林地価格及び林地の移動等に関する調査を行なうことといたしております。
 なお、新たに林業経営安定のため、農林漁業金融公庫融資の道を開き、さらに、従来火災のみを対象としておりました国営森林火災保険制度を改正いたしまして、気象災害による損害を補てんの対象とすることといたし、造林事業促進の一助といたしました。
 このほか、山村における低所得層である製炭従事世帯の現金収入の確保をはかるため、従来に引き続き木炭生産合理化指導及び木炭出荷調整対策を実施することといたしております。
 次に水産業の振興対策の推進について申し上げます。
 まず、漁業生産基盤の整備につきましては、漁港整備計画に基づき漁港修築事業を計画的に推進するとともに、沿岸漁業振興対策の一環としての漁場改良造成事業を拡充実施することといたしております。
 次に、特にわが国沿岸漁業の置かれております現状にかんがみ、漁業の構造改善促進対策を積極的に進める必要があると考えておりますので、さしあたり、三十六年度においては、沿岸漁業構造改善事業の準備段階として、沿岸漁業構造改善促進計画の樹立に必要な調査指導を行なうことといたしました。この構造改善促進計画におきましては、大規模土木工事による養殖漁場の造成、小型漁船の大型化、装備の高度化等による漁船漁業の近代化並びに中核的漁港の整備等の漁業生産基盤の強化拡充等によりまして健全な沿岸漁業経営を確立する考えであります。
 他方、沿岸漁業の過剰就業の改善に資するため、関係都道府県に沿岸漁業転業対策協議会を設置せしめ、転業を希望する漁民の調査とあっせんを行なわせることといたしております。
 また、水産物の流通改善につきましては格段の意を用いることといたしております。すなわち、多獲性大衆魚の豊漁による魚価の低落に対処するため、自主的調整を行なうための組織として漁業生産調整組合の設立につきまして指導を行なうとともに、国の一部出資による魚価安定基金を設置することといたし、差しあたり、三十六年度におきましては、水産業協同組合等の行なうサンマかす調整保管事業に要する経費を補てんするとともに、漁業生産調整組合の行なう生産調整事業に対し所要資金の一部を交付することといたしております。
 その他、水産物市況通報センターの設置、主要生産地等における冷蔵庫等の設置に対する助成を講ずることといたし、水産物流通改善対策の強化をはかっております。
 最後に、以上申し述べましたほか、三十六年度の重要施策について申し上げます。
 その一は、農業災害補償制度の改正であります。すなわち、最近における農業生産事情及び農業災害の発生の態様等にかんがみまして、農業共済組合の共済責任の拡大、損失補てん内容の充実、画一的強制加入方式の緩和、農業共済組合の基幹事務費の全額国庫負担による農家負担の軽減、農業保険事業団の設立等を考え、本制度の抜本的な改正を行なうこととし、農業再生産の確保と農業所得の安定を合理的にはかることを旨として、農業災害補償法の一部を改正する法律案等所要の法律案を今国会に提出する予定であります。
 その二は、農林水産試験研究の強化と普及事業の整備充実であります。最近の農林水産業の進展に即応いたして農林水産業振興の科学技術的基盤を強化し、農林漁業技術の高度化による生産性の向上をはかることがますますその重要性を加えつつある現状にかんがみ、三十六年度におきましては、麦、大豆等の畑作試験研究、畜産及び果樹試験研究、稲作機械化の研究、水産増殖等の試験研究等を強化推進するほか、今後の農業発展の長期的方向に即し農業に関する現在の試験研究機構を再編成することとし、畜産、園芸等の部門別試験場の分化独立、各行政部局の研究管理部門の農林水産技術会議への統合等をはかることといたす所存であります。普及事業につきましては、試験研究の強化と相待って農業技術の高度化をはかるとともに、農山漁家の生活改善を促進するため、農業、林業、蚕糸、生活改善の各種普及員の普及活動を充実強化することといたしております。
 その三は、農村青年対策の強化であります。申すまでもなく、近代的な農業経営の担当者としての人材を養成し、これらの人々を農業に確保することは、農政の重要な柱の一つであります。このため、従来の施策を引き続き実施いたしますほか、農家の後継者教育の一環として農村青少年活動の中核となるべき者に対する長期集団研修、農山漁村を通ずる青少年の研究実践活動の推進をはかる所存であります。
 その四は、後進地域振興対策の充実であります。農業の近代化を推進していくにあたりましては、後進地域の農業の振興と、都市に比べておくれがちな社会生活環境の整備にも意を用いる必要があると考えます。不振開拓地の営農振興につきましてはさきに申し述べた通りでありますが、その他、小団地開発整備事業、離島振興事業、防災営農振興対策、農山漁村同和対策等により後進地域の振興をはかるとともに、農山漁村の環境整備につきましては、広い意味における構造改善事業の一環としてこの面への配慮をいたしますほか、僻地農山漁村電気導入事業を積極的に推進して参る所存であります。
 その五は、農林漁業団体の活動の促進であります。
 以上申し述べました農林水産施策を効果的に実施していくにあたりまして、農林漁業団体の整備強化とその活動の促進強化をはかることがきわめて肝要であります。特に、農業の他産業に対する経済的不利を補正する上で農業団体の自主的活動が果たすべき役割はまことに大きいものがあるのであります。このため、政府は、農業協同組合系統組織の整備強化を強力に推進することとし、三十六年度から五カ年計画をもって農業協同組合の合併を促進するため必要な予算措置並びに税法上の措置を講ずることとしております。また、森林組合につきましても合併組合の強化をはかるとともに、漁業協同組合については三十五年度に設立された漁業協同組合整備基金に対する政府貸付金をさらに増額し、漁業協同組合の整備促進をはかることといたしております。
 最後に、統計調査の整備について申し上げます。農業基本法案等に基づく新施策の推進並びに後に触れます農業基本法案で予定しております農業の動向に関する年次報告の作成等のためには、農林統計及び関係諸統計の整備をはかる必要があります。三十六年度以降におきましては、特に農家経済調査の拡充等に努めますほか、畜産、果樹等生産の選択的拡大を必要とする部門に関する統計の整備に重点を指向し、あわせて地域別実態の把握にも力を入れ、諸施策が地域の特性に即して行なわれ得るよう、その態勢を確立して参る所存、であります。
 以上三十六年度において農林漁業につき講じようとする諸施策について申し述べたのでありますが、さらに、本国会には、農業の重大な役割にかんがみまして、農業に関する政策の目標と今後の農業の進むべき方向を明示するため、農業基本法案及びその趣旨に沿った農地法の一部改正法案等の諸法案を提出いたしたいと考えております。農業基本法案におきまして農業に関して政府のとろうとする施策は、農業生産性の向上をはかり、農業従事者と他産業従事者の生活水準の均衡をはかることを目的とすることをせん明し、これらの目的実現のための手段として、農業生産の選択的拡大、農業の生産性の向上、農業構造の改善、価格の安定、流通の合理化、環境の整備等を強力に推進すべき旨を規定するほか、年次報告を国会に提出することを政府に義務づけるなどを予定しております。
 以上、農林水産業施策の概要を申し上げたのでありますが、各位の御協力を得まして、農林関係予算案及び法律案の御審議が円滑に行なわれますようお願いをいたす次第でございます。

発言情報

speech_id: 103805007X00119610207_004

発言者: 周東英雄

speaker_id: 20741

日付: 1961-02-07

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会