江田三郎の発言 (農林水産委員会)
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○江田三郎君 これは、まあ、総理は十分の時間をかけたということを言われるのですが、この点は、前の総理の岸さんも同じようなことをよく言われました。何時間かけた、何日かけたということをもって審議を尽くしたか尽くさないかの基準にしておられるようでありますが、私も、総理が四日も衆議院段階において委員会に出られたというので、議事録を一応拝見いたしました。しかし、あの議事録を読んで見ますというと、問いに対してはほとんど答えておられぬのであります。まことに抽象的な、きれいな言葉は使っておりますけれども、具体的な質問に対して何ら答弁をされていない。たとえば所得倍増とこの基本法との関係につきましても、あるいは農地を取得するところのあるいは農地の移動に伴うところの資金関係あたりについても、てんで答弁になっていないわけなんであります。そういうような、答弁が当を得ていないというだけでなくて、まだ、あの衆議院における審議の状況を見ますというと、非常に重要な問題がたくさん残っておるわけです。たとえば一子相続の問題というようなことは、これはたびたび今日までも問題になりましたが、この点は現行憲法と抵触するのじゃないかというような有力な意見もあるわけであります。あるいは教育事業を拡充するという問題につきましても、教育のあり方というものが、なかなか検討を要するわけでありまして、たとえば農家が子弟を大学へ行かす、自分の金で、あるいはあと相続者が相続するその財産の中から子供を学校に行かして、それを二次産業、三次産業の従事者に仕上げていくというのは、一体これは農民にとっては、他産業のための負担をしておるのではないかというような問題もあるわけです。あるいは試験研究機関にいたしましても、今日までの過小農を中心とした農業技術から、そうでないいわゆる近代的な農業に持って行くための試験研究機関というものは、あり方が全然変わってしまわなければならぬわけです。そういうような点については、何ら触れていないのでありまして、それを私どもが申し上げた。すでに参議院において理事会が九日に開かれるということがきまっておるのだ、それまでの間、一週間早かろうと、三日早かろうと、十日早かろうと、何ら参議院の実質的な審議に影響はないのだから、それまでの間何日間でも審議を続け、そうして上げる日は、きちんと両党間の約束で責任を負うようにしたらどうかという私たちの考え方は、私は決して不当なものでないと考えるわけでありますが、どうも総理の方は、遺憾であったということは言われるけれども、何が遺憾か、一向にわけのわからぬ今答弁をされたわけであります。しかし、私はそういう問題について、ここで衆議院の審議がよかった悪かった、あるいはその責任をどうこうといって繰り返したところで、もう死んだ子供の年を数えるようなことになりますから、そのことをこれ以上申そうとは思いません。それよりも、法案の実質的な審議に進んだ方がいいと思いますが、ただ、私はこの際総理に申し上げておきたいことは、総理は衆議院の答弁の中で、農業の前進というものは、政府がやるのでも政治家がやるのでもなくて農民自身がやるのだと言っておられました。これは非常にりっぱな言葉であります。農民自身がやるのだということ、この言葉を総理がほんとうに腹の中に最後まで持ってやっていただきたいと思うのであります。一体、国会の審議というものは、私はただ採決だけが目的でないと思うのでありまして、もし採決だけが目的ならば、もう答えはとうに出ているわけであります。そうではなくて、国会の審議を通じてこの法案がどういう内容を持っているかということを、よく国民に、特に農業基本法であれば農民に徹底をさせる、どこに問題があり、どうしなければならぬかということを考えてもらう、そういう審議の過程というものを通じて、国民を教育と言っては、おこがましいのでありますが、国民に法案の内容を周知徹底せしめるというところに、議会政治の審議の本質があると思うのであります。ただわけのわからぬうちに結論を急ぐということは、決して当を得たものでない。それは少なくとも総理が言われるところの農民自身が農業の前進をやるのだという考え方とは、非常に違ってくるわけでありまして、農民の中には、総理が言われるように、賛成している者もいるでしょう。しかし同時に、これは六割の首切りになるのではないかという心配を持つ者もあるわけであります。一体、自分たちは農村に残る四割なのか、首を切られる六割なのかというようなことを真剣に心配している人があるわけでありまして、そういう諸君の心配をそのままにして強引にやるということは、農民自身に農業の前進をさすゆえんのものではないわけでありまして、今後の審議にあたりまして、この参議院では衆議院のようなことを繰り返さないで、ぜひ慎重な審議をやってもらうということを、自民党総裁としての池田さんにお願いしますと同時に、政府の首脳としての総理も、何でもいい、時間をかければいいんだ、質問をそらして本質に触れないで、何時間かけたという実績さえ作ればいいという考え方は、この際はっきりとやめていただきたいということを申し上げて、そこの点をちょっとお聞きしておきます。