岡井彌三郎の発言 (逓信委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(岡井彌三郎君) 岡井でございます。
ここに提案されておりまする郵便法の一部を改正する法律案について意見を述べよということでございまするが、この法案は、国民の生活に多かれ少なかれ影響を及ぼすところの幾多の改正事項を含んでおります。が、しかしながら、そのうちで最も重要なものは、料金引き上げの問題であろうかと思います。また、私どもも参考人としてここに御紹介になりましたのも、これがためであろうかと存じまするので、私は主としてこの問題につきまして愚見を申し述べたいと思います。
初めにお断わりしておきまするが、私はかつて郵政省の前身である逓信省に在籍したことがあるというだけで、格別郵便事業について知識、経験を持っておるわけではございません。従いまして、私の申し上げますることは、ただ少々ばかりこの事業に対して理解を持っておるとみずから認めておる一国民の感想としてお聞き取りを願いたいのでございます。
さて、およそ郵便料金のような公共料金の値上げは、それ自体が多かれ少なかれ国民生活に影響を及ぼしますのみならず、ひいては他の物価の値上がりにまで波及するおそれがあるということで、この値上げはできるならば避けた方がよろしい。もし上げるにいたしましても、よほど慎重に取り扱わねばならぬということが一般にいわれております。私も全くその通りであると存じます。しかしながら、また一方におきまして、郵便事業のように、郵政特別会計のワクの中で独立採算制がとられておりまする以上、この独立採算制の是非につきましては、いろいろ議論もあろうかと思いまするが、ともかく現在は独立採算制の建前であるかのように思いまするので、私といたしましては、その前提のもとにものを言うほか仕方がないのでありまするが、ともかくといたしまして、郵便事業の独立採算制をとっている以上は、その収支は相償なわなければならないのでありまして、もし総収入をもって総支出をまかなうことができなくなりましたならば、まずもって内部的に合理化、能率化によりまして、極力経費の捻出をはかるということはもちろん必要でありまするが、それでもなお足りない場合には、ある程度の利用料金の値上げをいたしまして、そうして事業の正常な運行をはかるということは、これは当然許さるべき事柄であり、また、事業の管理者としては当然なすべき責務であろうかと存じます。
ところで、郵便事業におきましては、御承知のように、その料金が現在の料金改定にせられましたのは、大部分は昭和二十六年、一部は昭和二十七年でありまして、その後九年ないし十カ年というものがそのまま据え置かれております。その間に類似の公共事業、たとえば電気、水道、ガス、電信電話、鉄道、こういったものは少なくとも一回以上値上げせられております。また、一般物価も何割か上昇しております。それから、郵便事業に従事する職員の平均ベースも、少なくとも二倍以上にはね上がっておるのじゃないかと思います。これは郵政事業の従事員だけではありません。一般の公共、国営事業あるいは民間事業も、それと同等あるいはそれ以上の上昇をしておるのでありますが、ともかく、従業員の給与ベースも二倍以上にはね上がっておる。その中で、とにもかくにも郵便事業が十年間どうやらこうやらここまで忍んでやってきたということは、ある意味におきましてはまことに賞賛に値する事柄かとも存じます。しかしながら、その結果どうなったかと申しますれば、年々郵政特別会計の収支のバランスがくずれて参りまして、ここ数年間は財源不足のために、局舎その他の施設におきまして、あるいは人員配置の面におきまして、ほとんど何らの見るべき施策が行なわれていないのでございまして、郵便事業の施設の悪さかげんを、従業員の能率、保健衛生、ひいては労働問題にまで密接な関係を及ぼしておりまする局舎の問題を取り上げて申してみましても、もちろんこれは先刻御承知のことと思いまするが、全国郵便局舎のうち、建ててから四十年以上たっておる局舎が普通局で七%、特定局では一四%、面積が狭くて事務上現に支障を来たしておる局舎が普通局では六九%、特定局では五五%の多きに及んでおります。これはほんの一例でありまして、すべての物的施設、人的施設、みな右へならえであります。でありますから、これに伴いまして業務のサービスもよくなろうはずはなく、ある面におきましては、たとえば集配度数におきましては、いまだに戦前の状態に回復することができないようなありさまであります。今回、郵政御当局におかれまして、いよいよ料金引き上げの決意をされ、ここにその案をお出しになったということは、おそまきながら当然の措置として、私はこれに賛意を表するものでありまするが、ただ、十年目の値上げといたしましてはいささか遠慮が過ぎるのではないか、かような気がいたします。郵政御当局では、この値上げ案によりまして、平年度八十九億円、本年度は七月から実施するといたしまして六十九億円、六月実施としますれば七十四、五億円の増収額を見込んでおられるようでありまするが、はたしてこの程度の増収額をもってしまして、年々増高する人件費、物件費をまかないつつ、なおかつ、さきに申しましたような劣悪な、ないし著しく立ちおくれましたいろいろの施設の改善を行なっていく余裕、余力がはたしてあるのかどうかということについて、私は多大の疑問を抱かざるを得ないのであります。
かりに、本年度はどうやらこうやら収支のつじつまが合うといたしましても、来年度以降におきまして、はたして収支のバランスがくずれることがないのかどうかということにつきましては、御当局といえともおそらくは確たる御成算がないのじゃなかろうかというよりは、むしろここ二、三年すれば、また赤字に悩む時代がやがてやってくる。そして再び料金引き上げの問題を持ち出さなければならないのではなかろうかというような心配を内心なさっておるのではないかと、かように推察いたす次第であります。ところが郵便料金のような公共料金は赤字が出たからと申しまして、すぐさま値上げをすべき筋合いのものではありません。少なくとも五年くらいは据え置きにすべきであるというのが常識になっているようであります。かれこれ考えてみました場合に、私はこの値上げにつきましては、せっかくと申しますと変ですが、ともかく十年目の値上げのことでありまするから、もう少しこの幅を広くすべきではないか、かように考える次第であります。
それでは具体的にどういうふうに値上げの幅を大きくするかと申しますれば、それは昨年末郵政審議会が答申されましたあの原案、これによりますと、低料取り扱いの新聞料金は、この案のように二円でなくして三円、それから農産種苗、これもこの案のような二円ですか、でなくて六円、それから年賀はがきも、これも現在の四円の据え置きでなくして、他の第二種一般と同じように五円にする、こういうふうな案になっているはずであります。この案をなぜ御採用にならないで本案のようなことになったかと申しますれば、その詳しい事情は私どもももとより存じませんが、聞くところによりますると、それは一般公共料金と同じように、政府の方針といたしまして、値上げ率を二〇%に押える必要があったからと、かようなことのように拝承しております。しかしながら、先ほども申しましたように、この十年間に少なくとも一回以上値上げをいたしました他の公共料金と、十年間全く据え置きの郵便料金と全然同一に取り扱うということは、はなはだ不公平である。またいわゆる正直者にばかを見させるのたぐいではないかと思います。従業員並びに事業に、かようなうき目を見させないためにも、この際、多少二〇%の率をこえましても、もう少し引き上ぐべきじゃないかと私は思います。具体的に申しますならば、新聞料金は二円じゃなくて三円、農産物種子は、これまた据え置きじゃなくて六円、それから年賀はがきも、もちろん一般のはがきと同じように五円にせめてすべきではないかと考えます。新聞料金につきましては、先ほど他の参考人の方からお話がありましたけれども、私が考えますることは、かりにこの案の通り二円といたしましても、その取り扱い原価ははるかに割っております。取り扱い原価のうち直接費と間接費に分けましても、その直接費にも足らないのであります。いかに低料料金といえども、直接費だけは徴収すべきであるということが一般に認められた学説とでも申しましょうか、通説になっておるように思いまして、私はせめて三円にすべきであると思います。年賀はがきが現在四円になっておりますのは、戦後の特殊事情といたしまして、利用勧奨の意味もありまして、特に四円としたようでありまするが、今日におきましてはその必要性もほとんどなくなったかのように思いますので、料金体系の是正と合理化というような見地から申しましても、当然五円にすべきものであると存じます。
料金の問題につきましてはそのくらいにいたしまして、この法案には料金問題のほかに郵便物重量並びに容積制限の改正であるとか、災害時における無料はがきの交付であるとか、転送の場合における措置の改正であるとか、そのほかいろいろ利用者に利害関係を及ぼすような改正を含んでおるようであります。料金を引き上げながら利用者の不便になるような措置をとるとは何ごとであるかというような声も必ずやあるかと思います。国民感情としてはまことにごもっともな点であるとは思いまするが、冷静に考えてみますと、この改正によりまして一般国民のこうむる不便とか不利益というものはさして大きなものではなくして、反面この改正によりまして、事業の負担は、それから従業員の労苦は著しく軽減され、その余力をもちまして全般のサービス改善のために振り向けようと、かような趣旨のようでありますので、私は、およそ事業というものは経営者の努力だけでは決してよくなるものではない。そこに必ず利用者の協力というものが必要であるという見地に立ちまして、あえてこれらの改正案に全面的に賛成いたしたいと思います。
以上で私の意見開陳を終わらしていただきます。